とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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次回からトーナメント方式の本戦の予定です
今回は各々の宇宙の最強戦士の予定です。
そして消滅宇宙の民については今回で明かしております。


『勝者の休息,上位の備え』

大神官様の言葉で終了する大会。

皆に黙ってきた罪悪感を抱えていると第11宇宙が近づいてきた。

ジレンが俺の顔を覗き込む。

 

「お前が余裕を持って戦って、軽んじていたかなど、この身に刻まれた拳と蹴りと気弾が物語っている」

 

そう言って頭に手を置く。

それはまるで父が子供相手に優しく諭すように。

この男が持つ優しさが伝わってきていた。

 

「次は白黒つける形での闘争だ」

 

ジレンがそう言って背を向けて歩いていく。

皆が自分の宇宙に戻り療養する。

ヒットとバーダックさんも来た。

 

「お前は不器用な男だからな、言わずに我慢しているだけで苦痛だっただろう」

 

そう言って拳を突き出してくる。

それに合わせると口角をさりげなく上げる。

そして俺を射抜くような視線で宣言をしてきた。

 

「お前を討ち果たして優勝の仕事を完遂しよう」

 

そう言うと脱いでいたコートを翻してキューブへ戻っていく。

すると次はバーダックさんがため息をつきながら俺を見る。

 

「俺達のような奴も真剣にならないと思われたのは癪だがな」

 

そう言って拳を突き出してくる。

それを避けてカウンターの蹴りを放つ。

飛び回し蹴りでさらにカウンターをしてくる。

 

「本戦だったらこれ以上で叩き潰してやるよ」

 

そう言って獰猛な笑みのまま、第6宇宙の方へと戻っていった。

すると今度は第9宇宙のモギが声をかけてくる。

彼女は不満げな表情も何もない。

 

「口が堅くて良かったね、勝負前に消えてたらこんなに楽しくなかったし」

 

そう言って笑みを浮かべている。

そして指差して言ってきた。

 

「きっと君が全王様に交渉をしてこうなったんでしょ、消さなくて済むようにさ」

 

それについてはもうすべてが明かされたので頷く。

その仕草を見て満足げな笑みを浮かべていた。

そして胸を張ってこちらに言葉を発する。

 

「君のおかげで消えずに済んだんだし、ありがとうの言葉しかないね」

 

そう言うと第9宇宙のベンチへと戻っていく。

最後に振り向いて笑みを浮かべながら他の3人と同じく宣言をしてきた。

 

「本戦ではロックオンしてあげる」

 

恨まれてはいない。

しかし注目を浴びてしまった。

ジレンだけではなくまさか自分の宇宙の人間以外とは驚きである。

 

「ドンマイ」

 

そう言って背中を叩くのはピオーネ。

お前は怒っていないのか?

秘密をお前に対して作ったのに。

 

「気づいていたわ、何か隠していることぐらい」

 

やっぱりお前には隠せないか。

本当ならいう事でみんなが和気あいあいと戦えたらよかったんだが。

それをして消滅の可能性がある以上、軽々とはできない。

 

「僕にまで黙っていないといけなかったんだな」

 

ビルス様が言ってくる。

もし言ったら言いふらしてしまうでしょう。

あと、気づかれないように徹底的にしていたのだろう。

ウイスさん達の杖に映らないように大神官様が映像視認の部分をいじくっていたらしい。

 

「交渉自体は成功していたんですが……」

 

よくやってくれた。

それだけつぶやいて頭に手を置かれる。

フリーザやブロリー達も肩をすくめるなり責める事はしなかった。

しかし本戦に残った相手の強さを見ると、こちらを気遣うような視線を渡してきた。

 

「全宇宙で数えても五指に入るであろうメンバーが揃い踏みですね」

 

ジレン、ピオーネ、バーダックさん、ヒット、自分。

この面子がぶつかるのだ。

金だってとれるであろうカード。

恐ろしいものである。

 

「私が残ってしまっても全王様の機嫌を損ねる形になりますので」

 

そう言ってカカロットを見る。

あの時、別にピオーネが助ける必要もなかった。

しかし大人の事情というもの。

機微を読んでカカロットを残したのだ。

 

「あいつもまた目覚めてはいるが、正直どうでもいい」

 

あの態度がしこりとして残っている。

仲間だと思っていたがそうではなかった。

戦うためならば駒のような扱い、邪魔者扱い。

そんな真似をしようとしたあいつに協力する気もない。

別に本戦にまでは出たし、全王様には義理立てした形だ。

前提条件として、一人だけの戦いで援助なんてできないし。

そんな事を考えているとベジータが肩を叩く。

 

「俺様はお前のあの状態を観察して高みに上ってやる」

 

その為にも一戦でも多く見せる様にしろ。

そう言ってキューブへと向かう。

頑張れと一言言うのも少し恥ずかしいのだろう。

だからこそ少し曲げて言ってきた。

 

「応援していますから頑張ってください」

 

そう言ってブロリーもキューブへ入っていく。

ダメージがあるとは思ったが、もう普段と同じ動きをしている。

相変わらずの頑丈さだ。

 

「お前の交渉で全宇宙は救われたというわけだ」

 

ピッコロがほっとした顔つきで言ってくる。

目の前で消えられて困る宇宙もあったからな。

俺も無礼を承知でやってみて良かったと今なら思えるよ。

まあ、気が気じゃなかったけど。

 

「僕は応援に行けないかもしれませんが、がんばってください」

 

そう言ってキューブに乗り込む悟飯。

そう言えば今回もスケジュールがあったから来れただけで、本来は分からないもんな。

超ドラゴンボールが貰えるようにはしてみるか。

 

「今回の秘密…てm『全覧試合』から始まっていただろ」

 

サラガドゥラがそう言ってくるので頷く。

額に手を置いてガックシというような動きだ。

見抜けなかったのが悔しいのだろう。

 

「お前さんには面倒ばかりかけるのう」

 

亀仙人様が言ってくる。

放っておけばいいのにカカロットがやるからフォローしないと。

もしあれで行かなかったら本当に消滅をかけた地獄絵図でした。

 

「今度はオラの勝負を、邪魔しねえでくれよ」

 

腰に手を当てて、いかにも不満げな感じでカカロットが言ってくる。

まったく、こいつは……

お前はピオーネが庇わなければ落ちていたんだぞ。

それに次は横槍も何もお前ひとりで戦うしかない。

そして断言してやるよ。

 

「今のお前は下から数えた方が速い程度だってな」

 

最低でも超サイヤ人ブルーのレベルがごろごろと居る魔境の16名。

そんな中、まだ偶発的に発動した『身勝手の極意』だけでは勝てない。

運がよくないといきなり俺と当たっても悲惨なだけだ。

 

「まあ、帰るか」

 

明日の本戦までにできる事。

それは休息を取り、次の戦いに思いを馳せる事だ。

ジレンだけじゃあない。

免除宇宙がどの次元を連れてくるのか。

それだけが気がかりだった。

 

.

.

 

「帰るか……」

 

俺は立ち上がる。

猫が獅子に化けたように、ガタバルの成長に目を見張った。

破壊神を凌駕する実力者相手に一歩も引かぬ胆力。

そして互角に戦えるだけの実力の上昇。

それは一つの決意をさせるには十分だった。

 

「おい、マティーヌ」

 

俺が呼ぶと天使が近づく。

俺の顔を見てただ事ではないことを悟る。

無理もない、本来なら出す気がなかった戦士を出すつもりなのだから。

 

「『エルク』を呼べ」

 

古代種(エンシェント)』のカナッサ星人。

『消滅宇宙』の戦士の一人だ。

ケージン以上の実力を持つ我が宇宙最強の戦士。

 

「構わないのですね?」

 

マティーヌが確認をするので俺が頷く。

無論、構わない。

ケージンとは比べ物にならん強さ。

ナンバー2から五指に入る実力者、全てでようやく。

もしくはこの破壊神である俺が出ないと止められぬ。

 

「それでもあの男に勝てるのかがわからない」

 

第11宇宙のジレン。

奴は規格外にもほどがある。

まあ……

 

「回復を認めないトーナメントであれば機会などいくらでもあるさ」

 

そう言って俺達は去っていく。

最強のメンバーを引き連れて全王様の宮殿に赴こうじゃないか。

 

.

.

 

「困ったな……」

 

あれだけの激戦。

わが宇宙の戦力。

計算するとなかなかすんなりとはいかせてくれない。

 

「『イエラ』と『エキ・ロズクォ』の二人を呼べ」

 

『消滅宇宙』の中にあった『ブルームの民』

その存在がいた惑星は非常に美しかった。

第5宇宙でも再興をし、全宇宙最高の花畑と庭園を誇る。

 

「デンドは今回呼ばなくてよいのですか?」

 

私はその言葉に頷く。

奴も強いが『ブルームの民』の中では新鋭。

それ以上の力を有する女王陛下と護衛騎士団長。

出せるだけの実力は惜しまない。

 

「彼らに片手間で勝てるなどは夢幻と言っても差し支えはない」

 

だから全力で叩き潰すのみ。

おごる事もない。

決して油断もしない。

これ以上とない機会は逃したくなどないのだから。

 

「頼むぞ、イル、コルン」

 

私たちの昇格という計画の遂行のために一丸となる。

一枚岩となり成し遂げて見せよう。

その思いを胸に帰還していくのであった。

 

.

.

 

「あれほどの脅威、久々に冷や汗をかいた」

 

自分の宇宙の戦士であったなら……

そう考えたら悪い結果のみが頭に浮かぶ。

ジレンとガタバル。

あの激戦に胸躍るものを感じると同時に恐怖を抱いた。

人でしかないはずの彼らが神を越えようとする。

無限の可能性を秘めている。

 

「だが、引いていては何も始まらないか」

 

溜息をつく。

ガタバルが恐れ多くも全王様との交渉により実現した昇格の機会。

本来ならば礼を我々は言わねばならなかった。

しかし、疲労困憊だと感じたが故に踏みとどまった。

 

「『ダイヤ』の力が必要になる」

 

古代種(エンシェント)』のメタルマン。

元は精神的な強靭さより生まれた呼称。

そして皮膚の硬度が高い者たち。

それが惑星の移動によって外的環境に耐えるために皮膚と体中の器官が徐々に変わる。

何千、何万という途方もない時の中での進化の結果、体中が金属となり、肉体的な強靭さでの呼称に変貌した。

 

「彼ならば不可能を可能にしてくれるでしょう」

 

そう言う言葉に頷く。

我が宇宙最強の防御力。

そしてそれゆえの攻撃力。

いずれにしても手札を全て吐き出すのみ。

 

「勝ちのイメージも浮かぶし、規則次第でやりようはあるはずだ」

 

そうとなれば善は急げ。

自分の宇宙への帰還の用意をする。

彼らを呼んで、脅威を伝えて用心させる。

明日の夜明けが燦燦と輝くものであり、それが自分の未来を照らすと信じながら。

 

.

.

 

「せかせかと帰っていきますね」

 

その界王神の言葉にわしは頷く。

我々は一番の宇宙である。

それ故に王者の貫禄が必要になる。

 

「こちらも最大戦力を?」

 

その言葉に頷く。

無論そのつもりだ。

出し惜しみの理由など微塵も有らず。

 

「『ルタ』をメンバーに入れてほしい」

 

古代種(エンシェント)』のナメック星人。

その名を呟いた瞬間、界王神の表情が凍る。

実力ならばよく彼も知っているからだ。

 

「彼を出すという意味を理解されたうえで?」

 

分かっている。

彼を出すという事の恐ろしさを。

彼は第1宇宙の中でも一番強い。

それも途方もないほど。

あの『全覧試合』に彼を出していたら優勝確実だっただろう。

 

「彼もまた進化を遂げた我が宇宙の戦士なのだ」

 

転生とも言うべき進化を遂げた戦士。

その過程を有体に言えば……

祖先が自らの力を全て注ぎ『人型』の『魔族』を作った。

それは人における生殖可能な要素を増やし、積み重ねてきた魔族の戦闘力を捨て去った。

 

そして生命の営みを繰り返して子を成していく。

死期が迫れば若い者と同化をして二人のナメック星人となる。

そのサイクルによって生み出された。

 

使えるであろう魔術を研鑽するよりも戦闘力への研鑽に勤しみ力へと変えた、人の外見をした純粋なまでの戦士型ナメック星人。

それが彼なのだ。

 

「わしらが至高の宇宙であることを再度奴らに認識させてやろうではないか」

 

そう言って帰還をする。

願わくば尊敬と畏怖を我が宇宙に。

昇格などではなくわしらはわしらの力を見せつけてしまえばいい。

そうすれば結果は自然と付いてくる。

控えめにガッツポーズをして気合を入れるのであった。




消滅宇宙の行き先
第13宇宙:古代種(エンシェント)ナメック星人 ⇒ 第1宇宙
第14宇宙:古代種(エンシェント)カナッサ星人 ⇒ 第12宇宙
第15宇宙:ブルームの民 ⇒ 第8宇宙
第16宇宙:古代種(エンシェント)メタルマン ⇒ 第5宇宙
第17宇宙:ルティの民 ⇒ 第9宇宙
第18宇宙:バンヤの民 ⇒ 第7宇宙

由来:
ブルームの民:英語で一般名詞で花を意味する『ブルーム』
ホルティーの民:ラテン語で庭園を表す『ホルティー』
バンヤの民:『野蛮』のアナグラム

名前の由来:
『ルタ』:PC機器のルーター 『ケブルー』:PC機器のケーブルのアナグラム
『エルク』:魚類のクエ 『ケージン』:魚類の鮭児(けいじ)
『イエラ』:花の夜来香(イエランシャン)
『エキ・ロズクォ』:花のエキウム・ローズクォーツ
『アレキサ』:宝石のアレキサンドライト『ダイヤ』:宝石のダイヤモンド

古代種はこれから『エンシェント』とルビを振るようにしました。
2位の宇宙の最強と1位の宇宙の最強はかなり意図して強い戦士にしています。
トーナメント表を考えてはいますが散らすところに悩みますね。

指摘などありましたらお願いします。


第1宇宙のルタが魔術使えないみたいな書き方をしてましたが変更いたしました。
使えるけどうまくないといった感じのイメージでお願いします

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