とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

83 / 133
『復活のF』編は終わりです。
悟空達の修行とかを抜いてしまったり
乱戦から試合形式に変えた分、すっきりになってしまいました。
次回からは第6宇宙対抗戦までの日常回でいこうと思います。


『黄金と真紅』

「ハアッ!!」

 

互いに示し合わせたように拳を出す。

全力で放つ拳。

それは当たれば致命傷になるほど。

そんな一撃を同時に放つ。

 

「シッ!!」

 

残る片方の拳で弾いて回避する俺。

それに対してフリーザは……

 

「フッ!!」

 

上体反らしで避ける。

そしてその勢いでもう一度拳を振るう。

 

「ちっ!!」

 

首を捻って衝撃を逃がす。

それと同時に顎へアッパーを放つ。

 

「残念!!」

 

叩き落して互いに向き合う。

そして次は蹴りを放つ。

 

「甘い!!」

 

蹴り足を掴んで関節技を極めにくる。

その前にぐるりと転んで技から抜け出す。

 

「ヒャー!!」

 

尻尾を振ってくるのそれを掴んでぐるぐると回す。

そして上空へと投げる。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

灼熱の鳥型の気弾が射出される。

相手を包み込むように向かっていく。

 

「『ゴールデン・デス・クラウン』!!」

 

金色の王冠型の気弾が射出される。

その一撃がぶつかり合う。

両方、威力が同程度だったため霧散するが苦い顔だ。

 

「格闘技術に大きな隔たりは無く……」

 

構えて深呼吸をする。

相手のリズムを読みながら次の動きを考える。

じりじりと間合いが詰まっていく。

 

「気弾の力もさほど変わらない……」

 

フリーザも構えている。

ここまで考えは一緒なのだ。

次に何をするかはわかる。

 

「シッ!!」

 

こっちがジャブを放つ。

一撃、二撃と小気味いい音を立ててフリーザに当たる。

フリーザも距離を詰めてジャブを放ってくる。

 

「ハッ!!」

 

こっちが腕を掴もうとすると拳を開いて掴まれる。

そのまま引っ張られて裏拳を喰らう。

 

「くっ!!」

 

そしてこっちに接近をする。

インファイトで主導権を取りにいく。

一歩も引く気は無し。

 

「望むところ……」

 

拳を放つ。

回避されてしまう。

そしてフリーザがカウンター気味に放ってくる。

 

「フンっ!!」

 

こっちも回避をする。

そしてお返しとばかりに逆の手でカウンターの一撃を放つ。

いいタイミングだ。

 

「ヒヤリとしましたよ……」

 

しかし手応えは無い。

どうやら皮一枚だったようだ。

フリーザが僅かに速く回避をしていた。

 

「今度は当てる」

 

そう言ってもう一度拳を振るう。

それを首を捻って勢いをいなす。

しかもそれと同時に拳を出していやがる。

こいつ、戦いの中で真っ当に『成長』しているのか!?

 

「くっ!!」

 

上体を反らして回避する。

よくよく考えれば当たり前だ。

こいつは同等の相手がいないからそれを振るった事がない。

今、最適な戦いをするためにその修正をしている状態。

つくづくセンスの塊だ。

 

「戦闘力が上がったわけではないからましだけどな」

 

戦闘における最適化というのは無駄を減らすこと。

つまり動きのキレの向上。

隙の減少。

技を出すタイミングの熟知。

勝負所を知る嗅覚。

 

「手が止まりましたね、次はこっちからいきますよ!!」

 

そう言って一気に飛ばしていく。

風を切る音と拳が同時に出ている。

様子見のジャブなんてものはもはや必要なし。

それを雄弁に語っている。

 

掌で受け止めてカウンターを放つ。

しかし相手も同じく掌で受け止める。

鏡合わせのような動き。

実力の拮抗は進展を見出すことがない。

 

「ハアッ!!」

 

こうなったらあまりやりたくはない事なんだが……

この一撃を食らってその隙に一撃を叩き込むしかあるまい。

そう決めて歯を食いしばった。

 

「がっ……」

 

わざと喰らうがその威力はすさまじい。

意識を持っていかれそうになる。

だがその仕返しにこちらも顔面に拳をめり込ませる。

 

「ぐはっ!!」

 

両方とも顔が跳ね上がる。

そして一気に回避やカウンターといったものが必要ではなくなった。

今まで、拳を振ってきたが俺たちの戦いはそういったものじゃない。

本来はなんでもありのはずだ。

ようやくできたお互いに取って技が当てられる瞬間。

それを逃す鈍間じゃあない。

 

「こっちも分かりますよ!!」

 

またもやクロスカウンター。

両方の拳の威力が最大限まで活かされる距離。

距離が僅かに開いた瞬間、俺は延髄蹴りを仕掛ける。

 

「ふふっ……」

 

フリーザが不敵な笑みを浮かべながらピクリと反応をする。

まず俺は飛び蹴りを放つ。

フリーザはそれを受け止めずに回避する。

だがその肩に俺が手を乗せれば……

 

「読み切れていますよ!!」

 

そう言ってフリーザが俺の腕を掴んでこっちの動きを止める。

でもこれならばどうだ?

俺はブランコのように体を振って顎を蹴りあげる。

 

「ぐっ!!」

 

顎を蹴られてフリーザがふらつく。

そして懐に入った俺は怒涛のラッシュを始める。

左前蹴り。

右肘打ち。

左鉄槌。

右下段蹴り。

左鉤突き。

右上段蹴り。

右正拳。

左中段蹴り。

右前蹴り。

左肘打ち。

回数にして十。

フリーザを容赦なく殴打する。

しかし…

 

「フフフッ……」

 

不敵な笑みを浮かべている。

フリーザは全てのラッシュにおける急所を外していたのだ。

その為、ダメージをそれほど負ってはいない。

無防備の状態にしても芯をずらすだけはできたか。

 

「流石に今のは痛かった……痛かったぞー!!」

 

急所を外してダメージも少ない。

しかし痛みは感じていた。

だからこそ逆襲が始まる。

 

「だああああああ!!」

 

防御はできているが俺よりは遥かに多い連打。

防御が崩れれば一気にこちらの体力を奪い去るほどの数。

じりじりと腕が下がっていく。

 

「だが……」

 

蹴りを出した瞬間、尻尾で絡めとって殴る。

これで再び距離ができる。

実力がやはり拮抗している。

殴り合いでもやり方が違うだけで行きつく先は同等の結果のみ。

きっと長期戦をしても埒があかない。

 

「はああああああ……」

 

気を高めて大技に移行する。

すると同様にフリーザも気を高める。

拮抗すると行きつく考えもまた一緒。

 

どのようにすれば相手よりもいい形になるかが重要になる。

距離で言えば1ミリでもいい。

時間ならばコンマ1秒。

重さなら1グラム。

そんなレベルのせめぎあいにしかならない。

そしてその積み重ねが勝敗を分ける。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

こっちがアホウドリの気弾を放つ。

すると向こうは人差し指を上に上げる。

おなじみの技だ。

 

「『ゴールデン・デスボール』」!!

 

またもや技がぶつかり合う。

押し返していくが相手も負けていない。

気を緩めるとお終いだ。

 

「くそー!!」

 

誰かの声が聞こえる。

光線銃で脇腹を射抜かれる。

 

「がっ……」

 

その気の緩みがフリーザの技の勢いを止められなくする。

俺は気弾に呑み込まれていく。

ダメージは甚大なものだ。

 

「ソルベさん……」

 

立ち上がってフリーザに向き合うとするがフリーザは自分の軍の兵士に視線を向けている。

それは冷徹そのもの。

手を向けてソルベという奴を浮き上がらせる。

 

「貴方は即刻……」

 

ぐぐぐと力を入れていく。

すると徐々に萎んでいく。

声を発せなくなっていた。

 

「死刑です」

 

ぐしゃりと握りつぶすように殺した。

逆鱗に触れてしまったようだ。

 

「申し訳ありません、馬鹿な部下のせいで勝負に水を差されました」

 

そう言ってこっちに向き直る。

気にしなくていい。

こうなったらこっちも躍起になる。

余計に気合が入るというものだ。

現に今、さっきの緊迫した状態より精神状態は充実している。

 

「では続きを……」

 

ギラリとした視線で睨み付ける。

言い切る前に耐え切れずに前に出る。

 

「貴方もサイヤ人ですからね、闘争本能に火が付きましたか」

 

腕を交差してこちらの一撃を受け止めるがその腕を支点に跳躍する。

そして背中に回って拳の一撃を叩き込む。

 

「ぐあっ!!」

 

首を掴んで肩に落とす。

頭を揺らしていく。

ぐらつくフリーザに前蹴りを放つ。

受け止めずに後ろに下がっている。

 

「時間を稼がさせるとでも?」

 

瞬間移動で懐に忍び込み頭突きを見舞う。

さらに顎へ肘打ちを入れる。

腹部に拳を打ち込んでいく。

 

「くっ!!」

 

反撃の拳を避ける。

避けてはみたが違和感が少しある。

なんだ、この違和感は……

 

「ふっ!!」

 

蹴りを放ってくるがそれを回避の際に膝を踏み台にする。

そのままカウンターで膝蹴りを叩き込む。

この蹴りにも違和感があった。

 

「はああっ!!」

 

インファイトで一撃を叩き込みに来る。

しかし……

 

「グフッ!!」

 

フリーザの攻撃にカウンターがピタリとはまる。

右の拳に左のカウンター。

 

「うぐぅ!!」

 

左の蹴りに右のカウンター。

これで違和感の正体がわかる。

最初の時からあのソルベが俺を撃つまで拮抗していた。

しかし今は……

 

「ピークを過ぎていやがるな?」

 

弱点があったのだ。

それはこの形態の長期的な継続ができないという事。

こっちよりも速く時間が来てしまった。

 

「そんな訳が……!!」

 

否定をして攻撃を振るうも、またこっちのカウンターを食らう。

こいつ……気のコントロールできてないのか?

そうだとしたら納得だ。

あれだけの膨大な気を制御せず、常に垂れ流し。

消費量が凄まじい勢いである。

 

「言っとくがこれから先はお前が地獄に足を踏み入れるような羽目になるぞ」

 

今までの勝負とは全然違う。

俺がソルベの光線銃で集中力を切らし、お前の気弾をモロに喰らった。

そこで開き直ったからお前は俺に攻撃を当てられた。

しかしここからは一方的に殴られるだけ。

拮抗はしない。

 

「それはどうでしょうかね?」

 

俺が虚言を言う性質ではないというのはフリーザも分かっている。

しかし、ここでひいては率いる者のメンツが立たない。

だから俺が倒して明確にしないといけないのだ。

 

「やってみればわかるだろうよ……」

 

そう言って拳を振るう。

回避をするが速度も落ちている。

後ろをとって膝蹴りを背中にぶち込む。

 

「ぐあっ!!」

 

吹っ飛んでいくがそれを追い越して地面へ叩きつける。

フリーザは受け身も取れていない。

 

「ぬぐぐぐ……」

 

胸倉を掴んで放り投げる。

それを追いかけてタコ殴りにする。

腹部に拳を叩き込む。

くの字に曲がれば顔面に一撃。

背中に肘打ちをしたら尻尾を掴んで振り回す。

そのまま岩盤へと叩きつける。

 

「ぐはっ!!」

 

血を吐いてぐったりとする。

そこへラリアットを叩き込む。

あばら骨が折れただろう。

グロッキー状態になったフリーザに照準を合わせて攻撃を仕掛ける。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

岩盤に向かってアホウドリが飛翔する。

その太い嘴が、鋭い鉤爪が。

フリーザの戦意を啄み、戦える肉体を引き裂こうとする。

 

「ぬっ!!」

 

しかしフリーザが易々と技を食らう訳もない。

目を見開いて技を受け止める。

そしてフリーザは息を吸い込み……

 

「うがあああああ!!」

 

気合を吐き出し、こっちの技を相殺する。

無傷とならずに体中からブスブスと煙を立てている。

しかしもはやゴールデンの限界は近い。

次の気弾で終わらせる。

その為に気を極限にまで高めていく。

 

「勝利したいという戦いへの『熱情』、このままでは負けてしまうという『冷静』!!」

 

ボロボロの中で未だに維持をし続けている。

倒れ込んでもおかしくないほどのダメージを負っているというのにだ。

しかも纏っている気の量が徐々に変わっているのがわかる。

 

「いわばそれは『炎』と『氷』という相反するもの、それをまとめ上げるようにしてしまえば……」

 

尽きて減っているわけではない。

気が徐々に体の中に入っていく。

やはりこいつは……

 

「気の制御はできるのではないでしょうか?」

 

天才というほかあるまい。

そう言って終わろうとしていたゴールデン状態が再び眩く光る。

だが、分かっている。

それは燃え尽きる前のろうそく。

敗北という終着点に行きつく前の最後のあがき。

ならばそれに全力で応えよう。

 

「『ゴールデン・デス・クラウン』!!」

 

戦いの初めの時に放ったものよりも遥かに大きな王冠。

この一撃の後には何も残さない。

疲労によって変身は解けて倒れ込むであろう。

精根全てを捧げた一撃。

 

それに応えるように俺も捧げよう。

いつもならば掌の部分にしか灼熱は無い。

全力で放ったらどうなるのかは未知数。

なぜなら『一撃に全てを捧げる』なんてのはこれほど実力をあげてから一度もない。

ビルス様の時は激昂していたからどうなっていたかは覚えていない。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

肩口まで灼熱の気が立ち昇る。

それを全て吐き出すように放つ。

いつもより遥かに大きな灼熱の鳥が羽ばたく。

王冠を包みこんでいく。

どろりと溶かしていくような錯覚さえある。

やはり気の制御ができたとはいえピークを過ぎ去っていたのは紛れもない事実。

威力に大きく差が出てしまったようだ。

 

「ぐぐぐ……」

 

王冠を食い破られてしまい受け止める形となったフリーザ。

これで呑み込めなかったら引き分けなんだけどな……。

俺もきっと動くことは叶わない。

 

「ががが……」

 

力いっぱい押し込もうとする。

じりじりとフリーザが後ずさっていく。

そして徐々に黄金の輝きを失っていく。

限界が来たのだろう。

 

「だああああ!!」

 

最終形態の見た目に戻った瞬間、力を振り絞る。

一気に灼熱に呑み込まれていく。

そのまま天に向かって羽ばたいていく灼熱の鳥。

 

フリーザは気絶していた。

それを見てギニューさんが背負って治療室に送ってゆく。

これで戦いは終わったか……

そんな事を考えているとカカロットとベジータがビルス様とウイスさんを連れてきていた。

 

「やはり僕の目に狂いはなかったようだな、今の所はお前が一番強いというわけだ」

 

そう言って頭を撫でられる。

しかしフリーザはまだ発展途上だと言う。

すると笑みを浮かべながらこう言ってきた。

 

「僕が直々に鍛えてやってもいいぞ、遊び相手にはなるだろう」

 

ウイスに稽古をつけてほしければ、本来せめて僕ぐらいないと付いてはいけないしな。

冗談か定かではない事を聞きながら安堵のため変身が解けて座り込むのだった。




弱点は原作通りまだ克服しないままの襲来となっていました。
試合の中で戦いの勘を急激に進化させたり、気の制御をマスターという化け物ぶりを披露しましたけどね。
ソルベは犠牲になったのだ、真剣勝負の犠牲にな……

指摘などありましたらお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。