結構ダイジェストっぽくはなってしまいました。
最後になんか恋愛要素入れてます。
空が一気に暗くなる。
俺はこれがポルンガを呼び出したことだというのがわかっていた。
最長老様の復活である。
どうやら界王様はこいつを残してそれ以外を地球に移動させるようだが……
「変えてくれ、その願いを」
敵を討って終わらせる。
だから俺とこいつという願いにしてくれと言った。
今のこの俺を止めるすべはないと判断をしたのだろう。
近くにいるナメック星人に頼んでその願いを叶えさせることにしたようだ。
「これでお前はもう俺にやられる運命しか残っていない」
そう言ってさらに威圧感やプレッシャーを相手にぶつけるように構える。
絶対に逃さないという意味を込めて。
「いや、貴方は逃げられないまま星とともに命を散らすのよ」
そう言った瞬間に駆けていく。
言葉は強いが体がついていっていないのだろう。
僅かに反応が遅れる。
「しっ!!」
顔へ拳を放つ。
しゃがんで避けるが足がふらついている。
「かあっ!!」
足を薙ぐように強烈な下段蹴りを放つ。
それをカットするがよろめいている。
「『アングリー・フラミンゴ』!!」
よろめいた瞬間放たれた踵落としはまともに頭部に当たる。
そのまま前のめりに倒れ込もうとするが、それを許さないように追撃の一撃を繰り出した。
.
.
「デンデ、私だ」
僕は蘇られた最長老様より今の事をすべて伝えられる。
そして即座にポルンガの方向へと向かうように言われた。
ガタバルさんの願いと恨み。
それを考慮した内容だった。
それほどの距離はない。
そうこうしている間にポルンガの目の前にまでたどり着く。
「すー……」
失敗してはいけない。
その緊張をほぐすために深呼吸をして願いを言おうとする。
だが次の瞬間……
「悪いがその願いは俺が貰う」
僕を押しのける影があった。
そう言って速い言葉で願いをポルンガに言っていた。
それをポルンガが了承した時、僕はヒュンッという音とともに消えていた。
.
.
「だりゃあ!!」
倒れ込もうとしたときに突き上げるように腹部にアッパーを放つ。
浮き上がって体はクの字に折れ曲がる。
そのまま横蹴りでこめかみに打ち込む。
「うぁ……」
とめどない連撃で相手はもうボロボロになっている。
既に幾度の大技でグロッキーな状態だ。
しかしこんな悪党はもっと痛めつけてやらないとな、今の俺はそんな思いで容赦のない追撃を行っていた。
「『イーグル・フラップ』!!」
猛烈な砂利や岩を伴う突風を放って吹き飛ばす、そのまま速度で追い越し後ろに陣取る。
後頭部に膝蹴りを叩き込む。
「ぬあっ!?」
相手が前のめりに膝をつく。
もはや立ち上がるのも厳しいのだろう。
髪の毛を掴んで地面に叩きつけてやる。
「オラァ!!」
当然一度で終わらせはしない。
それこそ何度も叩きつける。
ぐったりとしたならばそのまま上空に持ち上げて最後の大技を放つ。
痛めつけてやりたいが反応がないとつまらないからな。
「『アルバトロス・ブラスター』!!」
アホウドリが悪鬼を飲み込んでいく。
そしてそのまま空高く成層圏を抜けてアホウドリは飛翔した。
地面に墜落していく。
流石にこれだけくらえば死んだだろうか?
反応も無ければピクリとも動かない。
塵にできればよかったんだがどうやら頑丈さとしぶとさは相変わらずのようだ。
「さて……帰るとするか」
敵討ちは終わっただろう。
そう思って、地球に戻るために瞬間移動をしようとしたが上手くできない。
「くっ、何故できないんだ!?」
原因を調べようとして自分の気を振り絞ってみるが気がほとんどない状態だった。
それならばできないのも仕方がない。
怒りに身を任せて大技を連続して放った代償か。
カカロットの元気玉のように気を集めても間に合うか?
物は試しだというように両手を空に向けようとしたその時。
「おい……」
そんな事を考えていると声が後ろの方から聞こえる。
声の方向へ振り向くと仏頂面で巨漢のナメック星人がそこにいた。
なぜこの場所にまだナメック星人がいるんだろうか?
ドラゴンボールの願いで俺とこいつ以外はこの星にもう居ないはず。
待てよ……
「願いを叶えたのはあんただったってわけか!?」
予想ではあるが願いを叶える役目は他の人だったはず。
しかし願いの内容が変わっていた。
だけどそれならば納得できる。
願い事を自分で言えば俺とラエンカ、そして自分の3人を残すことは不可能ではない。
「その通りだ」
そう言うとずしんと重々しい音を立てて徐々に近づいてくる。
こうしてみるとピッコロよりも大きい。
老いた見た目とはいえど威圧感や圧迫感はある。
一体どういった理由で残ったんだ?
「若い奴が怒りにかられるとこういう後先を考えない事態に陥るだろうと思ってな」
耳が痛い。
現状、その通りだしな。
相手に今までの恨みなども踏まえてやりすぎたと思っている。
確かにもう少し考えて技を放つべきだったと後悔している。
「この母星で余計な血を流させなかったお前に俺がしてやれることだ」
そう言って俺に触れて気を与える。
確かにこれで瞬間移動ができるようにはなったが……
どうしてわざわざ残ろうと思ったんだ?
「やつらにエネルギーを吸い殺されてから生き返った時に、あいつらに一泡吹かせようと思っていたんでな」
なるほど、あいつらが殺したのは最長老様だけではなかったのか。
そう言う理由だからわざと残ったのか。
俺を逃がすために、気を与えるために。
「じゃあ、掴まってくれれば……」
だが同じように地球には行ける事になった。
体に触っていればそのまま同じように瞬間移動ができる。
しかし相手はそれを拒否していた。
「仮にお前か俺に触れてしまうと奴も一緒に来る、それはやめておこう」
確かにそうなってしまうと厄介ごとになる。
しかし、そんな事も知っていたか。
本当にナメック星人の知識の多さには常に脱帽させられる。
「だから俺が……」
そう言って上にのしかかるようにして押さえつける。
老いていても気絶した相手を重量で押しつぶすようにすれば問題ないもんな。
「こいつを力の限り押さえつける、そして星とともにこの命を散らす」
そんな事をしなくても……
そんな気持ちが顔に出ていたのか、ナメック星人は俺を睨んで声を発する。
「お前のような若造に心配されるいわれはない、速く行け!!」
よく見ると徐々にあいつが押し返している。
俺は額に指をあててお辞儀を返し、地球へ瞬間移動をする。
.
.
「そうだ、それでいい」
あの若造が瞬間移動をしたと分かった時、俺は微笑んでいた。
善きことをして笑うなど遠い記憶の果てにある程度だったな。
「あいつらの血が流れたのはごくわずか、きっと蘇ってもいる」
今回の失われた命は地球とやらのドラゴンボールのおかげでどうにか解決したのだろう。
カタッツの子供はやはり天才だったな。
「兄者よ、これで良かっただろう?」
人は死ぬ間際、かつての事を思い出す。
それはこの俺とて例外ではない。
かつては互いに天才児と呼ばれたナメック星人の双子。
それがどこで狂ってしまったのだろう。
それはきっとあの選定の時だった。
「最長老に兄者がなってから、俺はナメック星人にあるまじき心に取りつかれた」
それは嫉妬という心だった。
お互いが今までその道のために歩み続けてきた。
才能も同じほどだった。
やってきた修行も一緒だったし、陰の努力も絶やす事は無かった。
なのになぜ俺ではないのか?
そのような気持ちが徐々に俺を飲み込み、俺は荒れていった。
「言いようのない兄者への羨望、そしてどうしようもない悲しみや苛立ちは暴力となった」
どいつもこいつも俺が最長老になれなかったことをなじり始めた。
そう言った奴を腕一本で、暴力で黙らせてきた。
むろん、その行為が兄者の顔を汚すことになるとはわかっていた。
でも一度狂った歯車は止められない。
行為を止められなければ、もしくは見過ごしていると言われれば、いかに素晴らしい資質を持つ兄者とて最長老の座を追われる。
俺はそうなればいいと望んでいた。
いつの間にか気持ちは歪んでいき、邪悪な心だと言われてしまった。
「兄者……俺が間違っていたんだな」
本当ならば、選定されたあの日に踏ん切りをつけて兄者を陰で支えていけばよかった。
それもせず、ナメック星人としての使命感から逃げ、そして母星の災害からも逃げてしまった。
「悪に狙われていると聞いた時、俺の心がざわめいた」
なぜかは知らない。
心の片隅のどこかで眠っていた、母星への思い。
兄者に対して償いたいという思い。
それが俺を突き動かしたのかもしれない。
「しかし、来てからは大した真似もできずにあの体たらく」
戦ったが手も足も出ずに吸収されてしまい、殺された。
そして蘇った時に俺がよみがえってから兄者の蘇生を感じ取った。
あいつに言った一泡吹かせたいという思いは、奴らに兄者が殺されたからというのも含まれている。
「だが、最後にこんな役回りができて良かった」
今回のこのナメック星の戦いにおける最大の功労者。
その男を最後に死なせずに済んだ。
善意からの行動は最初で最後という形になっただろうが、俺としては満足だ。
「段々と星が縮んできたな」
そう言うと俺は巨大化をしてさらにのしかかっていく。
一つ、とても大事なことをやり終えた。
その気持ちからか、俺は星がこの宇宙に輝く一つの花火になるその瞬間まで微笑みながらいられた。
.
.
「ふう……」
俺は瞬間移動で地球に無事につくことができた。
すると不意に背中を叩かれた。
叩いた相手は……
「まったく勝ち逃げは許しませんよ」
フリーザだった。
まさかお前がこんなリアクションを取るなんてな。
そんな事を考えていたら今度は髪の毛をぐしゃぐしゃとなでられる。
おいおい、力強すぎだぜ。
力加減を間違えたら脳震盪を起こしちまうよ。
「無事でよかったです」
黒髪に戻ったブロリーだった。
お前も無事だったか。
なら当然あいつも……
「お帰り」
ピオーネが何のリアクションもなく微笑みながら真正面から言ってくる。
ああ、帰ってきたよ。
その代わり一人が犠牲になったけど。
「お前ら3人も蘇ってよかったよ」
そう言うと3人とも笑い始めた。
一体なんでだ?
あの時確かに気は感じていなかったはずだ。
「実はあの時我々は致命傷だっただけで、蘇生されていませんよ」
何だ、そう言う事だったのか。
そう言うとデンデが手を上げている。
お前が治療してくれたのか。
「そうだったのか、それはよかった」
死んでしまったと思い、落胆していた。
それからの怒りで超サイヤ人の壁を超えた。
もし、冷静でいられたならばきっとその致命傷は分かったはず。
そうなっていれば壁を超えることはできなかっただろう。
「えぇ……ですから貴方の怒りの声は耳に届いていましたよ」
そう言われて俺は何を言っていたのかを思い出そうとする。
数分前の事だが怒りすぎていたり、戦いで痛めつけたいという思いが強すぎて、断片的にしかすぐに思い出せそうにない。
「宿敵の分と言って、デスボールを放ち相手を気絶一歩手前にまで追い詰めてましたねぇ」
あ、そんなこと言っていたな。
まず最初の一撃を叩き込んだんだった。
そして確か次は……
「弟分の恨みと言って俺の最大の技で相手はもはやダメージを抑えられず地面に伏せた状態になりました」
そうだったな。
段々記憶の糸がつながってきたぞ。
あれ、確か俺がピオーネの時の技を放つときに言っていたのは……
「そして私の技を放つときは……確か『愛した女』とか言ってたわよね?」
そう言った瞬間、蘇っていたクリリン、ニア、スパーニはにやにやと笑っている。
天津飯とピッコロは首をかしげる。
ターレスやナッパさんは声を出して笑っていた。
「あれって本当の事なの?」
真剣な目で言ってくる。
初めて会ったあの日から、相対したあの日から。
きっとずっとあの時から意識はしてきた。
はっきりと異性だという意識をしたのはあの地球での激戦。
多くの仲間を失っていてお前まで失いたくないと思ったあの時。
「冗談で女性を愛せるわけがない、本当の事だよ」
真っ向から肯定をする。
もう隠せるものでもない。
抑えられるものでもない。
死んだと思ったあの時、胸が張り裂けそうだった。
あんな思いは二度と味わいたくはない。
「恋愛の駆け引きは下手だね」
そう言うとそっぽを向く。
俺もそれに倣う様に背中を見せる。
きっとお互いの顔は今真っ赤なのだろう。
それを見られたくないからこそそっぽを向いたのだ。
「お前は俺の事が好きか?」
あえて逆に問う。
今、急がないといけないわけじゃない。
ただ、とても気になった。
人に聞いているのだから、俺も答えが欲しかった。
「寝ても覚めても君の事を意識していたよ、私も君の事が好きだ」
ピオーネも飾らずに肯定をする。
顔を紅く染めたうえでの告白なのだろう。
そう思うと、あの悲しみに重なってたまらなく愛しく思えた。
俺は後ろから近付いて抱きしめた。
離したくない、離しはしないという様に。
よくよく考えればこんな衆人環視の中での告白や抱擁。
これは恥ずかしすぎる。
カカロットの天下一武闘会での結婚宣言に近いものがある。
そんな事を考えているとベジータ王子が上空に気弾を撃つ。
そして握りつぶすことでまばゆい光を空に映し出した。
「へっ、綺麗な花火だ」
どうやら祝いの言葉の代わりに行動で示したのだろう。
それを皮切りにみんなが拍手や口笛を吹く。
なんだか騒々しいが俺の愛の告白がこの長い旅の終わりを思わせたのだった。
スラッグさんにはオリ設定として最長老の双子の弟という事にしています。
最初は純粋でしたが徐々に自分を抑えきれず邪悪へと変わっていくという形にしました。
指摘などありましたらお願いします。