とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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番外編と本遍がつながります。
甘いものといえば……という事で今回は非常に濃いあの方々の登場です。
ガタバルの弱点?が判明します。


『出会ってしまった因縁』

あれから数日後、俺は惑星スイッツに降り立った。

宇宙船の発着場があったお陰で安全に着陸できたのが良かった。

ただ、妙なのは丸形宇宙船が『5つ』あったのだ。

 

「団体で来るならわざわざ1人乗りを5つ用意する必要はない」

 

考えるのであればフリーザ軍のような侵略者達が仕事終わりに立ち寄ったという事。

もしくは侵略者としてここに降り立ったかのいずれか。

一体どういった奴等なのか。

もし、ここを侵略するのであれば止めなければならない。

自分の癒しのために来たのだから。

 

「ここのチョコレートパフェは今までのものに比べて一番だな!!」

 

テラス席にいた5人の団体から声が聞こえる

スカウターをつけている事からフリーザ軍の一員だろう。

 

「本当っすね、隊長!!」

 

そう言う緑の人は目が多く、背丈があまり高くない。

隊長と呼ばれた人は紫の肌で角が二本、まるで鬼のような見た目だ。

その向かいにいるのはモヒカンの筋骨隆々とした人。

それ以外には青い肌の人と赤い顔の美形の人だ。

 

「むっ、ついスカウターのボタンを押したら戦闘力1万を超える反応が近くにあるぞ」

 

通りすぎようとしたらすぐにばれた。

観光気分で抑えていなかった事が災いしたか。

あのピオーネとの激戦でついに5ケタとは感慨深い、昔の俺ならば考えられなかった。

 

「なんですって!?」

 

隊長と呼ばれている人がそう言うと、他の人達も一気に振り向いた。

しかしどこに居るのかまでは、流石に見えていないだろう。

草木に隠れようとして、今は通り過ぎようとしているからだ。

ただ、この惑星は植物からも甘い匂いが漂っている。

至近距離で嗅ぐときつく気を抜くと丸見えになりそうだ。。

 

「そこで見ている子じゃないの?、ねーぇ坊や」

 

あの僅かな草木の隙間から見られていたか。

ここまでばれては流石に隠し通せはしない。

両手を上にあげて抵抗しない意思を見せながら、俺は目の前に出ていった。

 

「この風貌、サイヤ人じゃないですか?」

 

青い肌の人が俺の姿を見て、言ってくる。

その言葉に全員が頷いていた。

フリーザ軍だったならばラディッツさんを見ているから判別できるんだろう。

 

「ふむ、バータの言う通りだな、どこか見た事のある気が……」

 

赤い顔の人が俺の顔を見て言ってくる。

誰かによく似ているのか?

考えられるのが家族だと思うが……。

其れから考えるとあの後にフリーザ軍に入ったというわけだ。

俺を星に飛ばしておき、さらには王族であるベジータ王や王子を見捨ててまで、命を永らえたというわけになる。

それは俺達の一族の役目としてやるべき行為ではないはずだ。

ベジータ王が死ぬ時は己も死ぬ時とあれだけ言っていたくせに……

 

「お前に俺たちの凄さを見せてやろう」

 

そう言って5人とも前に出てくる。

俺は脈絡のない展開の為、身構える。

戦いだとしたらこれはあまりにも厳しい。

殆どの人が今の自分を超えているからだ。

例外として緑色の人が俺より弱いが只者ではない、もしかしたら特殊な技能があるのかもしれない。

 

「その前に見せるだけの価値があるか、お前のセンスを見せてもらう」

 

格闘センスというわけか?

それならば選ぶ相手はタフそうなモヒカンの人を指名した方がいいな。

一撃は重いが入った時やその後のリカバリーなどで見せられる箇所は多くなる。

 

「今、この場でお前が最もいかしていると思うポーズをとってみるがいい!!」

 

その言葉を聞いて少し気が抜けた。

この人達は一体何を言っているんだ?

そう思ったが俺はその言葉を聞いて、俺は気合を入れなおして、今精いっぱいできるポージングをする。

まずは相手に後ろを向いてお尻を向ける形になる

そして肩幅に足を開く。

頭の上まで手を広げて肘を曲げる

そのまま勢いをつけて頭を下げていき、股の間から顔をのぞかせ……

 

「ガタバル!!」

 

最後に名前を叫ぶ。

我ながら最高に力の入ったポージングだが、さて……

 

「どういう事だ、ギニュー隊長はポーズを見せていないはず」

「まさかそのポージングを己のセンスでいけていると感じ、こなしたというのか……」

「このセンス、俺たち以上かもしれないぜ」

「こりゃガタバルちゃん、逸材じゃないの」

 

4人とも驚きの顔を見せてそれぞれの反応をする。

話を聞く限りだと、俺のポーズは隊長であるギニューさんと同じだったようだ。

まさかこのセンスを持つものが目の前にいたとは……感服するほかないな。

 

「見事だ、まさか私のポージングと同じものを己のセンス一つで選び抜くとはな」

 

「それではそのセンスに応じて我々の『スペシャルファインティングポーズ』を見せてやろう、行くぞ、お前ら!!」

 

そう言って全員がポーズを取り始める。

どんなポージングを披露してくれるのか。

 

「リクーム!!」

「バータ!!」

「ジース!!」

「グルド!!」

「ギニュー!!」

 

全員の名前が判明した。

オレンジ色のモヒカンの人がリクームさん。

青い肌の人がバータさん。

赤い顔の人がジースさん。

緑の目の多い人がグルドさん。

角の生えた紫色の人がギニューさん。

 

ギニューさん以外は左右対称の美しい形。

俺がやったポージングをやるがびしっと決まっている。

さらにそこから発展するようだ。

 

「みんな揃ってギニュー特戦隊!!」

 

叫び声と同時に所定の位置で勇ましいポージングを取っている。

素晴らしいポージングだ。

心の底からそう感じて俺は拍手をしようとしたその時……

 

「ぐぁっ!」

 

背中から俺は気弾を撃たれていた。

一体何者だ!?

セッコ・オロで今まで対戦してきた相手か!!

 

「おい、劣等種が何をもって特戦隊の方々といるんだ?」

 

この姿、忘れるわけがない。

きっと今のは冗談のつもりでやるのに力加減を間違えたんだろう。

そう思いたい。

 

「兄さんか、兄さんもバカンスなのか?」

 

そう言うと今度は顔面を蹴られる。

吹っ飛んだ先で俺はリクームさんに受け止められていた。

 

「おいおい、カエンサにとっては弟なんだろ、ガタバルちゃんはよぉ」

 

俺を心配するようにリクームさんは降ろす。

悲しい事だが、あの人が俺に対して殺気を漲らせた状態での蹴りを放った事。

そして受けた事でどう思っているのか分かってしまった。

 

「あの人にとっては弟ですらないんですよ」

 

もはや他人であり、抹消しておきたい存在なのだろう。

そう言って立ち上がる。

二回もやられて黙っているほど、俺も甘くはない。

 

「侵略するのですが……邪魔をなさるつもりで?」

 

どうやらこの星を侵略しに来たようだ。

食事の嗜好というものを取り入れるつもりだろう。

糖分は戦いの後の補給としては申し分ないからな。

 

「ここは侵略ができない理由があってな、この甘味を独占する事は出来んのだ」

 

腕を組んでギニューさんが兄さんの問いに答える。

本当に口惜しいといった感じだ。

他の人達もため息をついている。

 

「それは一体なぜですか?」

 

理由が聞けていないから質問を投げる兄さん。

その質問に対してはが、バータさんとジースさんが答えた。

 

「補足はするが一応この惑星の特産品を使って作るのはできる」

 

作成自体は可能。

つまりこの甘味自体を食べる事は別段問題はない。

 

「しかし、ここ以外の惑星では材料、職人、分量が全て同じでもここに勝る味が出せなくなるらしい」

 

しかし惑星の力か知らないがこの惑星以外でやってもこの惑星以上の味が出ない。

つまり独占できても他の惑星へ工場は作れない。

更に職人を宇宙船に招くのも無理。

其れならば現地で食べる方が良いというわけだ。

 

そして侵略の話が一段落しそうだから、そこに横槍を入れてやる。

俺は兄さんの肩に手を置いてとんとんと叩いた。

 

「む?」

 

反応して振り向いた瞬間、顔面に拳を入れてやる。

顔面にめり込んでそのまますっ飛んでいく。

振り抜いて再度構えを整えた。

 

因みにこんなものはピオーネ相手ならば通用しない。

むしろ、振り向きざまに頭突きを入れられるなど手痛い仕打ちを喰らう。

そしてそのまま腹を蹴りあげられて『リインカーネーション・ブレイク』の餌食だろう。

所詮は子供騙しの手だ、それに兄さんはまんまとかかった訳だが。

 

「お前……!!」

 

兄さんはむくりと起き上がって俺の方を睨み付けていた、

殺気を滲ませているがこの程度は何ともない。

自分も最初に俺に対して気弾で後ろから攻撃していたというのに。

それなのに、俺の方がそう言った真似をしたら、怒りをむき出しにするというのは何か違う気がする。

さて……あの日から長い月日がたった、どっちが上になったのかな?

 

「ははは、こいつはお笑い草だな、カエンサ!!」

 

その声がする方向を向くと、その人はよく知っている人だった。

惑星ベジータの王様であったベジータ王。

その息子にして惑星の名をもらった天才戦士。

 

「ベジータ王子……よくぞ健在で!!」

 

俺はお辞儀をする。

まさかこのような場所でお会いできるとは、兄さんと再会できたのも喜びではあった。

しかし、王族の方が生き残っていたのは喜びであり驚愕でもあった。

何故ならばそう言った有力な存在は全てフリーザが消したと思っていたからだ。

 

「やつの戦闘力は10387だ、どうやらこの長い年月でお前とお前の親父よりも強くなったようだな」

 

ベジータ王子はスカウターで測っておられたのか。

しかし今の言葉は一体どういう事だろう。

まさかあれほどの力の差があった兄さんと父さんを俺が越えたというのか?

 

「何を言っているのです、こいつの戦闘力が私を超えている訳が……」

 

その反応は至極当然だろう。

兄さんはそう言って確認の為にスカウターを触っている。

そして、少し時間が経ってから俺の戦闘力を見た瞬間、スカウターを顔から外して勢いよく地面へと叩きつけた。

 

「認めん、貴様が俺より上など!!」

 

そう言って兄さんは駆けてくる。

しかしこの速度は俺にとっては遅い。

比較対象がピオーネというのが兄さんにとっての運の突きだが。

俺はその動きを悠々と見切っていく、回避と同時に懐に潜り込んで腹に蹴りを叩き込んでいた。

 

「ぐぉ……」

 

兄さんが呻いている間に、俺は背中に肘鉄を食らわせて地面へ叩きつける。

しかしこれで終わりではない、俺はそのまま追撃をしていく。

まずは兄さんの顔面を蹴りあげて宙を舞わせる。

肘鉄の一撃からここまでの動きの流れに関して、一切の淀みはない。

 

「このぉ!!」

 

屈辱なのか怒りに燃えた目で俺に対して気弾で攻撃を仕掛けてくる兄さん。

しかしこのような一撃はぬるい。

ろくに鍛錬や激戦の経験、死線をくぐっていなかったのか?

俺は難なくその一撃を兄さんに打ち返した。

 

「ぐっ!!」

 

兄さんは相殺をせずにさらに飛んで避けるが、これは悪手だ。

既に空を飛んでいるのにもう一度着地前に動いてしまうと次の身動きに大きな支障が出る。

その隙にこちらが後ろに回ったり一気に接近をすればその硬直時間の分、身動きが取れないだろう。

もうすぐ、この戦いに決着がつく。

一気に速度を上げて動く、追い抜いて背中を取った。

新技のこいつで終わりだ。

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

拳の先に気を一点集中させる。

背中の急所に拳を当てて、その凝縮された一撃を捻じ込んで放つ。

『ワンインチ・パンチ』と言われる技をベースに密着状態からでも相手を倒せる技を編み出したのだ。

 

「ぐえっ……」

 

今の一撃はかなり効いたようだな。

兄さんはそのまま勢いよく地面へ叩きつけられる。

もしかしたらまだ、闘争心はあって俺の油断を誘っているのかもしれない。

俺も降りて、反応を待っていた。

 

「これは、カエンサの奴気絶していやがる……」

 

ベジータ王子が兄さんの状態を確かめていた。

そして、冷たい目で見降ろしていた。

無理もない、時間にしてみれば三分も経たない間に勝負はつき、その内容は俺の圧勝。

まだ、最大の技を出す前に勝負がついてしまった。

ピオーネとの勝負でかなりレベルが上がったようだ。

 

「貴様、どうやらエリートとしての血が目覚めたようだな」

 

血が目覚めるというより、かつての家の環境が兄さんを優先していた。

こっちにとっては劣悪な環境だっただけです。

きちんとした環境でサイヤ人の特性を活かした鍛錬を行ったり、戦闘によって傷を負い続けたからだと思う。

こっちにも気配りさえしていたならば見抜けたでしょうね。

 

「貴様さえよければ、今すぐに俺が話をつけて入れさせてやってもいいぞ」

 

それはフリーザ軍に入るという事か?

どうやらベジータ王子は真実を知らないようだな。

俺は何があろうともフリーザに頭を垂れるわけにはいかないのだ。

 

「断ります、俺はまだ未熟な身、まだ色々な惑星から技術を学んだりして力をつけなくてはいけないのです」

 

理由をつけてなんとかして断る。

あいつの手足となって働くぐらいなら俺は自分の首を吹き飛ばすか舌をかみ切るだろう。

いずれは俺がこの手で惑星ベジータの敵を、バーダックさんの敵を討つと決めたんだ。

この一族が俺を惑星ズンへ送り飛ばしたあの日に、あの背中を見てから10年以上もその思いは変わらない。

 

「そうか、折角サイヤ人ナンバー2の座につけたものを……愚かな奴だぜ、お前は」

 

そう言って兄さんを置いてきぼりにしたまま、ベジータ王子は去っていった。

どうやらギニューさん達にこの惑星の特徴を言われて、侵略できないという事が分かったのだろう。

だからこそ、その報告のために一度フリーザの元へ帰るのだ。

俺ももともとこの惑星スイッツでの目的だったパフェやシュークリームをまだ食べてはいない。

戦いの後のエネルギー補給だ。

 

「おーい、こっちのシュークリームがおすすめだぞー」

 

バータさんやリクームさん達が手招きをしながらおいしい洋菓子店を紹介してくれている。

よく見ると笑顔でみんな待ってくれているのが印象的だ。

 

フリーザ軍とはいえユーモアのあるいい人たちだっている。

実の兄弟とはいえ、一撃に殺気を漲らせる悲しい人もいる。

 

そう思いながら、俺は意気揚々と惑星スイッツの洋菓子屋に入っていくのだった。




今回は登場人物が多いですがこれ以上増えるサイヤ人襲来編とかを考えると、今のうちに慣らしておかないといけませんね。
指摘などありましたらお願いいたします。

現在の戦闘力
(サイヤ人襲来10年前:悟空はレッドリボン軍壊滅(13歳))
ガタバル:10387
ベジータ:14000
カエンサ:8000

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