今回は竜希さん&妖夢さんのお話!
「この二人のペアは結構人気だな」
「嬉しいね~」
それでは本編にいきましょう。
「本編どうぞ~」
「よし、今日のお手入れ終了です」
「お疲れ様、妖夢」
竜希が散歩に出ている間に、日課である白玉楼の庭の手入れをしていた妖夢。手入れが終わり軽く伸びをしたところで幽々子が声を掛けた。
「これが私の仕事ですので」
「いつもありがとう。そうだわ!いつも頑張ってくれている妖夢にご褒美をあげましょう!」
「そんなご褒美だなんて・・・・・私には勿体無いです」
「いいからいいから♪来て妖夢」
「ちょ、幽々子様!」
幽々子は褒美を貰うことを拒否する妖夢を半ば強引に部屋まで引っ張っていった。
「はい、ちょっとここに座って待ってて頂戴」
妖夢にそう言うと幽々子は棚に何かを取りに向かった。
(幽々子様・・・・・・ご褒美って何をくれるつもりなんえでしょうか?)
先程は拒否したもののいざ貰えるとなると嬉しいのであろう。妖夢は期待に心を躍らせていた。
「お待たせ。はいこれ」
幽々子が妖夢に差し出したのは・・・・・淡い紅が塗り重ねられた貝殻であった。
「これって・・・・・もしかして艶紅ですか?」
「ええ。妖夢に合いそうだからいつか渡そうと思って取っておいたのよ」
「でもこれってすごく良い物なんじゃありませんか?そんな物を私なんかに・・・・・・」
「たまにはお洒落も必要よ。早速つけてみましょうか」
「えっ!?ちょっと待ってください幽々子様!」
ニコニコと笑顔で口紅をつけようとする幽々子に妖夢が待ったをかける。
「遠慮なんかしなくてもいいのよ。これをつければ・・・・・竜希もメロメロになるかもしれないわよ?」
「・・・・・竜希さんが?」
竜希の名を聞いてピクリと反応を示す妖夢。
「だから・・・・・ね?」
「・・・・・はい。お願いします幽々子様」
このタイミングで竜希の名を出されたのだ。もはや妖夢に断る理由はなかった。
「それじゃあじっとしていてね」
幽々子は妖夢の唇に紅を塗り始めた。
「はい、終わり。確認してみなさい」
紅を塗り終え、幽々子は小さな鏡を妖夢に差し出した。
「・・・・これが私?」
鏡に映った自分の顔。それを見た妖夢は自分の目を疑った。
お洒落といっても所詮は口紅。そこまで大それた変化はないと妖夢は思っていた。だが実際は唇に彩が加えられただけで自分でもわかるくらいに普段とは違う印象を見受けられた。
一言で言えば・・・・・・紅をつけた自分の顔から妖夢は『女』っぽさを感じたのだ。
「見立て通りよく似合っているわ。これならきっと竜希も釘づけよ」
「竜希さんが私に・・・・・」
紅を塗られた唇に触れながら竜希に想いを馳せる妖夢。
その時・・・・・
「たっだいま~!!」
二人の耳に竜希の声が聞こえてきた。
「噂をすれば・・・・・ね。行くわよ妖夢」
「は、はい」
二人は竜希を出迎えに向かった。
「ただいまよ~むちゃん、幽々子さん」
「お帰りなさい竜希」
「お、お帰りなさい・・・・・」
二人が玄関に赴くと、竜希はいつものゆるい笑顔を挨拶をし、幽々子と妖夢も挨拶し返す。しかし、肝心な妖夢は顔を伏せてしまっており、竜希からはその顔が見えづらかった。
いざ竜希と顔を合わせるとなると恥ずかしいのであろう。
「はい、これお土産~。ミコちゃん特製のお饅頭だよ~」
「ミコト特製?博麗神社に行っていたの?」
「うん。ちょっとちょっかいかけにね~。まあ思いっきりどやされましたが」
苦笑いを浮かべながら言う竜希。だが実際は土産を持たされたことからそこまで邪険にされていなかったのであろう。
・・・・・ミコトはともかく霊夢がどうであったかは定かではないが。
「まあそれはともかくとしてこれをおやつにおやつにしましょう。ちょうどいい時間だし」
「だね~。それじゃあお茶の準備を・・・・・って、よ~むちゃん?なんで俯いちゃってるの?」
竜希は首を傾げながら妖夢に尋ねた。
「そ、それは・・・・その・・・・・」
「よ~むちゃん?」
一体どうしたのだろうと妖夢に近づいて確認しようとする竜希。
すると・・・・・
「お、お茶の準備をしてきますね!」
妖夢は大急ぎで台所に走っていってしまった。
(もう妖夢ったら・・・・・仕方がないわね)
走り去る妖夢の後ろ姿を見て、幽々子はやれやれといった様子で苦笑いを浮かべていた。
「美味い!さっすがはミコちゃん特製だね~。お茶によく合う~」
縁側で妖夢の準備したお茶とミコト特性の饅頭を味わう竜希が満足そうに言う。
「本当に美味しいわ。ますますミコトのことが欲しくなっちゃうわね♪」
「それ霊夢ちゃんに言ったらきっと夢想天生お見舞いされるよ~?」
「そうね~・・・・・霊夢はミコトにべったりだものね。まあ負ける気はないけど♪」
楽しそうに談笑する竜希と幽々子。その一方で妖夢はお茶にも饅頭にも手をつけずに未だ俯き気味であった。
(ど、どうしよう。やっぱりいざ竜希さんに見せるとなると・・・・・恥ずかしい。でもせっかく幽々子様が気を遣って付けてくださったのに・・・・・・やはりここは勇気をだして竜希さんに!)
妖夢が決意を固め顔を上げたると・・・・・
「よ~むちゃん?本当にどうしたの?」
妖夢のすぐ目の前に竜希の顔があった。
「みょん!?あ、あの・・・・・その・・・・・」
今さっき決意を固めたばかりであるがこれは予想外の不意打ち。妖夢の顔はみるみるうちに赤く染まっていき、激しく動揺していた。
「もしかして具合悪い?饅頭も食べてないみたいだし・・・・・・大丈夫よ~むちゃん?」
竜希が心配そうな表情で妖夢の顔を覗き込もうとすると・・・・・
「わ、私剣のしゅぶりをしてきましゅ!!」
妖夢の恥ずかしさが臨界点を突破したようだ。慌ててその場から離れてしまった。しかも思い切り噛むというおまけ付きでだ。
「よ~むちゃん・・・・・マジにどうしっちゃったんだろう~?」
明らかに様子のおかしい妖夢を見て頭に『?』を浮かべながら大きく首を傾げる。
「竜希・・・・・あなたそれ本気で言ってるのかしら?」
そんな竜希に・・・・幽々子が声をかける。普段のそれとは違う重い声色で。
「どういう意味かな~幽々子さん?」
対する竜希はいつもどおりゆるい雰囲気で聞き返す。しかしその笑みには・・・・・何か含みがあるように見えた。
「紫以上に掴めない人ねあなたは」
「それが俺の魅力ってやつだよ~」
「まあいいわ。ただこれだけは言っておくわ。妖夢を無下にし続けるというのなら・・・・・・殺すわよ?」
夥しほどの殺気を竜希に向けながら冷たく言い放つ幽々子。冗談で言っているのではないと直ぐにわかる。
「殺す、ね~・・・・・あはははっ!残念だけど幽々子さんじゃあ無理だよ~。俺を殺せるのは精々その気になったミコちゃんぐらいだ」
殺気をぶつけられているというのに、竜希はものともしていない。いつもの調子を・・・・・取り繕った仮面が崩れることはなかった。
幽々子では・・・・・・竜希の命を脅かすことはできないようだ。
「でもまあ・・・・・よ~むちゃんのことを無下になんてしないさ。あの子は俺の大切な・・・・・『求め』なんだからさ。というわけで行ってきま~す」
パクリと饅頭の最後の一口を口に放り込み、右手で幽々子にヒラヒラと手を振り、左手に妖夢への饅頭を持って竜希はその場をあとにした。
「ふふっ・・・・どうやら私が言うまでもなかったようね」
幽々子は満足そうに微笑みを浮かべ、妖夢の手入れした庭を眺めながらお茶を啜った。
「ふっ!はっ!」
竜希から逃げ出した妖夢は屋敷の裏庭で素振りをしていた・・・・・・まるで先程のことを忘れるためのように。
そうして一心不乱に刀を振るう妖夢の耳に、パチパチと柏手を打つ音が聞こえてきた。
妖夢が素振りを止め、音のする方に顔を向けるとそこには・・・・
「やっぱり良い太刀筋してるねよ~むちゃん」
ニコニコと笑顔を浮かべる竜希がそこにいた。
「た、竜希さん・・・・・」
竜希の姿を目にして動揺する妖夢。しかし先程まで素振りに熱中していたためか、先ほどよりは落ち着いている。
「でもまあ・・・・・ちょっち熱心しすぎだよ。ちょっと休んでこれでも食べなよ」
竜希は妖夢の分の饅頭を指しながら言う。
「あ、後でいただきますのでそこに置いておいてください」
「だ~め。そんなこと言うなら俺が食べちゃうよ~。ミコちゃん特性の超絶品お饅頭。餡子が甘すぎないですっごい美味しいんだよね~。こんなの早々食べられないよ~」
「うっ・・・・・」
竜希の話を聞き、妖夢は饅頭への欲求を抑えられなくなってきた。あそこまで言わせるのだから食べてみたくなるのは仕方がない。
しかしそれでもまだ妖夢の足が竜希の下へと進むことはなかった。
「はあ、全く・・・・・仕方ないね~」
苦笑いを浮かべながらポリポリと頭を搔く竜希。
その刹那・・・・・妖夢の目から竜希の姿が消えた。
「・・・・・え?」
突然のことに呆ける妖夢。
そして竜希は・・・・そんな妖夢の背後に回り込んでいた。
「はいよ~むちゃん。あ~ん」
「みょん!?」
妖夢の後ろから饅頭を口元に持っていく竜希。しかもご丁寧に妖夢に逃げられないようにしっかりと肩を掴んでいる。対する妖夢はまさかあの一瞬で背後に回り込まれていたとは思わなかったようでかなり驚いている。
「ほらほら~、早く食べないと本当に俺が食べちゃうよ~」
「は、はい・・・・・頂きます」
ここまできたら観念するしかない。妖夢はおずおずと差し出された饅頭に口をつけた。
「あ・・・・美味しい」
「でしょ~。もうホントお菓子作りにかけてはミコちゃん以上の奴はまずいないだろうね~。ほらほら、もう一口」
「・・・・・ん」
竜希に言われるがまま饅頭を食べる妖夢。羞恥心さえも忘れる程に饅頭は美味いようだ。
結局妖夢は竜希に食べさせられる形で饅頭を完食した。
「よし、それじゃあ饅頭も食べ終わったことだし本題に入りましょうか~」
饅頭を食べ終えた妖夢に、竜希がそう切り出した。
「本題・・・・ですか?それって一体・・・・」
「・・・・・よ~むちゃん」
竜希は妖夢の正面に回り込む。
そして・・・・・
「・・・・・この口紅。すごく似合ってるよ」
妖夢の唇に優しく触れながら、穏やかな笑顔を浮かべそう告げた。
「気づいていたんですか!?一体いつから・・・・・」
「いつからって言われればはじめからだよ。でもなんていうかさ・・・・・ちょっと恥ずかしくて中々言い出せなかったんだよね~」
竜希は若干頬を赤く染めながら言う。
普段表情豊かな竜希であるが、実はこうして赤くなるのは非常に珍しい。それこそ親友であるミコトでさえ見たことがないほどにだ。
「恥ずかしいって・・・・・ふふふっ」
「ちょ!?なんで笑うのさよ~むちゃん」
「すみません。でもなんだかそういう竜希さんって珍しくてつい・・・・・」
「もう~。でもまあ確かに珍しいかもね~。きっと俺をこんなふうにしてしまうのは・・・・よ~むちゃんだけだよ」
「・・・・・え?」
妖夢は竜希が最後に言った言葉の意味がわからずに、首を傾げる。
「あの・・・・竜希さん?それって一体どう言う意味でしょうか?」
「・・・・・さて、どう言う意味だろうね~?それじゃあ今日の分の修行に入りましょうか~」
「なっ!?誤魔化さないでください竜希さん!!」
「じゃあ俺に一撃入れたら教えてあげようかな~」
「ハードル高すぎますよそれ!!ですが・・・・・いいでしょう!竜希さんに一撃入れて聞き出してみせます!」
「あっはは~!やってみな~!」
互いに抜刀し、竜希と妖夢は刃を交え始める。
(・・・・・ごめんな妖夢。お前が俺に勝てたその時に・・・・・必ず話すから)
妖夢の斬撃を捌きながら、竜希は心の奥底でそんなことを思っていた。
竜希と妖夢
近いようで遠く、遠いようで近い二人の距離
ただ、両者の心には・・・・・確かな想いが秘められていた
あとがき座談会のコーナー!IN東方!!
今回はカップル部門1位となった竜希さん、妖夢さんの二人と進めていきます!
「よろしくね~」
「よろしくお願いします」
はいよろしくお願いします!それでは進めていきましょう!
「それにしても俺とよ~むちゃんがミコちゃんと霊夢ちゃんを抑えて1位となるとはね~」
「なんだかすごく恐縮です」
まあミコトさん、霊夢さんの話はよく出ますからね。それに比べて話が少ない二人が選ばれたっていうのもあるかもしれませんね。
「そっか~。それにしても口紅したよ~むちゃん本当に可愛かったな~」
「みょん!?突然なんですか竜希さん!」
「事実を言っただけだよ~♪」
「うぅ////」
というか竜希さん・・・・・ここまできたらもういっそ言っちゃったらどうですか?
「う~ん・・・・・そうだね~。今まで結構はぐらかしてたしね~」
「はぐらかしてた?それって一体なんですか?」
「俺がよ~むちゃん好きってこと」
「・・・・・え?ええぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「おおっ!超いいリアクション!」
ですね。
「ちょ・・・・え?竜希さんが私のこと・・・・?」
「そうだよ~。超好き。もちろん恋愛対象として」
「な、なななななな・・・・・・」
あ~・・・・処理落ちしちゃいましたね。
「本当に可愛いんだから~♪」
でもまあ・・・・・それならどうして好きなのに告白しないのかって話になりますがこれについても話してくれます?気になる読者もいるでしょうから。
「いいよ。告白しない理由は単純。俺の呪いだよ。俺は求めたものが手に入らない呪いにかかっちゃってるからね~。だから妖夢ちゃんのことが好きでも今はまだ求められないんだよ。この呪いが壊れるまでね」
それはつまり・・・・
「そ。よ~むちゃんに剣士として負けて『最強』でなくなるその時までは・・・・・ね」
・・・・・そうですね。
さて、今回はこれで締めにしましょう。
「はいは~い。ほらよ~むちゃん、しっかりして」
「はっ!?わ、私は一体・・・・・・」
「・・・・まあ覚えてないならそれはそれでいいけど。それよりももう締めるよ」
「あ、はい」
それでは・・・・・
「「「次回もまたきてね~(きてください)!!」」」