とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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ヒーローズネタを何度も使っている件について。
援軍についての説明は後書きで行います。
ガタバルの強さは体ボロボロでスケールダウンしてます。


『魔人の秘策と援軍』

「痛い……」

 

体中が軋んでいる。

筋肉痛と頭痛。

その痛みが体を支配している。

戦う事もままならない。

食事も当然無理。

 

「今の俺は痛みの奴隷だな」

 

そう言ってうつぶせの状態のまま眠ろうとする。

 

「すまなかった」

 

サラガドゥラが謝る。

どうやら魔術で強化したのは完全に限界を突破させた状態。

その力はかつて戦った破壊神の力の半分、

つまりアザラの像を使ったときの自分と同格。

 

「段階を踏ませて徐々に限界を超えていかないといけなかった」

 

あの場面はそれしかなかったんだろう?

だったらそれが最善だ。

それをとやかく言うのは間違いだ。

 

「あっちはどうなってると思う?」

 

あっちというのは魔人ブウと悟天たちの戦い。

到着と同時に『精神と時の部屋』での戦いが始まったらしい。

 

「あの天才のチビ共なら超サイヤ人3のフュージョンをしているかもな」

 

ピッコロが言ってくる。

おいおい……フュージョンで合わせるのもかなり難しいのに2年とはいえいけるのか。

 

「カカロット達は?」

 

すると返答が帰ってくる。

どうやらミラやダーブラと戦っているようだ。

 

「しかし、これで相手陣営も崩壊か」

 

メチカブラのあれも一回使ったら次まで怨念の貯蔵に時間がかかるだろう。

あんなにも大量の奴をやろうにも何度もやるとそれこそさらに災厄をまき散らす。

 

「だがあの邪神像を使ったツケって何なんだ、サラガドゥラ?」

 

そう言えば聞き忘れていた。

ただ事ではない力を手に入れた代償ってのを知りたい。

 

「身の丈に合わんことをすればアザラの怒りを買う、仮にも神の依り代だからな」

 

肩をすくめて言ってくる。

おどけた風にしたいようだが危ないという印象は薄れていないぞ。

 

「邪神でなければまだ人の信仰への不義理から天罰で済んでいたが…」

 

雷撃程度で懲りる奴じゃあないけどな。

そういって手に力を集中させている。

一体何がしたいんだ。

 

「あの馬鹿が邪神にしたことで怨嗟の声や怨念や邪悪のエネルギーをダメージとして受け続ける」

 

精神的にも肉体的にも厳しい目に合うのか。

まあ、自業自得だな。

 

「あいつレベルを破壊神の半分並みの力にまで引き上げたダメージなんて考えるだけでも悍ましい」

 

あの倍ほどある破壊神。

聞いた話だがあの状態を恒常的に出せてもあれが限界値。

基礎値をさらに鍛えて突破する以外ないのだろう。

 

「良くて廃人かもしれんな」

 

溜息をつきながら言ってくる。

良くてそれとか、本当に安易に力がないものが使うものじゃないな。

 

「悪い場合は?」

 

おおよそ予想はつく。

ただ確信がない以上はもしかしたらという期待がある。

これ以上の事態の悪化はなくなってほしいからだ。

 

「邪神像の供物として呑み込まれる」

 

やっぱりそういう奴か。

溜息をついて殺菌で戦っていた方向に首を向ける。

そうなると実質残りはトワ、ダーブラ、ミラの3人。

だがそれ以外に正体不明の存在。

ヒルデガーンを倒した相手。

それが悪かどうかで結果が変わる。

 

「あの二人は寝てもらっているのか?」

 

ヒルデガーンによって縛り付けられていた勇者兄弟。

奴等は戦う事も出来ず疲労困憊。

その治療のためここで休んでいた。

 

「仙豆も俺たちが使ったもんな」

 

ブロリーが頬をかく。

俺とお前が二人そろって相手と死にかける戦いをした。

 

「まあ、それじゃなくても後がどうなるかだ」

 

3の弱点を知っていない面子が多すぎる。

ブロリーの奴は例外だからほっといてもいいだろうが。

そんな事を言っていると魔人ブウが出てきた。

 

「ゴテンクスから逃げてきたか……」

 

ピッコロが呟く。

ボロボロのまま出てきやがった。

だが僅かに空いた瞬間、気がないのを感じる。

 

「18号とクリリンを殺しやがったな」

 

そう言って体の痛みを押して立ち上がる。

甘えている場合じゃねえ。

全員、連戦で精神力と体力が削られている。

 

「二人の仇は打たせてもらう!!」

 

魔人ブウに殴りかかる。

超サイヤ人3でだ。

4になると限界がきたら今の状態なら意識を本能が断ち切る。

 

「ふん!!」

 

受け止めて投げられる。

だが腰を掴んでいく。

 

「ぐっ!?」

 

道連れにされることを嫌がったのか投げを途中でやめた。

不死身なのにな。

 

「おまえ、なかなかやるな……」

 

そう言ってドロリと溶ける。

そして俺の足に来る。

嫌な予感がして、跳躍をして避けようとする。

しかし……

 

「がっ!?」

 

ずきんと痛みが走って跳躍が低くなる。

すると縄状になったブウが巻き付いていく。

 

「ぐぐぐ……」

 

腕を中に入れることで首絞めを防いでおいた。

だが締め付ける力はかなり強い。

ぎりぎりと音を立てている。

 

「このままタコみたいにグニャグニャにしてやる」

 

にやにやと笑いながら力を強めていく。

ブウだけを殴られる状態でもない。

仕方ないな。

俺は神殿から飛び降りる。

舞空術を使うのはスレスレだ。

チキンレースの始まり。

 

背中から落ちてもブウが下敷きになるだけ。

だったらどこかでこの状態を解除する。

 

「ぐぐ……」

 

勢いがついているのにまだまだ地面は見えない。

どうする?

流石のお前でもこれをむざむざと受けたくはないだろう。

 

「やめだー!!」

 

そう言うと解いて自分は舞空術で浮く。

こっちもそれに倣って舞空術でお互いが向き合う。

 

「頭を使ったようだが、こういった馬鹿馬鹿しいやり方もあるんだぜ」

 

あんな真似をしなくてもどろりとした瞬間から、回避に専念する。

今回の動きの悪さから少しやり口を変えた。

 

「チビどもから逃げたようだが……」

 

超サイヤ人3フュージョンは凄いが元の戦闘力がどれほどなのか。

天才とは言うが潜在能力だけ見ると悟飯がナンバーワンだし。

 

「俺もかなり強いぞ」

 

そう言って蹴りを放つ。

手のひらで受け止められる。

それを軸にして回転。

 

「シッ!!」

 

延髄切りを決める。

だがブウも易々とは食らわせない。

喰らう瞬間に前にステップして軽減する。

 

「チッチッチ……」

 

こっちには効かないぜと言いたいようだ。

この疲労度で長時間運用不可というのはしんどいな。

毎回思うが仲間をやられた後に、頭に血を登らせて後先考えないのはダメだ。

 

「お前を潰すだけがいい事じゃあない」

 

何かこいつには隠れたものがある。

それは俺ではわからないが。

 

「ヌヒヒヒヒ……」

 

腕を伸ばして巻き付いて来ようとする。

それを避けると同時に伸ばしていた足が脇腹を捉える。

それを振りぬかれてすっ飛んでいく。

 

「くっ!!」

 

着地して拳を振るう。

回避されてカウンターを食らう。

 

「ぐはっ!!」

 

気が萎み始めている。

体の軋みがよりひどくなっていく。

3でも全力で挑めないとはな。

 

「おまえよわくなっていくな、きえていけ」

 

そう言って手を前に出す。

こうなったら……

 

「お前を塵一つ残さない手はあるんだよ……」

 

体を震わせる。

気を延々と高めていく。

生命力をつぎ込むように。

 

「おれはつまらないあいてはいいんだ」

 

そう言うと腹にきつい一撃が入る。

意識が飛びそうだ。

頭に頭突きを食らう。

そのまま腰からすくい上げられて投げられそうになる。

 

「どりゃあー!!」

 

力を振り絞って投げを返す。

地面に全力で放り投げた。

 

「たりないなぁ……」

 

地面スレスレでブレーキをかける。

仙豆があればなあ。

万が一に備えてデンデを隠しているから回復できなかったし。

 

「おわりだ……」

 

そう言って気弾で上空に打ち上げられる。

意識が遠のいていく。

それを受け止める影。

 

それはあまりにも意外な存在だった。

 

「なんでお前が俺を助ける……」

 

そう言った直後、上空からフュージョンのチビとピッコロが来ていた。

ピッコロに向かって投げる。

それを受け止めていた。

 

そいつは指をぱきぱきと鳴らして魔人ブウを見る。

そして向かっていった。

 

.

.

.

 

おおよそ久しぶりの地球。

それだというのにこの荒れ具合。

その元凶とガタバルの戦いを見ていた。

本調子ではない肉体でもあそこまで拮抗したようにできるのは凄い。

 

「助けるか……」

 

死なれると困る。

そう思って追いついて受け止めていた。

驚いたような顔をしている。

相変わらず失礼な奴。

 

「お前、どうやってここに?」

 

そう言って近づいてきたピッコロに投げて渡す。

さ……次はこの桃色の魔人。

宇宙単位が危なくなるような相手。

あの邪神よりも危ない印象。

 

「始めるか」

 

そう言って向かっていき、頬を殴る。

なかなかの反応だけど回避準備が遅い。

 

「はっ!!」

 

腹を殴って気功波を放つ。

それは貫通をするが手応えがない。

すり抜けたような印象。

 

「ムムム……」

 

モニュモニュと体が動いて再生をする。

不死身のような相手。

細胞を一つ残さず消し飛ばすくらいの火力がないと厳しい。

疲労とか溜まりそうにもない。

 

「シャー!!」

 

相手が接近をする。

速度が上がっている。

 

「ぐっ……」

 

肘の一撃を受け止める。

すると風車のように回って踵落としを放ってくる。

 

「ふっ」

 

後ろに下がって避ける。

すると次は体を弾丸のようにして突っ込んでくる。

矢継ぎ早のラッシュ。

 

「ぬぬぬ!!」

 

力で受け止めるが顔をこっちに向ける。

こっちが本命か。

受け止める事を予測するなんて予想外だ。

 

「があっ!!」

 

口から気功波を放つ。

それを右手で防ぐ。

踏ん張って歯を食いしばり耐えきる。

左手で薙ぐように気功波を上下に放った。

 

「ぐああああっ!!」

 

折角、策を凝らしたにもかかわらずノーダメージ。

それどころかカウンターで左半身を気功波で吹き飛ばされる。

 

「おまえ、なにもの?」

 

再生した魔人が怒りの形相のまま言ってくる。

聞かれては答えないわけにもいかない。

 

「あれから10年……新たなる自我に芽生えた、『ラエンカ』」

 

あの邪悪な二人が混ざってできてしまったのが私。

しかし宇宙に放り出された後、ビッグゲテスターに漂着。

あの二人の悪運だったのかもしれない。

 

そして徐々に肉体と精神は引っ張られて行き、彼らはどこかへと消えた。

そこで産声を上げたのが私。

女性とはどういった存在なのかさえも自我としてあいまいだった。

それをビッグゲテスターの力で学習をしていき、常識や善悪を知った。

すると同時に自分を生み出したきっかけの存在に吐き気を催した。

正直苦しかった。

 

「謝って許されなくても私の道はこれなのよ」

 

混ざり合って生まれた原因の二人の悪行はゲテスターの機能のおかげで知っている。

それは罪として大きすぎるもの。

償いとしてはおかしな話だがやっていない自分がサイヤ人として戦い続ける。

善悪を知るがゆえに、ヒーローのように。

自我が芽生えた10歳の少女ともいって差し支えない存在、純粋な思い。

邪悪という負の存在が二つまじりあい計算式のように正の存在へとなった。

 

「貴方を倒して地球の平和を、宇宙の平和を返してもらうわ……変身!!」

 

そう言いながらポーズをとって全開パワーで相手をする。

さて……覚悟はOK?

 

.

.

 

「なぜ、あの極悪人が俺たちの味方を?」

 

ピッコロが呟く。

きっと考えられるのは……

 

「精神と肉体の不一致であいつらの意識は埋没、もしくは消滅した」

 

男性から女性へと変わった。

それどころか二人の人間が入っていたようなもの。

異常な状態が正常に戻るにつれて奴らの意識は薄れていったんだろう。

 

「ナメック星で戦ったのが『ラエンカA』としたら、そのAが消滅して新しく女性一人の自我として生まれたのがさっきの『ラエンカB』」

 

そう言うとピッコロも納得する。

そう考えたら少しでも女性言葉で溶け合えていたあいつらの異常さが際立つ。

 

「別人という事か……しかし」

 

ブウを相手にあそこまで戦えるとはな

そうピッコロが呟いて頷いた。

かなりの修練を10年で積んだのだろう。

怠け者だったあいつらとは雲泥の差だな。

 

「だがブウの奴も何か企んでいやがる」

 

あの目は死んではない。

まだ、策を練りながら勝ちを探している。

確かデブを吸収してあれになったんだよな……

 

「ああああああっ!!」

 

ブウが叫び始める。

さらに気を高めて震え始める。

そして……

 

「自爆しやがった……」

 

本気でやれば地球ごと吹っ飛ばせるだろう。

あえてそれをしなかった。

再生できるから逃避の為に自爆したのだろう。

気を感じないし一体どこへ行きやがった。

 

「やつの狙いが何かだ」

 

誰かの吸収ならば疲労困憊の俺は吸収する必要はないだろうがピッコロやゴテンクス。

神殿に行けばスパーニやブロリー、ピオーネもいる。

 

「逆に容赦なくやりそうなやつらの巣にブウも行かんだろう……」

 

細胞一つ残さずに消し去るとかいうサラガドゥラもいる。

絶対、俺がブウの立場なら神殿はいかない。

そうなると狙いは……

 

「カカロット達か!」

 

ダーブラたちの戦いに乱入してその隙に吸収。

超サイヤ人3が2人も吸収されたらきついぞ。

 

「痛みがあっても関係ない!!」

 

集中をして瞬間移動をする。

するとカカロット達の近くに出る。

目の前にあったのは拮抗した展開だった。

 

「ぐっ!!」

 

ベジータは3と2を行き来するようにして燃費を抑えながら戦っている。

知らないやつが多いと思っていたがいち早く気付くのはやはり天才か。

 

「ていや!!」

 

それと違いカカロットは常時3で戦っている。

多分気づいていないのだろう。

ピッコロに戦う準備をするように目配せをする。

 

「なんでパパは3を使わないんだよ!!」

 

トランクスが言う。

まあ、気づかないのも無理はないか。

手を抜いている訳じゃあないんだ。

 

「実はトランクス、あれは長く持たないんだ、それをベジータは知っているからああしているんだよ」

 

そう言うとトランクスは『パパってすごいんだ……』と呟いていた。

本来、一番早くなれる俺が教えないといけなかった。

それを自力で探し当てるんだからな。

 

「ばあっ!!」

 

そんな事を考えていると魔人ブウが来た。

強さも変わっていない。

やはり策を練っているのか?

 

「おれもまぜろぉ!!」

 

そう言ってカカロット達の所へ突撃する。

しかし無策にしか見えないこの特攻。

 

「邪魔だ!!」

 

当然のようにダーブラに阻まれる。

そのダーブラへ拳を振るう魔人ブウ。

だが奴の方が武器や魔神化で強くなっている。

 

「ふん!!」

 

拳をいなして一瞬で剣を振るう。

スパンという音が聞こえ、頭の触角を切り落とす。

お菓子にする光線を出せるんだったな。

 

「戦いにむやみに水を差すんじゃない」

 

そう言ってダーブラに続いてミラが腕を引きちぎる。

それを無造作に投げ捨てた。

 

「くくく……」

 

にやりと笑う。

作戦通りだという様に。

再生もせずに不敵な笑みは一体なんだ?

そう思って注視するとピクリと動いて僅かに溶けたのが見える。

 

「気を付けろ、あの触角が策の一つだ!!」

 

頭についていた触角がグネグネと動いてアメーバのように変化して飛びかかる。

ピッコロがカカロット達を庇おうと動く。

俺はトランクス達を庇おうとする。

しかしその標的は違っていた。

 

「ぐっ……」

 

なんとダーブラを標的としていたのだ。

しかもそれだけにとどまらない。

 

「むぐぐっ……」

 

ミラまでも餌食となる。

よくよく考えたらこいつらに仲間意識はなかった。

 

「いただきー!」

 

そう言って引き寄せると肉巾着が体に付着して混ざり合う。

唸り声をあげながらグニャグニャと変化をする。

 

「フフフッ、これは貴様らを抹殺するための進化だ」

 

体は巨躯となり、さらに赤い縁取りや顔へ刺青が入ったようになっている。

邪悪な気は一気に膨れ上がった。

 

トワが憎しげな顔をしている。

いつの間に回収していたのか、邪神像を持っている。

何をするつもりなのだろうか?

 

しかしその思考より速くブウが動き出す。

俺が蹴り飛ばされる。

ピッコロが槍で腕を突きさされる。

 

「はあっ!!」

 

カカロットとベジータの頭を瞬時に掴んで打ち付け合わせる。

強くなっていやがる。

超ゴテンクスとラエンカも向かおうとする。

魔人決戦は新たな仲間とさらなる脅威への変化で第2ラウンドが始まった。




邪悪の塊だったはずのラエンカの援軍。
これについて話の中にもありますが
『合体直後』こそ混ざって一人になっていましたが、
女性の体というずれや混ざった意識が維持できず崩れていき、どこか奥底か片隅で埋没しました。
その結果、記憶は保持したまま新しい自我の『ラエンカ』が生まれました。
それは漂着したビッグゲテスターの教育などで常識や善悪を知ってしまい、『善』を成すために自分の元になった存在の償いをしているという事です。

指摘などありましたらお願いします。

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