今回はパチュリーさんと美鈴さんとのお話です。
「お二人にもお嬢様方に対する思いがありますからね」
そうですね。それでは本編にいきましょう。
「本編どうぞ」
noside
「ミコト」
紅い月がのぼる日の早朝。執事としての仕事をこなしていたミコトにパチュリーが声をかけた。
「どうしたのですかパチュリーさん?この時間に図書館から出るとは珍しいですね」
「ええ。あなたにお願いがあるの。ちょっと図書館に来てくれないかしら?」
「そうですね・・・・今は仕事中ですので咲夜さんに聞いてみなければ・・・・」
ミコトは少し考え込む仕草をとってから答える。
「それなら大丈夫よ。咲夜にはあらかじめ許可はとってあるから」
どうやら事前の手回しは完了しているようだ。
「そうでしたか。わかりました。では行きましょう」
ミコトはパチュリーと共に図書館に向かった。
「どうぞパチュリー様、ミコトさん」
図書館に着くと、小悪魔がミコトとパチュリーをコーヒーを差し出した。
「ありがとうございます。紅魔館でコーヒーとは珍しいですね」
「レミィは大のコーヒー嫌いだものね。でも私と小悪魔はコーヒも好きだから図書館では置いてあるのよ。ミコトはコーヒー嫌い?」
「いえ。紅茶と同じくらい好きですので問題ないですよ」
そう言いながらミコトはコーヒーに口をつけた。
「なら良かったわ」
パチュリーもまたコーヒに砂糖とミルクを淹れてからコーヒを啜る。
「ところでパチュリーさん。用事というのはなんでしょうか?」
「・・・・今夜のことで話があるの」
パチュリーはミコトの目を正面から見据えながら言う。その表情は真剣そのものだ。
「今夜のこと・・・・ですか?」
「ええ。事情はもう把握しているのよね?」
「はい。理解しております。パチュリーさんはお嬢様方を狂気から守るために魔法を開発したのですよね?」
ミコトは昨日咲夜から聞いた話を思い出しながら答えた。
「そうよ。それで用事っていうのはその魔法のことについてよ」
「魔法のことと言いますと?」
「単刀直入に言うわ。あなたにもその魔法の発動を手伝ってもらいたいの」
「魔法の発動の手伝い?」
「以前魔理沙に聞いたのだけれどあなたは随分と魔法の才が高いそうね。魔理沙のマスタースパークも習得してたみたいだし」
パチュリーは以前の魔理沙からの聞いた話と竜希との戦いでミコトがマスタースパークを使ったのを思い出しながら言う。
「いえそんな。パチュリー様や魔理沙様に比べれば私など・・・」
「本当にあなたは謙虚なのね。レミィや魔理沙の言うとおりだわ。とにかくミコトには魔法の手伝いをしてもらいたいのよ。あなたの魔力があれば魔法の質を高めることができるかもしれないから。いいかしら?」
「そういうことでしたら是非。私の方からお願い致します」
ミコトは迷うことなくパチュリーの頼みを聞き届けた。ミコトにとってもレミリアとフランを狂気から守るのは心からの願いであるのだから当然と言える。
「それじゃあ早速試してみましょう。魔法の発動の仕方は・・・・」
パチュリーはミコトに魔法の発動の仕方について手ほどきを始めた。
~1時間後~
「それじゃあやるわよミコト」
「はい。パチュリーさん」
パチュリーはミコトに目配せし、ミコトは応えるように頷いた。
「「魔壁『インサニティ・ゼロ』」」
ミコトとパチュリーが同時に唱えると、二人の周囲が結界に包まれた。
「・・・・成功ね。ありがとうミコト」
「いえ、私の力がお役にたてて本当に良かったです」
二人は結界が展開できたことが確認できたので結界を解除した。
「それにしてもまさかたったの1時間でここまで・・・・・本当にあなたはすごい才能の持ち主ね」
「そんな事ないですよ。私ができるのは結局パチュリー様のサポートだけで一人で魔法の発動ができるようになったわけではありませんし」
「それは当然よ。この魔法は私が1年以上の時間をかけて開発したんだから簡単に習得されたら私の立つ瀬がないわ。でもあなたのおかげで魔法の質は上がったし私の負担もかなり抑えられた。並大抵の魔法使いではここまでの成果はあげられないわ。十分に誇ってもいいことよ」
「パチュリー様・・・・お褒めの言葉ありがとうございます」
ミコトはパチュリーに向かって礼儀正しく頭を下げた。
「では私は仕事に戻らせていただきますね」
「ええ。今夜はよろしく頼むわよ」
「はい。それでは失礼いたします」
ミコトは執事の仕事に戻るべく、図書館をあとにした。
「・・・・・あなたは本当に優しいわねミコト。レミィとフランが焦がれるのも無理ないわね」
「あれ?もしかしてパチュリー様も好きになってしまわれたのですか?」
ミコトが去った後にポツリと呟くパチュリーに小悪魔が悪戯っぽい笑みを浮かべながら尋ねた。
「そんなわけ無いでしょ。馬鹿なこと言わないで小悪魔。でもまあ・・・・弟子にしたいとは思ったわね。ミコトの才能は本物だし」
(弟子ですか・・・・パチュリー様にそこまで言わせるなんてミコトさんは本当に凄いですね)
小悪魔はパチュリーに高く評価されているミコトのことを素直に感心した。
「それよりも小悪魔、そこの本を片付けておいて頂戴」
「は~い。わかりました」
小悪魔はパチュリーに言われるがままに本を片付けに行った。
「・・・・頼りにしてるわよミコト」
「おや?」
美鈴に昼食を届けに紅魔館の門に赴いたミコトは目を閉じている美鈴の姿を捉えた。だがミコトは美鈴がいつものように眠っているわけではないとすぐに気がついた。
(ものすごい気ですね・・・・・肌がピリピリします)
ミコトは美鈴が集中して気を高めているのだと感じとった。
「・・・・・何の用ですかミコトさん?」
美鈴は目を閉じながらミコトに尋ねた。
「昼食をお持ちしました」
「昼食・・・・・もうそんな時間ですか」
美鈴は目を開き、集中を解いた。それと同時に周りの空気が戻るのをミコトは感じる。
「わざわざありがとうございますミコトさん」
「いえ、これも私の仕事ですので。それにしても目をとしていたのによく私が来たことに気がつきましたね」
「姿を目にしていなくても気配は感じていましたので。ミコトさんの気配は独特でしたのですぐに気がつきましたよ」
「独特・・・・・ですか?」
ミコトは小首を傾げながら聞き返す。
「はい。うまく言葉にはできませんがなんというか・・・・・少しごちゃごちゃしてるといった感じですね」
(あ~・・・・なるほど)
ミコトは美鈴が言っていることの意味をすぐに理解した。ミコトはその身に魔力、霊力、妖力を同時に宿しているのでそれが原因だろうと考えたのだ。
「と、そうでした。こちらをどうぞ」
ミコトは昼食の入ったバスケットを差し出した。
「ありがとうございます」
美鈴はバスケットを受け取り、昼食を摂り始める。
「ところで美鈴さん。先程は何をしておられたのですか?いつもと様子が違っておりましたが」
「ああ、アレですか。今夜に備えて意識を集中して気を練っていたんです」
「今夜に備えて・・・・ですか?」
「はい。パチュリー様にもしも魔法が失敗したときはお嬢様方を止めるように言われていましたので」
「なるほど。確かに美鈴さんでしたら可能でしょうね」
美鈴はこの幻想郷においてトップクラスの力を有している。それこそ『最強』であるあの竜希が認めるほどにだ。その美鈴であれば狂気に染まった二人を止めることはできるやもしれない。
「私もお嬢様方にはこの屋敷に置いていただいている恩がありますので・・・・・せめてそれぐらいの事はしなければ」
美鈴は真剣な面持ちで述べる。普段は昼寝して門番の仕事をサボりがちになってしまってはいるがそれでも屋敷の主であるレミリアやその妹であるフランに対する忠義は厚いようだ。
「美鈴さん・・・・・もしもその時が来たのならば私も全力を尽くして止めます。お嬢様と約束いたしましたので」
「ありがとうございますミコトさん。まあそのもしもの時が来なければそれにこしたことはないですけどね」
「そうですね。それでは私はこれにて失礼いたします。また後でバスケットを取りに来ますね」
「はい。それじゃあまた後ほど」
「ええ」
ミコトは美鈴に挨拶を交わした後、屋敷に戻っていった。
(・・・・レミリアお嬢様様。フランドールお嬢様。あなた達は本当にこの屋敷の住人に慕われておられるのですね)
屋敷に戻る道中。ミコトはレミリアとフランへと思いを馳せていた。
(彼女たちの為にも・・・・・必ずや誓いを果たさなければなりませんね)
ミコトは来るべき時へ改めて決意を強くした。
そして紅い月が昇る時が、刻一刻と迫りくる。
あとがき座談会のコーナー!IN東方!
今回のゲストはパチュリーさんと美鈴さんです!
「よろしく」
「よろしくお願いします!」
はいよろしくお願いします!それでは進めていきましょう!
「今回は前半はパチュリーさんとのお話。後半は美鈴さんとのお話ですね」
それではまずはパチュリーさんからどうぞ。
「わかったわ。ミコトに魔法の手ほどきをしたわけだけど・・・・本当にミコトは魔法の才能が高いわね。予想以上だったわ」
「確かにそうですね。パチュリー様が一年かけて習得した魔法の補助をわずか1時間で・・・・」
「そんなに凄いことでしょうか?」
「すごいわよ。素質なら私や魔理沙、アリスよりも上かもしれないわ」
まあミコトさんは天才ですからね。それぐらいは。
「天才って・・・・・言いすぎですよ主」
「そんなことないわよ。どうミコト?本当に私の弟子になる気はない?」
「考えさせていただきます」
「ミコトさんの技のレパートリーが増える予感が・・・・」
まあミコトさんは器用ですから全てとはいかなくてもパチュリーさんの魔法の一部は習得できるでしょうね。
それでは後半の美鈴さんとのお話にいきましょう。
「思ったんですが・・・・・美鈴さんなら本当に狂気に陥ったお嬢様方を止められるのではないですか?確か美鈴さんは現状幻想郷でも5指に入る実力者ですよね?」
ああぶっちゃけますと可能ですよ。美鈴さん一人で十分です。
「それはなんと言いますか・・・・・さすがですね」
ですが・・・・・そう上手くいくでしょうか?
「どういうことですか?」
世の中そう思い通りにはならないということですよ。妨害者もいることですしね。
「あの瑠璃と玻璃とかいう奴らのことね」
「本当に・・・・何をするつもりなんでしょうか?」
まあ・・・・ろくでもないことですよ。
さて、次回はとうとう紅い月が昇ります。
「いよいよですか」
「心しなければいけませんね」
「そうね」
頑張ってください。今回はここで締めましょう。
それでは・・・・・
「「「「次回もまたきてください(きなさい)!!」」」」