とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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今回で第1試合が終わりました。
対戦カードを偏らせないように、もしくはトーナメント表が意味を無くす展開で
勝者同士の組み合わせを毎試合抽選式にしようと思います。


『第一試合決着』

無言で迫ってくるカカロット。

威圧感はない。

しかし包み込んでくる感じ。

不用意な攻撃はカウンターの餌食になる。

 

「つまり、用心深く今までの攻撃を放てばいいだけだ」

 

俺は接近をする。

体を押し付けるようにまともに動かさせない。

それを見抜くでもなく、カカロットが動く。

 

「何だと!?」

 

上体反らしで胸に押し付けられることを防ぐ。

さらに手を地面につけて体を振り子状に振る。

その勢いのまま、膝を腹部に放ってくる。

 

「ちっ!!」

 

気弾を撃ってその勢いで攻撃を避ける。

すると目の前からカカロットが消えていく。

そして、次の瞬間に気配を感じたのは後ろ。

 

「ヤードラットの瞬間移動かよ」

 

手刀の一撃を避けて馬蹴りを放つ。

それを掴んでジャイアントスイングをされる。

体が勝手に反応していやがるのか。

 

「でも、それは完全じゃない」

 

まだガタバルの方が洗練された印象だ。

鍛錬の末に自分の意識で切り替えられる状態がやはり良い。

あいつの場合もまだ伸びしろがあるみたいだがな。

 

「絶対に穴はある」

 

俺は左右から残像を残すように攻撃を仕掛ける。

すると片手ずつで受け止める。

じゃあ前後は?

 

「……」

 

手を前後に出して対応する。

なるほど、なるほど。

ならば次は……

 

「上下だ!!」

 

アッパーと踵落とし。

それも難なくと受け止める。

だがこちらも手は考えた。

 

「360度の網を作ればいいって事だ」

 

そう言って超高速のラッシュを繰り出す。

残像が複数個現れていく。

カカロットの受け止める範囲。

其れでの対応の限界を見つける。

 

「……」

 

攻撃を弾いていく。

回避する術がないからだ。

反らしていきたいがそれも最適解にはならない。

何故ならぶつかり合って跳弾の様に処理が面倒なことになるからだ。

 

「だが……」

 

蹴りをさらに回転数を上げて繰り出す。

水面蹴りや地面を這う一撃への対応はおろそかになっていないか?

 

「……」

 

それも無駄だというように跳躍をして気弾を放ち、包囲網から逃れる。

しかし俺にはその動きの中で今のカカロットの弱点を見抜いた。

 

「見つけたぜ!!」

 

最適な行動はあるが事前の動作を向こうが隠せているわけではない。

綻びが一瞬でも見えたならば問題ない。

未熟なもので俺を倒せると思うなよ。

 

「ハアッ!!」

 

瞬く間に接近をして再度ラッシュを仕掛ける。

そしてその攻撃をカカロットが受け止めていくうちに、腕でしか捌いていないことに気が付いた。

それならば360度を囲んで隙を作らせる、弱所を見抜く。

そう考えて今まで動いてきたことで見つけた以上に致命的な欠陥がある。

 

「ハアッ!!」

 

こちらの拳を手のひらで弾いてくる。

これが隙を作らせる最大の機会。

腕でしか捌かないのであれば腕を掴めばいい。

足で今度ラッシュの捌きをやろうとすればバランスを崩してしまう。

 

「お前にまだまだ負けるつもりはねえんでな」

 

腕を掴んで膝蹴りを叩き込む。

受け止めたり、捌いたりすることはできる。

カウンターを叩き込めてない時点で、こっちの雨霰の攻撃に手をこまねいた事実。

神を超えるには『心技体』が必要。

まだまだ未熟なんだよ、『技』も『心』も。

 

「変化なんてモンは真新しいし、最初は度肝抜けるだろうよ」

 

でも勝利につながるわけではない。

それをつなげたければやはり……

 

「お前が歪まずにたゆまぬ努力を続けておくべきなんだ」

 

俺はじりじりと近づいてくるカカロットを見る。

きっと学習しているからさっきの掴んでの蹴りはもう通用しないだろう。

まあ、あんな当て方が何度も通用してたら『極意』を冠する次元ではない。

 

「攻撃がまともにお前も当てられないんじゃあ勝負は根競べにしかならねえ」

 

カウンターをするのが一番あの状態における答え。

相手の攻撃の軌道や技の動き。

その全てに最適解を出す。

 

「しかし相手が攻撃速度より動くのが速ければその限りじゃねえ」

 

距離を取られれば跳躍などで追いかけないといけない。

それがカウンター狙いのやり方に綻びを作る。

そして大きな隙になることは十分にある。

その部分はカカロットならば瞬間移動を使ってカバーはできる。

しかし、果たしてあの不安定な状態で何回も上手くいくか?

 

「速く自分から動かないと勝利なんてもんは掴めないぜ」

 

後ろに回ったカカロットの攻撃を裏拳で迎撃をする。

それを受け止めて投げようとするが甘い。

指先を動かして胸倉を掴む。

そしてそのまま腕の力だけで投げに行く。

 

「……!!」

 

危機感を感じたのか、距離を取る。

それを追いかけて蹴りを放つ。

腕を交差して受け止めるカカロット。

 

「『身勝手の極意』にも不完全って条件は付くが弱点が見えてくるもんだ」

 

カウンターは自分の速度に依存する。

だから相手が自分より速く動くと折角の技能も不発。

受け止める分や回避する分には問題ない。

そして慣れていないと普段の動きと同じように手を使う事を重視する。

足も使えば対応力だって増すというのに。

未熟ゆえに足での対応はまだできないのだろう、もしくは全方位の対応に綻びが出来てしまうからできない。

その為、折角の力も腕を封じられると意味をなさなくなる。

 

「急ごしらえじゃあ俺に勝つには届かねえ」

 

お前と違い、呆れるほどに戦ってきた。

そんな俺の経験則がお前の弱みを見つける。

お前の実力も何もかもを見ていけばおのずとその答えは出る。

 

「どうするんだ、もう手の内はひとつしかねえだろう」

 

解除をすれば一方的にやられる。

防御を破って攻撃を当てられていく。

攻撃をしていくしかないのだ。

それこそ今のカウンター主体の動作を捨てること。

 

「始めの時みたいに動いて攻撃をして来い、ジレンとの勝負でもできたことができないとは言わせねえぞ」

 

そう言って構えて相手を見る。

言葉を理解したのか、こっちに向かってくる。

そして拳を振るってくる。

 

「まあ、それをやった所で……」

 

かわして延髄切りを叩き込む。

地面に叩きつけられるカカロット。

頭を掴んで振り回して上空へ投げる。

 

「俺に与えられる敗北からは逃れられないけどな」

 

その落下に合わせて攻撃を放つ腹積もりだ。

あのジレンとの戦いの時と同じだけの時間が経ったわけではない。

しかしダメージを何度か負わせておいた。

 

「解けるのはもう時間の問題だ」

 

手のひらに気を集めて槍型に成型する。

ジャベリンよりもはるかに猛々しい見た目。

三又の矛になって敵に深々と刺さるように。

 

「『ライオット・トライデント』!!」

 

その一撃を瞬間移動で避けるが、それで終わるほどの甘い攻撃ではない。

手を叩いて分散させる。

気弾が降り注いでカカロットに襲い掛かる。

掴むか弾くのがベストだったな。

 

「……!!」

 

転がって後ろにバク転をする。

降り注ぐ攻撃から回避できても、こっちが既に懐に入っている。

どこにも逃げ場なんてないんだよ。

 

「はっ!!」

 

体が思うままに回避行動や受けの姿勢になる。

フェイントにもかなりの幅で対応はできる。

だが打開策はもう見せてきた。

 

「お前の元の速度より速ければいうほど脅威になりえない」

 

動く本人よりも速い相手ならヒットアンドアウェイをされると当てられない。

もしくは全方位を囲む乱打。

これは防御力が凄まじかったり、バリアを張れれば無駄な試みだけどな。

さて……仕上げに入るとするか。

 

「『ヒート・ファランクス』!!」

 

手に火を纏ってラッシュを仕掛ける。

どれかを選んでカウンターを放つのが良い。

全弾カウンターでも問題はないだろうが、そう簡単に許しはしない。

 

「はっ!!」

 

カカロットが拳を突き出す。

しかしそれすらもねじ伏せる。

カウンターにはさらなるカウンター。

顎を揺らすようにアッパーを放つ。

 

「ふんっ!!」

 

手のひらで受け止める。

しかしそれをした場合、俺のもう一つの技が火を噴く。

これを回避する術はもはやない。

 

「『リベリオン・トリガー』!!」

 

後ろに下がれず、瞬間移動もできない。

受け止めるのではなく後ろに下がっても無駄。

上空まで跳躍するしかなかった。

 

「これで手前もお終いだ!!」

 

気功波の奔流がカカロットを呑み込む。

武舞台から出て場外の壁まで強く叩きつける。

手応えは十分だ。

それにそろそろ……

 

「があああ!!」

 

壁から出てきてこっちに気を噴出させて迫ってくるカカロット。

拳に全力を込めた一撃。

それによる逆転狙いのようだが……

 

「やめろ、その一撃は俺に当たらねえ」

 

そう言うが聞かないカカロット。

回避することもなく俺は突っ立っていた。

俺の勘が告げているからだ、当たるわけがないと。

 

「がっ……」

 

カカロットの突撃が勢いを無くしていく。

ダメージの蓄積や気の消費。

それらが原因となった。

 

「時間切れってもんだ」

 

気の質が変わり脱力をするカカロット。

抵抗する力もなくなったのだから、これ以上は意味がない。

頭を掴んで振り回してそのまま第7宇宙の観客席にまで投げ飛ばした。

 

「場外カウントする必要もねえ」

 

ピクリとも動かないカカロット。

死んではいない。

だがすべての力を使い果たしたため、動けない。

歪みも直ったし、十分すぎるほどの成果だ。

 

「それまで!!、勝者……バーダック選手!!」

 

大神官が勝ち名乗りを上げて俺は武舞台から降りていった。

初陣で第6宇宙の強さを見せる事は出来た。

見ていろよ、お前らの前に立って驚かせてやる。

 

.

.

 

「あの男への評価を改めるべきだな……」

 

いつの間にか隣で観戦していたジレンがポツリと漏らす。

確かに先ほどの戦いでのあいつとは違っていたからな。

戦いたいという欲求やあの戦いの場の熱に浮かされていたと言っても差し支えない。

 

「しかしそれでも俺には勝てん」

 

そう断じるジレンの言葉。

それには己に対する自信。

そして確実にそう思えるだけのものを我々に見せつけてきた。

 

「あの男と戦うにはいつ呼ばれるかで変わる」

 

バーダックさんを見ながら言ってくる。

次に呼ばれたら2回戦。

その次に呼ばれたら3回戦。

それ以降になると終盤だ。

 

「俺はお前と戦うまで負ける気はない」

 

そう言って去っていく。

背中に炎を思わせるオーラを纏わせながら。

 

.

.

 

「うーん、あれ?」

 

オラが起きたところはベッドだった。

チチと悟飯がほっとした顔をしていた。

ビルス様が見ている。

 

「負けたな、悟空」

 

腕組みをして残念そうな顔をしていた。

勝ってほしかったんだろう。

悪いことしちまったな。

 

「負けた理由とかは考えて今は体を休めておけ」

 

次の試合も始まるから、連れて行ってもらって観戦でもするんだな。

そう言って去っていった。

 

「サイヤ人として欲求を満たそうと考えすぎた結果、本来のお前の動き方は出きていなかった」

 

相手の技量からの逆算による全力の解放。

それをしないのはいつもの悪癖。

その後はブルーになるはずのお前が様子見をしつこくやろうとしていた。

まるで勝てる相手なんだと思いこんでいるかのように。

 

「頭を冷やしてさらに精神面を錬磨するんだな」

 

ベジータもそう言うと去っていく。

次の試合は誰と誰なんだ?

 

.

.

 

「第2試合のカードは……」

 

そう言ってトーナメント表の一箇所が光る。

残っている選手は……

第1宇宙のルタとケブルー

第5宇宙のダイヤとアレキサ

第6宇宙のヒット

第7宇宙の俺とピオーネ

第8宇宙のイエラとエキ・ロズクォ

第9宇宙のモギ

第11宇宙のジレンとトッポ

第12宇宙のエルクとケージン

 

「第5宇宙代表:アレキサ選手と第8宇宙代表:イエラ選手」

 

対の宇宙同士の対決か。

どれほどの実力なのだろうか。

これで残ったメンバーは……

 

第1宇宙のルタとケブルー

第5宇宙のダイヤ

第6宇宙のヒット

第7宇宙の俺とピオーネ

第8宇宙のエキ・ロズクォ

第9宇宙のモギ

第11宇宙のジレンとトッポ

第12宇宙のエルクとケージン

 

「それでは第2試合の用意を始めましょうか」

 

そう言ってほほ笑む大神官様。

まもなく、戦いの宴の第二戦が始まろうとしていた。




第1試合が思ったより長引かせられなかったですね。
次の試合もたぶん、主人公側や予選で戦った宇宙じゃないのでするっと終わらせていく事になりそうです。
残らせる相手も考えています。

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