今回でとうとう風神録はフィナーレを迎えます。
ですが・・・・ラストに更なる超展開が待っておりますが。
「どうなるかは見てのお楽しみだね~」
「・・・・そうだな」
それでは本編にいきましょう。
「本編どうぞ!」
『本当にいいの早苗?』
現代を離れ、幻想郷に赴く直前に諏訪子が早苗に尋ねた。
『はい。私は守矢神社の巫女ですから。どこまでも神奈子様と諏訪子様に付き従います』
『でも・・・・もう現代には帰って来れないんだよ?そうなったらもう・・・・ミコトっていう子にも会えなくなる。ミコトって早苗にとって大切な人なんだよね?本当に・・・・・いいの?』
『・・・・・いいんです。もう・・・・いいんですよ』
神妙な面持ちで諏訪子が念を押すと、早苗は儚い笑顔を浮かべながら返事を返した。
『でも・・・!』
『よしなさい諏訪子。早苗が決めたことにこれ以上私達が口を出すわけにはいかないわ』
『神奈子・・・・・・うん。わかったよ』
『それじゃあ行きましょう。現世より隔離された世界・・・・幻想郷へ』
『はい。行きましょう』
3人は幻想郷へと移る準備を始めた。
(さようならミコト先輩。私の・・・・・愛する人)
「さて、それじゃあ決着もつきましたし宴会といこうか~!」
竜希は意気揚々と高らかに宣言した。
「竜希、お前な・・・・・空気読めよ」
「読んだ上でやっています!」
「「「「タチが悪い・・・・・」」」」
相変わらずの竜希の破天荒ぶりにミコト、霊夢、魔理沙、妖夢の4人は呆れ返っていた。
「ねえ早苗・・・・彼っていつもあんな感じなの?」
「ええ・・・・・竜希先輩は普段は破天荒な方ですから」
「私はアレに完敗したのね・・・・」
「神奈子・・・・心中察するよ」
流石に哀れに思ったようで、諏訪子は落ち込む神奈子を励ました。
「はあ・・・・・竜希、宴会は少し待て。先に今回の件で早苗達と話をつけてくるから」
「はいは~い。それじゃあ待ってま~す!」
「全く・・・・行こうか霊夢」
「ちょっと待って・・・・話をつけるのはいいけどあんた諏訪子に近づけるの?」
「・・・・・頼む霊夢」
「ええ。ミコトはここで待ってなさい」
霊夢はミコトに待つように言い、早苗達と今後のことを話合いに向かった。
「ミコトさん・・・・流石にそれはないです」
「・・・・カッコ悪いぜミコト」
「ミコちゃん・・・・・マジ情けないよ?」
「・・・・・ほっといてくれ」
珍しく皆に責められるミコトであった。
「・・・・・ということでよろしいですか?」
「ええ。それで構わないわ」
早苗が最終確認をすると、霊夢はそれを承諾した。
今回の一件は博麗神社に守矢神社の分社を建てるということで決着がつく形となった。
一見すると弾幕ごっこで敗北した守矢神社側が得しているように見えるが実際は分社を建てることによって参拝客が増え、結果的に博麗神社、守矢神社の信仰が共に増すという形になるので双方に利益がある。
霊夢自身も博麗神社の得になるのならとその案を引き受けたのだ。
「話は終わったみたいだね~。それじゃあ宴会宴会~♪」
「竜希さん・・・・宴会好きですね」
「騒がしいの好きですから!」
「それに関しては私も竜希に同意だぜ!やっぱりひと仕事終えたあとだから思い切り飲みたいしな!」
「そうね。不本意だけどこいつらの歓迎も兼ねて宴会を開きましょ」
霊夢、魔理沙は宴会を開くことに同意しているようだ。
「あの~・・・・すみません皆さん。宴会を開くこと自体は構わないのですが問題がありまして・・・・・」
早苗は申し訳なさそうに切り出した。
「ん?どうしたのさなちゃん?」
「えっと・・・・・宴会を開こうにもですね・・・・それだけの食料も飲み物もうちにはなくて」
「ああ、それなら大丈夫だよ早苗。酒も食料もここにある」
「え?」
ミコトの声に反応した早苗が振り返るとそこには沢山の酒と食料があった。
「これ一体どうしたのよミコト?」
「さっき紫が来て置いてった」
「ああ・・・・そういうことね」
紫の仕業だとわかり霊夢は納得した。
「その紫って言うのは誰ですか?」
「幻想郷を作った妖怪の賢者だ。と、そういえば去り際に今度改めて挨拶に来ると言っていたぞ。色々と話したいこともあるそうだ」
「あ~・・・・まあさなちゃんたちはまだ挨拶も何もしてない状態だからね~。今回の件もあるし色々とネチネチ言われるかもよ~」
「・・・・・覚悟しておいたほうが良さそうですね神奈子様、諏訪子様」
「・・・・そうね」
「・・・・先行き不安だね」
紫との邂逅を思い、不安に駆られる守矢一家。まあ自らの撒いた種なので自業自得であるが。
「まあそれはともかくとして宴会の準備しようぜ!紫のおかげで酒も食料も大量にあることだしな!」
「それじゃあ料理作ってくるか。早苗、台所まで案内してくれ」
「わかりました」
「あ、それなら私も・・・・」
「いやいや、俺に任せてよ~むちゃんは待ってなって」
妖夢も手伝いを名乗り出ようとするが竜希に待つように言われた。
「ですが・・・・」
「いつも家事頑張ってて大変でしょうよ。今日ぐらいいいじゃん」
「・・・・わかりました。それじゃあお言葉に甘えさせてもらいます」
「わかればよし。それじゃあ行こっかミコちゃん、さなちゃん」
「ああ」
「それではついてきてください」
早苗に連れられ、ミコト達は食料を持って台所へと向かった。
「それじゃあ乾杯!!」
「「「「乾杯!!」」」」
「・・・・竜希の音頭で始まることに関してはスルーなのか」
竜希の音頭とともに始める宴会。ミコトは一人だけ突っ込んでいたがこの時ばかりは誰一人聞いていなかったようだ。
「まあまあミコちゃん。そんな小さいことなんて気にしないで飲もう飲もう!」
「・・・・ああ。そうだな」
竜希に促され、ミコトは手にした盃に入った酒を一気に飲み干した。
「あの・・・・今更なんですけど私達未成年なのにお酒飲んでもいいんでしょうか?」
早苗が素朴な疑問を口にした。まあすでに早苗を除く全員が酒に口をつけてしまっているので本当に今更なのだが。
「大丈夫だぜ。幻想郷じゃ酒を飲むのにそんな制限存在しないからな」
「そういえばミコトもこっちに来たばかりの時に同じような事言ってたわね。お酒を自由に飲めないなんて外の世界はつまらないようね」
「いや、別につまらないというわけではないのですが・・・・・」
「早苗もしかして酒飲むのに抵抗があるのか?だったら無理して飲まなくてもいいんだぞ?」
一向に酒を飲もうとしない早苗にミコトが提案する。
「まあ確かに少し抵抗はありますが・・・・ですがせっかくですそ飲ませていただきます。ここで遠慮してしたら損した気分になりますので」
そう言って早苗は初めての酒を口につけた。
「どうだ早苗?」
「・・・・・・喉が焼けるみたいに熱いです」
「初めて飲んだのなら仕方がないですよね」
若干涙目になっている早苗を見て、妖夢が苦笑いを浮かべる。
「ふふっ、この程度で根を上げるなんて早苗はお子様ね」
「む・・・・ミコト先輩、もう一杯ください」
勝ち誇ったような笑みを浮かべる霊夢に挑発された早苗はミコトに酒を注いでもらおうと盃を差し出した。
「無理しなくてもいいんだぞ早苗?」
「無理なんてしていません!いいからください!」
「全く・・・・ほどほどにな」
やれやれと肩を竦めながらミコトは早苗の盃に酒を注いでやった。
「まあそのうち慣れると思うよ~。というか俺はてっきり二人に結構飲まされてると思ったんだけど違ったんだね~」
竜希は先程から物凄いハイペースで酒を飲み干していた神奈子と諏訪湖を見ながら言う。
「私達も結構外の世界の定説に染まってたからね。成人する前に酒を飲ませるのはまずいと思ったんだよ」
「結局飲むことになっちゃったけどね~。まあこれから早苗と一緒に飲めるようになったからいいけどね」
「なるほど。と、それはそうとお酒もいいけど料理の方も皆食べてよ~。俺とミコちゃん、さなちゃんの3人で腕によりをかけて作ったものなんだからさ~」
「安心しろ竜希。私はもう食べてるぜ」
「私も頂いています」
魔理沙と妖夢は自分のさらに取り分けた料理を見せながら言う。
「うおっ、いつの間に・・・・」
「それじゃあ俺達もいただくとしようか。霊夢も早苗も飲んでばっかりいないでちゃんとつまみも食べろよ」
「「わかってるわよ」(わかってます)」」
同時にミコトに返事を返す霊夢と早苗。仲は良くないが息はピッタリのようだ。
かくして一同は酒と料理に舌づつみを打つのであった。
宴会が始まってしばらくして、ある程度酒と料理を食べ終えた一同。
現在は・・・・・
「待ちなさい竜希!」
「わわわっ!勘弁してよ霊夢ちゃん~!」
「ははははっ!いいぞ二人共!もっとやれ!!」
霊夢が竜希を追い掛け回して、魔理沙はそれを煽っていた。
なぜこうなったかというと竜希がミコトを半ば強引に諏訪子に近づけようとしたからだ。
竜希としてはミコトが諏訪子を怖がって話もしようとしない状態を少しでもなんとかしようと珍しく純粋な親切心からやったことなのだが見事に霊夢の逆鱗に触れてしまったようだ。
魔理沙はそれをを見て完全に楽しんでいた。
「あ、あの・・・諏訪子・・・・さん」
霊夢が竜希を追い回す光景が繰り広げられる一方で、ミコトは諏訪子に声をかけた。
「どうしたのミコト?というか大丈夫なの?」
「い、今は命を感じないようにしてるから多少は・・・・・それよりもその・・・・・怖がったりしてすみません。嫌な思いをさせてしまいましたよね?」
ミコトは恐る恐ると諏訪子に尋ねた。
「別に気にしなくても大丈夫だよ。怖いものは仕方がないんだし」
「で、でも・・・・・」
「本当にいいから。別に私のことが嫌いってわけではないんでしょ?だからそんなに気にしないで」
「諏訪子さん・・・・・ありがとうございます」
「別にお礼を言うことでもないんだけど」
諏訪子はミコトの律儀さに思わず苦笑いを浮かべた。
「・・・・・ところでミコト、霊夢と竜希に関してはスルーでいいの?」
「あ、特に気にしなくてもいいですよ。竜希なんで」
「・・・・・竜希の扱いはそれがデフォなんだね」
「竜希さん・・・・本当にご愁傷様です」
霊夢に追い回される竜希に同情の視線を向ける妖夢。
同情するくらいなら止めればいいのだが・・・・・そんなことをすれば確実に巻き込まれて自分も霊夢に追い回されると思ったのだろう。妖夢は竜希に申し訳ないと思いながら傍観に徹することにした。
そんな妖夢に・・・・神奈子が声をかけた。
「妖夢・・・・ちょっといいかい?」
「あ、はい。なんですか神奈子さん」
「あんたは・・・・・竜希と懇意にしているだろう?」
「まあ・・・・・一緒に暮らしていますしそれなりには」
「・・・・・必要ないかもしれないけど一応言っておくよ。竜希のことはよく見ておいたほうがいい」
「・・・・・え?」
妖夢は神奈子の言っていることの意味が分からず、小さく声を漏らした。
「あの・・・・それはどういうことですか?」
「竜希のあの強さ・・・・・あれはあまりにも異常すぎる。私の知る限りでは歴史上あいつよりも強い人間はいなかったし・・・・・未来永劫あいつよりも強い人間は生まれないと思うわ」
神奈子は竜希を見つめながら言う。
「・・・・そうでしょうね」
妖夢は神奈子のいうことを素直に肯定した。
妖夢はわかっているのだ。紫黑竜希の強さというのは・・・・軍神でさえも屈服させ、さらにはその気になれば世界そのものをも斬るほどに強大なことを。それ故に竜希を越す力を持つ人間が今後一切現れることはないと、現れてはいけないということを。
「でも・・・・だからこそわかるの。間違いなく竜希は・・・・・宿命を背負っている。あれだけの力を持つに値するほどの宿命を・・・・・人が背負うのにはあまりにも重すぎる宿命を」
(宿命・・・・・それってまさか紫黑の使命?)
妖夢は神奈子の言う宿命が紫黑の使命となにか関係があるのではないかと考えた。
「あの神奈子さん・・・・神奈子さんは昔飛天御剣流の使い手と戦ったことがあるんですよね?」
「ああ。あるよ」
「それってつまり紫黑の人間と戦ったことがあるということですよね?紫黑のこと・・・・・何か知っていることはありませんか?」
妖夢は神奈子ならば紫黑のことを何か知っているだろうと思い尋ねた。
「・・・・それが竜希の宿命と何か関係があるとあなたは思うの?」
「はい」
「そう・・・・・私も別に紫黑の人間と親しいわけじゃないから詳しいことを知っているわけではなわ。でも・・・・彼等は自分達のことをこう称していたわ。『我々は―――を殺す一族だ』ってね」
「!?―――を殺す・・・・一族?」
神奈子の話を聞いて妖夢は理解した。
紫黑の・・・・竜希の背負う大きな宿命を。
(竜希さん・・・・あなたは・・・・)
「ふう・・・・夜風が気持ちいな」
宴会がお開きになり皆が眠りについた頃、ミコトは守矢神社の縁側で煙管を吸っていた。
「ミコト先輩?」
そんなミコトに・・・・早苗が声をかけた。
「早苗・・・・こんな夜更けにどうした?」
「ミコト先輩の姿を見かけたから気になって・・・・そういうミコト先輩こそ何を?」
「見ての通り一服しているところさ」
ミコトは手にした煙管を早苗に見せながら言う。
「煙管ですか・・・・・神楽さんの真似ですか?」
「確かに吸い始めたきっかけは神楽の真似さ。でも今は自分の娯楽の為に吸っているようなものだよ」
「そうですか・・・・煙管もお酒も嗜むようになっただなんてなんか大人って言う感じでかっこいいですね」
「別にかっこつけで嗜んでいるわけじゃないんだけどな。それにしても・・・・・こうして二人で話をするのは本当に久しぶりだな」
「そうですね。前に二人で話をしたのは・・・・・もう2年も前のことでしたもんね」
早苗は昔のことを懐かしむように思い出しながら言う。
「ミコト先輩・・・・・今幸せですか?」
「どうした突然に?」
「答えてください・・・・・幸せですか?」
「・・・・まあそれなりにはな。幻想郷の皆は俺のことを拒絶しないし・・・・なにより毎日楽しいしな」
ミコトはふっと微笑みを浮かべる。
「そうですか。なら・・・・・ミコト先輩には今好きな人は居ますか?」
「・・・・は?」
早苗の口から出た質問はあまりにも予想外のものであり、ミコトはキョトンとする。
「どうですか?」
「いや、まあ・・・居ない・・・かな?」
(あれ?なんで俺・・・今断言しなかった)
なぜはっきりと居ないと言い切らなかったのか?ミコトは自分自身のことであるにも関わらず理解できずにいた。
「・・・・私には居ますよ。好きな人」
「え?」
「昔から好きでした。ずっとずっと好きで好きで・・・・・恋焦がれていました」
「さな・・・・え?」
「幻想郷で移ると決めて・・・・・もう会えないと思っていました。もう二度と会うことはないと思っていました。でも・・・・・また会うことができた。そして今、私の目の前に居る」
早苗は微笑みを浮かべながらミコトを正面から見据える。
「早苗・・・・それって・・・・・」
「・・・・・ミコト先輩」
少しずつ・・・・少しずつ早苗の顔がミコトに近づいていく。
そして・・・・・
スッ
早苗の唇とミコトの唇が重なった。
「ミコト先輩・・・・・あなたを愛しています」
ミコトに告げられた早苗の秘めたる想い。
物語は・・・・・動き始める。
あとがき座談会のコーナー!IN東方!!
今回は早苗さんと二人で進めていきます!
「よろしくお願いします」
はい。それでは進めていきましょう。
さて、早苗さん。今回ミコトさんに告白しましたね。
「はい・・・・気持ちを抑えきれなかったので。やっぱりいけないことだったでしょうか?」
そんなことありまえんよ。好きな人に想いを伝えることがいけないことだなんてありえません。
ただ・・・・
「きっとミコト先輩は・・・・・色々と悩んでしまうでしょうね」
ミコトさんは特殊な境遇に身を置いていますし・・・・なにより今は自分に向けられた愛に気がつくことができずにいますからね。
「でも私はミコト先輩に直接伝えてしまったから・・・・・」
まあ・・・・・ミコトさんでも考えざるを得なくなるでしょうね。
そして次回以降の特別編はそのお話となります。
「特別編?どうして特別編なんですか?」
次回以降の章はある方とのコラボとなりますからね。
「コラボ・・・ですか?」
ええ。その辺りは恒例の次章予告で少し説明します。
ということで次章予告をして締めにしましょう。
早苗から想いを告げられたミコト
ミコトはどうすればいいのか・・・・どうすべきなのかと思い悩む
そんなミコトを紫は・・・・・別次元の幻想郷へと送り出す
別次元の幻想郷にありし神無月神社・・・・・
そこでミコトが愛に気付けぬ理由が明かされる
次章 東方~儚き命の理解者~ 特別編
神無月神社~過去と未来を見通す巫女~
「「次回もまたきてください!!」」