申し訳ありません。
なぜ遅れたかと言うと普通にサボっていました。と言うか色々やる事多すぎてサボらざるを得ない状況でした(何言ってんだ俺は...)。
何はともあれ第12話をどうぞ!
「いい天気、まるで日帰り旅行みたいですね」
視察のため、501の魔女達を乗せたJu52はミッドウェーに向かっていた。機内では宮藤が窓の外をワクワクした様子で見ている
「まったく。あまりはしゃぎすぎるなよ、今回の我々の目的はあくまでも視察なんだ」
そんな宮藤を見て坂本が言う
「しかし、基地を留守にして大丈夫だろうか?」
バルクホルンが心配な様子でミーナに話しかけた。いい機会だからと501部隊の隊員全員を連れて行くことにバルクホルンはすこし疑問を持っていたのだ
「夜には戻るつもりだし、基地の警備は万全、一昨日侵攻があったばかりだから大丈夫よ」
「だと良いが」
「あ、そうだ」
宮藤はある事を思い出し、ポケットから小さな箱を取り出した
「これ、昨日アンタレスさんに貰ったんです。皆んなで食べましょう」
箱にはきのこの形をしたチョコレートの様な絵が描かれていた。宮藤は箱を開けると中に入っていた菓子を全員に配り始める
「変わった形ね」
「柄の部分がビスケットで傘の部分がチョコになっているのか」
「美味いな」
「おいしー!」
「どうやって作ってるんだろう?」
「あら、美味しいですわね」
「美味ぇ」
全員それぞれ違う反応で菓子を味わっている。宮藤はコックピットにいるパイロットにも菓子を配った。二人のパイロットは菓子を食べるとお互いに顔を見て頷きながら口を動かしている。気に入った様だ
「それにしても、あとどのくらいで着くんだ?」
「方向だけ伝えられて正確な位置はわからないんだ」
「まったく、これで燃料が尽きるまで飛び続けて墜落なんてしたらいい笑い者だ」
バルクホルンは少し不機嫌そうだ
「そろそろ来る頃なんダナ」
「え?」
エイラの一言の直後
「何か近づいてきますよ!」
宮藤が窓の外の何かに気づいた、全員が右側の窓に詰め寄る、外を見ると四つの黒い点が近づいてくるのが見えた
「ネウロイか?!」
「まさか!?」
黒い点は次第に大きくなりJu52の真上数メートルを通過した
「うわ!」
「きゃあ!」
謎の航空機が機体スレスレを通過したことにより気流が乱れ機体が大きく揺れる。パイロットが「危険です!掴まって」と声をかけた直後、コックピットの無線機に雑音混じりの通信が入る
<<ザザァ〜....ザ〜、....あーあー、こちらはMS社所属飛行隊、所属不明機に告ぐ。所属と飛行目的を明らかにされたし>>
通信は先ほど真上を通過した機体からのもので、自らをマーティネズ社所属機と言った。パイロットが恐る恐る答える
「こ、こちらは第501統合戦闘航空団所属機、視察団を乗せて飛行中です」
<<501所属機に告ぐ、直ちに武装を解除し我が方に帰順せよ、我々の誘導に従え、you have been intercepted. Please follow our instructions now>>
「どうします中佐?」
パイロットは隊長であるミーナに尋ねた
「言う通りにしましょう、これ以上厄介ごとは増やしたくないわ」
「わかりました。.....こちら501所属機、了解。貴機に従います」
パイロットがそう答えると四つの航空機はJu52を取り囲む形でダイヤモンド編隊を作った。右側を並航する機体をウィッチ達は窓から覗き込む。
「それにしても変わった形の飛行機ね」
ミーナが機体を見ながら呟く。
「キャノピーはティアドロップ型か、水平尾翼が無いな。機首の小翼でその機能を補っているのか?」
その航空機は三角形の翼を備え水平尾翼はない。その代わりなのか機首部分に小さな翼を備えていた。
垂直尾翼にはオリオン座のマークとマーティネズ社所属を表す『MS』の文字が施されている
「翼に色々ぶら下げて空気抵抗悪そう」
「ペラが無いってことはアレもジェットなのか」
「視界良さそうですね」
「さっきの声、女性でしたわ。それにあの喋り方....」
「どうしたんですかペリーヌさん」
「い、いえ、何でもなくってよ」
「あっ!見えてきました」
各々が機体を見て話していると宮藤が斜め前方に島が見えたのに気づいた
「あれがミッドウェー」
島に着くと、Ju52は管制の誘動を受けて滑走路に着陸した。着陸して減速した後、今度はピックアップトラックが現れ、その荷台に乗った誘導員の指示に従い格納庫が並ぶハンガーエリアへと進んだ。
ハンガーエリアに侵入すると、停止の指示を受けたJu52はエンジンを切り12と書かれた格納庫の前で停止した。ウィッチ達がタラップを降りるとそこにはバーフォードの姿があった
「ようこそミッドウェーへ」
バーフォードは青い迷彩の施された作業服に青い将校用略帽をかぶり彼女たちを出迎えた
「昨日はどうも」
「まさか、全員来るとは思いませんでしたな。機材まで積み込んではさぞ窮屈だったでしょう」
バーフォードはJu52から降ろされる四機のストライカーユニットを見ながらミーナに言う
「あのパイロットはどこに?」
「今の時間は格納庫で整備をしてるはずです」
「格納庫だらけだ」
バーフォードはハンガーエリアの奥に歩き始めた。ウィッチ達も後に続く。
巨大な格納庫が立ち並ぶ様はウィッチ達にはとても新鮮な光景だろう。爆撃機を運用する基地ならともかく、ウィッチらが使用している基地にはこれほど巨大な格納庫は必要ないからだ。
シャーリーやルッキーニは駐機スペースに並んでいる車や航空機をキラキラした目で眺め、宮藤やリーネは格納庫のてっぺんを『うわぁ〜』や『高〜い』などと言いながら見上げて、坂本やミーナ、バルクホルン、ペリーヌらは扉の開いた格納庫の中を見て『機能的に作られているな』『大掛かりな機材まで多種多様ね』『ある程度の機体修復までこなせそうだ』『役割ごとにそれぞれ色違いのジャケットを着ていますわね』等と話し、残りのハルトマンとエイラは『あち〜』『日陰に入りたいんダナ』とダルそうに歩いていた。
そうこうしているうちに一行は《 3 》と書かれた格納庫の前に付いた。格納庫の扉は閉まっており、中からはジャカジャカしい音楽が流れている。
バーフォードはポケットからカードキーを取り出し、人用の出入り口脇に設置された機械にカードをかざすと《ピピッ》という機械音が流れ、同時に扉のロックが解除された
「アンタレス、お客さんd...『ストレートフラッシュー!』
バーフォードが中にいるアンタレスに呼びかけようとした瞬間、整備とは全く関係ない雄叫びにも捉えられる大声が格納庫内に響いた。そこには丸いドラム缶を囲んでトランプを握りしめたアンタレスと彼の隊の機体担当の整備員達の姿があった。彼らはトランプ、おそらくポーカーと思われるゲームに夢中で、まだバーフォードやウィッチ達の存在に気づいて居ない様子だ
「おい待てよ!そのカードさっきも出さなかったか?!イカサマだろオイ!」
「ヘヘッ、証拠出せ証拠を!」
整備員が同じ整備員仲間と言い争いを始めた、しかしアンタレスは何やらニヤけながら割って入る
「甘い甘い、こっちはロイアルストレートフラッシュだぁあ!」
アンタレスの手札を見て整備員達がトランプをドラム缶に叩きつけアンタレスに怒鳴りつける
「イカサマだぁイカサマだぁ!」「65万分の1の確率の札がそう簡単に出るわけないだろ!」「汚ねぇぞ!正々堂々と戦え自称エースパイロット!」
「証拠を出せ証拠を!ほらほら全部出せ全部!全て俺のものだ!ハハハハハh.<<ゴォッ>>」
「Голова была вмятина!(頭が凹んだぁぁ!)
アンタレスがドラム缶の脇に並べられてあった酒瓶3本を手に取ろうとした瞬間バーフォードのM92A1ベレッタ拳銃のグリップ底がアンタレスの頭部を直撃、アンタレスは頭を抱えながら床をのたうちまわった
「軍人が賭け事など、規律が甘すぎるぞ!」
バルクホルンがそんなアンタレスを見ながら「あり得ない」とでも言いたそうな表情で言う、するとアンタレスは起き上がりバルクホルンに言い返す
「あぁ?お前にとやかく言われる筋合いないね」
「何!?」
「ここでは賭け事が許されているのですか?」
ミーナがバーフォードに問いかける
「禁止はしていません。余程の物を賭けなければね。しかし、勤務時間時にやっていいとは一言も言ってないぞ」
バーフォードは呆れながらアンタレスに言う
「なんて所だ」
バルクホルンは聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。
「見ての通り今日はお開きだ、散れ散れ。酒はおいていけよ」
アンタレスは整備員達に告げると、彼らは納得いかなそうに渋々持ち場に戻っていった。
「これは持っていくからな」
整備員達が離れていった後、バーフォードはドラム缶の上に置かれたタバコや小銭、クシャクシャの現金にビール瓶をかき集めて両手いっぱいに抱えた。
「あっ、俺の儲け!!」
「ショバ代だ。賭場にはショバ代を払うのは常識だろ?」
「ショバ代で賭け金全部かっさらう賭場なんて聞いたことねぇぜ」
「いい商売だろ。賭場は儲かるようにできてるからな」
「チッ……!」
アンタレスは悔しそうに舌打ちをした。
「そこにあるのが今日の予定だ、時間通りにな」
バーフォードは顎でドラム缶の上に置かれたクリップボードを指した。そこに挟まれた一枚の用紙には、1日の大まかな予定と時間が書かれて居た。ほとんどが午後の時刻で書かれてある
「訓練は午後から?」
「午前中は米空軍が滑走路を使用するから。それまでの間島の中を案内するなり、何かしら時間を潰してくれ」
「俺がぁ? そもそも案内するような場所なんか無いだろ」
「慰霊碑に行くなり射撃場に行くなり時間を潰してくれ。君にまかせる」
「冗談キツイぜ」
「中佐、ちょっといいですか?」
バーフォードは『とにかく任せたぞ』と一言残し本部棟から来たと思われるスタッフと共に格納庫を後にした。
「ったくよぉ〜、ベビーシッターなんてゴメンだぜ」
アンタレスが嘆いていると、奥から三人の人物が近づいて来た、アンタレス隊のメンバー達だ。
「こいつらですかい、隊長を取っ捕まえたって言う女どもは」
「紹介しよう、俺の隊のメンバーだ」
アンタレスが三人を指差すと、三人は自己紹介を始めた
「アンタレス隊二番機、アレクセイだ。うちのバカが迷惑かけたな」
「アンタレス隊三番機のキースだ。隊長共々よろしくなガキンチョども」
「四番機、アキラ」
三人が自己紹介を終えると501のシャーリーが口を開く
「へー、この島には黒人パイロットも居るのか」
「いたら悪いかい嬢ちゃん?」
「黒人パイロットと言ったら、確かリベリオン第332戦闘航空群くらいだよな~。あとは第477爆撃隊とか?」
「第332戦闘航空群っ!?マジ!?しかも第477爆撃隊まで!?」
シャーリーの言葉を聞き、キースが仰天する、シャーリーは少し驚きながら答える
「え、あぁ、それがどうかした?」
「俺!俺の爺さん第332戦闘航空群第100戦闘飛行隊の戦闘機パイロットだったんだ!スゲェー!マジかよ~」
「へ、へぇ〜...」
そんな話をする二人を尻目にバルクホルンがアンタレスに言い寄る
「しかし、さっきの戦闘機の操縦は何だ?危うく接触するところだったぞ!」
「戦闘機?......あぁ、オリオン隊の連中か」
「オリオン隊?」
「M42飛行中隊第二小隊、コールサイン"Orion"だ。......噂をすれば」
アンタレスが話していると、外からキィィィと言う特徴的なエンジン音が聞こえてきた。外に出ると、先ほどの四機の戦闘機がハンガーエリアに入ってきたところだった。
四機は誘導員の指示に従いながら格納庫に入っていき視界から姿を消した。しばらくするとエンジン音が止み格納庫から四人のパイロットスーツ姿の者が歩いてきた。
その直後、バルクホルンとミーナ、ハルトマンのカールスラント組がある事に気づき驚いた
「マルセイユ!?」
「あ!」
「うわ!マルセイユじゃん!」
カールスラント組の三人は四人のパイロット達の先頭を歩いていた隊長らしき一人の人物に駆け寄って行く、その人物は女性だった
「何故お前がここにいる?!」
バルクホルンがその人物に話しかける、しかし帰ってきた答えは
「誰?」
バルクホルンはその答えを聞き頭に?マークを浮かべた
「何処のどちらさんか知らないけど、多分人違い。通してもらってもいい?」
三人はキョトンとしていたが、パイロット達の進路を塞いでいることに気づき道を開けた
「す、済まない」
パイロット達はその三人の横を通り過ぎ、隊長らしき女性はアンタレスとすれ違いざまに挨拶代わりのハイタッチをしてハンガーエリアを後にしていった
「あの人達がオリオン隊の人達ですの?」
ペリーヌがアンタレスに問いかける
「あぁ、フランス....この世界で言うとガリアだっけ?そこの出身者で構成されてる隊だ。隊長のTACネームは"マルセイユ"、今の女がそうだ。お前らがあいつのTACネームを言い当てた時は正直びっくりしたが人違いだったらしいな」
「道理でガリアなまりのブリタニア語を話していたわけですわ」
飛行中にJu52が彼らのインターセプトを受けた時、無線の声を聞いてペリーヌは声の主がガリアなまりのブリタニア語(正確にはフランス語なまりの英語なのだが....)を話していたことに気づいていた。
「と、言いますと....先ほどの戦闘機もあなた方の世界で言うフランスで作られた戦闘機ですの?」
「そうだよ、ダッソーラファール。フランスが製造した多用途戦闘機」
「あなた方の世界のガリアに当たる国は相当発展していますのね」
「まぁ、この時代に比べたらな」
「この世界のガリアはネウロイに占領されていますわ、正直あなた方の世界が羨ましくてよ」
「俺たちの世界も今と大体同じ時期にフランスは占領されてたぞ」
「え?」
「ま、詳しくは後々な。話せば長ぁ〜〜くなるから。あ、ちなみにマルセイユってのは本名じゃないぞ、フランスのマルセイユ地方出身だから"マルセイユ"だ」
「女性が戦闘機のパイロットで隊長?」
今度は坂本が問いかけてきた
「俺たちの世界じゃ珍しくない、女性のみの部隊もあるし、女性艦長や女性戦車隊隊長、女性宇宙飛行士。なんだってある」
「そういえば、サーニャはどこダ?」
エイラがアンタレスを睨みながらサーニャについて聞く
「今は飯食いに行ってるよ、少し早い気もするが飯でも食いに行くか?整備も一段落ついたし
「たしかに、腹減ったな」「たまには早めのランチも良いだろう」「右に同じ」
アンタレス隊もアンタレスの意見に賛成した様だ
「ついてきな」
アンタレスはウィッチ達を連れて本部棟横の食堂などがある多目的棟へと向かった。
「ここはどの様な島なんだ?」
しばらく黙って歩いていたところ、話題を振ってきたのはバルクホルンだった
「どの様な、っていうと?」
「見た感じだと島民は居なく、軍関係者のみの軍事拠点に見えるが」
バルクホルンは辺りを見回しながら聞く、確かに辺りにいる人は皆軍関係者ばかりで民間人など一人もいなかった
「まぁ、簡単に言えば太平洋の"中継基地"か"防空・海防拠点"だな。あとは古戦場とでも言っとくか」
「古戦場?」
「ここミッドウェー島は、第二次世界大戦中の1942年6月5日から7日にかけてミッドウェー島をめぐって行われた海戦、通称ミッドウェー海戦が行われた戦場だった。日米双方合わせて3,364人が戦死した。そして.....」「おっと!それ以上は言わない方がいいぜアキラ」
珍しく普段必要最低限の言葉しか発しないアキラが島について説明していくが、途中でアンタレスが言葉を遮った
「人間同士で殺し合いしてる世界の話なんざロクなもんが無い。それにかなりエグイ話だからな。ここには人の生き死にに対して過剰に反応する奴もいるんだ、それ以上はやめておけ」
アンタレスは昨日のバルクホルンとのやりとりを踏まえて皮肉にも捉えられる言葉を発した。その時
「ん?」
「あ?」
多目的棟の入り口を入って直ぐの突き当たりで、アンタレスら一行は三人の人物と出くわした、航空自衛隊のソード隊の連中だ
「ンだテメェ、そこどけよ」
隊長である菅野はアンタレスの顔を見るなりガンを飛ばす
「そっちこそどきやがれ、こちとら来客絶賛もてなし中なんだよ」
アンタレスは親指をウィッチ達の方に向け答える
「ンなこと知るか、さっさとどかねぇと89式銃剣口にぶち込むぞコラァ」
「やれるもんならやってみやがれ、テメェこそさっさとどかねぇとM43銃弾口にぶち込むぞコラァ」
アンタレスと菅野が小競り合いを始め、ウィッチ達もそこで足止めを食う羽目になった
「ま〜た始まったよ、日露闘争が」
キースが腕を組み苦笑いをしながら二人を見て呟く、すると
「あ、あの!喧嘩はダメですよ二人とも」
501の宮藤が二人に近づき止めに入る、しかし
「何だガキィ、こちとら忙しぃんだよ」
「ひっ!」
菅野の強烈な眼光ギラッと光り宮藤を直撃する。直後にキースが宮藤の首根っこを掴み二人から引き離した
「だーめだめ、こうなったら自然鎮火を待つしか手がないんだ」
「彼もパイロットか?」
坂本が問いかける
「あぁ、菅野 直一等空尉....簡単に言や大尉だ。航空自衛隊のヴァイパーチャーマーさ......ん、まてよ」
キースはそう簡単に説明するとある事に気がつき菅野に話しかけた
「アンタらもこれからメシか?」
「文句あるか?」
「いやいや、なら行き先同じじゃん。退く退かない関係ないと思っただけ」
「「あ....」」
キースの言葉に菅野、アンタレス共々我に帰る。そしてやっと食堂へと歩みを再開させた
食堂に着くと、そこは昼前の為か米軍や自衛隊、MS社のスタッフがちらほら居る程度で、食事をしたりコーヒーを飲みながら書類に目を通したり、雑談をして居たりと各自が思い思いの時間を過ごして居た。
ウィッチ達は先ず食堂の広さに驚いている様子だった、二階ほどありそうな高い天井、食堂の中央にはウィッチ達にとっては珍しい本格的なサラダバーが置かれ厨房に隣接した長いバイキング形式のカウンターには様々な料理がならべられており、端っこには小さいながらケーキ用のスペースまであった。
アンタレスはウィッチ達に料理の取り方やルールなどを簡単に説明して先に来て居たオペレーターやサーニャと合流し席へと座った。
「で、なんでテメェが隣に座ってんだよ」
アンタレスが席に着くと、その後すぐに菅野が我が物顔で隣に座って来た。アンタレスがそのことに対して言う。当然菅野も言い返した
「バァカ野郎、ここは俺たちの席だ。割り込んで来たのはそっちだろうが」
「早いもん勝ちだ、誰の席とか決まってねぇJap!」
「んだと万年飲んだくれ野郎!」
「やるかアメリカの犬がぁ!」
「すごい数の椅子やテーブル、一体何人居るんですか?」
二人の言い争いを無視し他のメンバーやウィッチ達は会話を始める
「正確には分からんけど島に居る職員だけでも1000人以上はいると思う。ここだけでも席に座らせるなら500人以上は収容できるぞ」
「そういえば、アンタら午後に演習するんだってな?」
そう話し掛けて来たのは、ソード隊の二番機パイロット田中 弘二尉だった
「そうだけど」
キースが答える
「俺たちも参加させてもらうことになったぞ」
「あぁん?何でテメェらが出てくんだよ?!」
思いがけない一言にアンタレスが反応した。その問いに答えたのは菅野だった
「この世界の魔女と戦うと聞いちゃ参加しねぇわけにはいかねえからな」
「理由になってねぇよ。そもそもテメェは関係ねぇだろうが、ふざけたこと言ってると北海道占領するぞコラァ!」
「テメェこそ、北方領土奪還するぞコノヤロォ!」
「クリル諸島はロシアの領土だって習わなかったかぁ?反露教育受講者ですかぁ?!第二次大戦敗戦国さんよぉ?!」
「北方領土の領有権は日本にあるって知ってますかぁ?日露戦争ご存知ですかぁ?面積だけデケェ面して中身はローテクの敗戦国ロシアさんよぉ!」
「「いよ!ダブル敗戦国!」」
と、キースとアリーナが煽る
「「んだとゴラ"ァア!」」
「まぁまぁ二人とも落ち着いてください!」
今にも殴り合いを起こしそうな一触即発の光景を見て再び宮藤が止めに入る
「ほっとけ、すぐ収まるから」
そんな宮藤をアレクセイが止める
「今にも殴り合始めそうですけど」
宮藤がガンを飛ばし合う二人をみて言う
「こう見えてこの二人結構仲良いいんだ」
と、アレクセイ
「演習に参加するとしても、バーフォードがなんて言うかによるよな」
「私は一向に構わない。むしろそうした方がお互いに好都合だろう」
「だとさ......うおっ!」
キースが頭の後ろに手を組んで言った直後背後から聞き慣れた声が聞こえて来た。ワンテンポ遅れてキースがビックリした様に飛び上がる。バーフォードだ
「いつからそこに!?」
「『なんでテメェが隣に座ってんだよ』のあたりからだ」
「最初から居たんですね、わかりました」
「なんでこいつがいると好都合なんだよおっちゃん?」
アンタレスが聞く
「彼の乗るF-2は君の乗るF-14と特性が全く違う。君達の乗るSu-35ともだ。それぞれ違う機体を使えば万一の時いずれかの機体の弱点が見抜かれても対応できる」
「だけどよ」
「それに。彼らサムライにも万一の時のために彼女らとの戦闘経験は持たせておくべきだろう」
「バーフォード中佐、それはどう言う意味でしょうか?」
最後の一言にミーナが反応する
「いろいろな意味を持たせておきました。解釈はご自由に」
そう言うと後ろ姿のバーフォードはマグカップを口に運びコーヒーと思われる飲み物を飲み始めた。しばし険悪なムードが一帯に立ち込めた
「そ、そんなことよりもメシ!メシ食いましょうや、冷めちまうぜ」
キースが焦りながら食事の話題を振るが501の幹部組は未だに険悪なムードを保ち続けている
「.....そうだな」
最後に坂本がそう言うと、ウィッチ達は食事をはじめた。
__次回予告__
模擬戦間近て殺気立つ501とパイロット達、舞台はミッドウェー上空。その島は、再び戦場となる。
次回『我が名は天駆ける蠍アンタレス』
第13話
_ドッグファイト!華麗なる空中戦(前編.離陸編)_
お楽しみに!
※タイトルや内容は予告なしに変更する場合があります