とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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二人とは何者なのか。
そして実体を取り戻したサラガドゥラの本格的な戦闘です。


『暴れる二人』

魔人ブウたちの行進は止まらなかった。

一度、悟空の戦いの後でブウがバビディを殺したことでヒルデガーンも自由となる。

両方が別れていく。

ミスター・サタンがブウとの接触を図っていた。

俺たちのような力を持ってはいない人類の希望だろう。

 

「案外、奴は本物の救世主になるかもな」

 

そう言って下界から目を背けるとだらしない女が見える。

相変わらずだな……

 

「いい加減にしろよ、ピオーネ……」

 

溜息をつく。

神の神殿に戻ってずっとこの調子だ。

トランクスと悟天を『精神と時の部屋』に入れて準備万端にしているのに。

ターサとロマネが次には入る。

ラディッツやターレスの子供であるハツカやサニーもその後に入る。

 

「あのねぇ……私はあの子がいない地球なんてどうでもいいの」

 

目にクマを作った状態で睨み付けてくる。

まさかの爆弾発言に全員が凍り付く。

人類が滅亡しようが構わないと言っているようなものだ。

 

「あんたらが貧弱だったからあの子に負担が来た、きっとあの日もそうなのよ」

 

ゆらりと立ち上がって恐ろしい剣幕でベジータや悟空に近づいていく。

行方不明になった日。

奴は一人でしょい込んで戦いにいった。

助けを呼べなかったのか。

ブロリーたちが到着した時にはもうすでに消えていた。

 

「言いすぎだ、奴らも協力して探しただろう」

 

そう言った俺を冷笑する。

見つけれていない時点で意味がない。

探したから罪滅ぼしになると思ったら大間違いだ。

そう言った笑みを浮かべている。

 

「んっ……?」

 

雰囲気が悪くなっていた、そんな時。

気配が感じられる。

カリン塔の方か?

そう思って下をのぞき込もうとした瞬間。

跳躍でこの神殿に降り立ってきた。

 

「お前は何者だ?」

 

ベジータも悟空も臨戦態勢になる。

こいつはまるでつい最近見たような雰囲気だ。

 

「俺の名はサラガドゥラ、あの金色のピエロマスクに封印されていた者だ」

 

何だと!?

こいつの抱えているフードに目が行く。

 

「それはなんだ?」

 

聞くとどうやらモゾリと動く。

人間か、何かが入っている。

 

「これは俺の弟のせいで日々を奪われた哀しい人だ」

 

そう言って歩き始める。

『精神と時の部屋』の方向だ。

勘で見抜いたか?

 

「待ってくれ、今はガキどもの鍛錬で……」

 

止めに行く。

ここで止まってしまうとブウたちへの対策が危ない。

そう思って腕を掴む。

 

「5分だけ貸してくれ、邪魔はしない」

 

しかしその腕を筋力で弾く。

そして、グイっと顔を近づけて言ってくる。

なんだか有無を言わさない迫力がある。

 

「絶対に邪魔はするなよ…」

 

真剣なまなざしに俺は渋々ながら了承した。

俺の聴覚で聞き取れた『哀しい人』。

もし、それが今の俺達にとって最高の朗報だったなら……

 

「そろそろ5分だが……」

 

そう言った瞬間、悟天たちが慌てて出てきた。

一体なんだ?

 

「ピッコロさん、なんで男の人が二人もいるんだよ!!」

 

男が二人?

やはりあのもぞもぞしてたのは人間か。

 

「違うよ、トランクス君、あれは女の人だよ!!」

 

女?

食い違っているがどっちが正しいんだろうか。

 

「馬鹿だな悟天、ありゃ女の顔した男だよ」

 

女の顔。

そのワードでピンとくる。

やはりあの中身は……

 

「じゃあ、オカマかな?」

 

そう、悟天が言った瞬間、何者かが悟天の頭を掴む。

その顔は4年ぶりに見る顔だ。

 

「随分と生意気な口きくようになったな、悟天……」

 

にやりと笑って手を放す。

くるりと悟天は着地をするがきょとん顔だ。

 

「僕、おじさんの事なんて知らないよ?」

 

無理もない、まだお前が3歳の時に失踪したからな。

トランクスは必死に思い出そうとしている。

 

「ピオーネの奴、寝てるのか?」

 

そう言ってきたので頷く。

大の字になってへそが見えている。

同じようにターサも寝ている。

それを揺すって起こす。

 

「起きてくれ、ピオーネ」

 

そう言うとうっすらと目を開ける。

目をこすり視界を通常の状態に戻した後、ガタバルの顔を見た瞬間。

 

「うぇ……えん」

 

声を押し殺すようにピオーネが泣いた。

それこそ、初めてだという様に。

滝の涙を流していた。

 

「お父さん!!」

 

ターサも飛びつく。

家族団欒のワンシーンだ。

ガタバルが撫でて宥めて泣き止ませる。

そしてピオーネが立ち上がった時、あのだらしない姿が霧散した。

セルやフリーザと戦った時の凛々しい姿だ。

 

「同一人物とは思えないな……」

 

苦笑いをしてしまう。

ガタバルが愛妻家だというのは知っていた。

だが、言葉にしないだけでピオーネもまたガタバルを愛している。

だからこんなことが起こったのだ。

もう二度とあんな姿を晒しはしないだろう。

 

「で、なんでどこを探してもいなかったの?」

 

確かにそれもそうだ。

仮面が付いた程度では占いババの占いからは逃れられない。

 

「それは俺が説明する」

 

そう言ってピオーネの横に立つ。

確実に事の流れや顛末を知っているのはこの男だ。

 

「あなた誰?」

 

初対面だからな。

警戒した一言は出るだろう。

だが、そいつがお前の旦那をここに連れてきてくれた恩人だぞ。

 

「俺の名前はサラガドゥラ、あの仮面の封印が解けた姿だ」

 

それからサラガドゥラがピオーネやベジータ、悟空に憶測ではあるがと前置きを置いて話す。

弟であるメチカブラがガタバルに仮面をつける前に、魔術で意識を完全に埋没させていたこと。

その後に暗黒魔界に送ったこと。

そして意識が埋没した状態で自分を装着したこと。

それで見た目などが変わってしまい、自分も封印状態で外れなかったこと。

だから別人扱いになったことで、占いババの占いに引っかからなかったのかもしれないという事。

ようやく、孫悟飯のおかげで封印が解けたので、魔術を解除してここに運んできたこと。

 

「つまりあの青肌の爺さんがいけないのね……殺すわ」

 

そう言った瞬間、禍々しい気が立ち上る。

今までどんな奴よりも怒りに満ちた、どす黒い気だ。

メチカブラの奴、地雷を踏みやがったな。

俺たちの陣営で最悪の地雷を。

 

「いや、弟の不始末は俺が付ける、休んでおいてくれ」

 

クマがまだとれていないことを心配したサラガドゥラが言ってくる。

筋は通っているが……。

そう考えているとガタバルが手で制していた。

 

「待て待て、被害者である俺が行くべきだろ?」

 

ガタバルもやる気満々だ。

気が噴き出した瞬間、セルのときよりも何倍も強くなっていやがる。

きっとあいつらが肉体を強化していやがったな。

 

「むっ……これは」

 

サラガドゥラが感じ取っている。

同族故に働くセンサーか。

 

「俺の標的は決まった」

 

そう言って飛び降りていく。

ガタバルも動こうとする。

 

「私も行く!!」

 

そう言うピオーネの首に手刀を入れる。

気絶したピオーネを抱えて俺に手渡す。

 

「寝かせておいてくれ」

 

その言葉を言って飛び降りていく。

あいつ、病み上がりの肉体で大丈夫か?

月がでている闇夜に戦うなんて……

 

.

.

 

「お前がヒルデガーンか」

 

『精神と時の部屋』の時間が僅かに残っていたのだろう。

5分の間に今の状況を聞いておいた。

次の相手が危ういという事も。

 

「グガアアアアア!!」

 

幻影になって向かってくる。

だが……

 

「幻影になっても攻撃するときは実体になるだろ」

 

超サイヤ人3で対応する。

懐に飛び込んで攻撃が当たらないポジションに着く。

尻尾で薙ぐために実体化する。

それを見て尻尾を持って地面へ叩きつける。

 

「グルルルル!!」

 

ヒルデガーンが唸りながら起き上がる。

ダメージを受けないように幻影になっていくが……

 

「はっ!!」

 

目に見えない威圧感。

殺気。

そういったものを宿して放つ一撃。

こういった相手と戦った経験がなくても予測はできる。

いずれそのような摩訶不思議な相手と出会った時の為に、セルとの戦いの後から行方不明扱いになった日まで鍛錬はしておいた。

 

「グゲエエエ!!」

 

呻くヒルデガーン。

俺がこのように鍛錬をしてきたのはのピオーネに勝ちたいからだ。

惚れた女に見直してもらいたい。

その一心だ、

それを4年間奪った憂さ晴らし。

お前で少しは晴らそうか。

 

「シャアアア!!」

 

尻尾を振り乱して攪乱をしようとする。

縦横無尽にあいつが動く中、延々と一撃を当てる。

的がでかいだけ。

攻撃が当たるのであればこれほど楽な相手もいない。

 

「バアアアッ!!」

 

大きな羽根で羽ばたく。

それと同じタイミングでとび上がる。

 

「ウゴオオオオオオ!!」

 

大きな光線を口から出す。

地球から宇宙空間へ飛び出していく。

それを避けた瞬間。

 

「あっ……」

 

久々に見た眩いもの。

満月が思わず目に入ってしまった。

 

「満月……」

 

ドグンと心臓が強く鼓動する。

それは徐々に大きくなる。

自分の中にある凶暴な力。

それが鎌首をもたげて表に出てきていた。

 

「ガアアアアアアア!!」

 

意識はそこから途切れていた。

再び戻ったのは、体に傷ができたその痛みで徐々に意識が深い部分から浅い部分へ覚醒した時。

ヒルデガーンも何度か攻撃を浴びたのだろう。

深刻なダメージだった。

こっちの掌は血塗れ。

ヒルデガーンの尻尾は千切れていて、ところどころがひしゃげている。

 

「グゥウウ……」

 

その姿を見てまたもや凶暴性が顔を出そうとする。

意識が途切れそうになる。

しかし留まるために『思い出』を思い返す。

 

「満月を見て意識が飛んでしまっていて、今もまた飛びそうになったが…」

 

脳裏に浮かぶのはピオーネの姿。

ターサの笑顔。

ブロリーとの修行の日々。

ベジータとの話し合いや研鑽。

ピッコロと桃白白の育んできた男同士の友情。

頼れる兄貴分の結婚式。

フリーザとの死闘。

 

「今日からまた同じように歩んでいける……」

 

それらが大猿として暴れようとする意識を留めていく。

そしてその力を凝縮して内側に収めていく。

暴れだしそうな野性ともいうべき原点の力。

 

「その『喜び』が俺をさらなる進化へと導いた!!」

 

俺の髪の毛は黒くなっていった。

上半身は大猿の状態で紅い毛に覆われている。

これこそが単独における変身の最強形態。

サイヤ人のあるがままの集大成。

 

「これが……超サイヤ人4だ!!」

 

.

.

 

「ガタバルの気が異常なほどに膨れ上がったか」

 

俺は一面を見渡す。

闇に溶け込んでいる様だが……

 

「下らんかくれんぼはやめにしろ、メチカブラ」

 

そう言うと現れる。

ダーブラやトワもいる。

見た目が様変わりしたようだがな。

 

「お前は誰に牙を向けたか分かっているのか?」

 

俺がメチカブラを睨み付ける。

するとびくりと体を震わせて恐る恐る口を開く。

 

「だけど、封印を解くために……」

 

あんなやり方でなくても問題ないはずだが?

言い訳をすればするほど、お前は痛い目を見ることになるぞ。

 

「俺は誰だ、言ってみろ」

 

震えているメチカブラに問いかけをする。

お前が喧嘩を売ったのが何者かを再確認しろ。

そしてそれが正しいのか間違いなのか噛みしめるがいい。

 

「貴方は我が兄……サラガドゥラ様です」

 

気絶しそうなほどの俺の怒気に耐えたメチカブラが震えたまま問いに答える。

そうだな、俺はお前の兄。

そして俺との魔力の差を十分承知していながら逆撫でをしまくったというわけだ。

 

「俺の肩書きを言ってみろ」

 

さらなる絶望を。

ダーブラたちの知らぬ世界の真実を先達として。

誰よりも知っているべきお前の口から言ってやるがいい。

 

「あの魔界の創造主にして……『魔神』サラガトゥラです」

 

その通り。

俺は『魔人』ではない。

かつて神の領域に足を踏み入れた『魔神』なのだ。

俺は自己研鑽を創造した後に積んでいった。

何故ならば、お師匠様の仇を打つために不十分な力で挑むことは失礼だから。

こんな不肖な弟子をとった師匠はさらに愚か者だと蔑まれないために。

 

「最後に……俺が下す判決を言ってみろ」

 

聡明なその頭で弾き出してみろ。

俺の作った世界をハチャメチャにした。

下らん輩を増やして帝国を作り上げた。

さらには正当な手段で壊すなりを考えなかった。

つまりは俺を見捨てた、俺の功績を侮辱した罪の重さを。

 

「すなわち……極刑」

 

さらに震えながら最後の問いに答える。

何故震えるのか。

それは俺が極刑といえばその事実を覆すことはできないからだ。

逃げるしかない。

抵抗しても無意味だとメチカブラは知っている。

 

「正解だ!!」

 

そう言ってメチカブラへと駆け出す。

それに割り込む影が一つ。

巨躯の女だが……

 

「目障りだ!!」

 

そう言って蹴り飛ばす。

大方あれは……

 

「儀式をしてなったような『魔神』が俺にかなうとでも?」

 

こっちは守り神の力を借りずとも、儀式をせずとも己の力だけで魔神へと成ったのだ。

あの破壊神に勝つためのバックアップで使用したんだ。

つまり……

 

「お前らのような『魔神』とはな……格が違う!!、力が違う!!、覚悟が違う!!」

 

そう言って全力で気を吹き出させる。

およそ7000万年以上も昔。

お師匠様が封印されて破壊神に挑んでから戦えなかった。

それが今や全力を尽くせる。

その喜びに……

 

「60兆個の細胞が一つ残らず打ち震えている!!」

 

そう言って魔神リーサとやらに突っ込む。

奴の反応速度を超えてこめかみに蹴りを叩き込む。

ぐらりとした所を腕を掴んで引き寄せる。

 

「ふんっ!!」

 

肘打ちでダメージを負わせる。

腹へ蹴り。

脇に腕を差し込んでのジャーマンスープレックス。

 

「くっ!!」

 

何とか蹴りを当てるリーサ

しかしこんな一撃なんぞ……

 

「くすぐったいだけだな」

 

そう言ってカウンターで殴り飛ばす。

ドガンと岩に当たる。

この感触は気持ちいい。

手応えがあるのがこんなにもいいなんてな。

リーサはもう死ぬ運命だ。

俺は漆黒の気を集中させる。

 

「『フィアー・パンデミック』!!」

 

カラスの羽根を模した気弾がリーサを包んでいく。

リーサの抵抗は無意味だ。

それは引っ付けば重く、そしてお前の気を吸い取る。

只の気弾ではなく魔術との合成気弾。

まさか馬鹿正直にただの気弾を撃つとでも?

 

「ぐっ!?」

 

さらに蹴りや拳にも魔術を宿しておいた。

お前の反応と体の動きをずれさせる術だ。

お前は目に見えている攻撃を避けようとするだろう

しかし身体は脳の指令から到達した後、わずかに体が遅れて反応をするようにした。

 

カラスの羽根が玉状になって包んでいく。

それを俺が指を一本一本閉じていくとリーサを包んだ弾が縮んでいく。

そして俺が握り拳を作って……

 

「ふんっ!!」

 

気合を込めた後、ゆっくりとその掌を開く。

リーサは闇にのみ込まれるように消滅した。

スマートな死とはこういうものだ。

理解できたか、メチカブラ?

 

「…トワよ、邪なるものを召喚せよ!!」

 

それに恐怖を抱いたのだろう。

何とか人員を増やそうと画策したメチカブラ。

それにしたがって即座に召喚を行う。

どこかで魔力によって呼び出されたのだろう。

魔力のうねりを感じる。

それに気をとられている隙にメチカブラは消えていた。

 

「消える前の置き土産があるはずだ……

 

自分の失態を拭わないといけない。

そう思った俺は探しはじめる。

久々の戦いで昂りすぎたことは反省だ。

しかしそんなものは見受けられなかった。

『魔神』となったことで魔力の隠蔽が可能になったか。

こうなってくると水晶玉のような媒介が欲しいな。

魔力を通して見る事を妨げられていた場合の保険になる。

便利なものは有って損はない。

 

「一度あの神殿に戻ろう……」

 

そう言って俺は瞬間移動をした。

 

.

.

 

サラガドゥラが去っていった後。

トワの魔術によって生み出された異なる時空の邪な思いは……

 

「……ジャネンバ……ジャネンバ、ジャネンバ」

 

静かに胎動していた。

それは小さな状態から徐々に肉体が変わっていく。

どうやらまだ全然この戦いは終わりそうにもなかった。




主人公、ブウ編4話にて復帰。
そして4に覚醒。
今後はブルーツ波の過剰な取り込みによる限界突破の底上げぐらいです。
事前に言いますがガタバルのゴッド化はありません。
そしてCMで今最新のジャネンバ:ゼノ参戦です。
指摘などありましたらお願いします。

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