[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです   作:型破 優位

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ジブリールいるから、急遽優等生を全巻買い揃えました。

一色愛梨や十七夜栞をどう戦わせましょうか。


新人戦、開幕

現在アイス・ピラーズ・ブレイクが行われているなか、佑馬とジブリールの姿はそこにはなかった。

 

今佑馬とジブリールがいるのは家。

 

新人戦で使う競技用CADの作成とピラーズ・ブレイクの衣装を考えているのだが……。

 

「……なぁ、ジブリール。本当にこれで行くのか?」

 

「ええ。普段着に近いですし、動きやすいので」

 

本人の希望だから仕方のないことだが、何処ぞの博麗の巫女だというような服、つまり、巫女服だった。

 

「……深雪も巫女の服だったと思うんだが……まぁ、ジブリールのとは素材も見た目も全く違うから問題ないか」

 

そして、CADの作成を続ける。

 

「まぁ、今まで通りやれば例外を除いてジブリールが負けることは万に一つもない。ただ、その例外、深雪には気を付けないとな」

 

「承知してございます。こちらもその対策はしてあるではありませんか」

 

「まぁ、そうだな。とりあえず、二日目はかなりハードスケジュールだ。クラウドとピラーズを交互に、休み時間があまりないからな」

 

大会委員がなんとか調整してくれてはいるが、それでもジブリールのスケジュールは常人ではこなせないハードなもの。

 

それに頷くジブリールを見て、笑みを浮かべながら佑馬は言った。

 

「だが、時間に縛られずに存分に楽しもうか」

 

その一言にジブリールもニヤッという顔をしながら、

 

「ええ、勿論でございます」

 

そう答えた。

 

◆◆◆

 

九校戦四日目。

 

本戦は一旦休みとなり、今日から五日間、一年生のみで勝敗を争う新人戦が行われる。

 

ここまでの成績は一位が第一高校で三百二十ポイント、二位が第三高校で二百五十ポイント、三位以下は団子状態の混線模様となっている。

 

競技の順番は本選と同じ。

 

今日はスピード・シューティングの予選と決勝、バトルボードの予選だ。

 

そして現在、スピード・シューティング女子の予選、雫の試合が始まろうとしている。

 

そして、一年のエリカや深雪、ほのか達の集団を前に見ながら、佑馬とジブリールは現在、三年生徒会と風紀委員長のトリオに捕まっていた。

 

「それで、一昨日の夜は何してたんだ?」

 

「特に何もありませんでしたよ」

 

「そんなわけないだろ、佑馬君のことをきいたら毎回真由美が顔を赤くしているのだから」

 

摩利はニヤニヤとしながら聞いており、真由美はまた顔を赤くしている。

 

「それはどういうことですか?」

 

ジブリールもニコニコしながら聞いてくるが、さっきまでニヤニヤしていた摩利もジブリールの表情をみて口をひきつらせている。

 

目だけが笑ってなかった。

 

「ジブリール、会長はただ今までの枷が少し外れただけで、本当に何もなかったよ。ジブリールに嘘を言うはずないだろ」

 

枷が外れた、という部分に摩利が少し反応したが、これ以上言うと自分に危険が降りかかると思ってなんとか踏みとどまった。

 

「それより、渡辺先輩はもういいのですか?」

 

「ああ、病気じゃないんだ。暴れなければ問題ない。それより真由美はテントに詰めてなくてもいいのか?」

 

「大丈夫よ。何かあったら知らせてくれるし、離れていても佑馬君やジブリールさんがいるからね」

 

「いや、他人だよりですか」

 

佑馬から摩利へ、摩利から真由美へ、真由美から佑馬へと会話が繋がっていき、今度は摩利が鈴音に質問を投げ掛けた。

 

「しかし、真由美ならともかく市原まで一緒に席を外すのはどうかと思うが」

 

「問題ありません。今日の私は強制オフみたいなものです」

 

「……お前の冗談は相変わらず分かりにくいぞ、市原」

 

いつものおふざけな雰囲気が漂うが、競技に近づくにつれ、話の内容も競技よりのものになっていく。

 

「それで佑馬君。中田さんの明日のスケジュールはかなりハードだが、本当に良かったのか?」

 

「勿論、何も問題はありません」

 

「一応中田さんは、クラウドは準優勝、アイス・ピラーズ・ブレイクは前データがないので何も言えませんが、司波さんとともに優勝、準優勝の予定です」

 

摩利の質問に答えた佑馬だが、鈴音の言葉に眉を潜める。

 

「……クラウドが準優勝なのは何故でしょうか」

 

「今大会、第三高の一色愛梨、通称『エクレール(稲妻の)・アイリ』がいるからです。それと、中田君も中田さんも、こちらとしては最低でも(・・・・)これくらいは取れると計算しています」

 

「なるほど、それで準優勝ね。じゃあ自分の場合はクラウド準優勝のモノリス準優勝見たいな感じですか」

 

納得した佑馬の言葉に、だが鈴音は首を振りながら

 

「いえ、中田君はクラウドは優勝、モノリスは準優勝で計算しています。ただ、モノリスはいくら中田君といえど苦戦は強いられるでしょう」

 

「あー、『クリムゾン・プリンス』と『カーディナル・ジョージ』のコンビですか」

 

「ええ、こちらの一年生、森崎君と十三束(とみつか)君も優秀ですが、三高の二人には少し見劣るというのがこちらの見解です」

 

「なるほど……あ、試合始まりますね」

 

一通り話の区切りがついたと同時に、スピード・シューティングの開始のランプが点ってていく。

 

そして、全て点った瞬間、クレーが空中に飛び出した。

 

得点有効エリアに入った瞬間、それは、粉々に粉砕された。

 

「振動魔法か。一辺十五メートルに設定されているエリアに十メートルの立方体を設定して、頂点と中心の九つが震源になるようポイント、それを番号指定されていて、CADの照準補助システムによって実質ボタンを押すだけで半径六メートルの球状破砕空間が出来るわけか。達也のオリジナルだな」

 

「……そういえば、佑馬君も魔法式を視ることが出来るんだったな……他の印象が強すぎてすっかり忘れていたよ」

 

そして、雫はパーフェクトを取った。

 

「へぇ、さすがだな」

 

「魔法の固有名称は『能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)』、中田君の言った通り、司波君のオリジナルだそうです。まぁ、北山さんの処理能力があってこその魔法ですね」

 

「……真由美の魔法とは発想がちょうど逆だな」

 

「……よくもこんな術式を考え付くわね」

 

真由美の声は、感嘆より呆れているようだった。

 

「しかし、面白いな」

 

だが、摩利は興味の方が勝っていた。

 

「実戦では自分と攻撃対象の相対位置が常に同じということはあり得ないから、射撃魔法として見れば実戦的ではない、が……空中に仮想立方体を設定するのではなく、自分を中心にした円を設定して、その円周上に震源を設置すれば全方位に有効なアクティブ・シールドとして使えないかな」

 

「持続時間が問題ね。短すぎるとタイミングが難しいし、長すぎると自分が巻き込まれる可能性が出てくるわよ?」

 

真由美の提示した問題点も、摩利の興味を殺ぐには及ばなかった。

 

「そこは術者の腕次第だ。お前の言うとおり、タイミングを見極めることが出来れば持続時間は短くできる……よし、早速今晩にでもアイツをつかまえて、あたしのCADにインストールさせよう」

 

「……試合の邪魔にならないようにね」

 

今度の真由美は完全な呆れ声で応えた。

 

「あ、次の試合始まりますね」

 

「ええ、次は三高の優勝候補『十七夜(かのう)(しおり)。ピラーズ・ブレイクでは中田さんと当たりますよ」

 

「へぇ……お手並み拝見といきますか」

 

そしてランプが全て点って、クレーが空中に飛び出した。

 

そして破壊したクレーの破片が、そのまま別のクレーを破壊し、さらにその破壊したクレーの破片で破壊するという連鎖が起きた。

 

「クレーが……次々に?」

 

摩利が驚きの声を上げる。

 

「へぇ、面白いな。数学か」

 

「数学?」

 

佑馬の呟きに反応したのは真由美。

 

「ええ。破壊したクレーの破片を移動魔法で移動させながら位置を把握して、計算した場所に飛ばしています」

 

「……なんて演算能力の高さなの……」

 

真由美はその事実に驚嘆するが、佑馬とジブリールにとってはこれくらいの演算速度、特別早いわけでもない。

 

「まぁ、ジブリールもあれくらいなら出来るし、俺も出来る。負ける要素はないな」

 

「佑馬君もジブリールさんもあれが出来るっていうの?」

 

真由美はその事実に驚きを隠せないでいる。

 

「まぁ、あれくらい出来なきゃ未来を数学で導きだす

人と勝負なんて出来ませんから」

 

「……?」

 

そして、その応えを分かるものはジブリール以外いなかった。

 

「……確かに、あの方達に比べたら見劣りしてしまいますね」

 

「まぁ、この連鎖は面白いな。機会があったら使ってみるか」

 

二人して笑いながら席を外すのを、ただ唖然として見つめる三年生トリオだった。

 

◆◆◆

 

現在、三高では会議室に主要メンバーが集まっていた。

 

「ここまでの結果だが……予想以上に一高が得点を伸ばしている」

 

会話を進行させているのは、一条 将輝。

 

「さすがにスピード・シューティング女子の一位から三位独占は予想できなかった……優勝確実な十七夜が四位で敗退したのは痛かったな」

 

その場には、あまり良くない雰囲気が流れていた。

 

「いや、でもあれは個人技能によるものではない……確かに、優勝した北山って子の魔法力は卓越していた。あれなら優勝するのも納得できる。だが、他の二人は、それほど飛び抜けているとは思えなかったし、十七夜が普通の状態でやれば苦もせず勝てる相手だった」

 

三高のスピード・シューティングのエースの栞は、雫との対戦で惜敗したのを気に、一気に集中力が切れたように簡単なミスをして四位となった。

 

「バトル・ボードは今のところうちが優位なんだし、一高のレベルが今年の一年だけ特に高いとは思えないし、将輝に吉祥寺、一色さんに四十九院(つくしいん)|さん、十七夜さもいるこちらの方が総合的には高いと思うんだが……」

 

「最初は俺もそう思っていたが、どうやら一高と三高の一年の差はほぼないと言ってもいい」

 

その言葉に、場がざわつく。

 

「新人戦から本戦に移動した司波深雪、スピード・シューティングに優勝した北山さん、そして何より気になるのが、一高一年のエース、クラウドとモノリスに出る中田 佑馬とクラウドとピラーズ・ブレイクに出る中田 ジブリールだ」

 

「司波さんはともかく、例え他の二人が優秀だとしても男子のモノリスなら将輝と吉祥寺が、女子のクラウドなら一色さん、ピラーズ・ブレイクなら十七夜さんがいるからそこまで遅れを取るとは思えないんだが……」

 

男子生徒の質問に、将輝は首を振りながら応える。

 

「モノリスは俺とジョージが必ずものにするとして、クラウドとピラーズ・ブレイクは厳しいだろうな。ピラーズ・ブレイクで頼みの十七夜は不調のようだし、司波 深雪、北山、そして中田 ジブリールが出る。そしてクラウドに至っては、二人とも三高の七草 真由美を上回る実力だと聞いている」

 

「な、なんだって!?」

 

「今大会で失点をしなかったあの七草さんが!?」

 

正直、これには将輝も吉祥寺も驚きを隠せなかった。

 

「だが、一色。お前なら行けるな?」

 

「当たり前よ。私は絶対に勝つわ。ジブリールって子がそこまでの実力があるのに、今まで一度も名前を聞いたことが無いというのは不全だわ。それにクラウドとピラーズ・ブレイクは競技が被ってる。疲弊した状態の相手に万に一つの負けもないわ」

 

その言葉に将輝は頷く。

 

「しかし……差がそんなにないとしたら、なんでこんなに引き離されているんだ?」

 

向かい側にいる男子生徒の素朴な疑問に、将輝と吉祥寺は顔を見合わせて、

 

「エンジニア、だと思う」

 

回答は吉祥寺から告げられた。

 

「一高には、CADの性能を二世代から三世代引き上げる化け物のような技術者がいる」

 

「将輝、お前がそこまで言う相手かよ……」

 

「一人のエンジニアが全ての競技を担当することは物理的に不可能だけど……」

 

「そいつが担当する競技は、今後も苦戦を免れないだろ」

 

吉祥寺の推測を引き継いだ将輝の不吉な予言は、チームメイトの間に重苦しい沈黙を招いた。




優等生キャラでは四十九院が好きです。

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