我が名は天駆ける蠍アンタレス!   作:伊 号潜

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4週間近く空けてしまって申し訳ありません!
機械的なトラブルと初歩的なミスをしてしまいでデータが消えて一から書き直していました。
これからは亀投稿になるかも知れませんがご了承ください!
 ....と、いうわけで第6話をどうぞ!


第6話 __異世界__

アンタレス帰還の翌日

 

ミッドウェー基地、スピット島対空レーダー施設

 

「どうだ?」

 

レーダー操作員のもとにルームチーフがやってくる

 

「先程から基地上空の高高度を偵察機と思われる機体が何度か旋回飛行しています」

 

操作員はモニターの映像を屋上のカメラに切り替える。画面が空の映像に切り替わると真ん中に黒い点が見えた。操作員はカメラをズームさせる

 

「デ・ハビラント...か?」

 

「はい、そのようです」

 

画面にはモスキートらしき機影が写し出されている、機種部分はドーム状のガラス張りになっており偵察型に見える

 

「ステルス並のレーダー反射波です」

 

「流石、大戦時のステルス機と言われただけあるな」

 

モスキートはエンジンやその他装置以外のほとんどが木製のためレーダーに探知されにくいという記録が残っている。このモスキートも例外ではない

 

「アンタレスの件もあるからな、油断は出来ない、このまま監視は続けてくれ」

 

「了解」

 

 

ミッドウェー基地、本部棟.取調室

 

「これで、取り調べは以上だ。何か質問はあるかね?リトヴァク中尉」

 

「わ、私は....いつ帰れるんですか?」

 

「まだわからない、君は言ってしまえば機体返還交渉の為の人質だ、機体が返還されれば君も帰れる」

 

「エイラは....」

 

「君の友達なら別室で取り調べ中だ、君同様丁重にもてなしている」

 

「............」

 

「何も心配はいらない。いくら人質でも牢屋に閉じ込めて置くわけじゃないしましてや拷問すると言う訳でもない」

 

「アンタレス」

 

バーフォードが部屋のすみに置かれた記録係用の椅子に座っているアンタレスを呼ぶ。しかし

 

「グウゥ....グウゥ」

 

アンタレスはまるで学校で居眠りをする学生の様に机に突っ伏して眠っていた

 

「アンタレス!」

 

バーフォードは声を大きくし呼ぶ。が

 

「グウゥゥゥ....グウゥゥゥ」

 

イビキをかきながら眠るアンタレスは起きる気配がない。するとバーフォードは机に置かれた湯飲みを手にとって立ち上がりアンタレスに近づく、そしてアンタレスの寝顔めがけて熱々のお茶を注いだ

 

「うぉあちちちちちちぃ!?!」

 

突然顔面を襲った熱に驚いたアンタレスは椅子ごと盛大に倒れた

 

「起きろアンタレス」

 

「もう少しでマシな起こし方無かったのかよ!?」

 

アンタレスの嘆きが取調室に響く。しかしバーフォードは無視した

 

「姫さんの面倒は任せたぞ」

 

「え?」

 

「もとあと言えば君が連れてきたんだ、君が責任をもって面倒を見ろ」

 

「言うと思ったぜ」

 

アンタレスは半分諦めの顔で答える

 

「くれぐれもヤラかすなよ...」

 

そう言うとバーフォードは取調室を出ていった。

 

「ったくよ、俺はロリコンじゃねぇってんだ」

 

アンタレスはドアの方に向かって言うとサーニャの方を向く

 

「ま、よろしく」

 

アンタレスはサーニャへ手を差し出し握手をしようとする。しかしサーニャは少しビクッとして縮まる、明らかにアンタレスを警戒していた

 

「ほら握手!心配すんなって、取って喰おうなんて思ってねぇから」

 

サーニャは恐る恐る手を差し出す。すると

 

ポンッ!

 

「きゃっ!」 

 

アンタレスの手から小さな破裂音と共に煙が上がる、煙が晴れるとその手には花があった

 

「プレゼント」

 

そう言うと、アンタレスはサーニャに花を渡す、微かながらサーニャの瞳が輝き警戒が解ける

 

「よろしくな」

 

再び差し出された手をサーニャは握り握手を交わす

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「名前はたしか....アレキサンドラ・ウラジミーロヴナ・リトヴャクだったな、愛称は"サーシャ"?」

 

「サーニャって呼ばれてます」

 

「あぁ~そういえば言ってたな。あのミー何とかって奴が....ミーミー....」

 

「ミーナ中佐?」

 

「そうそれ!地雷中佐!」

 

アンタレスはやっと名前を思い出した

 

「地雷?」

 

「うん、地雷」

 

「「ぷ....ハハハハハハ」」

 

二人は思わず笑ってしまった。そしてアンタレスも自己紹介をする

 

「俺はユーリィ・リトヴァク、皆からはアンタレスって呼ばれてる。気にぜずユーリって呼んでくれ」

 

「私と同じ」

 

アンタレスとサーニャは二人とも名字が『リトヴァク』だった。

 

※これは作者がロシアでパイロットと言えば、リトヴァクかベレンコくらいしか思い付かなかった知識不足が招いた結果であり、決して面倒だから合わせた訳ではない!気にしたら負けなのだ!

 

「偶然だな」

 

二人は同じ名前で親近感を感じずにはいられなかった

 

「さてと!君の友達の様子を見に行くとするか」

 

アンタレスは立ち上がりサーニャを連れて取調室を後にした

 

 

別フロア.取調室

 

「あの~、そろそろ質問に答えて貰いたいんだけど」

 

グレアム・ハートリーは慣れない取調べに苦戦していた、普段はただレーダー画面を見つめるオペレーターのハズが、何故か捕虜の取調べを任されたのだから仕方がない

 

「サーニャはどこダ」

 

「ですから、今別の部屋で取り調べ中です」

 

銀髪でロングヘアーの少女は『サーニャに会わせろ』の一点張りだ。かれこれ一時間この調子なのだ

 

「サーニャに会わせろ」

 

「こっちの質問に答えてくれたら会わせてやるさ」

 

グレアムの後ろに立っていたマイケル・アリーナ伍長が言う

 

「嫌ダ、今すぐ会わせろ」

 

しかし、少女は一歩も引かない

 

「う~~ん、参ったなぁ....」

 

「そもそも何で僕らがこんなことを」

 

そこに

 

「苦戦中か?」

 

「アンタレス!」

 

アンタレスが取調室に入ってくる、少女はアンタレスをジッと睨み付ける

 

「ほれ、差し入れ」

 

アンタレスは缶コーヒーをマイケルとグレアムに渡す

 

「あ、どうも」

 

「気が利くなアンタレス」

 

「お前も飲むか?微糖だけど」

 

アンタレスは少女にも缶コーヒーを渡す、しかし

 

「いらん、サーニャに会わせろ!」

 

差し出されたコーヒーを少女は払い除ける

 

「ずっとこの調子で....」

 

「そうか」

 

アンタレスは拒否された缶コーヒーを開けて一気に飲み干すとグレアム言った

 

「変われ」

 

「あ、はい」

 

グレアムが席を譲るとアンタレスはドカッと座り足を組む

 

「質問に答えてくれるか?」

 

「サーニャに会わせろ」

 

「サーニャちゃんね....」

 

すりとアンタレスはポケットからスイッチらしき物を取り出し少女に見せた

 

「これ見ろ」

 

アンタレスがスイッチを少女の目の前につき出す

 

「これは別の部屋に設置された、ある装置の作動スイッチだ、ここを押せば装置が作動する。....その装置にサーニャちゃんが繋がれてると言ったらどうする?」

 

「な!?」

 

「ちょ!アンタレス!?」

 

「マジかよ....」

 

アンタレス以外の三人は仰天した

 

「お前の態度次第であの子の綺麗な顔や髪が赤く染まる事になる。どうだ、答える気になったか?」

 

「お前!サーニャに何をした!」

 

少女は机に手を突き身を乗り出す。顔は怒りで満ち、怒りの矛先はアンタレスに向けられる。しかしアンタレスは動じる気配すらない

 

「勘違いしている様だが、この場の主導権を握ってるのはお前じゃない、俺だ!五つ数える内にお前の名前と階級を言え。じゃなきゃ二度とその子に会えなくなるぞ!」

 

アンタレスの言葉に少女は黙り混む、そして

 

「5」

 

アンタレスがカウントダウンを始める、少女の顔を汗が流れる

 

「4」

 

「くっ...」

 

「3」

 

「2」

 

「i....」

 

「エイラ・イルマタル・ユーティライネン!スオムス空軍少尉!」

 

アンタレスが1を言いかけた瞬間少女は遂に口を割った

 

「所属は?」

 

「501統合戦闘航空団」

 

「501JFW....と。よし」

 

エイラと名乗る少女は観念した様に質問に答え始める

 

20分後....

 

「よし、これで終了だ」

 

アンタレスは聴取用のファイルを閉じて席を立つ

 

「さ、サーニャは無事なのか....?」

 

エイラが恐る恐るサーニャの安否を聞く、そこには先程までの威勢はどこにも無かった

 

「あぁ、サーニャちゃんなら今ごろ食堂でメシ食ってるだろうよ」

 

「ふぇ?」

 

エイラは思わず情けない声を出してしまった

 

「さっきの話は嘘だから、悪かったな」

 

アンタレスはシレッとした顔で先程の話が嘘だったことを話す。すると

 

「よ、」

 

「よ?」

 

「良がッだぁぁぁ~」

 

それを聞いたエイラはまるで漫画の様に鳴き始めた

 

「お、おい!泣くほどか!?」

 

「あぁ~あ、泣かせちまったなアンタレス」

 

「アンタレス....」

 

ジト目のグレアムと若干ニヤけてるマイケルがアンタレスを見つめる

 

「だぁぁ!待て待て泣くなって!会わせてやるから!泣き止めってぇ!」

 

アンタレスの叫び声が建物内に響き渡る

 

 

別フロア.会議室

 

「__と。以上が、彼女から聞き出した内容です」

 

基地にある会議室ではミッドウェー基地の日米空海軍トップが報告会を開いていた。

バーフォードは先程のサーニャから聞き出した"この世界"の情報を説明している

 

ここで、会議に参加している人物を簡単に紹介しておこう。

 

 

米海軍ミッドウェー海軍基地司令

エディ・マクガイバー 准将

 

米海兵隊MEU指揮官

トーマス・タウンゼント 大佐

 

米空軍ミッドウェー空軍基地司令

ライト・エドワーズ 大佐

 

海上自衛隊MI救難隊隊長

杉並 治郎 一等海佐

 

航空自衛隊MI派遣航空隊(第七航空団301飛行隊)隊長

菅野 直 一等空尉

 

そのほかにも、入港中の艦艇や各部署の主要幹部が多数いた

 

 

「信じられねぇな」

 

と、菅野一尉

 

「そいつの話が真実なら、俺らは今別世界にいると言う事だろ?中佐殿」

 

「そう言うことだ」

 

一尉の質問にバーフォードが答える。そこへ

 

「ちょいと失礼するぜ~」

 

やっとの事でエイラを泣き止ませたアンタレスが会議室に入ってくる

 

「おっちゃん、もう一人の子の調書」

 

「うむ、済まないな」

 

バーフォードはアンタレスから受け取ったファイルをパラパラと捲りざっと目を通す

 

「おう若僧、調子はどうだ?」

 

マクガイバー准将がアンタレスに話しかける、彼こそ今回アンタレスを救出するために、SEALsの乗った潜水艦派遣を容認した張本人だった

バーフォードの旧友の一人であり、事件の際もサンフランシスコへ第三艦隊を出動させるのに一躍買った人物である

 

「絶好調さ、アンタの所の原潜の奴らに礼を言っといてくれ」

 

「わかった」

 

アンタレスと准将は軽く握手を交わす

 

「それで?」

 

バーフォードがアンタレスに聞く

 

「名前はエイラ・イルマタル・ユーティライネン、スオ....ムス?空軍少尉。彼女の言っているスオムスはたぶん"Suomi"の事だと思うしから恐らくフィンランド系だ」

 

とアンタレス

 

「なるほど」

 

「じゃ、俺は行くぜ!」

 

説明を終えてアンタレスは部屋を退室する

 

「ご苦労だった」

 

バーフォードが一言かけた後、部屋のドアが閉まる

 

「少なくとも、本土との連絡が途絶えて4日....あの霧が原因なのか」

 

「あの空飛ぶ少女やら黒いデカ物やらも"異世界"だからって事か。何でもアリだな」 

 

「問題は今後の補給に関してだ、オルカが入港した直後だからしばらくは心配ないだろうが、持って二、三ヶ月が精々だろう」

 

「ボノム・リシャールを含めた各艦艇にも混乱が広まっている」

 

「我が海兵隊の連中もずっと船にすし詰め状態だ。このままの状況が続けば…」

 

「それよりもまず心配すべてきことは備蓄の問題だ、今さっき言っていた補給の件もある」

 

「そんな事はどうでもいい、問題は本土との連絡だ!偵察機を飛ばせ!」

 

会議室は慌ただしく言葉が行き交っている。そこに

 

「アンタレスが連れ帰ったアレキサンドラ中尉から聞いたところ、あの謎の敵をこの世界では"ネウロイ"又は"怪異"と呼んでいるとの事だ」

 

と、バーフォード

 

「怪異ね....」

 

菅野一尉がアンタレス隊によって撮影された黒い巨大航空機の写真を見て呟く

 

「こんなの、俺の"紫電改"で瞬殺だぜ」

 

彼は自身の乗るF-2支援戦闘機を"紫電改"と名付けている。ちなみに"紫電"はF-1だと言う

 

「F-22に勝てないのにか?」

 

と杉並一佐

 

「あれはたまたまコンディションが悪かっただけですよ!」

 

「オッホン、私語は慎みたまえ」

 

エドワーズ大佐が二人に言う

 

「よし、我々はこの不明物体を敵性目標"ネウロイ"と設定する」

 

「「「「了解」」」」

 

「アメリカ本土との連絡が取れない以上、この基地では私が最高階級だが、今の状況では誰が指揮官だの言っている場合ではない、各部隊は臨機応変に対応してくれ」

 

マクガイバーが言う

 

「部下やその他職員にも若干の動揺や混乱が見られ、相当なストレスが溜まっていると思われます」

 

と杉並

 

「その点に関しては、ウチの精神カウンセラーやその手の資格を持っている者にカウンセリングを依頼しよう」

 

とバーフォード

 

「我が方の艦艇にも資格保有者がいるはずだ、対応させよう」

 

そう言うとマクガイバー、は隅で控えていた士官に各艦艇への連絡を頼んだ

 

「俺達空自は島周辺海域の哨戒活動を強化するぜ」

 

「我々海自もUS-2やヘリを使って海上哨戒を」

 

菅野と杉並が部隊の方針を説明する

 

「我々海兵隊は一旦ミッドウェー島の北側に野営キャンプを構築し、車両や機材の積み下ろしを行う。狭い艦内は何かと不便だからな」

 

とタウンゼント

 

「我々合衆国空軍はグローバルホークを使って周辺海域の海図製作を進め、戦闘機隊も24時間のアラート待機とする...第36航空団予備爆撃隊も待機状態にするか....」

 

と、続けてエドワーズ大佐が説明する

 

「うむ、海軍も艦艇を交代で配置し水中水上哨戒を厳にする。ハワイの艦長もやる気満々だしな」

 

准将も海軍について説明する、そこにバーフォードが

 

「准将、我々は独自に動きたいのだが」

 

「勿論構わんよ、若僧の機体の事もあるしな」

 

「ですが、我々だけでは対処しきれない事態も想定されます。その時は....」  

 

「心配するな」

 

准将は『分かってる』という顔で答える

 

「感謝します」

 

「皆、未だ我々が置かれている状況がハッキリしていないがもし仮にここが『異世界』や『別世界』だとしても我々の役割は変わらない。世界秩序の維持と平和の尊重だ。皆それぞれの任務を果たしてくれ」

 

「「「「ハっ!」」」」

 

「では...私は失礼する。色々やるべき事が有りますので」

 

そう言うとバーフォードは会議室を後にし廊下へ出た

 

「長い人生を送っていると、色々有るもんだ....異世界か」

 

バーフォードは窓の外を見た。基地の様子はいつもと変わらず、本当にここが異世界なのか疑ってしまう

 

「厄介な事になってしまった」

 

そしてバーフォードはまた歩き始める




__次回予告__
異世界である事を前提に部隊運用を進める幹部たち。それと同時にアンタレスは失った翼の代わりを手に入れるためオールドハンガーへと向かった。
そこにあったのは各国の歴戦の機体達、そしてアンタレスは格納庫の隅でねむる一匹の猫と出会う。
次回『我が名は天駆ける蠍アンタレス』
第7話
 
        _そして甦る赤蠍_


お楽しみに!
※タイトルや内容は予告なしに変更する場合があります

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