とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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ジレンが技を見せていないのでオリジナルの技をやっています。
あのでかい気弾の名前は何なのでしょうかね?
キャラ崩壊してるかもしれなくて済みません。


『心の揺らぎ』

ゆらりと動く。

相手の動きも見える。

 

「纏う空気が変質したか」

 

そう言って攻撃をしてくる。

それを首を動かして最小限の動きで避ける。

 

「しっ!!」

 

体は己が本能のままに動く。

しかし言葉や視覚はしっかりと認識できている。

突き出す拳も相手を倒すための最善の一撃。

 

「ふっ!!」

 

それをヘッドスリップでかわす。

その次は下半身に蹴りを叩き込む。

 

「むっ!!」

 

脛でカットをする。

しかしその瞬間を逃しはしない。

 

「むんっ!!」

 

片足状態になったジレンを抱え上げて跳躍。

そのまま、体勢を整えさせずに床に叩きつける。

 

「ぐうっ……」

 

流石に効いたのだろう。

立ち上がる時に唸っていた。

 

「ハアッ!!」

 

その体勢を立て直す前にフライングボディプレス。

しかし目に力を込めた瞬間。

 

「ぐおっ!!」

 

僅かに弾かれる。

だがこの程度の小細工で……

 

「止まるかぁ!!」

 

ショルダータックルで突っ込む。

しかしジレンも同様の体勢で迎撃をする。

 

「ふんっ!!」

 

互いの衝突は『無の界』全体を揺らしている。

不意に視線が突き刺さる。

この数から察するに誰も戦っていない。

全員がこの戦いに見入っている。

 

「力では分があるか」

 

そう言ってジレンが動く。

ジャブ二発からのローキック。

 

「はっ!!」

 

ジャブを捌いて、その足をとる低空タックルを放つ。

しかし次の瞬間、もう一つの影があった。

 

「二度も同じ手を喰らいはしない」

 

そう言ってこめかみに一撃を叩き込まれる。

そして延髄切り。

 

「ぐあっ!!」

 

最善を超える一手を放つ。

こいつもやはり理性で判断しているが同じような動きができる。

 

「俺の技を見せよう」

 

そう言うと掌に雪のごとく気が集まる。

その一撃が掠ると……

 

「『夢散虚雪』」

 

凍傷を思わせる状態。

気を放出して熱と変え、治す。

 

「『月果哀雷』」

 

雷がうねって槍を形成して放たれる。

こいつ、気のコントロールも無茶苦茶上手だ。

空気中から気を使って生成。

サラガドゥラとは違う手法で自然現象を引き起こしている。

 

「『ファイナルフラッシュ』!!」

 

ベジータの技で相殺。

とは言えど挌闘だけでなく気弾の威力もほとんど互角となると……

 

「塵一つでも失敗をすればその差が響く」

 

構えるが相手から花弁が舞っている。

それは気で出来たカッター。

 

「『華彩舞映』」

 

それは全て俺に向かってくる。

だがそれを迎え撃つ技はある。

 

「『渦巻十枝』!!」

 

指から放って巧みに花弁に当てていく。

それを全て爆発させる事で相殺。

 

「やはりこの技たちもあまり通用しないか」

 

そう言ってこっちを見ている。

しかしこいつ……

 

「随分と細かい技の連打だな」

 

一撃で決めるという内容の技ではない。

あくまで牽制や攻撃のつなぎ。

本命は肉弾戦か?

 

「大技を打って優位に進めるにはまだ足りない」

 

隙も無い相手へ打ち込むなど愚の骨頂。

そう言うように構える。

 

「それについては同感だ」

 

そう言って蹴りを繰り出す。

その蹴りを回避しようとする瞬間に跳躍。

ジレンが避けた方向とは逆の方向へ気功波を放つ。

 

「うおお!!」

 

さらに勢いを活かして体勢を変える。

胴回し蹴りを奇抜な方法で放っていく。

 

「ぐっ!!」

 

ジレンの脇腹に当たり横なぎに飛んでいく。

そして着地。

 

「まだまだやれるだろ?」

 

こっちが構えて睨む。

互いにダメージはある。

しかし決定打は叩き込めてはいない。

 

「無論だ」

 

そう言って逆襲の低空タックル。

回避行動の隙さえ与えられず倒される。

 

「ふんっ!!」

 

無慈悲な鉄槌が顔にめり込む。

だが二度も三度も喰らわない。

即座に脇腹へ指を捻じ込む。

 

「…!!」

 

激痛が僅かに押さえつける力を弱めさせる。

その瞬間、体を跳ね飛ばして回避。

 

「この程度で倒せはしない」

 

ジレンのショルダータックルをいなしていく。

だが流石にこちらも頭が揺れている。

並の一撃がこの大会の中堅レベルの必殺技と同じ威力だ。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

雨霰の気弾。

それを平然と掻い潜っていく。

掠らせる事もない。

こっちは無論当てていくつもりで放っている。

 

「『涸不時雨』」

 

こっちに返すと言わんばかりの気弾の放出。

空を覆う様な量を俺一人に放ってきた。

 

「しかしお前にできたことならば!!」

 

俺も同様にかわし続ける。

だが……

 

「くっ!!」

 

僅かに二発。

尖った気弾が頬と腕に掠る。

 

「『双捉蛇牙』」

 

かわそうとしてもついてくる蛇の気弾。

牙をむき出しにしてくる。

こちらにも二つの気弾であれば技はある。

 

「『ツイン・ファルコン・クラッシュ』!!」

 

二匹の隼とぶつかり合って相殺。

その瞬間、裏拳が飛んでくる。

それを受け止めて前蹴りを放つ。

 

「むんっ!!」

 

ジレンも易々と喰らいはしない。

前蹴りを掴まれて、肘を叩き込まれる。

その激痛を押し殺して延髄切りをジレンに叩き込む。

 

「無駄だ」

 

逆の腕で防がれる。

だったらこれは?

 

「ハアッ!!」

 

ジレンの目の前から消える。

瞬間移動をして後ろから肘打ちを叩き込む。

 

「ぐっ……」

 

不意打ちに流石に体勢を崩す。

ここで逆襲をしていく。

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

背中に一撃。

爆ぜるような衝撃をジレンに与える。

 

「くっ」

 

こっちを向きながら攻撃に備えている。

だがその一瞬が十分な隙だ。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

ジレンが腕を交差して受け止める。

回避するための時間も考えていた分、対応が遅れた。

 

「まだまだ!!」

 

足を掴んで振り回す。

地面に叩きつける。

起き上がる瞬間に背中からぶつかる。

 

「もう一撃!!」

 

踏み込んで腕を突き出す。

それに対応するようにジレンも全力の一撃。

 

「ぐはっ!!」

 

俺は吹っ飛んだ。

しかしジレンは片膝をついただけ。

一撃の重さの優劣があった。

 

「ハハッ……」

 

俺の一撃にわずかに押し勝った時。

ジレンの顔に確かな変化があった。

笑顔になっていたのだ。

 

「良い顔してるじゃないか」

 

そして拳がぶつかり合う。

顔がお互いに跳ね上がる。

 

「くっ!!」

 

今度はジレンが吹き飛ぶ。

立ち上がる時に組み合う。

 

「お前、変わったな」

 

さっきまで無機質だった。

瞳には宿してはいたけれど。

それが今は全然違う。

 

「何が言いたい?」

 

俺の言葉に反応をするがギリギリと力を強めている。

負けてやる気は全くないぞ。

 

「なんだ、気づいていないのか」

 

そう言って力をさらなる力でねじ伏せる。

お前相手だから限界を越えようともがく。

 

「お前、笑っているぜ」

 

そう言って力比べで体勢を崩したジレンに膝蹴りを叩き込んで蹴り飛ばした。

そのことを自覚したのか頬をなぞる。

 

「ああ……そうか」

 

それを自覚した瞬間、気が徐々に熱を帯びていく。

まるで今まで閉じ込めていた心が噴き出すように。

 

「ベルモッド様の時にはなかったこの感覚……幼いころから久しく忘れていた」

 

破壊神相手の時は無礼と感じる心からその余裕がなかったのだろう。

だが今はそれがない。

宇宙の為ではあるが、己の思うが儘に心をさらけ出しても咎めはない。

 

「これが『楽しい』ということだったな……」

 

そう言って仕返しと言わんばかりに蹴りを叩き込んでくる。

それを防ぐがさっきまでとは違う。

感情のこもってない一撃ではない。

溢れんばかりの感情、表現しようのない沢山の思いを乗せている。

 

「もっとだ、もっといくぞ!!」

 

そんな攻撃を受けて、応えない戦士は居ない。

こちらは拳を突き出す。

互いが体重の乗る、最大威力の拳を放てる間合い。

 

「ハアッ!!」

 

こちらから先に拳を突き出す。

唸りを上げて顔へ向かって行く。

 

「ふんっ!!」

 

それをひらりと避けるジレン。

さらにそこにカウンターを放ってくる。

 

「なんの!!」

 

それをヘッドスリップでかわしてアッパー。

顎を狙いに行く。

 

「喰らうものか!!」

 

それを腕を交差して止めてハイキック。

風を切り裂く一撃を首を下げて避ける。

そして逃さないように掴んで投げる。

 

「ここでお前を仕留める!!」

 

ジレンの前を瞬間移動でとる。

そしてそのまま大技へ入っていく。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

灼熱の鳥がジレンを呑み込もうと迫っていく。

この一撃は今までの技とは別次元の威力を誇る。

これを避けるか?

はたまた受け止めるか?

どういった決断をするのだろうか。

 

「ぐっ……」

 

避ける事はしてはいけない。

そう言った決意を目に宿している、めらめらと燃え盛る炎が体中から立ち昇っているような錯覚さえ覚える。

勢いよく手を前に出して受け止める。

しかしその手を焼き付かせる。

そう簡単に受け止められる代物ではないのだ。

 

「この一撃こそが俺の熱量だ、ジレン!!」

 

力を込めてさらにジレンへ圧力をかける。

徐々にジレンは呑み込まれていく。

その勢いを緩めることなく、腕を下げた。

 

「うぉおお!!!」

 

地面に叩きつけられていく。

『無の界』全体に熱風が巻き起こる。

砂煙はまるでない。

その代わり、高熱にさらされた『カチカッチン鋼』が蒸発して煙を出す。

 

「地面にめり込むだけで済むとはつくづく頑丈な奴だ」

 

本来ならば床を突き抜けて落としても違和感のない一撃。

それを持ち前の肉体で墜落をしないようにとどめていた。

 

「この戦いは俺にとって紛れもなく大事な意義がある、易々と負けるわけにはいかないな……」

 

もうもうと立ち込める煙から現れる影。

それはジレンだった。

流石に無傷とはいかずダメージはあったようだ。

体を震わせて手をつきながら立ち上がっている。

あの一撃を耐えきったのだ。

 

「驚いたな、今の一撃を耐えるとは」

 

そう言いながらも構える。

まだ熱量を全て吐き出してはいない。

あの技が残っている。

全てを尽くしてお前を倒そう。

 

「先に技を出して奥の手を見せてしまったな」

 

そう言って力を込めて体勢を立て直す。

ダメージを抜ききる事はできない。

しかし俺の頭の中にはある言葉が思い浮かぶ。

 

『手負いになってからが本番である』

 

傷ついた時こそ相手の本領が見える。

相手の技量を認め、その上で叩き潰しに来る。

さっきまでのジレンとはまた違った力。

感情による作用。

眠れる獅子を呼び覚ました愚かしさと言われるだろう。

 

「それを失敗と思うような軟な心はない」

 

まだ奥の手がある。

それに愚かしいと思うのはその対象に恐怖をして心が屈服している存在が言うもの。

ジレンのそんな状態を知らない自分からしたら望むところ。

それすらも凌駕して叩き潰してやる。

 

何度目になるかわからないお互いの衝突。

戦いの決着が確かに訪れようとしていた。




ジレンの感情が徐々に露わになっていくように書いています。
書いていて、大技叩き込んでも勝てそう感がまるでない。
篩い落としだから、一定数まで残ればいいんで逃げ回っておくのがべストなアンサーですね。
まあ、あとでバーダックさんに悪口言われそうですが。

今回は脱落者等に変動がないので書いていません。
指摘有りましたらお願いします。

ジレンの技の読み

『夢散虚雪(むさんきょせつ)』
『月果哀雷(げっかあいらい)』
『華彩舞映(かさいぶえい)』
『涸不時雨(かれずしぐれ)』

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