我が名は天駆ける蠍アンタレス!   作:伊 号潜

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第3話 __アンタレス拘束__

《アンタレス拘束》

 

501基地格納庫内

 

「そこから降りろ!」

 

一人のブリタニア兵がアンタレスに言う、こんな状況でもアンタレスは冷静だった。無線のチャンネルをアンタレス2への単線に切り替える

 

「アレク、島に戻ってこの事をおっちゃんに報告してくれ」

 

《了解、無事を祈ってるぞ》

 

「祈っといて~頼むから....」

 

アンタレスは遠ざかる三機のアンタレス編隊を見届ける

 

「降りろと言っている!」

 

ブリタニア兵が大声で怒鳴り付ける

 

「わーかった、わかったからそんな怖い顔すんなって小シワが増えるぜ」

 

アンタレスは冗談を良いながら余裕な表情で酸素マスクとヘルメットを脱ぎ、護身用のマカロフ拳銃をフライトスーツの内側にあるポケットに忍ばせてからキャノピーを手動で開き外へ出た

 

「所属と名前を言え」

 

一人の兵士がアンタレスに銃を向け言う

 

「おいおい、人に名前を聞くときはまず自分から名乗るもんだって教わらなかったか?」

 

「貴方を基地への無許可着陸並びに不法侵入者及びブリタニアへの不法入国者として拘束します」

 

「はぁっ!?」

 

その言葉を聞いてアンタレスの表情が一変する、その直後数人の兵士がアンタレスの両脇を固めた

 

「おいおい!それが助けてやったヤツへの態度か!?離せよ!」

 

アンタレスの抵抗もむなしく連行されていく

 

「冤罪だあぁぁ!」

 

 

501基地、半地下営倉

 

「入ってろ!」

 

半地下にある営倉に連れてこられたアンタレスは、兵士によって強引に営倉内に押し込まれた

 

「痛ってぇなこの野郎!おい飯と風呂の時間は何時だ?」

 

「ふざけるな、黙って大人しくしてろ」

 

そう言うと兵士は格子戸前の階段を登って行った。数秒後、上の方から『ガチャン!ガチャガチャッ』と鉄扉とその鍵を閉める音がした

 

「アホォ....大人しくしてろと言われて大人しくするヤツがいるかってんだ」

 

営倉は二畳ほどのスペースで、バケツが一つ、錆び付いた水道の蛇口と灯り取り用の小さい格子窓が天井付近にひとつあるだけの薄暗い部屋だ。

アンタレスは格子戸を少し揺らしてみる

 

ガチャンガチャン

 

「何だよ、思ってた以上に脆いな」

 

格子戸は何年も手入れされてないのか錆びだらけで、衝撃を与えれば今にも外れそうな状態だった。その気になればいつでも出られるが....

アンタレスは今抜け出したところで機体は大破、しかも回りは"敵?"だらけ、救助を待つ他ないと判断した。

 

「ま、たまには冷えたコンクリの上で静かにのんびりするとしますか.... 」

 

アンタレスはそう言うと静かに目を閉じた

 

 

ミッドウェー基地、司令室

 

「以上です」

 

「そうか....」

 

「あいつ....隊長はキースを守るため自らミサイルに....」

 

アレクセイはアンタレスが身を呈してアンタレス3を守った事や、巨大航空機の事、あの空飛ぶ女の事をバーフォードに報告していた

 

「また、ミサイルを放った機体の画像がこちらです」

 

アレクセイは機体に取り付けてあるカメラで撮影した映像が録画されているテープと共に一枚の写真を取り出す

 

「黒塗りの機体....ですが直前まで我々が交戦した機体とは違いました」

 

写真には炎に包まれながら墜落する機体が写っていた。三角形の全翼機、アメリカが開発していたステルス無人機に似ているが細かい部分は違う。

 

「これは...."利剣"か?」

 

"利剣"、それは中国が開発したステルス無人戦闘攻撃機である。主に陸上基地で運用されているが空母艦上でも小数運用されているらしい

 

「断定は出来ませんが....似ています」

 

写真を見つめながらアレクセイが言う

 

「これを含めて、我々の周りで不可解な出来事が起こり過ぎています。あの空飛ぶ女、そして陸地。にわかには信じがたいですが、巨大な陸が突如現れたと言う事になります」

 

「逆かもしれんがな」

 

「逆?」

 

「実は君達が出撃した後に、米空軍がハワイ島がある方向にMQ-4Cを飛ばした。するとそこにあったのは」

 

バーフォードは机から書類をアレクセイに手渡した

 

「イベリア半島だった」

 

「なっ!?」

 

アレクセイは耳を疑った、ミッドウェーからイベリア半島まで少なくとも約15000kmの距離があるのだ

 

「地図とその他のデータから予測するにこの島が今ある場所は座標『47.824378,-10.799733』の海上。つまりフランス、ブリュターニュ地域フェニステール沖の約300kmの地点であると解った」

 

「フランスのブリュターニュ!?」

 

「そうだ。だが、不思議な事に偵察機による測定情報と今ある地図を比較してみると大まかな地形はにていても細かい地形が全く合わない。つまり....」

 

バーフォードは言葉を止めた、何かを迷っているようだった

 

「つまり?」

 

アレクセイが聞き返す、バーフォードは腹をくくり言った

 

「つまり、信じられないがここは我々の知るヨーロッパとは違う、文字通り別の世界のヨーロッパである可能性が高い」

 

「そんな空想小説みたいな事!」

 

アレクセイはバーフォードの机を叩きつけた、馬鹿げてるとでも言いたそうな顔だ

 

「しかし、そうすれば辻褄が合う。あの濃霧も、ハワイや本社との連絡途絶も、少なくともあの事件以来目撃されてなかった巨大航空機の出現も、そして君達の話す空飛ぶ少女達も」

 

「........」

 

アレクセイは何も言い返せなかった

 

「とにかく、今はアンタレスを救出する手を考えなければ....無事でいてくれればな」

 

バーフォードは最悪の事態も覚悟していた、傭兵は国際法上正規軍兵士ではないため敵に捕まった場合は捕虜扱いにならない。つまり身の安全が保証されないのだ

 

「アイツは....ちょっとやそっとの事でくたばる様な奴じゃない」

 

「そう言えば、君とアンタレスは同期だったな」

 

「訓練学校も昇進も同じです。奴は良き相棒であり、良きライバルです」

 

アレクセイが真剣な顔でバーフォードに言う

 

「とにかく、君たちは一旦自室に戻り休息をとれ、後は私に任せてくれ」

 

「了解しました」

 

「うむ」

 

アレクセイが部屋を出ていった後、バーフォードは島内用電話の受話器を手に取り何処かに電話をかけはじめた

 

「バーフォードだ、艦隊司令を頼む」

 

「私だ............実は折り入って頼みがある....」

 




__次回予告__
アンタレスが捕まったとの一報を受けバーフォードはある人物に電話をかける。これがアンタレス救出作戦の始まりだった....
次回『我が名は天駆ける蠍アンタレス』
第4話
         __尋問__  

お楽しみに!
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