学園クオリディア   作:バリャス

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ラブコメになっているのだろうか?
じゃあサブタイトルにするなよって?他に思いつかんかったんです。




ラブコメ

俺が目を開けると、そこは学園の保健室のベッドの上だった。ベッドの周りはカーテンで閉められている。体の上体を起こしぼーっとしていると、頭がズキッと少し痛んだ。俺は確か人型に首を切り落とされて…。

 

俺は首を触るが、首は何事もなくちゃんと繋がっていた。ふいにカーテンが少し開けられ、一人の女性が顔を覗かせる。

 

「あ、起きましたか?」

 

どうやら首を切り落とされた俺をこの人が助けてくれたらしい。首がちゃんと繋がっていることを考えると助けるだけじゃなく首を元どおりにくっつけてくれたみたいだ。そんな芸当普通の人間にできるはずがない。

 

「あなたはまさかネクロマンサーか!?」

 

「な、何を言っているの?」

 

保健の先生は困惑している。当たり前だけど。

 

「いや、変な夢を見てまして。すみません」

 

どうやら俺は無事夢から覚めたようだ。俺は保健室に設置されている時計を確認する。時間を見る感じまだ6限目の授業中のようだった。昼休みからまだ2時間も経っていないのか。

 

もっと長いあいだ眠っていた感覚だが、夢の時間と現実の時間には大きな差があると聞いたことがあるしおかしいわけでもないか。

 

俺はまたベッドに横になる。今更戻っても途中から授業を受けるってのもあれなんで6限目が終わるまでゆっくりしよう。

 

「あ、そう言えば友達の女の子が凄い心配してたわよ。放課後でもいいから顔見せてあげてね」

 

友達の女の子とは十中八九蓮華のことだろう。十中八九蓮華ってなんか技みたい。何それ弱そう。どこらへんが弱そうかって?もう蓮華って部分がちょー弱そう。今度朱雀が揉めごと起こしたら使ってやろう。

 

俺はベッドから立ち上がり窓の外を眺める。空は青い、雲ひとつない快晴だ。俺はちゃんと生きている世界が日常通りのことに少し安堵を覚える。これはやばいですねぇ、なんか中二病感がほとばしってる。

 

保健室の窓からは運動場でサッカーをしている生徒たちが見える。まあ体育の授業だろうな。運動場にいる生徒たちの中に朱雀が突っ立っているのが見えた。見た感じ一応参加はしているようだが、全くボールを追いかけようとしていない。

 

「あいつはサッカーのルールを知らないかな?」

 

呆れた顔で朱雀を見ていると、先ほどの夢を思い出す。あの後あいつらはどうなったのだろうか?

 

いやいやあれはただの夢だ、いちいち気にするなんて馬鹿すぎる。俺が頭を左右に振って雑念を払っていると、後ろから保健室の先生が「ちょっと用事できちゃったから元気になったら教室戻るのよ」と俺に伝え保健室を立ち去っていった。

 

他に誰もいなくなった保健室。なんか青春ポイントっぽいよな。ここで明日葉ちゃんみたいな可愛い女の子が俺に声をかけて…。

 

「なんだサボりか?」

 

さっそくキタァー!やはり勝確演出だったか…。どうやら保健室の外から俺に声をかけている人がいるようだ。

 

「人生に疲れちまってな」

 

俺は保健室の外の窓に振り返りながらキメ顔でそういった。その顔を向けられた相手はうんざりした顔で口を開く。

 

「なに言ってるんだ貴様…」

 

俺の前には呆れた顔をしている朱雀がたっていた。まあ声で気づいてたんですけどね!

 

「なにお前は疲れてないの?若いねぇ」

 

俺は保健室の窓から手を出してダランとしながら朱雀の方に声をかける。朱雀は保健室の外の壁にもたれながら腕を組んだ。俺の話し相手になってくれるようだ。

 

「貴様こそ俺とひとつしか変わらないのに発言がおっさん過ぎるだろう」

 

「ばっかお前、一年っていうのは予想以上に大きいんだよ」

 

特に俺たち高校生にとっては一年は本当に大事だ。たった3年間しか高校生ではいられないのだから。(留年を除く)

 

「それよか風紀委員長の俺の前で堂々と体育の授業サボるとはいい度胸してんじゃねぇか」

 

「堂々と保健室でサボってる風紀委員長がそれを言うのか」

 

おっしゃるとおりで、まあ俺の風紀委員長なんて役職は飾りみたいなところあるしね。俺がぼーっと運動場の生徒たちを眺めていると、朱雀がため息をついて言葉を続けた。

 

「俺はクラスの奴らと仲良しごっこをするために日々この学園に通っているわけじゃない」

 

仲良しごっこ、ねぇ。確かに高校生の友達付き合いっていうのはいろいろ複雑だ。それはまだ心が成長仕切っていない状態だからなのだろうか。高校生のうちに本当に信頼できる友達を作ることは大切だが、その友達を簡単に見つけられるほど世の中はうまくできていない。

 

しかし夢の中のいっちゃんさんはあんなに良い子だったのになぁ。

 

「どうしてお前はお前なんだろうなぁ」

 

「いきなり何の話だ!?」

 

俺は「ははは」と軽く笑いながら流して話を元に戻す。いや俺が止めただけなんですけどね。

 

「じゃあいっちゃんさんはなんのために日々学園に通ってんの?」

 

俺の質問を聞くと、朱雀は空を見上げ遠いところを見ながら口を開いた。

 

「強くなるためだ。大切なやつを世の中の全てから守れるくらい強く」

 

強く。といっても朱雀の言う強さは単純な力のことではなく権力とかそういうことだろう。

 

中二病感が凄い発言だがなんとなく俺が夢の中で朱雀に言った言葉を思い出してしまう。やばい!恥ずかしすぎていっちゃんさんをぶん殴りたい気分だ…。

 

今はそんなことは置いておいて、朱雀の言っている大切なやつとはおそらく宇多良のことだろう。ちなみにまだ朱雀と宇多良は付き合っていないというのがなんとももどかしい。

 

「お前いいかげんに宇多良とくっついたら?」

 

「はぁ!?な、なぜカナリアが出てくる!」

 

朱雀はあからさまに動揺しながらこちらに抗議してくるが、逆に宇多良以外に誰が出てくるというのだろうか。

 

「いやいやなに照れてんの、今更隠すようなことでもないでしょ」

 

だいたい朱雀が宇多良のことを好きなことなんておそらく周囲にいる人全員気づいてんよ。気付かれてないと思ってるお前にびっくりだよ。

 

朱雀は俺から顔を隠すようにして顔を下にむける。朱雀の耳は赤くなっていた、本当に照れてるんだな、可愛いとこあるじゃないの。

 

「俺はまだカナリアを守れるぐらい強くなれてない…、カナリアに告白するっていうのは貴様が思っているほど簡単じゃないんだ」

 

そんだけ相手のこと想えてるなら充分だと思うのだが、いかんせん俺もそういったことには疎い。よく分からんけど恋愛って難しいんですね。

 

「しかし難しく考えすぎな気もするけどな」

 

「貴様がそれを言うのか…。というか貴様はどうなんだ貴様は!未だにそういった浮ついた話を全く聞かんではないか!」

 

まあそう言った話とは俺は無縁だったからなぁ。浮ついた話は聞かないかもしれんがシスコンどうたらはめっちゃ言われてるという。

 

「それはあれだ、風紀委員長だから恋愛とか禁止されてるんだよ。ほら恋愛とかってまさに風紀を乱す典型的なあれだろ」

 

「それなら恋愛をするように仕向けるのは矛盾していないか?」

 

ほうそこに気づくとは…やはり天才か。俺は一瞬口元をニヤつかせ、少し笑顔(暗黒微笑)で口を開く。

 

「分かった、じゃあ今からお前も恋愛禁止な」

 

「極端過ぎるだろ!」

 

朱雀は「ったく付き合いきれん」と怒りながら運動場の方へ歩いていく。全く、ようやく行ったか。べっ別に話し相手がいなくなって寂しいとか全然思ってないんだからね!一人の方が好きだし!

 

「ふぅっ」と息を吐き俺はベッドの上に腰を下ろす。恋…ねぇ。高校生にもなれば一度は経験しているもんだが、明日葉もいつか恋愛とかするんかね。今のところ俺と同じく耳にしなかったけど、明日葉ちゃんは美少女で運動もできるし勉強もそれなりにはできる。同じ学年の男子がほっておくわけがないんだよなぁ。

 

鬼ぃちゃんが明日葉ちゃんに悪い虫がつかないようこれからはもっと警戒しないと!

 

俺が立ち上がり闘志に燃えていると、保健室のドアが突然開けられ一人の女子生徒が保健室の中に入ってきた。俺と目が会うと彼女はおどおどしながら俺に声をかけてくる。

 

「あ、あれ?保健室の先生はお休みでしたか?」

 

保健室にわざわざ寄ったってことは怪我でもしたのだろうか。

 

「休みじゃない。けどどっか行ってる」

 

彼女の足を見ると血が流れている。どうやら足の膝を怪我しているようだ。見た感じそこまで大した怪我ではなさそうだが…。だが保健の先生もいつ帰ってくるのか分からんし仕方ない。

 

俺は勝手に保健室を物色して消毒液と滅菌ガーゼ、それと包帯を取り出し机に並べる。女子生徒はそんな俺を不思議そうな顔で見ていた。

 

「座ってくれないと処置できないんだけど」

 

俺は彼女に椅子へ座るよう手で指示すると彼女は慌てて椅子に座る。俺は彼女の膝の怪我を確認する。近くで見ると結構痛そうな怪我だな。

 

消毒液を彼女の傷口へ垂らして、その後滅菌ガーゼを彼女の膝にあてた。「いたっ」と彼女は口で痛いのを伝えてくる。まあ消毒液が染みてるだけだろう。

 

「少しだけだから我慢しろ」

 

彼女はコクコクと頷きじっとしている。俺は滅菌ガーゼの上から包帯を巻いて、とりあえず応急処置をすませる。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「別に大したことしてないから気にしなくていい。あとこれ応急処置だからまた先生がいる時に保健室に顔だすことな」

 

俺は勝手に使った道具を元の場所にしまう。時計を確認すると、もう6限目終了の時間が迫っていた。そろそろ戻ろうと思った時、後ろから「あの」と声をかけられる。

 

「お、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

先ほどの女子生徒がこちらに近づいて名前を尋ねてくる。俺の名前なんか聞いてどうする気だ?見たところ2年生のようだが…。まあ別に名前くらいいいか。

 

「千種霞だ」

 

女子生徒は俺の名前に心当たりがあるのか、顎に手を当て「千種…」とつぶやいた。おそらく聞き覚えがあるのはどこかで会ったことがあるとかではなく、風紀委員長だから聞いたことがあるとかだろう。

 

風紀委員の仕事柄生徒会ほど目立たないのはあるが、それ以上に表立っての仕事を基本的に夏目が担ってくれていることもあり、風紀委員長である俺のことをよく知らない生徒は結構いる。

 

ただ千種と言う苗字だけを知っているとしたらもう一つの可能性が圧倒的に高い。

 

「千種ってもしかして千種夜羽さんの?」

 

そう、クオリデ学園理事長の千種夜羽。俺の母親の名前である。理事長と言ってもほとんどこの学園にはいない。理由は分からないが家にすらたまに帰ってくる程度だ。

 

俺は彼女に「そうだ」と答える。彼女の表情が少しばかり強張った気がした。理事長の息子というのは普通の生徒からしたら少し特殊だ。やはり意識しないのとするのとでは違うのだろう。

 

「別に理事長の息子だからってすごいわけでもない、他の奴らと同じただの一生徒だ」

 

彼女は「す、すみません」と謝る。いや、別に謝られても困るんだが、性分なのだろうか?

 

「理事長の息子さんという事はあなたが風紀委員長さんなんですね。聞いてたよりも優しそうな人で驚きました」

 

と彼女は少し微笑む。なんだかラブコメの波動を感じる展開だな。しかし俺は風紀委員長だ、そんな簡単にラブコメに巻き込まれんぞ!

 

「あっ、すみません自分の名前も名乗らず…。私は八重垣青生って言います」

 

八重垣青生。俺はその名前を聞いて相手の顔をまじまじと見る。彼女は少しおどおどしながら「な、なんでしょうか?」といいながら顔を下に背ける。

 

「八重垣青生って生徒会の八重垣青生か?」

 

「あっ、ご存知だったんですね」

 

たしかによく見ると八重垣だ。先ほどまで体育の授業だったからだろうか?八重垣は今はメガネを外していた。彼女自身生徒会では裏方が多く、あまり目立たないから俺も見たことがある程度でしか認識していなかったこともあり気付かなかった。

 

八重垣は2年生のAランククラス。見た目はおとなしそうだが(実際普段はおとなしい)意外と運動神経がよくスポーツもでき、そして見た目通り勉強もできる生徒会の頼れる裏方さん。ただしなんか影がうすい。

 

「そりゃな、八重垣がいないと生徒会潰れるまであるし。アホの天川を支えてくれて助かってる」

 

なおメガネがないと見ただけじゃ分からなかった模様。「そんな私なんて…」っと八重垣は両手を振って謙虚に否定する。

 

「でも天川会長をアホって言えるのも霞さんぐらいですよね」

 

そうでもないと思うが、少なくとも一人言ってるやつを知ってるけど。朱雀なんとか壱弥さんとか。

 

八重垣と話していると校内に授業の終了を知らせるチャイムが鳴る。いつの間にか6限目の終了の時間になっていたようだ。

 

「あっ、授業終わりましたね。そう言えば霞さんはなんで保健室に?どこか怪我をしたとかですか?」

 

体に痛みもないし怪我は多分してないけど同級生の渾身のタックルで気は失ってたな。

 

「まあいろいろあってな。別に怪我とかじゃない。目が覚めてからはサボってただけだ」

 

いっちゃんさんとお喋りしたり八重垣とお喋りしたり…、やだ俺ったらお喋り好きすぎぃ!

 

「風紀委員長がサボりなんてそんなことしてはいけませんよ」

 

やっぱり八重垣は発言が生徒会の人間って感じだな。その調子で破天荒お姫様も指導していただけると助かります。

 

「いやほら、適度な休息は必要でしょ?八重垣も休息とかした方がいい。なんなら今度うまい飯にでも連れてってやろうか?」

 

俺は言った後に後悔する。やべぇ、いつもの軽口で変なこと口走っちまった。よく知らん男と飯なんて全然休息できないし迷惑にもほどがあるだろ!八重垣も冗談だと察して流してくれればいいが…。

 

「ほんとですか?じゃあ楽しみにしておきますね」

 

しかし俺の予想とは裏腹に彼女は笑顔でかえしてきた。

 

えーなにこれー?なんかラブコメの波動を感じる。やっぱりラブコメの波動にはかなわなかったよ…。

 

「お、おう。でもあんまり期待すんなよ」

 

「ははは…あっ!もう戻らないとですね」

 

八重垣は時計を見て声を上げる。俺もさっさと戻って5限目と6限目の授業のノートを夏目に見せてもらわねぇと、今日の放課後のうちに書き写して…放課後?

 

そう言えばすっかり忘れていたが放課後に屋上に呼ばれてたな。

 

「今日はありがとうございました!霞さんとお話しできて楽しかったです!」

 

笑顔で言われ、若干たじろいでしまう。

 

「その、まああれだ。俺も楽しかった、気がする?」

 

なぜか最後が疑問系になってしまった。慣れないこと言うと動揺してしまってダメだな。

 

俺は保健室を出ようと扉を開けると、一人の女子生徒が扉の前に立っていた。まさか人がいるとは思わず俺はびっくりして「おわっ!?」と声を上げながら後ろに少し体制を崩す。

 

しかしよく見るとその女子生徒は蓮華だった。

 

「あっ、びっくりさせちゃった?」

 

蓮華は笑顔で俺に問いてくる。完全に確信犯じゃねぇか!俺は呆れた顔をしながら「うるせ」と不満げに答える。

 

「ご、ごめんって〜」

 

全然誠意がこもってない!八重垣さんを見習ってくださいよほんと…。

 

俺は「はいはい」と蓮華をいなしていると俺の後ろにいた八重垣に気づいたのか、蓮華が「あれ?八重垣さん?」と反応を見せる。

 

「え?は、はい八重垣ですけど…」

 

どうやら別に知り合いという訳ではなさそうだ。まあ八重垣は生徒会役員だし蓮華も一方的に知っていただけだろうな。

 

「保健室に二人きりって…まさか!?」

 

おいこの子なんか勘違いしてる気がするんですけど!?八重垣は八重垣で「はわわ」とおどおどしてるだけだし。

 

「変なこと言ってるんじゃありません。というかお前は俺がここにいる原因を作った張本人ですよね?だから様子を見にきてくれたんじゃないの?」

 

それを聞くと蓮華は「冗談だよ冗談!」と笑った。なんか今日の蓮華おかしくないか?いや変なのは割といつもだけど、妙にテンション高いと言うか無理矢理テンションを上げてるというか。

 

「でも霞くんがなんともなくてよかったよぉ」

 

「ああ、お前はそのあとなんもなかったか?」

 

まあ廊下の一件について相手方は許してくれてたはずだけど。一応念のために聞いておく。

 

「なんともないよぉ」

 

俺が「ならいい」と頷くと蓮華は「うん」と頷く。いつもの蓮華か、どうやら俺の気のせいだったようだ。

俺は時計を確認する。手紙の送り主が誰なのかは分からないが無視するわけにもいかない。

 

「俺ちょっと用事あるからそろそろ戻るわ。八重垣悪かったな付き合ってもらって」

 

「いえ、気にしないでください」

 

俺は八重垣に挨拶をすると蓮華にも「あと蓮華もわざわざありがとな」と声をかける。蓮華は少し考え事をしていたのか少し反応を遅らせてから「あっ、いいよいいよ!」と答えてくる。やはり少し様子がおかしい気がするが、時間もない。俺は保健室をあとにして教室に戻る。

 

教室に着き中を見渡すとほとんどの生徒は残ってなかったが、目的の人物はまだ教室に残ってくれていた。夏目もこちらに気づいて「あ、サボり魔の霞だ」と言いながらこちらに近づいてきた。

 

「サボってねぇよ、ちょっと休憩してただけだ」

 

「それをサボりって言うんじゃないか?まあのんともなさそうで良かったよ」

 

どうやら夏目も事の顛末は知っているようだ。じゃあなんでサボってたこと知ってるんだよ…。もしかしてテレパシー使えるようになったの?夏目さんにはもう簡単に嘘つけねぇなぁ。今度から無心で嘘つけるように練習しとこ。

 

俺は今日の5限目と6限目のノートを貸してくれないかと頼むと「はいはい、そう言ってくると思ったよ」と自分のノートをコピーした紙を俺に渡してくる。さすが夏目さん、気がきくで賞をあげたい。

 

「助かる。やっぱ持つべきものは友達よりも夏目だな」

 

「か、からかうな!」

 

別にからかってるつもりはないんだがな。実際夏目にはかなり助けてもらってるし。「とにかくサンキュな、また明日」と言って俺は教室を後にする。残る学園でのミッションは例の呼び出しだけだ。俺は急ぎ屋上へと向かった。

 

屋上に着いた俺は周囲を確認する。人の姿はない。どうやらまだ来ていないようだ。もしかしたらもう帰ったとか?いや、確かに放課後になってから少し時間はたっているがさすがに早すぎる。

 

「気長に待つか…」

 

俺は屋上の柵まで行き運動場を見下ろす。運動場の端の方で陸上部がもう活動を始めていた。陸上部員のメンバーが準備体操をしているのが見えるが、その中には明日葉の姿もあった。

 

部活動に勤しんでる明日葉ちゃんもいいね!何時間でも見てられそう!これなら待つのも苦じゃないからやはり明日葉ちゃんはやはり天使。俺は明日葉を遠くから見守りながら「一時間ぐらいなら待とう」と決めたのだった。

 

 

 

それから本当に一時間経ったわけなんだが、未だに誰もこない。もしかしてイタズラだったか?よくよく考えるとそもそも依頼をわざわざ屋上に呼び出してする必要ってあると思えん。

 

どちらにしても一時間待っても来なかったんだ、もういいだろう。俺は屋上を後にしようと思った矢先。屋上の扉が何者かによって開けられた。ようやくきたのか?俺は屋上にきた人物を確認する。

 

「まさか手紙の差出人がお前だったとは!?」

 

次回衝撃の展開!?お楽しみに!

 

って続かねぇよ!

 

屋上にやってきたの朱雀だった。いやこれは衝撃の展開ですわぁ。俺のほんの少しのドキドキ返してくれないかな。

 

「何を言っているんだ?」

朱雀は屋上の扉を閉めこちらに向かって歩いてくる。俺は念のため朱雀に手紙の差出人か確認することにした。

 

「俺の下駄箱に手紙を入れた記憶ある?」

 

「は?なぜ貴様なんぞに手紙を出さねばならんのだ」

 

だよなぁ。まあこいつは嘘吐くタイプではないし、朱雀の言うことはもっともだ。むしろ出したって言われた方が怪しすぎる。

 

「じゃあなんでこんなとこに来たんだよ」

 

もう放課後になってから数時間経つ。わざわざ屋上にくるとかなんか理由がないとは思えんが。

 

「廊下を歩いていたら屋上で呑気な面を晒している貴様を見つけた」

 

そう言い朱雀は俺の近くの柵にもたれ、空を見上げる。俺は言葉を待つが朱雀はそのまま口を開かない。見つけたから何?お前は俺を見つけたら無条件で来るの?

 

「どんだけ俺のこと好きなんだよ」

 

朱雀は「ふっ」と失笑し「虫酸が走るからそういう冗談はやめろ」と返してくる。違いない。しかしならなぜ来たんだよ。

 

「なんか悩みでもあんのか?」

 

朱雀は先ほどみたいな失笑もなく黙ったままである。おいおいまじかよ。こりゃ手紙の差出人の犯人第一候補じゃねえか。

 

じゃあ朱雀が「放課後屋上に一人できてください。待ってますから」って書いたってこと?気持ちわる!っていうないない絶対ない。こいつが俺に敬語とか絶対ないから。

 

「別に悩みって程でもないんだが…」

 

俺が一人寒気を感じていると隣にいた朱雀が喋り始めた。俺は静かに耳を傾ける。こんなんでも俺の後輩だしな。

 

「デ、デートとかってどうやって誘えばいいんだ?」

 

「ファ!?」っと俺は朱雀の顔をまじまじと見る。こいつ本当に朱雀か?そんな乙女なことお前の口から聞くとは思わなかったぞ…。

 

「な、なんだ!」

 

お前がどうした?ついに壊れたか?

 

俺は今日の保健室での一件を思い出す。もしかしてようやくその気になったのか?

 

「ようやく宇多良に告白する気になったのか?」

 

さっきは資格がない的なことを言ってたのに。朱雀は「ち、違う!」と否定の言葉を入れてくる。

 

「その、なんだ、もう直ぐカナリアの誕生日でな」

 

「いいんじゃねぇの?誕生日に告白とかなかなかロマンチックだし」

 

「だから違うって言ってるだろ!」

 

そんな強く否定せんでも。宇多良さん聞いたら泣くぞ。たぶん。まあいいや、朱雀はどうやら誕生日に宇多良をデートに誘いたいが、誘った事がないから困ってると。でもあなたたち普段から一緒に買い物とか行ってますよね?そこらへんは心の持ちようってやつなのかね。

 

「俺はただ…」

 

「はいはい分かった。ほんと悩むような事じゃなくてびっくりだよ」

 

俺は朱雀の言葉を遮るように口を挟む。まあいっちゃんさんが恥を忍んで相談してきたんだ。さすがに無下にしたら可哀想か。

 

その後朱雀と少し話して別れた後、俺は天川に電話をいれる。

 

「どしたの?かすみんが電話なんて珍しいね」

 

それだと友達全然いない俺が誰かと電話するなんて珍しいみたいに聞こえるからやめてね?否定しきれないのが悔しいです。

 

「舞姫ちゃん、ちょっと俺と楽しいお話をしよう。朱雀と宇多良についてなんだが…」

 

そこには他人の恋路を楽しもうとしている屑の姿があった。はい、俺でした。

 

結局のところ手紙の差出人は誰だったのだろうか?しかし当の俺はそんなことすっかり忘れて生徒会長と楽しいお電話をしていたのだった。




地の文が相変わらず苦手です。なんか途切れ途切れっていうか。
ちなみにヒロインは決めてません。あえて決めるならやはりいっちゃんさんか…。公式カップルですからね!

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