とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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今回はヒットとの戦いを描いています。
次回あたりからご都合主義で原作と違う目的で「力の大会」編に入っていく予定です


『抹殺指令』

最近、ピオーネがそわそわとしている。

結婚記念日には速い。

俺の誕生日でもない。

そしてピオーネの誕生日でもない。

ゲンサイやターサの誕生日もまだまだ。

 

「何かあったのか?」

 

とりあえず聞いてみる。

すると溜息のようにつぶやく。

 

「最近、誰かに尾行されている気がするわ」

 

その気配が消えているからその場所に行ってみても見失ってしまう。

かと思えば監視されているような視線。

足音もないがそれでもぴったりと付かれているらしい。

 

「ここ、最近そう言った行動は……?」

 

整理をすると思い浮かぶことはある。

しかし、それは解決したはずの内容。

それに普通ならば決してあり得ない。

 

「お仕事についてきてくれる?」

 

時折、こういったモデル業のようなこともするようになった。

若々しい見た目とスタイルがその道の人たちから注目されている。

今日はどうやら……

 

「何年振りかしら……」

 

懐かしむような、うっとりとした顔を浮かべる。

10数年ぶりに俺も見て息を呑む。

相変わらず似合っている。

 

「お母さん、綺麗!!」

 

ゲンサイが手を叩いてほめる。

ターサも見とれている。

 

「花嫁衣装を着ないといけない仕事でして……」

 

カメラマンが言ってくる。

どうやら結婚式会場のパンフレット。

その為に着てもらいたかったらしい。

 

「それではいきますよ」

 

そう言って数十枚、撮影をする。

ポーズは一定。

角度などの工夫だ。

 

「ありがとうございました」

 

写真を撮り始めて2時間ほど経った。

どうやら、最高の一枚の撮影ができたのでこれにて中での撮影は終了。

 

「今度は式場の外での撮影となります」

 

そう言って案内で外へ出る。

快晴とはいいがたく、中の撮影の間に天気が変わっていたのか曇り空になっていた。

そして、ピオーネの言っていた気配を俺も感じる。

 

「それではいきますよ……」

 

そう言ってカメラマンがカメラを構えた瞬間、空気が凍った。

そして崩れ落ちるようにカメラマンが倒れる。

 

「……ターサ、ゲンサイを連れて早く家に帰るんだ」

 

この気配。

そして瞬く間にカメラマンを気絶させる手腕。

ピオーネに一撃を掠らせるだけの力。

 

「殺し屋が遠路はるばるここまで来るのね」

 

花嫁衣裳のまま構えるピオーネ。

どう考えてもハンデだ。

着替えた方がいいだろうに。

 

「誰が依頼人だ」

 

黙って見過ごすわけもない。

俺もすでに全力の状態でヒットを睨む。

 

「それを言ってしまうと商売が成り立たん」

 

そう返してくると不思議なことが起こる。

風景すら変わっていた。

そして感じるのはまるで時が止まったような錯覚。

心臓に一撃を喰らう。

 

「がっ……」

 

後ずさりをして何とか一命をとりとめる。

ふらつきそうになるがこれは先日の挌闘大会のものとはまた違う。

人を殺せる技だ。

 

「これがお前の本当の力か……」

 

息を吐き出して再度構える。

じりじりと近づくがいつもとは全く違う。

まるで自分からヒットの制空圏に入っているような感じだ。

間合いがその分広いということだろう。

 

「今の一撃で決まったかと思ったがな」

 

見たところ、お前と俺は互角。

バーダックさんがほんの僅か抜きんでている。

そしてその後ろをカカロット達がついているような状態。

破壊神の7割強が今の俺達。

怒りで爆発したら同格かもしくは超えてしまう事もある。

 

そして、いまだにあれ以降戦闘していないが、ピオーネがやはり未知数。

どれほどの強さなのか、そのベールが解かれる。

 

「こっちが相手でしょ?」

 

花嫁衣裳のまま、飛び蹴りを放つ。

着替える時間すらもったいないのか?

それを頭を下げて回避するヒット。

 

「フンッ!」

 

ヒットが一撃を放つ。

それをピオーネは……

 

「ほいっ!!」

 

掴んでいた。

時飛ばしでもないが最大の速度を持っている一撃。

そしてそのまま一本背負い。

 

「普通にやっては意味が無いようだな」

 

そう言って時飛ばしから一撃を放つ。

俺が無防備に喰らった一撃。

その一撃に対してピオーネは対応しようとする。

 

「そこっ!!」

 

腕を交差して受け止める。

そして合点がいったように頷く。

 

「少なくても死角あたりは気を付けておけばいいわね」

 

首筋だったからだろう。

だがヒットの攻撃が一撃で終わるわけもない。

 

「ぐっ!?」

 

速射砲のように連続している。

ため込むのではなく小出しにして徐々にタイミングをずらす。

受け止めきれずに後ずさり。

対応が速く、相手に合わせないのはこの宇宙のサイヤ人にも見習ってほしい。

特にカカロットには。

 

「死角が無理ならば正面突破も可能だ」

 

まだ時間を飛ばす事が出来る。

そう言って力を込めている間。

もう一つの気配。

この雰囲気はよく知っている。

なるほど……

 

「破壊神が依頼主とは」

 

半魚人のような見た目の破壊神。

不敵な笑みを浮かべている。

 

「わが宇宙の英知を返却したとはいえ、一度盗んだのだ」

 

その償いである。

そう言ってじろりと見る。

そして口を開く。

 

「それでなくとも、たとえ全王様が許しても、バンヤの民なんぞ百害あって一利なし」

 

お互いの戦いが伯仲しつつある。

時飛ばしへの完全な対応はまだだが徐々に対応する速度、身のこなしの向上。

やはり俺よりも強い運命にある。

 

「このジーンが破壊神の威光をもって壊す!!」

 

手をかざして『破壊』をもくろむ。

しかし……

 

「させるかぁ!!」

 

前蹴りで蹴り飛ばす。

行動を中断する。

こっちを睨んでくるが問答無用。

 

「自分の大事な人をむざむざとやらせるほど愚かじゃない」

 

全力で向かっていく。

最近は神の類との勝負ばかり。

いい加減飽き飽きしていたところ。

 

「だが、こうなったら話は別だ!!」

 

蹴りを放つ。

それを波が凪ぐように受け流す。

そこにカウンターで人中へ拳を放ってくる。

その一撃に合わせて頭突き。

危険性に気づいたのか拳を止めて距離をとる。

急所を狙う合理性。

相手の攻撃を利用する打算的な思考。

破壊神の中でも素晴らしい存在ではある。

 

「一つ質問だがあんたはビルス様より強いのか?」

 

だが、どうも気になる。

ビルス様と同格ならば俺の攻撃なんて効かないと誇示できる。

そうすれば精神的に追い詰めて『破壊』をやることもできたのに。

 

「破壊神の中でも最強があいつだ、それと同格が双子故にシャンパ、つく天使は強さに直結はしないがな」

 

苦々しいというか悔しさがにじみ出ている。

やはりすごい人だったんだな。

 

「そうかい……」

 

腹に一撃を加える。

緩やかに急加速もなく。

殺気すら滲ませない明鏡止水の一撃。

 

「がっ……」

 

相手に合わせたカウンターもこうなると難しい。

究静極技の世界。

静かさを追い求め、技を極限に研ぎ澄ませた。

受け止めるより早くただ吸い込まれるように。

 

「今の俺でもまだやりあえるってわけだ」

 

ビルス様の9割が普通の破壊神のレベルだとしたら肉薄できる。

依頼を取りやめてもらう。

そして……

 

「『破壊』をさせない」

 

手四つとなって指を砕きに行く。

力勝負でも負けていない。

 

「ムムム……これほどの使い手がビルスが担当する宇宙にいたとは」

 

そうは言うが力を抜いてこっちに押し込ませる。

そしてブリッジの状態から俺を蹴りあげていく。

 

「直情的な動きだな、嫌いではないがやりやすいものだ」

 

そう言って一気に飛び上がって上に陣取る。

しかしそれでは意味がない。

 

「はっ!!」

 

瞬間移動で消える。

どこに出ると思う?

 

「そこだ!!」

 

後ろに向かって蹴りを放つ。

だがそこには居ない。

何故ならば……

 

「フンッ!!」

 

顔面に一撃を加える。

相手はなぜ喰らったのか。

それを一瞬で理解して笑っていた。

 

「まさか、消えた後に同じ場所へ移動していたとはな……」

 

結局は疑心暗鬼となって後ろに蹴りを出した分、無防備となった。

これで破壊神を相手に二発もの攻撃を当てている。

そしてピオーネの方にも進展があったのか、ヒットが地上で片膝をついていた。

 

.

.

 

かなりの手練れなのは分かっていた。

こっちの死角に潜り込んでの一撃は実力に違わずすさまじいものだった。

こうして向かい合えばわかるが、彼の拳は剃刀のように鋭くなったり、岩のように重くなったり。

技術や力の入れ方で変幻自在になっている。

 

「今のあの子と互角ぐらいと思えばいいのかしら?」

 

実力としてはあの対抗戦でも随一。

それに10倍界王拳を使ったブルーの悟空君でも勝てなかったものね。

まあ、自分から降参したからだけど。

 

「それは買いかぶりすぎだ、あれから成長はしているがあいつの練度には劣る」

 

とは言っても隔絶された次元ではないはず。

だからあの攻撃を今の私では完全に対応できない。

死角と予想して最初の『時飛ばし』は掴んだ。

あの練度ならばどこに打ち込んでもダメージになる。

あまり初めのやり取りは参考にならない。

 

「はっ!!」

 

時が止まったように自分が回避することのできない一撃を放つ。

それを受け止めて即座にその場所へ蹴りを放つ。

しかし……

 

「なっ!?」

 

すり抜けていく。

まさか今見ている姿は幻影なのかしら。

 

「残念だったな」

 

その言葉と同時に心臓に一撃を叩き込まれる。

後ろに飛びのいたことで威力の軽減をした。

それでも死神が命を奪う影が見えた。

あまりにも恐ろしい攻撃。

一撃必殺。

殺し屋の名は伊達じゃない。

 

「なるほど……きわめて短い時間を移動することで生じた空間」

 

位ながらも状況整理を行う。

0.1秒の単位で時の流れを移動する。

それによって生まれたいわばパラレルワールド。

さらにそれを積み重ねることで長い時間、その空間に身を置く。

今攻撃をした時に映っていた姿は、移動前の存在。

 

「実体はその『時飛ばし』の中にいる」

 

残像ではないが実体でもない。

気を付けるのは初動から次に移行する瞬間。

 

「飛んだあとの姿を捉えない限り、そちらには攻撃も当てられない」

 

それが悟空君がやった先読みのようだけど……。

こんなだだっ広い場所。

間合いの事。

それを踏まえると参考にならない。

 

「つまりお前は俺の攻撃を防ぐ事で精いっぱいだ」

 

そう言って攻撃を仕掛けてくる。

頭を下げて回避をするも、次の瞬間には踵落としが襲って首筋を狙う。

 

「ぐっ!!」

 

前転をして回避をするが片膝をつく。

それを好機と見たか連続で攻撃を仕掛けてくる。

瞬間移動で距離をとる。

 

「はっ!!」

 

『時飛ばし』で狙ってくるのは心臓だけではない。

ありとあらゆる急所。

死に至らしめる事の出来る場所がねらい目。

 

「むっ……」

 

回避をしたけれど目を突いてきた。

貫通すれば脳まで達する。

危ないわ。

 

「フンッ!!」

 

放った瞬間はどうしても実体が浮かび上がっている。

それに対して裏拳を放つ。

 

「無理だ」

 

『時飛ばし』で回避される。

絶対防御にも等しい、攻防一体の技能。

でも手ごたえはある。

あと、コンマ数秒速くすれば当たるわ。

 

「仕事をさせてもらう」

 

そう言って拳を振るう。

速度自体は問題ない。

それを受け止めて殴る瞬間……

 

「罠だ」

 

『時飛ばし』でまたもや避けられる。

気配は後ろ。

次に狙う急所は……

 

「フンッ!!」

 

ぞわりと寒気がした。

即座に振り向いて腕を掴みにいく。

 

「腎臓狙いなんて怖い怖い」

 

掴むことはできなかったけれど軌道を逸らした。

相手への攻撃を放つが手応えがあった。

今は掠っただけ。

次は間違いなく当てる。

 

「こいつ……」

 

そう言って攻撃を仕掛けてくる。

これで何度目になるだろうか。

しかし反応ができるようにはなっている。

風景が変わっていた。

そして実体が来る気配、空気の震え。

それは雄弁に攻撃のタイミングを教えていた。

 

「そこっ!!」

 

私はそれらの情報から攻撃の軌道を完璧に読み取る。

そしてついに……

 

「貴方が強いお陰で……」

 

『時飛ばし』の攻撃を掴む。

そして腹に蹴りを入れる。

 

「ぐ……」

 

再度『時飛ばし』で攻撃を仕掛ける。

でももはや……

 

「私はさらなる高みに至ったわ」

 

『時飛ばし』への完璧な対応。

反応して攻撃を受け止める。

そして前蹴りでまた腹に一撃を加えた。

 

「これが…破壊神が出し渋った隠し玉か」

 

出自が全宇宙の存亡にかかわるから隠しただけなんですけどね。

そう言って片膝をつく。

私が『時飛ばし』に対応したこと。

さらに追撃で一撃を喰らってしまったヒットさん。

閃きはあるようだけれども、今この場で許すほど弱くはない。

 

しかしそんな中、一つの影がヒットさんの前に立った。

 

.

.

 

「あれは……シャンパ様!!」

 

俺は影をよく見る。

ジーン様を睨んでいる。

まあ、他宇宙の破壊神が自分の宇宙の人間に依頼しているんだからな。

 

「悪いが依頼は破棄してもらうぜ、ジーン」

 

そう言っていざという時に備えて構える。

ヴァドスさんも降りている。

 

「しかしその女は……」

 

そう反論しようとするともう一つの気配。

これは分かる。

ビルス様が俺の前に割り込むようにして手を伸ばしている。

 

「全王様がいいとおっしゃったんだ、お前、全王様に逆らうつもりか?」

 

そう、ビルス様が言うと苦々しい顔をするジーン様。

するとくるりとこちらに背を向ける。

 

「依頼の破棄はしておこう」

 

諦めたように言って後ろを向く。

去り際に俺を見ていた。

一言、ぽつりとつぶやく。

 

「第七宇宙のガタバルか、覚えておく」

 

何が覚えておこうだろうか。

結局あの後は縋りつくような勝負にしかなっていなかった。

気弾以外の技を全て切り返されてしまう。

そしてそのまま芸術的なカウンターの餌食。

カウンターをさらにカウンターで返したりもしたが、相手がうまくいなしたりして効果的な一撃にはなりえなかった。

ただ、一つだけ確信があった。

 

「自分でも言ってましたけどビルス様よりは弱かったですよ」

 

そう言うと、口元を笑みの形に浮かべてこっちを見る。

自分は凄い破壊神なんだぞと胸をはっている。

 

「そりゃ、そうだ」

 

こうなれば直々に稽古をつけてもらわないといけない。

今すぐにでもだ。

そう思い、頭を下げていた。

 

「自分に稽古をつけてください……お願いします!!」

 

その姿を見て頭に手を置かれる。

顔をあげるとそこには穏やかな顔があった。

 

「任せろ、僕が全力でお前を強くしてやる」

 

その言葉が自分にとって次の戦いにおいて重要だと確信できた。

そして見える未来。

それはあまりにも恐ろしい戦い。

何が何でも止めなければならないもの。

震えを鎮めながら深呼吸で落ち着くのだった。




ガタバル、破壊神の愛弟子になる。
ちなみに消滅した宇宙のキューブの残り5つも考えてはいます。
ジレンみたいに破壊神を超える逸材なんて普通は見つからないものですよね。
本作の第七宇宙の最強メンバー考えると平均値が非常に高そう。

指摘などありましたらお願いします。

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