とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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あけましておめでとうございます。
フリーザ登場回です。
戦闘力アップイベント発生。
ギニュー特戦隊は早めの到着スケジュールをくまれます。


『帝王の懐』

二人を気絶させてから空を飛ぶこと2時間ほど。

今、俺たちはフリーザの宇宙船に向かって進んでいる。

俺が迷わないようにナッパさんとターレスさんが先導する形で案内をしてくれている。

二人とも、カエンサとラブカを一人で抱えている俺を気遣っているが、ここからが本番だぜ?

お互いが作戦をしくじって死なないように気を付ける。

 

「開始早々こいつらを強くさせてしまうのは癪だが……」

 

ナッパさんが苦い顔で言ってくる。

こいつらは今回のケガでメディカルポッドに入れられるだろう。

そうなるとこいつらはさらに強くなる。

 

「大丈夫だ、この計画を成功させれば全員一回はポッドに入れるんだからな」

 

まずピオーネとの交戦で2人が敗北して時間を引き延ばす事ができる。

さらにその時に俺が二人が戻ってこないことに気付いて、宇宙船から出ていく。

その往復だけで時間をさらに費やすことができる。

この工程の間に俺達でのドラゴンボールの取得は不可能。

これで時間をつぶすことに成功する。

その後に取ることができても一か月は使っている。

作戦で1つは貰うし、その計画で2つ目を取る。

今2つあるから、合計4つがフリーザの所にある形となるがこちらの陣形はそろっている。

そして、ピオーネがその隙に1つをもって隠す。

そして後の2つのうち1つは最長老様の場所だ。

あそこは反応が少ないし、最後にするように進言しておけば危害はないだろう。

そしてこっちが5個目を取ったら即座に動く。

2つはこちらが持っているし、うまくできるようにあと一人でも面子が都合よくいれば完璧だ。

星全体で帝王を騙すという壮大なプラン。

 

「それからあとはどうとでもなるさ」

 

そう言って宇宙船へ到着する。

どうやら番人がいるようだな。

 

「カエンサとラブカをメディカルポッドに入れろ」

 

ターレスとナッパさんが二人を下ろす。

驚愕の顔で番人が駆け寄る。

 

「いったい誰がこんな真似を……」

 

よしっ、ここからが芝居の始まりだ!!

俺は即座に二人の背中を貫く。

血を吐いて倒れ込むが致命傷にならない程度に収めた。

 

「番人さんよ、こいつらも追加だなあ!!」

 

二人が崩れ落ちていく中、高笑いをして相手を睨み付ける。

さて、どう出る?

怒りに身を任せて突っ込んでくるか?

それとも任務を全うしてメディカルポッドに入れるか?

 

「くそっ!!」

 

番人が悪態をついて光線銃を撃ってくる。

避けると煙がもうもうと立ち上って視界をふさぐ。

今の奴は煙幕を出すためだったのか。

煙が晴れたら目の前から4人の影がこつぜんと消えていた。

メディカルポッドに入れる方を優先したか。

あいつなかなかいい奴だ。

計算ができる任務遂行者は好かれるぞ。

 

さて、これであいつらも裏切り者の汚名を被ることなく軍に潜入ができた。

カエンサやラブカをやっておかないと、ナッパさんとターレスの二人は汚名を被って、これからの作戦に面倒なことになる未来図が浮かぶからな。

そして俺はナメック星人たちへの知識を武器に潜入することにする。

まだ帰ってきていないようだし宇宙船の門の近くで待ち伏せだ。

いつ戻ってくるかはわからない。

だがこっちにとっては何の問題もありはしない。

フリーザの奴が返ってくるまで何時間でも何日でも待ってやる。

 

「おやおや……これはとんだ珍客ですねぇ」

 

そう思うこと数時間。

宇宙船に降りてきた3つの影。

1つはボール型の移動機器に乗っている。

あの惑星ベジータが崩壊した日から一切変わらない面影。

フリーザがそこにはいた。

俺は拳を強く握って今すぐにでも殴りかかりたい衝動を必死に押し殺していた。

 

傍らにとげとげが生えた薄ピンク色の肌の男。

薄い青色の肌で美形の男。

どうやら二人ともボールは持っていないようだが……

 

「はじめてお目にかかります、私の名前はガタバル

ラディッツさんから名前を聞いたりしていませんか?」

 

そう言って自己紹介する。

俺からしたら初めてではない。

だがもしフリーザがあの宇宙船越しに俺の顔を見ていたのなら気づくだろう。

 

「こちらこそ、丁寧なあいさつありがとうございます

ラディッツさんから聞いてはいましたが、彼を殺害したのは貴方だとあの二人から聞いているのですが」

 

初対面のものに行う様なあいさつだ。

見えていたが忘れているのか?

もしくは見えていなかったのか?

いずれにせよ分かっていなかったのであればこれが初対面という形になる。

これからの作戦が一層やりやすくなる。

 

ラディッツさんを殺したのが俺と言いながらこちらを観察する。

本当にそんな事をするのかというのを確認したいのだろう。

しばらくしてからため息をつく。

 

「あの二人は嘘の報告をこのフリーザに対して行ったというわけですね」

 

嘘の報告をされたことに少しイラついたのか、口元がひくひくしている。

これは後で粛清もあり得るな。

心の中でざまぁみろと思った。

今まで人に擦り付けたり下衆な真似をしてきたツケ。

自業自得だ。

 

「確かにこいつからはそう言った行為をする雰囲気はありません」

 

美形の男が言ってくる。

確かに嬉々として殺したりはしていないが、まったくしないっていうほどでもないぞ。

 

「珍しくサイヤ人にしては穏やかって感じですね」

 

頷くようにピンク色の男が言う。

こいつらの実力は低く見えるが鍛錬なしで来ていたら負けていたな。

 

「ルビコラさんの血が強く残ったのでしょう、教育のたまものでもありますが」

 

スパーニの事も示しているのだろう。

あいつと俺はサイヤ人としては穏やかな部類だ。

母さんがそういう風に育てたという事だ。

俺はあんな下衆な思考を持ったり、殺戮を好むような奴にならずによかったと心底思っているよ。

 

「わざわざここに来たという事は、このフリーザに対して何か用でもあるのでしょうか?」

 

察する力があるのがいいね。

こっちは頭を下げながら言葉をつなぎ始める。

 

「えぇ、この度のナメック星のドラゴンボールの探索の一員に加えていただきたいと」

 

フリーザの口角が上がる。

殊勝な申し出だとでも思っているのか?

いずれ裏切り、お前の野望を無為に返す獅子身中の虫だぞ?

 

「引き入れてお前はフリーザ様にどのようなメリットを与える?」

 

美形の男が言ってくる。

少なくても大きなメリットをもたらす材料を持っているぞ。

 

「私はこの場所で数か月ほど過ごしてきた過去があります、

その信頼を利用してドラゴンボールを奪いとれます」

 

ますますフリーザの笑みが強くなる。

口を割らない相手がいても場所の特定は容易であることが分かったのだ。

 

「戦闘面では信頼できるのか?、雑魚に負けるようではまだまだだぜ」

「ドドリアさん、やめておきなさい」

 

ドドリアという人が笑いながら構える。

フリーザの奴、強さを感じ取っているのか?

 

「それではやってみますか?」

 

脱力した状態で構えてみる。

信頼に足る実力を示せというのならば受けて立つまでだが……

 

「仕方ありませんね、それでは合図をしますので始めなさい」

 

そういって手を叩く。

その瞬間、俺はドドリアの懐に忍び込む。

腹に一撃を放つと豆腐かと勘違いするほど柔らかかった。

貫いたり、はらわたの感触はないが相当なダメージだったろう。

悶絶して前のめりになっているところを踵落とし。

僅か20秒近くで勝負はついた。

 

美形の人が驚いた顔を浮かべている。

フリーザは当然だという様な顔だが。

 

「だから言いましたのに、ザーボンさん、ドドリアさんを担いでいきなさい

私は彼とお話をいたしますので」

 

そう言われて宇宙船を案内される。

ターレス達が回復したようですぐに俺の目の前に現れた。

 

「フリーザ様、地球よりのご帰還遅れて申し訳ございません

このナッパ、償いの意味を込め粉骨砕身の覚悟でこの度のドラゴンボール集めをいたします」

「多い方が効率化ができると思い、出しゃばった真似をしておりますがどうかお許しください」

 

膝をついて頭を下げる。

従順な存在だという事に気をよくしたのか。

それとも裏がないという様にみられたのか。

 

「二人とも彼と今後は行動を共にするように、サイヤ人3名もいればすぐに集められるでしょう」

 

ナメック星人の信頼と土地勘。

その二つを悪用することで順調に奪える。

誰が持っているのかなんて言う必要はない。

 

「カエンサとラブカについてはいかがなさるつもりで?」

 

あの二人を計算に入れていないなんてことはないだろう。

一体どうするのか?

 

「彼らには私自ら、監視をしておきます」

 

嘘の報告をするから。

また先走ってとんでもない災厄を呼び込んでも仕方ない。

あいつらは自業自得といった所だ。

 

「彼らの事です、いずれはこのフリーザを裏切るでしょう」

 

あいつらは強い奴に尻尾を振る。

もしくは大きな利をもたらすものにだけ。

だからこそ厄介なのだ。

後ろから狙撃されることを考えて奴らを管理しないといけないのだから。

 

「当然その後に行くべき場所は兄さんのところぐらいしか寄る辺はないでしょうが」

 

クウラだったか?

宇宙を旅した時代に一度だけ耳にしたことがある。

冷徹で無慈悲な存在なのは似通っているが味方も少数精鋭。

孤高の存在だと。

 

「ギニューさん達も監視要員で呼ばないといけません、もしかすると彼らの犠牲も加味しなくては」

 

あいつらの事だからそう言った事も普通にするだろう。

あいつら二人のためにどれだけの他者が犠牲になって迷惑をかけるのか。

 

「もし、彼らが私の邪魔をしたり厄介ごとを持ってきた時は伝えなさい」

 

そう言って詳細なことを聞かずにフリーザは去っていく。

これで俺たちは独断でフリーザからの任務という名目を使い動ける。

ピオーネとの交戦によるナッパの強化、ターレスの強化。

俺の攻撃で上がったが175万のナッパ、255万のターレス。

浅めの傷にしておいたからな。

伸びは悪いがそれ以上の収穫はあった。

 

「まずは計画を進めるぞ…」

 

そう言って上空をさまようように動くこと6時間。

一つの集落を見つける。

しかしそれはすべて引き払ったもぬけの殻の状態。

そんな集落を事前に作っておいた。

ここに住んでいたナメック星人は洞窟を利用していたりツーノ長老の所やムーリ長老の所に厄介になっている。

当然雑貨系統も忘れずに。

腹いせを装って数件の家を壊すだけだ。

そこにドラゴンボールを用意してもらい、報告ではそのままを伝える。

 

その計画はムーリ長老やツーノ長老から全ての場所に伝えられている。

それらの連携で可能にする。

 

今から始めるのは伸るか反るか。

一世一代の演技だ。

名優になれるか大根役者か二つに一つ。

 

「……誰の気配もないじゃねえか!!」

 

ターレスが怒って声を荒げる。

それに倣うようにナッパさんが言葉を放つ。

 

「小癪なことしてくれやがって、ナメック星人がぁ……!!」

 

指を上げて家を3件ほど吹き飛ばす。

ドラゴンボールのある民家ではなかったな。

 

「腹が立つのは分かるが万が一の事もある、探した方がいい」

 

そう言って降り立って家の中を探る。

そして無かったら……

 

「くそったれがぁ!!」

 

壁に拳を打ち付けて出ていく。

後で帰ってきて住むこともあるので、あまり家の損傷を大きくしない。

 

「ここもないぜ!!」

 

ターレスは扉を蹴破って出てくる。

ナッパさんは最初に壊したから首を振って、ドラゴンボールがないことだけを示していた。

 

「一番偉い人が居そうな家探すぞ!!」

 

草の根分けても探し出せという様に必死な演技で家を洗いざらい調べる。

そして片手で数えられるようになってきた時に……

 

「見つけたぞ!!」

 

そう言ってナッパさんが抱えてきた。

これで任務は完了だ。

フリーザに伝えればいい。

3人でまとまって戻ってきた。

時間の感覚は夜なのだが明るいせいか、今が本当に夜なのかわかりにくい。

どうやら太陽がいくつか見えるだけで、月はないのだろう。

大猿になることができないとフリーザに反旗を翻すときに難儀なことになるな。

 

「フリーザ様、この通りドラゴンボールがありましたが奇妙なことがありまして……」

 

幸いドラゴンボールは置いていたが奴らが結集しようとしているのではないか?

面倒なことになりそうだから伝えておかないと。

 

「どういった事でしょうか?」

「もぬけの殻の状態になっていまして……我々の事を噂しているのかドラゴンボールだけおいて避難しています」

 

村で見た内容をそのままに伝える。

一体どういった反応を返すのか見ものだ。

 

「結集したところで大したものではありません、無駄な殺生をせずに利益をとれるならそれで構いません」

 

殺生なしで利益が取れるなら構わないと。

拠点防衛に考えをまとめているとは思わないのか?

 

「それでは引き続きドラゴンボールの獲得にいそしみます」

 

そう言って宇宙船を出て、次の目的地に移動する。

次の目的地は片道にして6時間ほどかかる道のり。

この時点でニアとスパーニが着く。

奴らは最長老様に潜在能力を引き出してもらえばいい。

 

幸先のいい形で不信感を募らせてはいない。

次の計画としてはナッパさんとターレスがピオーネにやられる。

俺も一緒にいたが二人がとどめを刺されないように逃げてきたといえばいいだろう。

その後に二人の回復をさせておくがラブカとカエンサに対して目を光らせる。

あいつらがしでかした事でこっちの立場が悪くなることは想定しておかないとな。

今この策を講じている間、仮にあいつらと遭遇した場合、あの二人の相手は後発と先発隊の女性陣とターブルだ。

 

「うまくいけばいいがまだまだ初めの細工が成功しただけ……」

 

あいつらの心配も大事だが俺たちを失敗は許されない。

 

薄氷を踏み砕かないように。

細い糸を取り落とさないように。

階段から足を滑らせないように。

この作戦においては慎重に慎重を重ねて、完遂をしなければならない。

 

失敗とは死を意味する。

失敗すると全てが終わってしまう。

そのような極限の中で手に汗を握り、冷や汗を背中が伝う。

地獄へ足を踏み込んでいた。




新年一発目の投稿です。
次回でニアやスパーニとの合流を書いて原作に徐々に近づけていきます。
馬鹿二人がやらかしたせいでフリーザ様の警戒心をあおり、ギニュー特戦隊が原作軸より速く到着予定です。

指摘有りましたらおねがいします。

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