とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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この物語のヒロイン登場回です。
純粋な恋愛というよりも戦って芽生えていく愛をイメージしています。


『惑星探訪:セッコ・オロ 誰よりも強い女』

惑星ティメを出て2ヶ月ほど過ぎて、俺は目的地である『拳闘惑星』セッコ・オロに到着した。

下ろすところは正式な場所が有って非常に助かった。

今まではそんな設備がない穏やかな星。

もしくは無人の星だったからな。

 

「こんなに賑やかなのは初めて見るな……」

 

セッコ・オロに着くと目を見張った。

四方八方見渡しても人、人、人。

今までとは比べ物にならないほどの多さだった。

ズンやピタルとは違う華々しい街。

人の笑顔の多さや満ち足りた表情の数はナメック星やヤードラット星もあったがその比ではない。

 

「建物もいろいろな種類がある」

 

演劇場、酒場、宿屋と言ったように人の娯楽や居住を満たすものも有る。

人がそう言った場所に入っていったりしている。

そして、一際目を引くのは町の中心部にある大きな闘技場。

これこそが名前の由来と言われている。

 

「まぁ、折角来たんだから試合とか見ておきたいよな」

 

そしてあわよくば選手になりたい。

やはり修業をした以上、試すために戦ってみたいのだ。

 

俺は何も持たないで正面入り口から入ることにした。

しかし、警備員の人たちに阻まれてしまう。

まぁ、当然の結果ではあるのだが。

 

「チケットはどうした、もしくは入場料を払わないと中には入れないぞ」

 

確かにそんな施設はあったが、チケットを俺は買っていない。

なぜならば……

 

「金は無いです!!」

 

自信満々に言い放っているが、冷静に考えてみると情けない事この上ない。

しかし、いまだに俺の年齢は7歳。

年齢制限があるため、金を稼ぐ方法がないのが事実だ。

 

「じゃあ、残念だが入れるわけにはいかないな」

 

そう言われるとヒョイと持ち上げられて、軽く置物を置くように門から遠ざけられた。

むしろ痛い目に合わなかっただけでも良かったな。

 

「追い出されたが、力ずくで入ってみよう」

 

もう一度正面口に行って、警備員に止められるもそのままぐいぐいと力任せに押して入ろうとする。

しかし、この時うっかり体格差を忘れていた。

警備員が面倒くさそうな顔をして、ヒョイっと持ち上げるとそのまま投げられた。

 

「悪用したらあいつらの気は分かっているから後ろに瞬間移動すればいいだけなんだけど……」

 

ここはあえて戦闘民族らしく人目についてしまうが相手を気絶させるか。

本当に年が足りていれば金銭的な部分も解決はできるんだが……。

構えて三度目の突入を試みる。

 

「いい加減にしろぉ!!」

 

流石の警備員も怒っている。

しかしどうしても入りたいのだ。

だから俺は……

 

「ごめんなさい!!」

 

そういって最大速度で接近をして躊躇う事もなく喉に一本拳の拳を叩き込む。

相手が一つ短く呼吸を吐き出すと、それを最後に気絶をしてしまったのか崩れ落ちてしまった。

その横にいた人も怒りの形相で武器をふるうが、その一撃を避けて飛び膝蹴りを決める。

二人を瞬く間に昏倒させた後、声をかけても目覚めないかどうかの確認をする。

俺は確認を終えて堂々と闘技場に入り込んでいった。

 

.

.

 

「俺がこの闘技場を仕切っている、コロってもんだ」

 

今、俺の目の前には筋骨隆々の異星人がいる。

あの後に観戦をしているといきなり肩を叩かれてついてこいと言われた。

その先が支配人の部屋だった。

多分これから説教されるのだろう。

確かに警備員を気絶させて無賃で観戦していた。

 

「なんでわざわざ声をかけてくれたんですか?」

 

しかし、それをせずとも警察に突き出せばいい。

こちらには侵入していたという負い目もある。

それなのにわざわざこのような場所に連れてきている。

そうなるとなぜなのかという部分で気になる。

 

「そりゃあ試合を楽しそうな目で見ているんだ、そんなもん気になってしまうじゃねえか」

 

この目で直接見る強い者同士の戦いには心躍る。

自分ならどう戦うと考えたり、相手の隙が分かった瞬間、自然と笑みが浮かんでしまうのだ。

 

「戦っているのを見るとやっぱり熱い気持ちになりますよ」

 

そういって握り拳を作る。

そんな俺を見てコロさんが肩をたたいてきて満面の笑みでこう言った。

 

「戦いたいんだったらうちのもんになりな、入団テスト受けさせてやるからよ」

 

いきなりな話だが戦えるのなら、これ以上楽しい環境はないだろう。

しかしそれでも悪い事をやったのにいいのだろうか?

 

「あの程度はガキの悪戯で済むもんだ、警備員も内心は笑っているだろうよ」

 

そう言って大きな声で笑う。

それはそうと入団テストとは一体何をやらされるのか?

 

「難しい事じゃねぇ、この機械を使って数値を測ってどういった処遇にするか決めるんだよ」

 

そう言ってコロさんが顔につける機械に俺は見覚えがある。

まさかここでお目にかかれるとは。

 

「なぜ、この機械がこの場所に?」

 

あの時ラディッツさんが顔に付けていた機械がこんな所に有るなんて驚きだった。

しかもその手に入れた経緯がもっと驚きだった。

 

「なんか一回下っ端みたいなやつが観戦中に乗り込んできたから返り討ちにしてやった」

 

その下っ端でも機械を持っている時点で強さは1000は超えているだろう。

それでも倒せる当たりここのレベルの高さを思い知る。

 

「その時奪ったんだよ、これを」

 

そう言って横のボタンを置いて計測を始める。

想像以上に高くなっている数値を告げられて俺は驚いた。

 

「3287か……入団時の数値としては歴代2位だな」

 

この口ぶりからすると初めから高い状態で入団した人もいるという事。

しかし俺が2位という事は、才能に満ち溢れたような人材ばかりがここにいるというわけではない。

この闘技場で生きるか死ぬかの修羅場を、幾度となく潜りぬけて強くなっていった人たちだ。

 

「1位はどれくらいなんですか?」

 

ここで俺も戦い続ければさらに強くなれるだろう。

少なくてもそう思えた。

 

「確か6694を計測したな」

 

その数値を聞いて驚く。

初めの時点から倍以上の開きがある相手、いったいどんな人なんだ?

とても気になるな。

 

「そいつは今この星全体のチャンピオンだよ、今計測したらどれくらいあるんだろうなぁ」

 

.

.

 

入団テストはOKだったが、今のこの闘技場におけるチャンピオンがどういう奴か見せてやる

そう言って観客席に俺は連れてこられていた。

警備員の人には話を通してもらって、謝罪をしたことで穏便に済ませることができた。

心の広さに感謝するばかりである。

 

今回の挑戦者はいかにもパワータイプだというような体型だ。

薄い青色の肌をしていてこれでもかというほどに筋肉の鎧を見せつけている。

気合の入った雄たけびを上げていると次はチャンピオンが入場してきた。

その姿に俺は一瞬で目を奪われていた。

 

薄紅色の肌、腕も足も長く長身。

腰まである美しい銀髪が風にたなびいている。

整った顔というのだろうかとてもきれいな人だった。

しかし年齢は驚くことにプロフィールの実況で14歳と言っていた。

つまり肉体が早熟という事で整っているのだろう。

 

「試合始め!!」

 

何かしら円盤状のものを打って大きな音が鳴り響く。

それと同時に挑戦者が一目散に駆けていく。

動き自体は速いが、この勢いを逆に利用される事も有るだろう。

 

もし、カウンターを出されたりしたら一気に大きなダメージを負う事になる。

試合が始まって早々にそんな事になれば、劣勢からの巻き返しとなってしまう。

 

そうなると挑戦者は厳しい展開を強いられる。

勝つ為にはか細い勝利の糸を何度手繰り寄せないといけないのか?

考えるだけで気が遠くなりそうなものだ。

 

「どりゃあ!!」

 

挑戦者は太い腕を振り回すように一撃を繰り出す。

あまりにも隙が多すぎるな、そのまま突き出した方が速いだろう。

そんな大振りが当たるのは互いに疲れを見える場面あたりだと俺は思っている。

チャンピオンはその攻撃を軽々と避けて、その拍子に挑戦者の腕を掴んで背負い投げをする。

 

「せいっ!!」

 

挑戦者を豪快に地面へと叩きつける。

受け身を取らせる暇もない早業に大きな音を立てながら、挑戦者は背中をしたたかに打ち付ける。

背負い投げじゃなくても、カウンターでどこかしらに叩き込めただろう。

だが挑戦者が体勢を整える時間を利用するために、あえてこっちを選んだといった所か?

 

「ぐっ……」

 

挑戦者が呻いている間に、チャンピオンの追撃が始まる。

勢いのついた強烈な蹴りを挑戦者の腹に叩き込む。

挑戦者の腹の中心から何かが破裂するようなとんでもない音が聞こえた。

それだけチャンピオンの蹴りの威力が凄いという事だ。

この一撃は先ほどカウンターをやった直後でも決まっていただろう。

しかし繰り出す際に挑戦者が倒れこんでいないと、カウンターにより向上した威力で少し吹き飛んでしまう。

今回の様に追い打ちをかける際、迅速に行うための判断だったのか。

 

「おえぇ……」

 

あの一撃が重すぎたのか、挑戦者が胃液を吐き出している。

そんな状態でも息も絶え絶えになんとか起き上がる。

しかし起き上がったその瞬間を狙いすましたかのように、チャンピオンの膝蹴りが顔面にめり込んでいた。

無防備な状態であんなもの喰らってしまったら、体勢を整える暇もなく崩れてしまう。

 

「ぬぁ……」

 

そして挑戦者がよろめいた瞬間にチャンピオンが連続エネルギー弾を叩き込んでいる。

挑戦者は両手を交差してガードを固めることでその連射を受け止めている。

しかし一息つく暇もない連射で徐々に挑戦者のガードが下がってしまう。

そしてその挑戦者の防御の体勢が崩れた瞬間、チャンピオンは一気に接近をして鼻面に頭突きをお見舞いする。

 

「ちっ……」

 

挑戦者が何とか逃れようと後ろ向きに倒れこもうとした瞬間に、空いた脇腹へ突きを入れる。

その一撃から一気に勝負をつけるためか、戦意を削ぐためか知らないが怒涛のラッシュを仕掛ける。

 

「うがっ……」

 

一撃一撃が挑戦者の体をすり抜けてまるで吸い込まれていくように、当たっていく。

ことごとく急所にも入っているし牽制で挑戦者の反撃を許さないようにする間の取り方。

ベテランのような試合運びや技術だ、これがチャンピオンの成せる技といった所か。

 

ひたすらに一方的に挑戦者を打ちのめしているが、どこか違和感を感じる。

そしてその正体が俺にはわかる。

 

「この人、まるで本気を出しちゃいない……」

 

確かに挑戦者よりは強い力で対応しているがそれでも全力じゃない。

つまりそれだけ挑戦者との力の差が開いているのだ。

 

「これがうちのチャンピオンのピオーネさ、あいつは現在無敗の絶対女王だ」

 

そりゃあそうでしょうね。

だって挑戦者がボロボロなのに対して傷一つ負わず、息切れもしていない。

その時点で実力の違いは分かっている。

それに加えて本気じゃない。

挑戦者自体が弱いわけではなく、チャンピオンの強さがこの闘技場において圧倒的なのだ。

 

「ガァアアア!!」

 

なんとか挑戦者が立ち上がって力を振り絞って突進する。

しかし、チャンピオンはそれを正面から受け止めて軽々と上へ放り投げる。

そのまま飛び上がって空中で挑戦者を捕まえると瞬きさえ許さない早業を披露する。

挑戦者の脇の下に腕を差し込む。

更に挑戦者の膝の裏から絡ませるように足を引っかける。

長い手足を活かすことで挑戦者の手足を動けないように固めていく。

 

前転をするように固めていた自分の体を激しく回転させて、その勢いのまま挑戦者を地面へ叩きつける。

肉弾攻撃だがその威力はすさまじく地面に罅が入って挑戦者はピクリとも動いていなかった。

始まってからこの勝負が終わるまで5分も経たなかった。

二転三転もする事は無く終わってみれば、チャンピオンの強さだけが際立ってしまう試合内容だった。

しかし、観客はこの圧倒的な強さに魅せられているのか、歓声をチャンピオンに浴びせていた。

 

「あれが決め技の一つ『リインカーネーション・オブ・ブレイク』だ」

 

『破壊の輪廻転生』とは随分とまた大層な名前だな。

しかしあの威力を見るとそんな名前にも納得がいく。

あれ以外にもまだ技があるようだが、気弾の大技を今回見せることがないままに戦いを終わらせていた。

一体あの人に本気を出させる人がどれだけいるんだろうか?

 

「明日からはお前もあの場所に立つんだからな、がんばれよ」

 

勝者の名乗りが終わると立ち上がって、俺の頭をワシャワシャとなでながら団長は去っていくのだった。




ヒロイン紹介:
名前:ピオーネ
名前の由来:『王者のイタリア語訳:カンピオーネ』
※ぶどうにもその名前の品種はあるんですがツフル人ではありません。

現在の戦闘力:7200(普段)10128(全力)
容姿:
腰まである銀色の長いさらりとした髪。
顔は整っていてきれいである。
薄紅色の肌、蒼い瞳、長身で手足が長い。
スタイルもいいが本人に自覚はない。
年齢は14歳だが、肉体の成長が早くすでに完成の域に達している。
その為、文字通り大人と子供の体格差がガタバルとの間にある。

指摘有りましたら、お願いします

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