[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです   作:型破 優位

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いきなりですが、来年は愛知駅伝出ようかと思います。

やっぱり自分の住んでる町に少しでも貢献したいですからね。

ということで、更新が遅れるかもしれません。

私用で申し訳ないです。


二人の新人戦

 午後に行われた女子バトルボードは、達也の策により二人が予選を通過した。

 

 そしてジブリールは深雪や雫、ほのかといった一高女子メンバーと祝勝会をやっており、佑馬とは別行動をしている。

 

 そしてその佑馬は、現在少し遅めの夕食を取っていた。

 理由はたまには一人でゆっくりと食事をしたかったから、というものだが、食堂は他校が使っており、部屋で食べるのも新鮮味が無いとロビーのソファーで外を見ながら食べていた。

 

 そして、今現在こちらに近づいてくる複数の足音が聞こえたため、その正体を確認した。

 

 その正体にふっと笑いながらその近づいてきた人達に声をかける。

 

「これはこれは、三高の選手が自分に何の用でしょう」

 

「中田 佑馬だな。俺は第三高校一年、一条 将輝だ」

 

「同じく第三高校一年の、吉祥寺 真紅郎です」

 

 佑馬の問いに応えたのは、三高のエースにして十師族、『クリムゾン・プリンス』の異名を持つ一条 将輝と『カーディナル・コード』を発見した『カーディナル・ジョージ』持つ、吉祥寺 真紅郎だった。

 

「そこのプリンスが言った通り、第一高校一年の中田 佑馬だが、もっかい聞くぞ。何のようだ」

 

 語気は強めていない、どちらかといえば煽るような口調、用件は知っているけど、という言葉が付くような言い方に、将輝は若干苛立ちながらも質問を続ける。

 

「いや、ただの偵察だ。相手がどのようなやつかを知るのは常識だろう」

 

「まぁ、そうだな。でも、なんで女子がいるんだ?」

 

 そう、その場にいるのは将輝や吉祥寺だけではなかった。

 そこには、女子二人の姿があった。

 

 視線を向けると、二人とも一歩前に出て、自己紹介をした。

 

「私は第三高校一年、一色愛梨。隣が同じく、四十九院(つくしいん)沓子(とうこ)よ。私たちは中田 ジブリールさんに用があるのだけど」

 

「ああ。ジブリールは今一年の女子と今日の祝勝会をやってるよ。悪いね」

 

「あらそう。まだ新人戦一日目だというのに、随分と気楽なものね」

 

「余裕と言ってほしいなぁ」

 

 佑馬の言葉にムッとしたのは、将輝と愛梨。

 

「……まぁ、明日二競技もやってまともな試合が出来るとは思わないけど、せいぜい頑張ることね」

 

「あれー?君たちなんか二競技こなしても余裕で勝てる(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)って遠回しに言われているの、わからないのかなー?」

 

 本当は一高側のミスなのだが、確かにそうとも取れる行動に愛梨は歯噛みする。

 

「舐めたことを後悔させてやるわ!!行くわよ!沓子!」

 

 佑馬はその様子に苦笑しながらも、こちらをじっと見つめている存在に気付いて視線を向ける。

 

「行かないんですか?……えーと、四十九院さん」

 

「すぐ行かないと怒られそうじゃな……しかし、気になることがあってな」

 

「どうぞ」

 

 聞いてもいいか、という眼で問われたので応えるように促したが、その質問に佑馬は目を細めることになった。

 

「おぬし、本当に高校生か?」

 

「……見ての通りだが、どうしてだ?」

 

 実際のところ、佑馬は高校生ではない。

 年齢でいえば高齢もいいとこで、高校生もこれで二度目、その質問は佑馬の事情を射ているために、佑馬も少しは警戒しなければならなかった。

 

「根拠はわしの直感じゃ」

 

「そうか。まぁ、見ての通りだ。それより、早く行かなくてもいいのか?」

 

「おお、そうじゃな。ではのー」

 

 女の勘もここまで鋭くなったら笑えなくなるな、と思いつつ、奥でこちらを睨んでいる愛梨を見ながら沓子に行くよう促すと、スタタタと走っていった。

 

「さて、待たせたな。君たちの本題は?」

 

「中田 佑馬、俺たちは明後日のモノリス・コードに出場する。そのための宣戦布告だと思ってくれてもいい」

 

「ふーん。勝負は見えてるけど、せいぜい頑張ってくれ」

 

「貴方がいくら優秀と言えど、僕たちの勝ちは揺らぎません」

 

「おいおい、モノリスは三人でやる競技だぜ?残りの二人も十分優秀だから安心して負けてくれ」

 

「……勝つのは俺たちだ。時間を取らせたな」

 

 そしてそのままロビーを離れていく二人を見ながら、結局なんだったんだ、と思いつつ、再び景色を見ながら夕食を摘まみ始めた。

 

◆◆◆

 

 新人戦二日目、今日はクラウドの予選と決勝、ピラーズ・ブレイクの予選が行われる。

 

 佑馬は自分で、ジブリールは佑馬にCADを調整して貰うのだが、どうしても時間が合わない場合のみ、ピラーズ・ブレイクを達也、クラウドを五十里に担当してもらうことになっている。

 

 そして、早速佑馬とジブリールは一回戦目にそれぞれクラウドとピラーズに入っていた。

 

 ジブリールが使うCADは既に調整してあるため、そのまま使用できる。

 

 控え室につくと、五十里が既に待機してた。

 

「やぁ、やっと佑馬君の出番が来たね」

 

「そうですね。まぁ、すぐ終わらせます」

 

「あはは……佑馬君が言うと説得力しかないね」

 

『それでは、新人戦クラウド・ボール第一試合は、第一高校、中田 佑馬選手と第八高校、新田 翼選手です!』

 

 アナウンスも入ったことにより、佑馬はコートに向かう。

 相手は既にコートに入っており、待機していた。

 

『双方ともにラケットスタイル同士!前評判の高い第一高校の中田 佑馬選手はどのようなプレイをするのでしょうか!』

 

 ラケットを構えている相手を見ながら、佑馬はラケットを片手に持って、コートの真ん中に立ってスタートを待つ。

 

 そして、ランプが点り、打ち出された球を相手が天井に向かって打ち、天井から反射した球が佑馬のコートの端に向かう。

 

「……まぁ、こんなもんだよなぁ」

 

 しかし、遅い。

 今まで闘った真由美やジブリールと比べると、音と亀ほどの差はあるだろうか。

 

 到達点に走っていき、コートに落ちるより前についてそのまま打ち込む。

 

 相手も九校戦に出るというだけあり、身体能力だけの佑馬のスピードについてきている。

 

 そして、そのままどちらにも点は入らずに七球目が打ち出された。

 

『ここまで双方一点も落としておらず、白熱した闘いが繰り広げられています!コート内を目も止まらぬ速さで球が飛び交っています!』

 

 実況を聞きながら、ボールが増えてきたために作戦を実行する。

 

 佑馬は今こっちに飛んで来ている三球と相手コートに向かっている四球を見て、二球を全力で打ち、残りの一球を移動魔法をかけながら、回転をかけて打った。

 

 その全力で打った二球は相手は反応できずにそのまま点となり、そしてその残りの一球は他の球とぶつかり、そのぶつかった球は別の球にぶつかり、そしてそのぶつかった球が……というように、連鎖が起きた。

 

『おーっと!いきなりの高速リターンには驚かされましたが、今起きているこの現象はスピード・シューティングで第三高の十七夜選手が使っていた『数学的連鎖(アリスマティックチェイン)』と酷似しています!これはどういうことか!』

 

 相手が打った球は、佑馬のコートに届く前に他の球とぶつかって相手のコートに落ち、あらゆる方向から飛んで来る球に対処するもその全てが球によって打ち落とされ、佑馬はただ立っているだけとなった。

 

 その様子に観客はどよめき、一高のテントではあるトリオが、まさか本当に使うとは、と驚いていたが、何よりも驚きが大きいのは控えにいた一色 愛梨だった。

 

「あれはどうみても栞の『数学的連鎖』よ!あれは一回や二回見た程度で真似出来るほど簡単なものでもないわ!」

 

 誰よりも栞の努力を知っている愛梨には、目の前で起きている現象に目を疑った。

 しかも、栞のよりも精度が高いのだ。

 

 機械が打ち出した無機物のクレーを打って破片で連鎖を起こす難しさと、ボールで相手が打ってくる球を全て読みきって連鎖を起こす難しさとを比べれば、一目瞭然だった。

 

 結果、佑馬は後半はただ立っているだけで勝手に点数が入っていき、無失点で勝利した。

 

◆◆◆

 

 佑馬のクラウドと時を同じくして、ジブリールは衣装を着て控え室にいた。

 

 アイス・ピラーズ・ブレイクは相手陣内にある合計十二本の氷柱を先に全て倒した方が勝者となる。

 

 そして、達也はジブリールとともに控え室にいた。

 

「ジブリール……それが衣装か?」

 

 しかし、ジブリールの衣装は突っ込まずにはいられず、思わず突っ込んでしまった。

 

「はい、何かおかしいでしょうか」

 

「……いや、なんというか、よく似合ってる」

 

 ジブリールの衣装は巫女……にしてはかなり開放的な雰囲気のある服装だったのだ。

 巫女と言われれば、という感じだ。

 

「それならよかったでございます……あ、佑馬勝ちましたね」

 

「まぁ佑馬なら当然だが……ジブリールは大丈夫か?この試合が終わったらすぐクラウドだろ?」

 

「すぐ転移で移動するので問題ありませんよ」

 

『大会五日目、新人戦二日目のアイス・ピラーズ・ブレイク、一回戦はさっそく注目選手!前評判では新人ながらミラージ・バットの本戦に抜擢された司波 深雪選手を上回ると称されている中田 ジブリール選手の登場です!』

 

「では、行って参ります」

 

「いってらっしゃい」

 

 達也はジブリールが入場準備に向かったのを見て、モニターに目を向けた。

 

『両選手入場です!』

 

 アナウンスと共に入場する選手二人。

 その姿に、会場は魅了された。

 

 全員が、相手選手までもがジブリールに釘付けになる。

 

 巫女の服を纏い、琥珀色の髪が太陽の光を乱反射させ、圧倒的な存在感を纏っている。

 

 正に、天使だった。

 

 そして、ランプが点り、試合が開始。

 相手がCADを操作するなか、ジブリールは特化型を取り出して、銃口を向けた。

 

 その瞬間、会場の観客はジブリールから溢れるサイオンの量に息を呑んだ。

 

 その圧倒的なサイオンを使って展開された魔法式は、ジブリールの頭上に展開され、十二個の光が相手陣地の氷を穿ち、全て破壊した。

 

『これはなんという魔法なのでしょうか!頭上に現れた魔法式から十二本のレーザーが氷柱を穿ち、何かをする間も与えずに試合終了!第一高校 中田 ジブリール!相手に一切の動きを取らせずに完勝です!』

 

 歓声を送ってくれている観客を見て、観客席にはさっきまで試合をしていた佑馬がいるのをみつけ、ブイサインを送ってジブリールは会場を後にして、佑馬とともにクラウドの会場へと向かった。

 

◆◆◆

 

 今回使われた魔法とCADを見て、達也は素直に驚いた。

 

 ジブリールのサイオン量はさることながら、今回展開されていたのは、『天撃』の威力を抑えたもの。

 

 威力は維持しつつ、正確にその場に飛ばす技量とCADの性能には、驚嘆するしかない。

 

「だが、佑馬たちが対策を立てているように、こちらも対策はある。『神の使者』がどのような所にいるのか、何処まで食らい付いていけるのか、見させてもらうぞ」

 

 そう言って、達也は深雪の元へと向かった。




他校のキャラ名と高校は適当なのでルビも無しですが、よくある名前なので読めるかと。

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