次回はヒロインを出す予定です。
「お世話になりました」
俺はそう言って頭を下げる。
ムーリさんがまた来るが良いと言ってくれた。
俺はそれに頷きで返して、ナメック星から旅立つ。
戦闘力の向上の為に再び体を痛めつける日々に戻る。
潜在能力の解放によって戦闘力が上がった。
今までと同じように体を痛めつけても効果が薄いだろう。
何故ならば自分を傷つけるというのは戦闘力が上がるにつれて頑丈になる為、致命傷を追うのは難しくなる。
それならば戦闘力をコントロールできるようになればいい話。
しかしまだ精密にできない為に普段は弱く気弾は強くというのが無理なのだ。
「次は重力の星、ティビグラか……」
一体降り立った時にどれ程の重力がのしかかってくるのか。
これで10倍が最大だったらいささか拍子抜けだ。
期待している結果が有れば一番いいのだけれど。
「着いたな……」
ナメック星から近いお陰で数日で到着した。
俺は惑星にゆっくりと降り立って環境を確かめる。
草木は生えているが、獣や人の気は感じない。
嫌な予感が当たった形ではあるが無人の星だったようだ。
惑星ズンや惑星ベジータの時と同じような重さを感じる。
「遠くにこれより区域『20』って表示があるから、あの表示から一歩進めば20倍の重力か」
因みにここは『10』と書かれた壁が有る。
どうやら最初の区域は10倍のようだ。
重さによって潰れるからか看板ではなく、建物らしきものの壁に刻まれている。
10倍の重さは慣れたものなのですたすたと歩いていく。
まず20倍がどれほどのものなのかと思って足を踏み入れた。
「ぐあっ!!」
入った瞬間、一気に上がった重力に驚くが何とか体を支える。
本当に一歩踏み入れた瞬間に重力が変わった。
歩を進めて僅かに息を整える。
きっちりと区域分けされているのがすごい。
「でもこれくらいは強くなる為には慣れておかないとな……」
俺はこれからできるだけ強くなっていかないといけない。
もし仮に今まで世話になった惑星が危機に陥った時、すぐにでも助けられるように。
最初は苦しくて満足に動けなかったが二週間ほどで20倍の重力にも慣れてきた。
この順応性の高さもまたサイヤ人の特徴なのだろうか?
「今なら気弾を自由に動かせるだろうな」
両手を合わせて試しに一発空に向かって撃った後、腕を曲げたり回したりして動かしてみた。
うまく動いてはいるがムーリさんがやったようなジグザグなんて言う複雑な動きはできない。
自由自在に動かすのは俺が思うよりも高等技術なのかもしれない。
目線を向こうにもっていくと重みでその場所自体に建造物が作っていけなくなったのか、白線で区切っていた。
更に床に書いているという始末。
少しでも注意が散漫になれば恐ろしい結末が待っているだろう。
「30倍になるとやっぱり厳しいな……」
20倍の時と違って体を支えるとかだけではなく、足が踏み出せず地面に重さで縫い付けられたようになっていた。
中腰のような状態から何とか態勢を整えるのに時間をかなり費やす羽目になった。
それから一ヶ月ほど30倍の重力をものにするまでかかっていた。
この頃には体が重力の重さで傷ついたりもしていたのか筋肉がついているのがわかった。
次の40倍の時にはまた一段と重い重力が体全体にに襲い掛かり、それに慣れるのに二ヶ月の時間を費やしていた。
初めは自然と頭がお辞儀しそうになったり腕が思ったように上がらなかったりした。
しかし流石に、二ヶ月も経ってくると動きも変わってくる。
蹴りのための足が上がったり、拳の速度が普段の重力と同じほどになっていた。
そして40倍の重力にも慣れたので意気揚々と次の50倍に行った瞬間……
「ぐああっ!!」
なんと区域に突っ込んだ爪先がメキメキと音を立てている。
筋肉や骨が潰れていく感覚が伝わってくる。
何とか力を振り絞って脱出できたがこれでは慣れる前に体が潰れてしまうと思った。
これは肉体の強度がまだここに至るほどではないという事。
骨や筋肉が更に強靭にならないといけないというわけだ。
その為、50倍での修業は今回は断念して次の惑星に向かう事にした。
いつかもっと戦闘力が上がってからにしておこう。
どうやら星の広さ的にまだまだ区画としては50倍で半分もいっていなかったかもしれないしな。
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ティビグラでの疲れや傷を癒しながら、次は惑星ティメへと旅立つ。
噂では日時の長さが倍の星。
つまり修行をするときは倍の時間を使用できる。
ただ、ここで考えてしまう問題は……
「動く速度が半分になってしまうから倍なのか、ただ単純に倍なのか」
どういった要因で倍の時間を生み出しているのかだ。
前者であれば、嬉しくもなんともない。
ただただ体感する時間が倍になっているだけで錯覚なのだ。
後者であってほしいと思いながら向かっていった。
「こっちも無人の星で、重力は10倍ほどか」
すっかり重力の感覚がわかるようになった俺は惑星固有の重力を的確に見抜く。
空気はかなり薄いし気温の上下が激しい。
こんな厳しい環境で住む存在がいないのも納得である。
ティビグラも相当な強さがないと10倍の時点でしか生活できない。
そんな星では誰も寄り付かないだろう。
「まずは基礎的な戦闘力を上げていかないと話にならない」
自傷行為からの治療で2回ほど力は上がっている。
いつまでもあの方法で強くなれるとは限らない。
確実に頭打ちになる場面が出てくるはずだ。
そう言った上昇幅の停滞。
それを知る為に、あの時にラディッツさんが使っていた機械が有れば良かったのだが……。
その機械を手に入れるという事はあの憧れの人を殺した奴の部下になるという事。
また、惑星ベジータを滅亡させた奴の言いなりになるという事。
そんな生き方を選ぶくらいなら、命を絶った方がまだましである。
「はっ!!」
今の自分が出せる全速力の動きをして、どれほどこの惑星の空気が薄いのかを確認する。
それを踏まえてから後の動きにも注意をして無駄のない動きを行う。
無駄な動きが多いから余計な体力を消耗するのだ。
それならば無駄な動きを削いでいくしかない。
そうすれば体力切れで相手から手痛い反撃をされる機会も減っていく。
「しっ!!」
腕のスナップを利かせて最小限の動きで拳をふるう。
速度は有るし、想像上の相手に最短距離で辿り着くように打っている。
だが、ここでも構えや打つ拳、速度と言った観点から無駄について考える。
もし相手よりも先に攻撃が指一本分届けば、それだけでも十分なアドバンテージだ。
しかし指一本先に届かせても、相手を打倒できる威力になるかどうかとは疑問が残る。
その為、そのアドバンテージをどのように活かしてみるか。
そしてその活かすための戦いは、本当に今の自分で実現可能かを考えに考え抜いていく。
幸いにも惑星の特性で時間があるおかげでこういったことができるのだ。
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惑星ティメに降り立って、修行を始めてから半年ほどたった。
あれから戦闘スタイルについて考えていたが、一本拳といった中指を突き出した拳の構えに落ち着いた。
そして、その構えから相手の急所を的確に射貫くようにシャドーを行っていく。
考え抜いて鍛錬を行った結果、指一本分の優位を存分に活かす動きを身に着けた。
速度重視の動きでも無駄を省いている。
力で相手を押すときの動きだって十分に考えた。
反撃されずに相手を打ちのめす。
その目的の遂行の為、隙を極力少なくして延々と攻撃を続けられるようなコンビネーションを考えた。
あとはこの編み出した動きが実戦でどれだけ通用するのかといった所だ。
見た目については背丈も伸びたし、体重も増えた。
あとは前々から手にしたいと願っていた気のコントロールも身についた。
初めは抑えておいて、戦う時には一気に放出。
これで相手の油断を誘うことはできるだろう。
さらに気弾の操作も自由自在と言えるほどに進歩した。
相手を追いかけるようにできる。
空中に留める事だって可能だ。
「これくらいでいいな、これ以上はやっていると感覚がおかしくなってしまう」
半年で引きあげたのは感覚がおかしい尺度にならないため。
ここに永住するつもりでなければ短期の鍛錬に使うのが一番の活用方法だろう。
半年だけでもこれだけ十分な成果が得られる。
もし、もっと長くいたらどれほどの成果を見込めただろうか。
ただ、いくらサイヤ人の若い時期が長いといってもわざわざ老化を進めるのはいかがなものだろうか。
「次の目的地は『拳闘惑星』セッコ・オロか……」
俺は宇宙船に乗り込んで座標の設定を行って次の目的に向けて発進する。
戦闘民族の血が騒いでいるのだろうか。
俺は、最も楽しみにしている惑星へと向かうのだった。
修行の描写で時間は使っていますが戦闘力は思ったよりは上がっていません。
ナメック星での潜在能力解放でもまだ土台ができてないから、解放されても努力次第の伸びしろって感じの書き方にしてます。
ちなみに一本拳で急所攻撃は超のヒットの戦闘スタイルですね。
まぁ、彼と違って時とばしがないのと、今の主人公と原作キャラとの戦闘力の差が大きいので言うほど通用しないでしょうが。
指摘などありましたらお願いします。