前回あとがきにて新章突入と言いましたが・・・・・その前に第0話シリーズを一つ
「今回は俺とミコちゃんの話かー」
「お前と初めて会ったときのあれか」
それでは本編どうぞ!
「ねえ、ちょっといいかな~?」
いつも通り学校の屋上に来て、神楽を待っていたミコトの耳に男の声が聞こえてきた。
声のする方に振り返ってみるとそこには・・・・一人の少年がいた。
(ッ!?こいつ・・・・なんだ?)
少年の姿を目にしたその瞬間、ミコトは凍りつくかのような寒気を感じた。
学校指定の黒い制服を身にまとう、黒い短髪の少年・・・・・その表情は人懐っこい笑みを浮かべているが、ミコトはそんな少年に恐怖に似た感情を抱いた。
ミコトの本能が警鐘を鳴らしている・・・・この男は危険だ、この男はおぞましすぎる・・・・と。
「んにゃ?どったの?俺の顔なんてじっと見つめちゃってさ~」
「・・・・・いや、何でもない。すまないな」
「まあ別にいいんだけどね~。それだけ俺のイケメンフェイスに釘づけになっちゃったっていうことだし~?」
(こいつ・・・・随分とまあ上手い演技をする奴だな)
おちゃらけな調子でそんなことを言う少年・・・・・だがミコトは気がついていた。少年のこの道化っぷりは決して本気ではない・・・・自分を隠すための演技であるということを。
「それで・・・・・こんなところに何しに来たんだ?何か用でもあるのか?」
「あるよ~。俺はね~・・・・君に聞きたいことがあってここに来たんだ」
「俺に聞きたいこと?それまた・・・・え?」
嫌われ者である自分に一体何を聞こうというのかと思ったミコトであったが・・・・その思考は途中でかき消されてしまう。刹那・・・・・本当に一瞬のことであった。ミコトの見ている景色が変化していたのだ。
目の前にいた少年・・・・その姿は先程よりもずっと近くにあって、ミコトの胸ぐらを掴んでいる。そしてその背景・・・・学校の屋上から見えていた町並みは、青天と太陽にすり替わっていた。
(倒された?こんな一瞬に?)
またしてもミコトは恐怖した。それなりに運動神経や反射神経は常人よりは優れていると自負していたミコトだが・・・・まさかこんな一瞬で、目にも映らぬ速さで倒されるとは予想外にもほどがあったのであろう。
「一夢ミコト・・・・・単刀直入に聞こう。お前は紫黑神楽とどういう関係だ?」
少年はミコトの胸ぐらを掴みながら問う。その声色は先程までのしまりのないものとはまるで違い、冷たく脅すかのような重たいもので、さらに雰囲気もそれに相応しい重圧を孕んだものへと変質していた。
(これがこいつの本性・・・・か?だとしたらとんでもないじゃすまないな)
ミコトが今まで出会ってきた異端は神楽を含めて二人・・・・・その二人共が、異端に相応しい風格や佇まいをしていた。だが・・・・この少年はそのどれとも違う。
少年はミコトに思い知らさせる・・・・人間という種としての圧倒的なまでの格の違いを。
「黙ってないで答えろよ一夢命」
恐れを抱いていたミコトに、早く答えるように急かす少年。そしてミコトは言葉を紡ぎ始めた。
「・・・・・さあな。正直わからない」
「わからないだと?ふざけているのか?」
「ふざけてなんていないさ。本当にわからないんだよ・・・・・友達とか顔見知りとか知人とサボリ仲間とか・・・・いろんな言葉が浮かんだが、そのどれも当てはまらないような気がした。だから・・・・・わからないんだ」
「そうか。なら質問を変えよう。お前は・・・・紫黑神楽のことをどう思っている?」
(どう思っている・・・・か)
どんな関係かと聞かれても答えられなかったミコトだが・・・・・次の問いの答えはミコトでも驚く程に出てきた。
「・・・・好きだよ」
「なに?」
「俺は・・・・紫黑神楽のことが好きだ。彼女のことを愛している・・・・一人の男としてな」
それがミコトの答えだった。
これまでにであった誰とも違う神楽・・・・美しく、麗しくそれでいて荒々しささえ秘める彼女の人間性にミコトは心惹かれていた。それに神楽は・・・・・他の者達とは違い、ミコトを決して拒絶せず、言葉を交わし、触れ合ってくれる。
そんな神楽のことを好きになってしまうのは・・・・・愛してしまうのは必定とも言える。
「・・・・・そうかよ」
ミコトの答えを聞いた瞬間、少年は思った・・・・この男も他の連中と同じなのだと。他の連中と同じく神楽に惹かれるあまり自分さえ偽ってみせる愚者であるのだと。
だが・・・・そんな思いはすぐに砕けることとなった。ミコトの目が・・・・他の連中とはあまりに違っていたから。
(気に入らないほど真っ直ぐな目だ・・・・他の連中とは到底違う)
ミコトの目はあまりにも真っ直ぐすぎる・・・・他の愚者共とは違い、曇ってもいないし邪な欲望も見えない。
ミコトは・・・・心の底から純粋に神楽のことを愛しているのだ。
(くっそ・・・・結局相思相愛の上に神楽の見る目に狂いはなかったっていうことかよ・・・・忌々しい)
少年は心の中で舌打ちをする。もしもミコトが有象無象と変わらない男だったらここで強引にでも神楽を諦めてもらおうと思っていたのだが・・・・・ミコトは違った。
違ったからこそ、忌々しくあり・・・・・同時に嬉しくもあった。
(まあ・・・・こいつならいいか。こいつなら信頼できるし・・・・・きっと神楽を幸せにしてくれる)
ミコトならば他の有象無象と違い、神楽と真摯に向き合い、愛し合い、そして幸せにしてくれる・・・・・少年はそう判断した。
「・・・・ははっ」
少年は短く笑い声を上げると、胸ぐらを掴んでいた手を離して立ち上がった。
「急に荒っぽいことしちゃってごめんね~?どうしても聞きたくってさ~」
少年は雰囲気を締りのないものに戻し、ヘラヘラした笑みを浮かべながらミコトに謝罪した。
「気にするな。気になるのは仕方がないと思うからな・・・・・紫黑竜希」
ミコトもまた立ち上がり、少年・・・・紫黑竜希の名前を口にしながら立ち上がる。
「およ?俺のこと知ってたの?」
「ああ。神楽から話は聞いていたし・・・・クラスメイトだしな」
「・・・・へぇ」
竜希は少々驚いていた。クラスメイトに不当な扱いを受けていたにも関わらず、それでも一応クラスメイトである自分のことを知っていたとは思いもしなかったからだ。
「さっきおもっきし凄んでた俺が言うのもなんだけどさぁ、君クラスメイトのこと嫌ってないの?随分と不当な扱い受けてるみたいだけど?」
「別に嫌ってはいないさ。ああいう扱いされるのには慣れているし・・・・仕方がないことだと割り切ってるしな」
(・・・・・こりゃまた歪んでる。でもここまで歪んでいながら一切の憎しみを持ち合わせてないとは・・・・ほんっとある意味神楽ちゃんとは真逆だねぇ)
ミコトと神楽は真逆だ。誰からも避難されるのに決して憎しみを抱かないミコトと、誰からも愛されているのに憎しみを抱く神楽・・・・あるいは、そんな真逆な存在だからこそ、惹かれあったというのもあるかもしれないが。
(だけど・・・・・こう言う奴には神楽ちゃんみたいに愛しあう存在とは別に・・・・理解者がいるんだろうねぇ。こいつは俺が一肌脱ぐとしますか)
「・・・・・面白いね君」
「ん?」
「君みたいな面白い人と会うのは初めてだ。気に入ったよ。よければ俺と友達・・・・いや、親友にならないかい?」
ニカッと満面の笑顔で、竜希はそんなことをミコトに提案してきた。
そんな提案を受けたミコトの第一声は・・・・
「お前・・・・・神楽の言うとおりバカなんだな」
「いきなり辛辣!?」
まさかの辛辣な一言であった。
「いや、当然だろう。初対面でいきなり友達通り越して親友になろうだなんて・・・・正直頭どうかしてるんじゃないかって疑われても仕方ない」
「ひ、否定はできないけど・・・・うぐぐ」
至極もっともなことを言われてたじろぐ竜希。だが・・・・・
「でもまあ・・・・そんな提案を受けるのを悪くないと思う俺も大概バカだがな」
「ふへ?」
「・・・・・俺は相当な嫌われ者だ。そんな俺と親友になればお前の評判もだいぶ下がると思う。それでもいいのか?」
「・・・・当然!他の誰になんて思われようとも親友には変えられねえっての!」
「そうか・・・・」
「「くくくっ」」
同じような表情で互いに笑みを浮かべあうミコトと竜希。どうやら答えは決まったようだ。
「よろしくな・・・・竜希」
「こちらこそよろしく~」
ギュッと右手で握手を交わすミコトと竜希。これを機に、二人は親友となった。
「さて、そうとなれば俺も今日からはここで授業サボんないとん~」
「お前までサボる気かよ」
「あったりまえでしょ!授業なんてつまらんものよりも親友のが大事に決まってるってミコちゃん!」
「・・・・ミコちゃん?」
唐突に竜希から愛称で呼ばれたことにピクリと反応を示すミコト。
その瞬間・・・・
「何をしているこの愚弟が」
「うぎゃっ!?」
突然、なんの前触れもなく現れた神楽が・・・・竜希を蹴り飛ばした。
「ちょっ、かぐちゃん!?いきなり現れて何するのよも~」
「うるさい黙れ殺すぞ」
「超辛辣!?なんでそんなに機嫌悪そうなのよ~!?」
「貴様・・・・・私に断りもなく何をミコトと会っている?」
神楽は明らかに不機嫌そうな声色で竜希を問い詰める。
「いや、断りもなくって・・・・別に許可なんていんないでしょ~。それに俺とミコちゃんはもう親友になったわけだし~。ね、ミコちゃん?」
「・・・・・神楽」
「なんだ?」
「・・・・もっと蹴ってもいいぞ」
「なぜに!?」
まさかの同意を求めた相手からのさらなる辛辣な発言。これには竜希もたまったものではない。
「ちょっとちょっとミコちゃん!?なんでそんなに辛辣なの!?俺達親友なのになんで!?」
「竜希・・・・俺はな、たとえ親友であろうとも『ちゃん』付けされるは嫌なんだよ」
「・・・・はい?」
「こんな容姿してるせいで女に間違われることが多くて・・・・悪ふざけで『ちゃん』付けされることもたまにある。それが俺にとってはそれなりに嫌なことなんだ。だから神楽・・・・もっと蹴り浴びせろ」
「くくくっ・・・・・了解だミコト」
ミコトの頼みを聞き入れた神楽は、ジリジリと竜希に近づいていく。
「お、お願いだから勘弁してください!かぐちゃんの蹴りって結構痛い・・・・ぎゃぁぁぁぁぁ!?」
懇願虚しく、数多の蹴りを神楽から浴びせられる竜希。
流石に理不尽だと思いながらも、その心の中ではこういうやりとりも悪くはないと思っていたりした。
こうして、紫黑竜希は一夢ミコトと親友同士になった
だが・・・・この時竜希は思いもしなかったであろう
いずれミコトのことを・・・・・・心の底から憎むようになってしまうことになろうとは
あとがき座談会のコーナー!IN東方!!
今回も神楽さんと進めていきます!
「久しぶりの第0話か・・・・・いや、それ以前に投稿自体も久しぶりだな」
おっとその話はNGですよ神楽さん、そんなことよりも私には言わなければならないことがあります
「ん?なんだ?」
竜希さんがミコトさんを押し倒したシーンで反応した方。お兄さん怒らないから名乗り出なさい
「何かと思えばくだらなすぎる・・・・・」
いや、だって二人とも容姿はイケメンですので。そういった趣向に理解のある方なら反応してもおかしくないかなと
「だからと言ってなぜわざわざ名乗り出る必要があるというのだ・・・・・あまりふざけていると刈るぞ?」
ごめんなさい。謝りますのでそのバカでかい鎌はおろしてください(DOGEZA発動!)
「まったく・・・・・仕方のない主だな。今回は許してやろう」
あざっす。
「それはそうと、竜希の奴、随分と余計なことをしていたようだな」
まあ、竜希さんはそれだけ神楽さんのことを大切に思っていたということですよ。本当にもう大切に、ね。
「わかっているさ。だからこそあいつは今ミコトに憎しみを抱いているのだからな。本当に愚かな弟だ」
けど、そんな竜希さんのことを神楽さんも肉親として憎からず思っているのでしょう?
「まあ、唯一の家族として認めてはいるな。愚かではあるが」
どんだけ愚かいうんですか・・・・まあいいですけど。
「ところで、このタイミングでこの話を出すことに何か意味はあったのか?」
んー・・・・第0話を出すこと自体には意味はありますよ。内容的にはあまり関係ありませんが。
「というと?」
それはまあ・・・・・ちょうどいいですね。前回できませんでしたし、ここで次章予告しておきましょう。では読者の皆様、ご覧ください
地獄・・・・・黑の少女はそこにいた
地獄にあってもその少女の美しさは一切陰ることなく、その美しさゆえに地獄にありながら優遇されていた
優遇ゆえに退屈を持て余していた少女は・・・・・それに耐えかね地上へ赴く
赴いた先は幻想郷。その地で彼女は・・・・・最愛の少年を求めて渡り歩く
とうとう再会を果たす少年と少女・・・・・物語はどのように動き出すのか
次章 東方~儚き命の理解者~
再会~悉くに愛されし深黒~
とまあこのような感じですね。
「ふむ・・・・これは満を持してというやつか?」
まあそうなりますね。ですので・・・・次回からよろしくお願いいたします
「決まってしまったものは仕方がないな。読者諸君、せいぜい期待するといい」
さて、今回はここまでにしましょう
それでは・・・・・
「「次回もまたくるがいい(きてください)!!」」