とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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最近、インフレしすぎてすいません。
4と同格程度に収めておけばよかったのですが勢いのままにやりすぎました。
今回もインフレをしていますが、神の次元はこれで打ち止めにする気です。
次回以降はむちゃくちゃにならず、混乱させないようにいたします


『邪神降臨』

「全員が勝っているし、ここは俺が締めるのみ」

 

ジャネンバを見て構える。

トワにできて俺にできない事は無い。

時空間に戻すこともできる。

 

「ただそれをしても鼬ごっこ」

 

お前を消して冥界を閉じた後、時空間にいた奴らも消滅させる。

あいつらの場合は『蘇生』が可能なんだ。

だが俺の手にかかれば閻魔の場所にもいかない。

歴史上からの抹消に他ならない。

どこにもお前らがいた痕跡も残さない。

もっとも残酷な終わりを告げよう。

 

「ゲギャア!!」

 

剣がなくなり気弾と殴り合いしかないジャネンバ。

魔術は巨人の時でこっちに劣ると分かっているのだろう。

 

「甘い!!」

 

拳を取って投げる。

地面に叩きつけられる前にくるりと着地をする。

だがその一瞬の間に腹に爪先を蹴り込む。

筋肉から内臓へ衝撃がいきわたる様に振りぬいていく。

 

「ゲガ……」

 

うずくまるジャネンバ。

その背中に肘打ちを入れる。

地面にうつ伏せになる。

 

「『レイジ・アクエリアス』!!」

 

水瓶を持つような構えから藍色の気功波を放つ。

押し流すように延々とした放出。

受け止めきれずに呑み込まれていく。

 

「お終いだ!!」

 

気功波が渦を巻き、ジャネンバを捉えて叩き落す。

手応えは十分。

起き上がれたとしても相手の戦闘意欲を根こそぎ奪い取ったという確信もある。

 

「どうやらこっちも決着がついたんだな」

 

いつの間にか到着していたガタバル達。

ジャネンバを見て言ってくる。

奴はすでにピクピクと動いているだけで抵抗することはできない。

 

「ちょうど終わった所だ」

 

そう言って魔術を使う。

お前らが殺していなかったおかげで面倒ごとは増えなかった。

 

「『バミューダ・デスアピアー』!!」

 

ジャネンバと奴等が散開していたところ。

累計、六箇所を起点にした魔術。

それを魔術で見通して指を鳴らす。

するとたちまち全てを飲み込む黒色の三角錐が立ち昇る。

 

「クロノア様、手を煩わせてしまい申し訳ございません」

 

時の界王神と言われているお方。

仮面に封印される前に一度お会いした。

絶対手を出すなと口が酸っぱくなるほど止められたのにも関わらず、怒りのまま破壊神ビルスと戦ってしまった。

その罪悪感が締め付ける。

聞こえているとは思えないがその方に言葉を述べる。

 

「はっ!!」

 

徐々に手を合わせていく。

パンッと手拍子するように手を完全に合わせるとキュインという音を立てて三角錐ごと消滅した。

 

「これで終わりだ」

 

その一連の動作を見ていた奴らが驚く。

大丈夫だ。

この技はお前らのようにプラスエネルギーが高い奴には通用しない。

マイナスエネルギー、つまり邪悪な度合いが強すぎた場合に通用する。

 

「見事な腕前ですな、我が兄よ」

 

現れていたメチカブラが下りてくる。

やはり目的はそれだったか。

邪神像が妖しく光っている。

 

.

.

 

目の前にメチカブラが現れた瞬間、空気が変わる。

邪悪な気が煙のように漂っている。

言ってしまえばそこに全て今までのやり取りをまとめたような感じだ。

 

「ぐぐっ……」

 

圧迫感に耐え切れない面子は下がっていく。

それでいい。

動ける俺で止めてしまおう。

そう思い殴りかかる。

 

「我が身に宿れ、邪神『エコトゥーク・アザラ』!!」

 

しかしそれよりも速くメチカブラが邪神を乗り移らせる。

邪神の黒い影がメチカブラを呑み込んでいく。

拳を打ち込んだところで影に手応えは存在しない。

その影からずるりという様な擬音を立てて現れたその姿。

それはどこか遠い記憶を思い起こさせるような姿だった。

 

「ちっ……嫌な姿を見せてくれる」

 

そう言うサラガドゥラ。

地味に汗をかいている。

 

「『ボンベイ』みたいなやつだな」

 

真っ黒い毛に覆われた猫。

目は丸く大きい。

色は金色。

特徴を捉えた見た目だ。

 

「いくぞ……」

 

そう言って俺に向かって手を前に出す。

すると次の瞬間、弾き飛ばされる。

その威力は凄まじく、胃を揺さぶられて嘔吐しそうだった。

 

「俺とサラガドゥラに任せて逃げろ……」

 

一撃で確信した。

時間を稼げそうな相手じゃない。

つまりピオーネの特徴を活かせない。

 

「こいつを利用した時の全盛期の自分と同格だ」

 

あの時空の邪悪な奴らのオンパレードはこのためか。

だが……

 

「おかしいな、ヒルデガーンのパワーがない」

 

そう言ってメチカブラが首をかしげる。

本来ならばその中に入るべき存在がいない。

 

「確かに消滅はさせていなかった」

 

つまり自分たちとは違う存在がヒルデガーンを叩きのめした。

一体何者だ?

 

「んっ……?」

 

どこかでさらに悪の気が膨れ上がる。

ピッコロが気づいたようだ。

 

「魔人ブウの気が変わっただと……!?」

 

トワとミラがやりやがったか?

もはや子供たちに任せるしかない。

 

「俺達で向こうは対処する」

 

そう言ってピオーネの瞬間移動で神殿へと戻る。

これで憂う事は無い。

思う存分暴れるだけだ。

 

「はっ!!」

 

全力で殴りにかかる。

しかしそよ風のようにひょいと回避されてしまう。

 

「だりゃあ!!」

 

回し蹴り。

紙一重で避けられる。

だが……

 

「ふっ!」

 

その足で着地前に相手の足を踏みつける。

そして膝を叩き込む。

 

「ぬっ!?」

 

相手も驚く。

格上と勝負した回数は多い。

戦闘力に天地の差があっても当てる小細工はあるんだ。

 

「シッ!」

 

目つぶし。

首を振って逃れるがそのまま上に動かして耳を掴んで頭突き。

 

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

今の自分の全力の一撃。

これが通用しなければおしまい。

相手がまだ油断しきっている、強さに酔っているこのタイミング。

 

「ぬあああああっ!!」

 

相手は受け止めきれずに喰らっていく。

零距離だったし手ごたえはある。

 

「はあはあ……」

 

肩で息をしながら相手の吹っ飛んだ方向を見る。

だが次の瞬間……

 

「うぐっ……」

 

顔面を掴まれて地面に叩きつけられていた。

それをこっちに寄せてサラガドゥラが逃れさせてくれた。

 

「休んでおけ、一息ついたら下がれ」

 

そう言ってサラガドゥラが前に出た。

気を全開にしたようだがまるで感じ取れなかった。

 

.

.

 

「今度は逃さんぞ、神としての全力を見せてやる」

 

そう言って懐に入りこむ。

狙う場所はどこでもいい。

どういった反応をするのか。

奴がどれだけ力を得たのか。

それを知るための呼び水でしかない。

 

「シャア!!」

 

腹に一撃を放つ。

浮き上がらせるようなアッパー。

 

「かっ!!」

 

こっちの肘に交差した腕を組ませて防ぐ。

だがその拳を開いて顔の方へ向けて気弾を放つ。

 

「へっ!!」

 

メチカブラは首を動かして避ける。

それと同時に体を捻って飛び上がっていく。

 

「はあっ!!」

 

跳び後ろ回し蹴り。

それを今度はこっちが受ける。

ジンジンと腕が痺れるような一撃だ。

 

「フンッ!!」

 

足を掴んで引き寄せる。

間合いに入っていく。

奴が拳を顔に出す。

その瞬間、こっちは脇腹にめがけて突き出す。

 

「がふっ!!」

 

クロスカウンターとなる。

奴も後ずさるが俺も血を吐き出す。

こっちもダメージを受けてはいるがあっちも喰らっている。

 

急に強くなっただけでは、本来の力を出すことはすぐにはできない。

今のも本来なら俺だけ食らうようにできていてもおかしくはない。

そう言った意味では戦闘力の差が途方もなく隔絶された状態であっても、小技を使い最大出力をやったガタバルの攻撃は正解だった。

 

「それを差し引いてもの話だが、俺でも厳しいとはな……」

 

今の奴の力はアザラの力を借りた時の俺と同等だ。

アザラ抜きの俺では奴が優勢になるのは当たり前。

といっても奴は自力が少ないから完全に操れはしない。

あいつが力の大きさに耐え切れずパンクするまで待つという手もある。

だがその間好き放題されるのも、いやなもんだ。

 

「サイヤ人の月の新円に満ちる力に頼るしかあるまい」

 

あの敵も月の光を浴びて強くなった。

だったらこいつの力を借りるしかない。

俺の魔術を使う。

 

「暴走したらすぐに解除する」

 

勝つためには望みの綱を手繰り寄せるしかないんだからな。

自分が二人いたら話は別なんだけど。

 

「『ルナティック・ギルティ』!!」

 

月の光を浴びていく。

1700万ゼノを超える遥かな光の量。

これはこの戦いだけの強化。

普段からこの限界突破を出せるわけではない。

 

「まあ、そこは修行次第だろうがな」

 

これで戦力としては申し分ない。

構えて相手を見る。

第2ラウンドと行こうか。

 

「情けないな、兄よ」

 

なんとでも言え。

おまえも邪神と自分で2人だ。

数を揃えただけだぞ。

 

「負けた言い訳でも作っておけ、メチカブラ」

 

そう言って突撃を開始した。

 

.

.

 

「この力は……」

 

サラガドゥラが魔術を俺にかけてから異変が起こる。

きっとフルパワーを超えるフルパワー……超フルパワーを引き出されているのだろう。

抑えきれずに真っ赤な気が噴き出していく。

理性が飛びそうになるのをぎりぎりで何とか押さえつける。

四肢にも五臓六腑にも凶暴な力が渦巻いている。

速く奴を殴りに行けと細胞の全てがはやし立てる。

 

「うぉおおおおお!!!」

 

叫んで一気に間合いを詰める。

自分の体とは思えない速度だ。

 

「ぐっ!?」

 

何も考えず思い切り一本拳を振るう。

急所だったり、効率だったりを全て度外視した力任せの圧倒的な暴力といえる一撃。

腕を交差して防いだメチカブラを後ずさりさせる。

そのまま蹴りを放つ。

 

「ぬっ!!」

 

メチカブラは蹴りを防ぐが足元がぐらつく。

その足を持ってジャイアントスイングをする。

そのままサラガドゥラへ投げる。

 

「『タウルス・ブレイク』!!」

 

勢いをつけた両腕で相手を挟んでかちあげる。

挟む際に肋骨が折れるベキベキとした音が聞こえた。

パワフルな一撃だ。

かちあげられた相手は宙を舞う。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

アホウドリが飛翔する。

一気に呑み込んでいく。

いつもと違い、深紅色のアホウドリへと変貌していた。

 

「『解除』」

 

メチカブラが背中から落ちた時にサラガドゥラが俺の魔術を解除する。

何故やったんだ?

 

「お前の限界を大きく超えている、これ以上は危険水域だ」

 

そう言われた瞬間、膝からガクンと落ちる。

疲労が凄い。

引き換えに奴へダメージを負わせた。

 

「実力が伴ってもいない者が守り神であったアザラの像を軽々しく使ったツケは必ず来るからな、覚悟しておけ」

 

そう言って俺を抱えるサラガドゥラ。

一体どういう意味なんだ?

 

「魔人ブウが最優先だ、つかまっておけよ」

 

そう言って神殿へと向かっていった。

最後にもぞもぞと動いていたがもはや戦えるような状態ではなかった。

邪悪なエネルギーが徐々に抜けて、再びあの像へと戻る。

まだ、奴らの野望は終わらない。

妖しく輝く邪神像がそれを物語っていた。

 




邪神像によるパワーアップがメチカブラの奥の手です。
サラガドゥラが昔に使用した時よりやばいのは怨念と時空の6人の巨悪によって生み出されたマイナスエネルギーが原因です。
今回の魔術によるガタバルの一時的な強化は、強さの最終地点まで引き出したといったところです。

名前の由来
『エコトゥーク・アザラ』:『エコエコアザラク』
アナグラム+『エコ』が2つで『エコトゥー』
ちなみにメチカブラの外見が猫の種類であるボンベイになったのは、昔と違い邪神像に変わっていたから。
昔は普通に気が溢れるなどの強化のみで外見の変化はなかった。

指摘などありましたらお願いします。

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