さて、今回は幽々子さんの話がメインとなります!
「・・・・・・今回もまたシリアスになったな」
まあ展開上そうなってしまうのは仕方がないですので。では本編にいきますか。
「ああ。それでは本編どうぞ」
side ミコト
「幽々子様!」
銃弾を受け、倒れ伏した彼女に妖夢が駆け寄る。
「幽々子様!・・・・・幽々子様!」
妖夢は何度も彼女の身体を揺さぶり名を叫ぶ。すると・・・・・・
「う、ん・・・・・・」
彼女は・・・・・・西行寺幽々子は目を覚ました。
「よう・・・・・む」
「幽々子様!大丈夫ですか!」
「ええ・・・・・少し頭がクラクラしているけれど大丈夫よ」
「幽々子様・・・・・・よかった」
妖夢は幽々子を抱きしめた。
「妖夢・・・・・心配をかけさせてしまってごめんなさい」
幽々子もまた妖夢を抱き止めた。その表情は先ほどの狂喜じみた笑顔ではなく優しく見ていると安心するような笑顔だ。
「・・・・・なあ、あんたに聞きたい事がある」
そんな幽々子に俺は声を掛けた。空気を読めていないということはわかっているがどうしても確かめなければならないことがある。
「何かしらミコト?」
「俺がわかるのか?」
「ええ、彼女に身体を支配されていたけれど意識はあったから。今まであった事は把握しているわ」
「・・・・・・そうか」
それじゃあ幽々子も・・・・・俺に銃を突きつけられた時の記憶はあるのか。
「それで?聞きたい事って何かしら?」
「・・・・・ああ、まず確認するがあんたは西行寺幽々子の亡霊で間違いないんだな?」
「ええ、そうよ」
「・・・・・証拠は?」
「証拠か・・・・・・どう証明したらいいのかしら?」
幽々子は首を傾げて考えこんだ。
「・・・・・・間違いありません」
「妖夢?」
「この方は間違いないなく、この冥界の主たる亡霊、西行寺幽々子様です」
妖夢は幽々子から離れて言った。
「なぜそう言い切れる?」
「私はこの方にずっと仕えてきました。だから・・・・・私にはわかります」
「・・・・・・お前の知る西行寺幽々子ではない彼女に従っていたのにか?」
「!それは・・・・・」
俺が聞き返すと彼女は言い淀んだ。
「はい、スト~プ」
竜希が俺と妖夢の間に割って入ってきた。霊夢達もすぐ近くにいる。
「よ~むちゃんにそんな意地悪な事いったらダメだよミコちゃん。よ~むちゃんだってちゃんと彼女が自分の知る幽々子さんじゃないって気がついていたんだよ~。それでもよ~むちゃんは彼女に従う他なかったんだ。彼女もまた『西行寺幽々子』である事は間違いない事だし、よ~むちゃんはそれに気がついていたんだろうからね。というか、ミコちゃんだってそれくらい理解してたんでしょ?」
・・・・・本当に目ざとい奴だな、竜希は。
「・・・・・問いただして悪かった」
「いえ、ミコトさんの言い分はもっともですから」
・・・・・はあ、本当に俺という奴はどうしようもない。
「それでミコト?何が聞きたいのかしら?さっきの確認が本題ではないのでしょう?」
場の空気を察したのか幽々子が聞いてきた。
「ああ、さっきまであんたの身体を支配していた彼女はあんたの命で間違いないんだよな?」
「そうよ」
「なら・・・・・・なんで彼女は存在していたんだ?本来死ねば命は失われるはずだぞ」
そうだ。死ねば命は失われる。それは摂理だ。覆るはずなんてないはず・・・・・
「・・・・・どうやらあなたは命を理解する能力を持っていても命のすべてを知っているわけではないみたいね」
「どういうことだ?」
「・・・・いいわ。教えてあげる。彼女がなんで存在していたのかを。といっても、私も彼女に支配されて初めてわかったことなんですけどね」
「・・・・・頼む」
「それじゃあ話すわね・・・・・・そもそもの原因はあれよ」
そう言って幽々子が指差したのは・・・・・・
「・・・・西行妖?」
「そうよ。あそこには・・・・・・・私の死体があるの」
「「「「!!」」」」
幽々子の言ったことに俺達は思わず驚愕した。
「ずっと忘れていたことだけれど・・・・・・ようやく思い出した。私はあそこで自害したの」
幽々子は悲しそうな顔で言った。
「幽々子様が・・・・・・自害?どうして・・・・・」
「・・・・・生きていた頃の私にはね、元々死を操る能力なんてなかったの。私の本来の能力は『死霊を操る程度の能力』。決して死そのものに関わるものではなかった。でも・・・・・西行妖のせいで私の力は変わってしまった」
「西行妖のせいで?」
「そうよ。西行妖はね、人の精気を吸って妖怪となってしまった桜なの。元々は普通の美しい桜だったけれど、妖怪になってしまってからは咲くたびに人を死に誘うようになってしまった・・・・・・・悲しい桜よ」
「・・・・・・どうして妖怪になったんだ?そもそもなぜ精気を吸った?」
「それは・・・・・・・」
彼女は表情を暗くした。その表情からはとてつもなく深い悲しみが読み取れた。
「・・・・・すまない。話したくないなら言わなくてもいい。本題はそこではないからな」
「ありがとうミコト・・・・・・・・ともかく私は西行妖のせいで死を操る力を得て・・・・・・人を殺すだけの存在になってしまったの。私はそのことに絶望して・・・・・・桜が満開の時に桜の下で自害したのよ」
・・・・・・自らの能力に絶望して、か。
「同時に私は力がある限り転生しても同じ苦しみを味わい続けるだろうと考えた。だから私は自分の肉体を鍵として西行妖に封印を施したの。西行妖が咲いて人を殺す事は無くなるように、私が転生する事も無くなるように・・・・・・そうして亡霊となって私は生前の記憶を全て捨てた。もう何も悩むことがないように」
「・・・・・・・・」
「でも・・・・・・それで全てが終わったわけではなかった」
「どういうこと~?」
「・・・・・・私の死体の中にはねほんの僅かだけれど命が残っていたの」
「それって・・・・・幽々子さんは死なずに生きてたってこと?」
竜希が聞いた。
「いいえ違うわ。命があったといってもそれは微々たるもの。生きているとは到底言えない小さなものよ。でも・・・・・・その命はいつまでたっても消えることはなかった。その命には・・・・・・未練があったから」
「未練?」
「ええ・・・・・・彼女言っていたでしょう?もっと生きたいって。もっと生きて・・・・・・幸せになりたいって」
「・・・・・・・」
「それが彼女に未練。その未練が彼女という小さな命を保っていた。いつまでも消えることなく。生への執着だけを強くして、ひっそりと、誰にも悟られることなく存在し続けていた。そして・・・・・・・その時が来たのよ」
その時が・・・・・・
「どういう訳かわからないけれど彼女は私のしたいから飛び出てきてしまったの。飛び出てきてそして・・・・・・私の体に乗り移った。彼女も私と同じ『西行寺幽々子』、しかも命を持っている。私の全ては元々彼女のものだったから私の体は容易に彼女に支配され、私の意識は奥底に閉じ込められてしまった。そして私を封じ込めた彼女は・・・・・完全な形で蘇るために行動を起こした」
完全な形で・・・・・・蘇る・・・・・
「彼女は・・・・・西行妖の封印を解こうとした。そうすることで封印の鍵となった肉体をを開放しようとしたの。そうすれば完全な形で・・・・・・『西行寺幽々子』が蘇ると考えたから。封印を解くことの意味を知っていながら・・・・・・彼女は西行妖を咲かせようとしたのよ」
「・・・・・・生きたいから、か」
「・・・・・・・ええ。これで話はおしまいよ」
「・・・・・そうか」
・・・・・なんだよそれ。そんなの・・・・・
「・・・・・・哀れだな」
「「「え?」」」
俺が呟くと皆は俺の方を見た。
「彼女は・・・・・・・哀れすぎる。西行妖を咲かせたところで・・・・・・生きることなどできはしないのに」
「・・・・・・どういうことですか?」
妖夢が俺に訪ねた。
「・・・・・なあ幽々子、聞くがその封印が施されたのはいつの話なんだ?」
「・・・・・・・1000年以上も前の話よ」
「・・・・・・やはりか」
「やはり?説明してくださいミコトさん。何がやはりなんですか?」
「・・・・・幽々子は元々は人間だ。能力を持っていたとしてもそれは変わらない」
「それがどうかしたんですか?」
「・・・・・・人間が1000年もの時を耐えられると思うか?」
「!!」
「封印を説いたその瞬間、幽々子の肉体には1000年の時が流れる。人間の体ではその時に耐えることが出来るはずない。封印が解かれた瞬間・・・・・・・彼女は死んでいただろうな」
「そ・・・・・んな・・・・・じゃああの人は・・・・一体何の為に・・・・・・」
「・・・・・・・生きるためにやったことだった。でも結局は彼女が生きる術など存在しなかった。所詮・・・・・彼女は死ぬ運命だったんだ」
「・・・・・・・」
まあそれでも・・・・・・・
俺が彼女を殺したという事実は変わらないがな。
「・・・・・・それに気がつくことができないくらい、彼女は生きることに固執していたんだね~」
竜希がいつもの口調で言った。ただその声はふざけている時とは違う静かで重いものだった。
「・・・・・・そうだったんだろうな。ただ・・・・・・それでも俺は・・・・・・・許せなかったがな」
「・・・・・・・彼女が生き返ろうとしたことが~?」
「・・・・・・ああ」
たとえどんな理由があろうとも、どんなに強い思いがあろうとも、死者が蘇ることなんてあっていいはずがない。許されるはずがない。だって・・・・・それが許されるというのなら・・・・・俺は・・・・・・
どんな手を使ってでも神楽を生き返らせようとするだろうから。
だから・・・・・・許されていいはずがないんだ。
「・・・・・ミコト」
ずっと沈黙を貫いていた霊夢が俺の名を呼んだ。
「・・・・・霊夢。終わったよ、異変は無事解決した」
俺は霊夢に向き直り言った。
「・・・・・・・」
ガシッ
霊夢は突然、俺に身を預けてきた。
「?霊夢?」
「・・・・・無事じゃない」
「え?」
「全然無事にじゃない!なによ!絶対に大丈夫だって言ったくせに!どこが大丈夫なのよ!」
「・・・・・・何言ってんだよ霊夢。俺は大丈夫だっただろう?どこも怪我してないし命の危険だってなかったんだから」
「でも!でも・・・・・・・・傷ついてるじゃない・・・・・・すごく・・・・・すごく・・・・・ミコトは傷ついてる」
霊夢は涙を流しながら言う。
「俺が・・・・・傷ついてる?」
「ミコト・・・・・すごく辛そうな顔してる・・・・苦しそうな顔してる・・・・・泣きそうなほど悲しそうな顔してる・・・・・それのどこが大丈夫なのよ?」
「・・・・・・・」
「辛いなら辛いって言ってよ!苦しいなら苦しいって言ってよ!悲しいなら・・・・・・・泣いて悲しいって言ってよ・・・・」
「・・・・・・・」
「お願いだから・・・・・・ひとりで抱え込まないでよ・・・・・ミコトォ・・・・・」
「・・・・・・霊夢」
フワッ
俺は霊夢を抱きしめた。
「・・・・・・大丈夫だよ。俺は大丈夫」
俺は霊夢に言った。
そうだ、俺は大丈夫なんだ。だって・・・・・・彼女のほうが・・・・・・『西行寺幽々子』の方がずっと苦しんだんだから。悲しんだんだから。
生きたいと強く願っていたのに・・・・・結果的には俺がその願いを打ち壊した。たとえ死の運命から逃れられないとしても・・・・・俺は彼女の希望を打ち砕いた。
だから・・・・・・そんな彼女に比べて俺は・・・・・・大丈夫に決まっている。
「帰ろう霊夢。博麗神社に。帰って花見の準備をしよう。皆春が来るのを待ち焦がれていたんだ。きっと騒がしくて楽しい宴会になる。だから・・・・・・帰ろう」
俺は霊夢に可能な限り優しい声で言った。
「ミコト・・・・・・うん」
霊夢は頷いた。きっと俺の心境を察してくれたんだろう。本当に・・・・・・俺は霊夢に心配をかけさせてばかりだ。
「魔理沙も咲夜も帰ろう・・・・・全て終わったんだから」
「・・・・そうね」
「だな。帰って花見の準備だぜ!」
そうだ。これで終わったんだ。これで全て・・・・・・
ゾクッ!
「「「「!?」」」」
全てが終わったと思ったその瞬間、俺達は強い寒気と禍々しい気配を感じた。
気配のする方に振り返るとそこには・・・・・・・
禍々しい瘴気を放つ西行妖の姿があった。
あとがき座談会のコーナー!IN東方!
今回のゲストは亡霊の主!西行寺幽々子さんです!
「よろしく~」
はいよろしくお願いします!それでは早速進めていきましょう!
「今回の話は私のことについてよね~」
「そうだね~。ただ・・・・・・めっさ重いね~」
「というかこの章に入ってから重い話ばっかりじゃねえか」
あ~まあ確かにそうですね。原作のことを考慮するとこの章ってどうしても重くなっちゃうんですよね~。
「まあ私の設定が暗いものですものね。それは仕方がないことだわ」
「まあそうなんだけど~・・・・・っていうかさ?この章って元々俺が出てくることがメインだったよね?章のサブタイでもそうあったしさ。なんか俺の見せ場少なくない?」
「何言ってんだよ。妖夢との戦いと霊夢のヤンデレ回避で十分に見せ場あっただろう」
「え~、でも俺よりもやっぱりミコちゃんの方が目立ってる気がする!」
「そうね~。合間に霊夢のヤンデレ回避があったけれど彼女との戦い・・・・・特に前回の話からはミコトの見せ場がすごく目立っているような気がするわ」
「ほら!幽々子さんもこう言ってる!」
「そう言われてもな・・・・・・俺だって一応この小説の主人公だし・・・・・というか彼女との戦いがなかったら俺の見せ場が全くなくなっていたと思うんだが?」
「それは・・・・・・まあ否定できないけどさ。でもこのままじゃ俺が報われない!大体章のサブタイトルと今回の章の話がいまいち噛み合ってない気がする!これはどういう事なの主!」
落ち着いてください竜希さん。確かに今のところは章のサブタイトルに噛み合っていませんがそれはあくまで今のところですよ。
「え?それってもしかして・・・・・」
ええ。次回でとうとうサブタイトルに噛み合った話になります!
「マジで!?よっしゃ~!!」
「・・・・いやいやいや次回って・・・・・・この章の最終話じゃなかったか?」
いえいえ、最終話ではありませんよ。最終話はまだ先になることが決定しましたから。
「そうなの?てっきり私も次回が最終話になると思ったわ」
まあそう思っても不思議じゃない展開ですからね。でもまだ次回には終わりませんよ。
「へぇ~そうなのか~」
「・・・・・竜希、そのセリフはお前が言っていいものじゃないぞ。それはルーミアのものだ」
「アハハ!一度言ってみたかったんだよ!気にしない気にしない!」
「・・・・・はあ、全く」
「まあまあ、それよりも主、そろそろ締めに入ったらどうかしら?」
そうですね。それでは・・・・・・
「「「「次回もまたきてくれ(きてください)(きてね~)(きて頂戴)!!」」」」