とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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ピオーネとカリフラの対決です。
今年も一年、皆様が見ていただいたことで100話を超えるまでの執筆が出来ました。
感謝の言葉として『ありがとうございます』と書かせていただきます。
来年はさらに精進して皆様に楽しんでいただける内容を執筆できるようにいたします。
来年もよろしくお願いします。


『淑女の逆鱗』

「死になさい」

 

怒りが最高潮に達した私は相手へ向かって動き出す。

いつものゆらりとした感じではない。

いきなりの最高速だ。

 

「ハアッ!!」

 

瞬く間に懐に入り込むと足を動かす。

目的地は首筋。

急所へ躊躇いなく風を切る音と共に放たれる。

 

「ぐっ!!」

 

相手は目で追えなかったみたいで、大げさに後ろへ飛ぶ。

確かに回避は出来ているけれど、反撃の機会を失うことになる。

まだまだ試合運びに関しては未熟ね。

 

「それに私から逃げられはしない」

 

瞬間移動で後ろに立つ。

そして首に向かって腕を伸ばす。

捉えた瞬間、まるで蛇のように巻きつかせる。

 

「ふんっ!!」

 

腕に力を込めて首を絞める。

さらに、持ち上げていく事で足を地面から離させる。

つり下がったような状態になって苦しくなっているだろう。

 

「ぐぐぐ……」

 

相手が腕に力を込めて剥がしにかかる。

しかし吊り下げられた不十分な態勢では力が出ない。

剥がすには不十分な力の込め具合だ。

このまま絞め落としてもいい、不慮の事故で死ぬことがあろうとも

 

「離しやがれ!!」

 

大きな声を出した瞬間、腕の力が強くなる。

さらに力の込め具合で僅かに首が太くなって拘束が緩む。

それを見てさらにこちらを掴む力を強める。

 

「がああっ!!」

 

叫び声をあげて力づくで引き剥がしてくる。

なるほど、これがこの子の超サイヤ人4の腕力という訳ね。

あの子よりは劣るし、形態もまだなって間もないみたい。

 

「私に勝てると思っているのかしら?」

 

超フルパワー超サイヤ人4のあの子と戦ってきたのよ。

そして『身勝手の極意』の状態のあの子とも。

貴方じゃあ絶対に勝てないわ。

 

「剥がした直後に留まっていたら隙だらけよ」

 

振り向く隙も与えない。

その背中に迫撃砲の様な蹴りを放つ。

相手を飛ばして自分の体勢を整える。

 

「ぐっ!!」

 

こちらを向くけど遅い。

相手の速度を考慮してバックステップ気味に振り向くべきだ。

その振り向く合間に、私はすでに懐に入っている。

 

「ちっ!」

 

気づいて防ぎにいくが、穴だらけ。

隙間を縫って当てればいい。

そしてそう言うのは得意なものだ。

 

「はっ!!」

 

掌底で顎に一撃。

頭を揺らしている間に心臓めがけて蹴りを放つ。

これでうまくいけば気絶となり、勝ちが転がり込んでくる。

無論、場所が場所なだけに不慮の事故も起こりかねない一撃だが。

 

「があっ!!」

 

揺れる頭の中、爆風の様に声を発する。

そこでブレーキをかけて、すぐにバックステップ。

足がもたつく中、蹴りを避けた。

しかしそのもたつきのタイムラグは非常に大きなもの。

 

「だから何?」

 

それよりも速く動けば何の意味もない。

頭の上に陣取って膝蹴りで地面へ叩きつける。

これで速く動いているつもりなのかしら?

私にしてみれば遅くて遅くて……

 

「欠伸が出ちゃいそう」

 

眠気すら感じているわ。

私のそんな仕草を見て、相手は怒りを露わにする。

元は貴方が悪口を言うから、その仕返しのつもりなんだけれどね。

それでも、相手にしてみれば戦闘民族として相手に戦意を持たれていない。

その事実は今までのプライドをずたずたにされているわけだ。

 

「悔しかったら速く来なさい、小娘」

 

さっきの悪口を返す。

酸いも甘いも噛み分けていないくせに。

そんな舐めた口をきいていい人間、聞いてはいけない人間を教わらなかったの?

もし教わっていないのなら、覚えておきなさい。

 

「やってやんぜ!!」

 

蹴りを放ってくる。

これはまた随分と大味な蹴りね。

積み重ねて当てる気がないから避けやすい。

 

「素人の動きよ」

 

蹴りを最小限の動きでかわす。

相手の隙をつくためには自分の動きにも気を付ける。

それが経験によって導き出されるもの。

ただ感覚だけでやっていては伸びてはいかない。

やはり経験値という下地がなければ。

隙だらけの頭部へトマホークチョップ。

 

「ぐっ!!」

 

相手が僅かにのけぞった瞬間にさらに追撃。

ビッグブーツで相手を蹴り飛ばす。

そして瞬間移動で無防備な背中に陣取る。

 

「曲線を描く!!」

 

そして腰を抱えて、バックドロップ。

流れるような連撃でダメージを与える。

相手はしたたかに体を打ちつける。

 

「なんでこんな差があるんだよ!!」

 

タフさだけはやはり超サイヤ人4なだけある。

すぐに立ち上がる。

転がって距離を取り体力の回復、ダメージを抜くことに専念すればいいのに。

そこもまだまだね。

こっちを睨みつけて、憤慨するように声を張り上げる。

 

「だって超サイヤ人4の相手なんてもう何百回以上もしているもの」

 

その状態より強い形態のあの子と何度も組み手をしてきた。

貴方より強い超サイヤ人4と長い間錬磨してきた。

その経験で超サイヤ人4に慣れている。

そして同じ強さの地点に至った。

『身勝手の極意』無しでもあの子と積み上げてきたこの強さは折り紙付きよ。

 

「それ以外にも差をつけている理由は有るわ」

 

そう言って相手に近づいていく。

相手は理解できていないのか。

はたまた、近づいてくる私をどう倒すか算段を立てているのか。

 

「その内容は『年齢の差と守りたい人と切磋琢磨しあえる存在』」

 

単純に挙げてもこの3つ。

年齢の差というのは言葉通り。

目の前にいる貴方より私の方が年齢は上。

それは生まれてきてから肉体や技術を鍛えたりする時間が多いという事。

その分、戦う機会も多いから経験の差は年齢の分、単純に広がっていく。

 

次に守りたい人。

これはあの子を含んだ、私の家族。

それ以外の人たちは失礼な話だけれど優先度は落ちる。

あの子達のためになら、悪魔にも鬼にでもなれる。

破壊神だって、大神官だって、全王だって敵に回してもかまわない。

 

そして切磋琢磨しあえる存在。

あの子が私に追い付こう、そして追い越そうとしてくれた。

その気持ちに応えるように私もあの子には負けたくなかった。

あの子にとって高い壁であり続けたい。

だから私は自分の限界を超えるためにどこまでも錬磨する。

 

あの子がいてくれたから愛を知り、競い合う事を知った。

私はでもあの子の前ではそんな事は言わない。

それはきっと言葉にしなくてもいいから。

 

「それだけで戦士は化けるのよ」

 

私は不敵な笑みで相手を見る。

それがないから貴方はまだその地点にいる。

恋をしろとは言わない。

ただ切磋琢磨をしあえるいい仲間を見つけてたら別の結果になっていたわ。

 

「若さが強みになるとしても実力が伴っている時だけよ」

 

体力の差や腕力に差は出るけれど、それを補う何かを持っているものよ。

動きのキレ、無駄の無さ。

経験による洞察力。

私のように超能力とかもその類ね。

 

「退屈させないでね、お嬢ちゃん」

 

指をちょいちょいとして挑発する。

それを見た瞬間、一気に気を膨れ上がらせる。

感情に左右される系統なのね。

 

「舐めてんじゃねえ!!」

 

足に力を入れたのがわかる、バレバレね。

一気に懐に飛び込んで攻撃を仕掛けようとしている。

力みから足が解き放たれた瞬間、地面がはじけ飛ぶ。

 

「おらあああ!!!」

 

叫んで飛び込みと同時にアッパーカットを放つ。

随分と熱が籠っているのね。

でも、その程度の怒りなんて……

 

「あの暴言を言われた私に比べたらかわいいものよ」

 

バックステップをする必要もない。

拳骨気味の一撃で飛び込みを迎撃する。

頬にめり込み首が跳ね上がる。

 

「ぐはっ……!!」

 

相手が倒れ込みそうになる。

しかし無意識の間に体勢を整えてあったのだろう。

踏みとどまって何とか耐えきった。

しかし、それでもダメージは大きいようで相手は膝をがくがくとさせながらこっちを見ている。

 

「私みたいに変身してるわけでもねえのに…」

 

変身は確かに強くなるわ。

しかし、それがなくても強い種族もいる。

それが私でもある。

あとは自分だけが怒りを出していると思っている。

確かに始まった時に比べて収まっているように見えるかもしれない。

でもその内面では……

 

「マグマの噴火の様にとめどなく溢れているわ」

 

それが私に力を与える。

人の体に眠る感情の爆発力。

それすらも理解していないのね。

 

「もっと……もっと力だあああ!!」

 

力を振り絞るけれど、これ以上は相手の動きに付き合う気もない。

こっちの逆鱗に触れた分の制裁もまだ終わっていない。

このまま決めさせてもらうわ。

 

「おらあああ!!」

 

相手の力を漲らせた拳が迫ってくる。

脇も閉まっていない、大雑把な形。

当てれば倒せるという風情。

技術も何もあったものではない。

 

「当たるわけがないじゃない」

 

その攻撃をかわして側面に回る。

伸ばしきった腕、閉まっていない脇。

こんな隙だらけな状態なんてあの子がやったら即決着の次元の失態。

 

「甘いのよ」

 

脇下に腕を差し込み、膝裏を蹴りあげてバランスを崩させる。

さらに側面からもう一つの腕を伸ばし頭を掴む。

そして崩した勢いのまま、地面に叩きつける。

 

「ぐおっ!!」

 

強靭な体だからか、それとも浅くなっていたのか、思ったよりもダメージは少ない。

むくりと起き上がってきて、そのまま跳躍。

飛び後ろ回し蹴りを放ってくる。

 

「んっ……?」

 

それを受けるが若干の違和感を感じる。

腕に感じる攻撃の重さ。

それがさっきより変わっているのでないかと思う、

 

「でも……」

 

だからと言ってこっちの攻撃の手は緩めない。

着地と同時に相手の蹴りが放たれる。

その内側を鋭く蹴ってバランスを崩させる。

 

「なっ……!?」

 

驚愕の顔でこちらを見る。

細い足からの想像を超えた一撃を感じているはず。

見た目通りの筋肉の量と思ったら大間違い。

マッチョな男性ほどではないが、それなりの足の太さはある。

 

「はっ!!」

 

腹部に拳を叩き込む。

これも鍛え上げられた腕から放たれる一撃。

その威力は普通の超サイヤ人4では耐えきれる代物ではない。

くの字に曲げさせて片膝をつけさせた。

 

「ぐううう!!」

 

起き上がって蹴りを放ってくる。

回避するが違和感の正体に気づく。

その風圧がさっきより強くなっているのを感じる。

殻を破ってきつつはあるのね。

 

「まあ、このまま決めるから意味はないんだけどね」

 

そう言って次の攻撃に備える。

こちらから行ってもいいけど、カウンター気味にした場合、相手の隙をつける。

回避行動を次にとりにくいなど、もろもろを考えたうえで相手の動きを待っている。

 

「だりゃああ!!」

 

顔面に拳を放ってくる。

脇が閉まってはいるがまだまだ無駄な動きがある。

こんな拳なんて何発打っても私は倒せないし当てられない。

 

「終わらせてあげる」

 

迫りくる拳を掴んで上空へ投げる。

上空へ舞い上がった相手は体勢を整えることもできない。

まな板の上の鯉と同じだ。

 

「ぐっ……嫌な感じがしやがる!!」

 

そう言いながら体を動かす。

私の視界の範囲からは逃げられない。

そしてその姿に対して照準を合わせる。

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

 

気弾が相手を呑み込む。

手応えはあるが視線は外さない。

煙が晴れた時、睨み付ける眼光。

 

「まだ……やれるぜ!!」

 

気のバリアーで耐えたのね。

でもそれにも限界はある。

こうなったら仕方ないわね。

 

「貴方、幸せ者よ」

 

落ち着いてきた心。

あの子相手でしか出さない本気。

それをぶつけてあげるんだから。

 

「ほざけ!!」

 

ギリリと噛みしめて、悔しさを押し出すように突撃の体勢を取る。

手負いになって開き直ったのか。

不要な力みがまるでない。

 

「でも……無駄よ」

 

相手が踏み出して加速しようとした瞬間に止める。

これぞ技術の粋を集めた妙技。

相手の攻撃の先読みという洞察力や経験による算出。

それを極めたらこんな芸当ができる。

当然、動きを止めるための速度も兼ね備えた上の話だが。

 

「なっ!?」

 

動けない自分に驚愕する相手。

そんな相手に対して悠々とヘッドシザースを喰らわせる。

脚力を最大限に活かして高々と舞い上がらせる。

それを追いかけるように、上空へと跳躍する。

 

「そして……」

 

相手と背中合わせになって技の動きへ移行する。

相手の両足に自分の足を外側から差し込む。

両腕をこちらの両腕で制する。

鳥の羽のように肩を上げさせて痛めつける。

徐々に反らしていって猛烈な圧力をかけて落下。

 

「『ラヴァー・ハーベスト』!!」

 

その一撃は跳躍する脚力も。

拳を振るう膂力も。

そして闘志すら根こそぎ奪う悪夢のような技。

 

「この一撃は強靭なあの子でもノックアウトできる想定の威力よ」

 

組手と戦いは違う。

両者が死ぬ寸前までやりあわないようにしていた。

しかし、技は磨いていく。

その中でも最高傑作の技を初めて振るった。

 

「さて……意識もないようだし」

 

胸倉をつかんで放り投げる。

それは放物線を描き、ベンチへと戻っていった。

終わってみれば圧倒的に勝っている。

しかも相手のクリーンヒットは無し。

 

「本当に退屈だわ」

 

本気になればこんなもの。

もう時間もないから、次の戦いが最後になりそうね。

私は一息ついて、戦いが始まる方向へ視線を向けていた。





第2宇宙:10名脱落
リブリアン(ガタバル),カクンサ(ガタバル),ラパンラ(ガタバル)
ビカル(ピオーネ),ロージィ(ピオーネ),ジーミズ(ピオーネ)
ハーミラ(ベリー),ザーブト(悟空),ザーロイン(サラガドゥラ),プラン(ベジータ)

第3宇宙:10名脱落
コイツカイ(悟空),ニグリッシ(悟空)
ボラレータ(バーダック),ナリラーマ(ヒット),
ザ・プリーチョ(ガタバル),パンチア(悟飯),パパロニ(ピオーネ)
ビアラ(ベルガモ),カトスペラ(モギ),マジ・カーヨ(ジレン)

第4宇宙:10名脱落
ガノス(バーダック),マジョラ(バーダック),ショウサ(バーダック)
ダーコリ(亀仙人),キャウェイ(亀仙人),ニンク(サラガドゥラ),ダモン(サラガドゥラ)
モンナ(キャベ),ガミサラス(ピオーネ),シャンツァ(ベジータ)

第6宇宙:8名脱落
フロスト(ジレン),ドクターロタ(ジレン)
ボタモ(悟飯),カリフラ(ピオーネ),マゲッタ(ピッコロ),ケール(ブロリー)
ベリー(ディスポ),キャベ(トッポ)

第7宇宙:6名脱落
亀仙人(ジレン),ピッコロ(ジレン),サラガドゥラ(ジレン)
悟飯(バーダック),ベジータ(バーダック)
ブロリー(カリフラ)

第9宇宙:9名脱落
ホップ(フリーザ),コンフリー(フリーザ)
ベルガモ(ジレン),ラベンダー(ジレン)
オレガノ(バーダック),チャッピル(ガタバル),ローゼル(サラガドゥラ)
ソレル(ピオーネ),バジル(ベジータ)



第10宇宙:10名脱落
ジラセン(ブロリー),リリベウ(ブロリー),ジルコル(ブロリー)
ザマス(ガタバル),ナパパ(ガタバル),オブニ(ガタバル)
ムリサーム(フリーザ),ジウム(フリーザ)
メチオープ(悟飯),ルベルト(ピオーネ)

第11宇宙:8名脱落
カーセラル(カリフラ),ゾイレー(カリフラ),ケットル(カリフラ)
タッパー(ケール),ブーオン(ケール),ココット(ケール)
クンシー(バーダック),ディスポ(ベリー)

現時点:71名脱落
残り9名
撃墜数
8人:ジレン,バーダック,ガタバル,ピオーネ
4人:カリフラ,フリーザ,ブロリー,サラガドゥラ
3人:ケール,悟空,悟飯,ベジータ
2人:ベリー,亀仙人
1人:キャベ,ヒット,ピッコロ,ベルガモ,ディスポ,トッポ,モギ

指摘などありましたらお願いします。
新年早々の戦いは最後のふるい落としの予定です。

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