黒木場リョウ(偽)、頂点目指します   作:彩迦

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長らくお待たせしました(*・ω・)*_ _)ペコリ
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感想はきちんと全部目を通させていただいております(*´ー`)たくさんの感想ありがとうございます。先日より、咽頭炎?にかかりまして喉が痛くて涙出そうです。皆さんもお気をつけくださいね。


十五話 卵料理の名は

 

 

 

 朝食はホテルの顔になる。

 高級ホテルの朝食ともなれば、普通のホテルとはひと味違う何かが必要だ。和洋中のジャンルで一通りの卵料理に俺なりのアレンジを加えて作ってはみた、オムレツ、だし巻き玉子、スクランブルエッグ、ディープライドエッグ、エッグベネディクト等。何かピンと来ない。味は確かに美味しいけれど物足りない。

 ビュッフェ形式ではたくさんの料理が並ぶ。俺の料理にお客さんがすぐに食いつくとも限らないので、冷めていても見栄えが良くて味が落ちない品が求められる。しかし、堂島シェフは言っていた、新鮮な驚きのある一品を提案してもらいたいと。思い出せ、前世での料理経験を。思い出せ、港町のレストランでの地獄の日々を。思い出せ、遠月での料理の競い合いを。

 

「今まで多くの料理を作ってきた……無駄なもんは一つもない……」

 

 ひと味違う、何か。

 鶏卵だけが卵じゃない、魚卵だって卵だ。海鮮料理は俺の十八番とまではいかないものの、港町のレストランで馬車馬のように海鮮料理を作り続けてきた俺にとって魚卵は扱いに長けている。魚卵を使う時に、からすみパウダーというのがある。風味を良くするにはパウダーではなく、魚卵そのものを練り込んだ方が味はさらに強くなるので俺はあまりパウダー系は使わないが隠し味として使うなら、魚卵でからすみパウダーほど有能なものはないだろう。

 

「魚卵……朝食……朝から海鮮料理っていうのもな」

 

 日本の朝食は和食だっていう人もいれば、洋食だっていうこだわりを持っている人もいる。アメリカの朝食はオートミール、パンケーキ、シリアル、オムレツなど。普段、お嬢と一緒に色んなとこ巡ってるから高級ホテルの朝食というのは大体は想像がつく、これをさらに新鮮な驚きのある一品に仕上げるとなると難易度高過ぎるよな。学生のレベルを越えている気がすると思うのは俺だけか。

 

「うーん。あっ、まだ作ってねえ品があったな。ちょっとアレンジを加えてみるか」

 

 

 まずはホワイトソースを作る。鍋にバターを入れて火にかけて溶かしたら中力粉を加え、焦がさないようにていねいに炒めて水分を飛ばしていく。鍋に合わせて温めた牛乳と生クリームを2~3回に分けて加え、その都度よく混ぜ合わせてソースが焦げないように気を付ける。塩こしょう、ナツメグで味つけをして分量外のバターを少量加えて溶かしてホワイトソースの出来上がりだ。

 

 マフィンにホワイトソースをたっぷりと塗り、ハムニ枚と削ったグリュイエールチーズとすり鉢にすり潰しておいた、たらこを乗せる。さらにホワイトソースを真ん中に塗って、マフィンを乗せて軽くおさえる。チーズが溶けて焼き色がつくまでオーブンで焼く。焼き上がるまでの間にフライパンに少量のサラダ油をひき目玉焼きを作る。軽く塩こしょうして半熟の状態で火を止めてマフィンの上に乗せる。

 

 

「ーークロックマダムの完成だ」

 見栄え良し、味はどうだ。

 一口頬張るとホワイトソースの絶妙な味がタラコとマッチし、半熟の目玉焼きが一層深みとまろやかさをもたせて旨みが口の中に広がる。これぞ朝の朝食と言わんばかりに目覚ましにもとっておきの料理だ。

 

「まだ、味を良く出来るはずだ」

 

 気合い入れるぜ。

 

 

 

 

 

 午前六時。

 堂島シェフのアナウンスによって闘いの火蓋は切って落とされた。昨夜は試作に時間がかかって二時間くらいしか眠れなかった私はウトウトしながらも、香菜入りトマトと卵の中華スープをカップに移していく。得意分野の薬膳料理を活かして私なりにアレンジを加えた最高のスープが仕上がったと思う。

 トマトの酸味と卵の甘みが合わさり、さらに香菜を入れることによって味わいが出てくる。少量の生姜を入れてじっくりと煮たので朝食のスープとしての完成度は抜群。

 

「ーーこれなら200食いけるはず!!」

 

 

「おーっ、緋沙子か。料理に夢中で全然気付けなかった」

 

 く、黒木場くんじゃないですか。

 まさか隣同士だとは全然気付けなかった、不意打ちとはずるい。不意打ちされたことで頬が紅潮していくのがわかる。この研修を経て黒木場くんとの距離がもっと近づけばいいなとか考えている不純な私がいる。今この場にそんな感情はいらないのに。そもそも距離を縮めるもなにも私はえりな様の従者であってこんなところで脱落は許されないし、黒木場くんを想うなら絶対に二百食は達成させてみせる。

 

「得意分野の薬膳を活かした中華スープってとこか、美味そうだ。朝からスープってのもいいな、思いつかなかったぜ」

 

「そんな!! 黒木場くんだって……その品はクロックマダムですか??」

 

「おう、クロックマダムだ」

 

 

 クロックマダムはたっぷりのバターでトーストしたパンにハムとチーズをサンドし、その上に目玉焼きをのせたもの。ちなみに目玉焼きのないものはクロックムッシュと呼ばれている。フランスのカフェやビストロが発祥とされていてフランスでは定番の軽食メニューとしてたくさんの人に愛されている。そんな一品にアレンジを加えたとしても、大体は底が知れているというのになぜ黒木場くんはクロックマダムを選んだんだろう。

 

「なんでクロックマダムを選んだんですか、っていう顔をしているな、緋沙子。それは今に分かるさ」

 

 見た目は普通のクロックマダムにしか見えないのに。

 

 

「ーーーー料理っていうのは食べてもらうだけのもんじゃない」

 

「えっ?」

 

 黒木場くんが意地悪そうに笑う。

 笑うのと同時に凄まじい勢いで鍋にバターを入れて火にかけて溶かしたら中力粉を加え、焦がさないようにていねいに炒めて水分を飛ばしていく。一見してみるとごく普通に料理しているように見える、けど彼は違う。並行して同じ作業を七つ行っている、それもお客さんに見せつけるようにしている。いや見せつけているんじゃない、わざと見せて料理を目で楽しませようとしている。

 ライブクッキングをしているんだ、彼は。このビュッフェ形式そのものを逆手に取ってる、強みを分かっているからこそやっているのは分かる。もしや、黒木場くんは昨日の夜に堂島シェフがこの課題を言い渡した時からライブクッキングを含めて料理を考えていたとでもいうの。

 

『おい、なんかすげーのやってんな!!』

 

『なにあれ!!』

 

 料理人としての経験が違う。

 この場で思い付いたならまだ分かる。良い料理人というのは発想力も他の料理人より斜め上をいっているから。でも黒木場くんは違った、料理を作る上での視点が違う。私や他の皆は課題を合格するために、二百食を達成させるために試作を作り続けてきたはず。それなのに、食べるお客さんのことを考えてライブクッキングを選んで作るなんて。でも料理は目で楽しむのが本当の姿ではないはず、本来は味で勝負。黒木場くんのクロックマダムはーー。

 

『こ、これってーーーー』

 

 クロックマダムを頬張ったお客さん。

 その表情が驚愕の色に染まっていく。

 

 

 ただ美味しいってだけじゃないに決まってる。

 

 




読んでいただきありがとうございます(*・ω・)*_ _)ペコリ
更新おせえっぞ!!って思う方もいるかもしれません。その点はすみません(´・ω・`)ソーマの資料漁りや料理描写に深みを出したいなあと思ってて時間かかってます。生暖かい目で応援していただけたら(`•∀•´)✧嬉しいです

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