我が名は天駆ける蠍アンタレス!   作:伊 号潜

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かなり遅れました、申し訳ありません。
本来なら前編やら中編やら後編やらにするのではなく一話としてうpしたかったのですがリアルさ?を求めた結果一話にしてはごちゃごちゃしたりして「こりゃ分けた方が読みやすいかもなぁ」と思ったので分けさせてもらいました。

そして今回はある方(このサイトで同じく小説投稿をされている方)の執筆スタイルを参考にして地の文を気持ち多めにしましたのでご了承ください。
また、誤字脱字などがありましたら容赦無く指摘していただいて結構です!次話執筆の参考になります。
感想などももらえるととても嬉しいです。次話執筆の励みになります! では離陸編をどうぞ!


第13話_ドッグファイト!華麗なる空中戦(離陸編)_

ミッドウェー基地、第3格納庫前駐機エリア

 

501のウィッチ4人との模擬空戦演習の為、アンタレス隊とソード隊の参加機4機が出撃準備を行なっていた。

 

太陽は丁度真上に位置して雲も多くなく、滑走路や駐機エリアにある吹き流しも少し揺れている程度で、飛行には全く問題の無い気象状況だった。

 

「バッテリースイッチON、インバータースイッチSTAY。エンジンインターステージタービン温度150°以下…確認」

 

アンタレスがF-14の狭いコックピットで各種計器のチェックを行なっていた、後席に座るサーニャも、マニュアルや整備クルーに手伝ってもらいながら手探りでチェックを進めていた

 

「ギア表示はグリーン、警告灯及びブザーチェック」

 

アンタレスが警告灯のテストスイッチを入れるとコックピットのあらゆる警報装置が鳴り響いた

 

「全てよし…やっぱり慣れねぇなこの音」

 

飛行中に自身の乗る航空機で警報が鳴るということは、ほとんどの場合で自らが命の危機に瀕している事を意味している。戦闘機なら尚更だ、少なくともパイロットでテスト以外でこの警報音を聞きたいと思う者は一人もいないだろう

 

「燃料計もよし、酸素供給に各種ブーストポンプ、無線電源ON、周波数は調整済み。APU(補助動力装置)起動」

 

APUを起動すると低い唸るような起動音が辺りに響き渡った。APUの回転数や温度をチェックし終えると、ジェネレーターを交流にし、エンジン始動警告のため翼端灯を点滅モードに設定、管制塔へエンジン始動許可を要請を出した

 

「タワーへ、こちらアンタレス1。VHF無線で交信中。メインエンジン始動許可を要請」

 

《アンタレスへ、メインエンジン始動を許可する》

 

アンタレスは左エンジンから始動を開始した。F110-GE-400エンジンは、APUとはまた違う低い起動音を鳴らしながら、徐々に聞き慣れた甲高いエンジン音へと音を変え、機体の左にいる整備クルーがタービンが回転するのを確認しアンタレスに合図を送る

 

「燃焼室内温度適正、コアスピード56%、エンジン回転数は正常で油圧状況も正常。各種機器に異常はなしっと」

 

チェックリストを一枚、また一枚とめくりアンタレスはチェック欄を埋めていった。

続いて右エンジンも同じ手順で始動させ、APUジェネレーターを切り、翼端灯を点滅から点灯モードに切り替えたところで、整備クルーから無線が入る

 

《アンタレス。両翼のフラップ、スラット、ラダーの確認を行ってください》

 

F-14の横に立つ整備クルーがアンタレスに指示すると、アンタレスは「ちょっと待て」と言い、トリムスイッチで操縦桿が動作するかを確認し予備ADI(姿勢指示器)ゲージを解除した後、サーニャに両翼の確認をさせる。

 

あらゆる動翼がアンタレスの足と手による操作でバタバタと動きはじめ、整備クルーがそれと同時に可動部のチェックを行っている

 

「異常なしです」

 

サーニャが左右の確認が終わったことをアンタレスに伝えると、アンタレスは兵装システムチェックを行った。バイザーを下ろし、左側サイドコンソールのスロットルレバー横に増設されたHMD操作スイッチをONにすると、バイザーに黄緑色の文字やシンボルが表示される。

 

「スイッチが操縦桿に付いてれば楽なんだがなぁ」

 

彼が乗っていたSu-35では、HMDの操作は全て操縦桿に取り付けられた多目的スイッチにより行っていた。しかし、F-14には元々HMDの機能は無く、あくまで試験目的に付けられていたため実用性は今ひとつだった。

 

全面コンソール中央画面下にある兵装状況表示装置や左右のアップライトコンソールの確認を終え右サイドコンソールの兵器システムチェックも終えた。と言っても前席にある兵器システムは、短距離兵器等の物しかなく、ほとんどの兵器システムや火器管制装置はサーニャのいるRIO席に取り付けられている。そのためサーニャの方は複雑な火器管制装置のチェックに戸惑っていた。

それも無理はない、何せ数ヶ月もかけて覚える操作を三、四日で行わせているのだ。サーニャは両側にいる整備クルーに手伝ってもらいながら何とかチェックリストのページを一枚、また一枚と進めていた。

 

一方アンタレスはその合間にIFF(敵味方識別装置)や多機能ディスプレーのスイッチ等前席で行えるチェック等を粗方片付けた

 

「準備は?」

 

「今終わりました」

 

サーニャの準備完了の合図とともに待機していた誘導班のピックアップトラックが動き出し、トヨタ初期型タンドラのエンジンがジェットエンジンの轟音にも負けじとエンジンを吹かしはじめる

 

「(とりあえず、戻ってきたら火器管制装置の勉強でもさせるか…)」

 

そんな事を考えた後、無線でタワーに呼びかける

 

「タワー、こちらアンタレス。タクシー準備完了、滑走路への移動許可を要請」

 

《アンタレス隊及びソード隊へ、誘導班が誘導します》

 

管制塔から指示が入るとアンタレスはNWS(前輪操舵)を入れ、続いてキャノピーを閉じた。そしてコックピットから横でアンタレスらの準備を待って居たウィッチ達に「俺たちについて来い」と手信号を送り轟音の鳴り響く駐機エリアを出て誘導路へと進んで行った

 

ウィッチ達はバックブラストの影響を受けない距離を保ちながら地上1メートルをゆっくりと飛び、4機の後に続いた

 

「すごい音だなぁ〜」

 

「これが無ければ何も聞こえないほどだ!」

 

シャーリーの一言に、バルクホルンは頭に着用している機器を触りながらそう答えた。それはウィッチ達が今回の模擬空戦用にマーティネズ社から特別に借りたヘッドセットだった。いくらウィッチ専用のインカムがあるとは言え、ジェットの轟音が響く中では通信が困難だとバーフォードからの指示だった。初めは皆嫌がっていたが、いざ使ってみるとそう悪いものでもななかったようだ

 

「サーニャちゃん、本当にあれを操縦してる」

 

「まさかとは思ったけど、サーにゃん凄いねぇ」

 

宮藤とハルトマンの二人は、未だにこの巨大な飛行物体にサーニャが乗っているのに驚いている様子だ。二人はサーニャの乗るF-14が誘導路のカーブを曲がる時、コックピットに座るサーニャに手を振った。それに気づいたサーニャは、少し恥ずかしそうにしながらも手を振り返す

 

滑走路エンドに着くと、ウィッチ達を含めた8機は一旦停止し、着陸機や離陸機が居ないかをチェックした。アンタレスはその合間に射出座席をセットしピトーヒートをONに、そして衝突防止灯を点滅させる。残りのチェックリストを完了させたアンタレスらは滑走路手前に移動し管制からの指示を待った。

 

《ミッドウェーコントロールよりアンタレス1、2及びソード1、2へ、滑走路への侵入を許可します。ウィッチ隊は4機が発進するまで滑走路手前で待機せよ》

 

管制塔からの無線連絡を受けると、アンタレスは再度ラダー、フラップ、エレベーターの順に見える範囲の可動部分の動作チェックを行い、フラップの離陸位置、パワーをコアスピード90%まで進めてスロットル位置とパワーが一致したか、各エンジンのスラストのズレが無いかを確認。

アンタレス隊とソード隊両隊の4機は、誘導路から滑走路に侵入し、アンタレスはF-14の主翼の後退角を最大前進角の20度にセットした。直後、管制から再び無線が入る

 

《アンタレス隊、ソード隊、離陸を許可します》

 

離陸許可を得たアンタレスはブレーキを解除し、同時に操縦桿を軽く引き、離陸に必要な揚力を得るためにスロットルを目一杯押し込んだ。後に続く3機もアンタレスに遅れまいと加速する。

二基のF110-GE-400と二基のIHI/GE F110-IHI-129、そして二基のСатурн АЛ-31の計六基のエンジンは、合唱団の如くその甲高い声を共鳴し、大空の舞台へと舞い上がって行った。

 

アンタレスらが飛び立った後、今度はウィッチの4人が滑走路に侵入、直後に離陸した。アンタレスはその様子を見て異常が無いか、ウィッチ達が付いて来ているかを確認した後、先に発進していたカノープスのいる訓練空域へと向かった

 

《カノープスより演習参加予定の全航空機へ。これより訓練プログラムを発動し、コード0.7の臨時編成を行う》




次回『我が名は天駆ける蠍アンタレス』
第13話

_ドッグファイト!華麗なる空中戦(激突編)_


お楽しみに!

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