前半は10年間の間の話
後半が謹慎喰らって惑星探索する準備の間の話です。
後半の話は本遍につながるように書いています
『蔑む心』
これはまだ俺があのピタルから帰ってきた時の話。
逝ってしまえば10年近くも前の話だ。
「なぜ、あのゴミ屑を処分しなかったんだ、ラディッツ?」
帰って来て早々カエンサの奴が俺に言ってくる。
俺がピタルから帰ってきた時、ガタバルと出会った事は言ってなかった。
それなのになぜ分かったのか謎だが。
まさか……盗聴していないだろうな?
「やつもサイヤ人の一員だ、同族殺しなんぞ俺にはできん」
俺がそう言うとカエンサは嫌悪感を剥き出しにした顔になる。
途轍もなく醜く映る顔だった。
人が人を見下したりする時は、こんなにも嫌なものになるんだな。
更にその言動で嫌な雰囲気になっている。。
嫌悪感を剥き出しにした醜い顔でで俺に言い放つ。
「あれが誇り高きサイヤ人の1人だと!?、馬鹿も休み休み言え」
その言葉や大きな声に反応したのかナッパやベジータ達も来ていた。
こんなに集まった状態でいうのはかなりみっともないぞ、カエンサ。
「俺たち一族はエリートだ、そして我々の使命としては上に立つのはただ一人だけ!!」
確かに生まれながらに高い戦闘力がある事はエリートの証。
俺とカカロットは下級戦士の間に生まれた子供だ。
その為、生まれた時の戦闘なんて俺が10。
弟のカカロットは2という数字だった。
しかし同じ下級戦士の親父は何度も死線をくぐり、10000以上の戦闘力を持ったといわれている。
そう考えれば下級戦士並みでも鍛錬や努力次第でエリートに近づく事は可能なはずだ。
「なのにあの弱さ、他のエリートどころか中堅戦士にも劣るなど我ら一族のものではない」
産まれながらの戦闘力の高さでも変化する事も有るだろうに。
虫唾がはしると言わんばかりの表情。
皮膚に痒みでもあるのか掻く始末。
「故にサイヤ人の血を引いてすらいない、ガラクタ同然よ」
才能と強さの両立ができていなければいけないのか。
こいつのこの価値観はきっと惑星ベジータが崩壊する前からあったんだろう。
そして消滅して希少な存在になっているから余計に顕著になった。
止める者がいないからこそ、この見下す心が生まれていやがる。
「あんな弱さならば惨めな生き方しかできんさ、それならばさっさと死んだほうがまだましだろうなぁ」
どういった感覚で惨めというのだろうか。
あいつの生きる為の必死さすら嘲笑うのか。
生き延びて強くなりたいというものもこいつには理解できないだろう。
「草木を食って永らえて異星人に後れを取ったり、平和に解決など恥ずかしくて俺には耐えられん」
あいつの戦闘力から考えて異星人を殺すことができないと思っていやがるのか。
元々、殺戮を好むタイプではなく純粋な戦闘意欲があった奴だからそれでいいんだが……
「しかし、ラディッツの言う通りでもある、これから先どれほどの成長を見せるか次第で評価は改めねばならん」
ベジータがフォローを入れる。
仮に今後異星の侵略の際に実力があれば仲間に引き入れることも不可能ではない。
あいつも今頃、血の滲むような努力で跳ね上がっているだろう。
「俺を超えていたら十分一考の価値はあると思うぜ、カエンサ」
ナッパも続いてフォローを入れる。
ナッパ以上となると殆どの相手は一蹴できる、それならば軍の一員として十分な戦力になりえるだろう。
「見下してはいるが、致命傷を負わなくてサイヤ人の特性を活かせないお前はうかうかしていられんだろうよ」
そう言ってカエンサの目の前から俺はベジータとナッパと共に去っていく。
特性を活かせるほどの強い惑星にもいかずに、今の状態に胡坐をかいでいたらあいつにいずれ抜かれるだろう。
俺とナッパの戦闘力の差がだんだん縮まっているようにな。
ちなみになぜガタバルの生存が分かったかというとある惑星で一つだけ生命反応があった。
それがサイヤ人と同じ反応だったかららしい。
あの野郎……無人の星に行くとか、相変わらず元気なようだな。
『惑星侵略、結び付く糸』
俺の名前はベジータ。
名前にあるように惑星ベジータの王子だった。
隕石によってやられた惑星ベジータから俺たちを拾ったのがフリーザの奴だ。
親父をすでに超えていた戦闘力からか、よく出撃はさせられていた。
そのお陰でよく戦闘力が上がることもあった。
致命傷からの復活抜きでも鍛えたりすればこの俺は伸びていく。
瞬く間に俺は残ったサイヤ人の中でも一番の実力者になっていった。
「また出撃らしいな……」
傍らにいるナッパと俺が話している。
戦闘力が4000近いナッパと俺が出張れば大概どんな惑星も手に入る。
弱虫ラディッツの奴も2500と昔に比べたら大きく飛躍していやがる。
むしろナッパの方が伸びていない。
さぼっているとかではなく、もともと高い奴が伸ばすのが難しくなっているだけだ。
「俺も行きましょうか?」
そういって俺に声をかけてくるのはカエンサ。
ブラーナ一族の歴代においても最高水準の戦闘力を誇っているやつ。
そしてそのブラーナ一族には役目があった。
「行きましょうかも何も、俺様を守るのが貴様の役目だろうが」
そう、ブラーナ一族は代々『サイヤ人の王族を護衛する』職に就いていたのだ。
その為、戦闘力が生まれつき高くエリート戦士としても認められていた。
「その通りでございます」
そう言って深々を頭を下げるカエンサ。
今の俺の戦闘力14000に対してカエンサは8000。
守ってもらう事もないほどの差がそこにはある。
「フリーザ様に言ってから侵略に出るぞ」
心の中では呼び捨てにするが表面上は取り繕う。
やつの強さは桁違いだ。
そんな奴に対抗する手段は今のところない。
その為、今の俺は支配から逃れたくても逃れることができないのだ。
「はい、それでは行きましょう」
それから歩いて数分も経たない間にフリーザの部屋へ到着する。
ノックをして俺は反応を確認する。
「誰ですか?」
どうやらフリーザは部屋にいたようだ。
名乗るのもここで速くしないかどうかで怒りを買うこともある。
「ベジータです」
「カエンサです」
俺達は迅速に名乗る。
技術畑でない俺たちの名前を聞いて少しの間が空く。
おおよそ俺たちの行動や言動について考えているんだろう。
「お二人ですか、入ってください」
そうフリーザ様が言うと扉が開く。
そしてあの一人用の乗り物に座った状態でこちらを振り向いた。
「惑星の侵略についての御用でしょう?、ベジータさん、カエンサさん」
俺達が来るという事の意味をよく知っている。
俺達が次に言うであろう言葉をあらかじめ予測して話をしてきた。
「その通りです、フリーザ様」
俺達はお辞儀をしてその質問を肯定する。
すると次に出てくる言葉もいつも通りのものだった。
「最近よく侵略をしてくださっていますが、次はどこの惑星を侵略するつもりですか?」
全ての惑星に侵略の許可が出るわけではない。
何故ならば、異星人に後で売る場合もある。
その時に瘦せた土地だったり、環境が悪い、戦闘力の高い惑星の近くだという条件の星はどこも欲しがらない。
だから慎重になって侵略する惑星は吟味する必要がある。
一度、何も考えずに惑星を取ってきた下っ端があとでそれ相応の環境を取り戻すために木を植えたりさせられたのを知っている。
「惑星スイッツに向かおうと思います」
俺は全く今までとは毛色の違う惑星の名前を挙げた。
侵略の価値が無い惑星というわけじゃない。
しかし戦闘力が際立って高い数値を記録しているわけでもない惑星だ。
菓子職人や豊富な菓子の材料を蓄えている肥沃な星と考えている。
「またなぜ、そのような場所を?」
不思議がっているフリーザ。
この反応も無理はないだろう。
俺だっていつもならこの惑星を侵略する必要はあるのかと思うくらいだ。
ただ、何かしらいい影響を与えられはしないかという推測でしかない。
こういった時の勘は悪くないと自負している。
今もあくまで調査内容だけの話だが非戦闘員だらけだろうし、リゾートや甘いものを楽しむためだけの惑星だ。
侵略としても激しい運動というより、体が鈍らない運動程度に行く惑星だろう。
「我々の星には明らかに食の嗜好が少ないと思える節があります、それの解消の為です」
味の良し悪しがその日とその日で変わっている事があったりする。
さらには辛い物や甘いものなどの味の種類に乏しいこともある。
そう考えるとフリーザ軍は食に関してはあまりにも無頓着な部分がある。
食事に関してはサイヤ人である我々は量を重んじる。
しかしそうでない民族は、やはりいろいろな味を楽しんで気持ちを盛り上げようと考えるだろう。
いずれにしても美味かどうかが重要な点ではあるが。
「ふむ、ギニューさん達も『パフェ』なる甘味を仕事の労いの一環として考えていますからねぇ」
ギニュー特戦隊。
フリーザ軍における最高の精鋭部隊。
今の俺たち以上の戦闘力を誇る奴らが5人もいる恐るべき部隊だ。
ただ、あの個性豊かな言葉や風貌。
極めつけはあのよくわからんポージング。
あれらには理解しかねるがな。
そういうとしばらくの間考え込むフリーザ。
まぁ、こればかりは料理の班や給仕係に伝えて充実さえさせればそれで済む話だからな。
ある意味メリットはあるが、そこまで必要かどうかという天秤にかけているのだろう。
「技術班を労ったり戦闘後のエネルギー補給の為と考えれば十分なメリットでしょう、興味もありますしね」
どうやら個人的な興味とほかのメンツの事も考えればメリットが多いという事の結論に至ったようだ。
こうなると次に出る一言はほとんど決まっている。
「それでは惑星スイッツへの侵略を認めます、もし異常事態が起こった場合は私に緊急で知らせてくださいね」
そう言われたのでお辞儀をして退出をする。
これで心置きなく動きやすい状態を作った。
惑星スイッツの近くの惑星まで侵略の手を伸ばすこともできる。
ここで致命傷を負うようなことがあればそれで十分な成果だ。
「14000以上の精鋭がいる惑星なんぞそうはないだろうがな……」
思い浮かんでいた自分の考えを否定して改める。
そうそう有るはずの無いシチュエーションを考えてもしょうがない。
とてつもなく運が良ければそういった場面に出くわすだろう。
さらにそこで運が良ければ強化するための成果が手に入る。
そう考えないといけなかったぜ。
それにスイッツの侵略ができた場合、甘い食べ物を条件にして特戦隊に稽古をつけてもらう。
それを定例化させる事で今後の踏み台にしてやる。
「さて……どれくらいかかるか技術班から地図で算出してもらうぞ」
カエンサを引き連れて俺は技術班の奴らの部屋へ入っていく。
技術班の奴らはこっちを見てきていつも通りの一言を言う。
「ベジータ様、カエンサ様、どういった御用ですか?」
このいつものやり取りに俺達はうんざりしながらも用件だけを告げる。
もう少し気の利いた聞き方はないのか。
マニュアル通りの受け答えをするなんて機械と同じだぜ、
「惑星スイッツまで行きたいんだが必要な日数を教えろ」
俺がそういうと技術班が迅速に動いていく。
すぐさま座標を割り出しどの惑星を経由したらいいのか、直接赴いた方が速いのかの計算が行われる。
そして計算結果が映し出された後にこちらに振り向いて日数を言ってきた。
「えっと、ここからは10日ほどですね、他の惑星を経由せずに直接行った方が速いです」
思った以上に近い惑星のようだな。
そしてそのちょっと隣接している惑星があるようだがこれは一体何なんだ?
まぁ、今の俺からすればどうでもいい話なんだが。
「わかった、すぐに向かう」
そう言って俺とカエンサはそのまま宇宙船の発着場へ向かう。
宇宙船に乗り込んで技術班から貰った座標を打ち込んで設定を行う。
音声機能か何かで惑星スイッツへまいりますなどとほざいていた。
正直この機能は耳障りだ、必要ない。
そして俺とカエンサはコールドスリープ機能を使って、10日間の眠りにつくのだった。
カエンサはベジータの言葉はよく聞きますが、ナッパやラディッツの言うことは聞きません。
ラブカも同様です。
二人とも選民意識が強くベジータやラディッツのように殺したり、敵対するのに『動けない』や『逆らった』などの理由はありません。
『弱いサイヤ人は価値がない』、『自分たちは王の次に偉い者』という考えに根付いていて、しかもそこからの成長など全く認めていません。
その為、今のラディッツやナッパが強くなっているのに内心見下しています。
そんなカエンサとラブカの戦闘力
カエンサ:8000 ラブカ:8500
指摘がありましたらお願いします。