我が名は天駆ける蠍アンタレス!   作:伊 号潜

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長らくお待たせしてしまって申し訳ありません、いろいろあって投稿が遅れてしまいました。

それでは第8話をどうぞ!


第8話 _オラーシャの魔女、音速を越える!__

「エマージェンシー!」

 

突如鳴り出す警報を聞き、辺りが慌ただしく動き始める。と、同時に格納庫の壁に備え付けられた受話器が鳴り出した。

 

「俺だ、状況は?!」

 

《未確認機一機が接近中、方位0-9-0》

 

そう聞くと、アンタレスは受話器を叩き戻し近くに居た整備員に叫ぶ

 

「おい!急いで俺の機体に兵装をt..『待てアンタレス』」

 

『取り付けろ』そう言おうとした直前にバーフォードがアンタレスを呼び止めた

 

「何だよおっちゃん」

 

「出撃は許可するが、戦闘は避けろ。と、言うより禁止だ」

 

「なっ!?」

 

バーフォードの言葉にアンタレスは我が耳を疑った

 

「今日行った飛行を見る限り、君はまだその機体に十分には慣れていない。それにあの子を乗せてるんだ、慣れない子を乗せて行きなり空中戦なんてしたら新しい機体が汚れる」

 

「なら出たって意味無いだろ!」

 

その言葉を聞きアンタレスは納得いかないとでも言いたげに反論する、するとバーフォードはアンタレスに何かを投げ渡した

 

「これを持ってけ」

 

「か、カメラ?」

 

それは懐かしいポラロイドカメラだった

 

「慣熟飛行には丁度いいだろう。壊すなよ、私の私物だ」

 

「そんなの偵察班にやらせろよ!」

 

「これは命令だ」

 

「くっ!」

 

一応バーフォードはアンタレスの上官であり、アンタレスはバーフォード直属の部下と言う上下関係故に『命令』と言われれば従わざるを得なかった。しかし、バーフォードがアンタレスや部下に対して"命令"と言うのは希であった

 

「機銃弾と自衛用の短距離ミサイルの携行は許可する、あくまで自衛用だ。....言ってる意味分かるな?」

 

「ちっ....わかったよ」

 

部下を戦場へと送り出す上官は、同時に生きて帰還させなければならないと言う責任が存在する、それ故にバーフォードあえて『命令』と言ったのだった。

バーフォードは社内で最もアンタレスと言う人物を理解しいる者の一人である。それはアンタレスも同じで、彼もバーフォードが何を考えているかは十分分かっていた。

 

「5分で出るぞ!アンタレス全機準備しろ!」

 

「「「了解!」」」

 

アンタレスはタラップを登りF-14の後部座席に座るサーニャの元へ向かった

 

「サーニャ、悪いがこのまま行く。降りるなら今のうちだぜ」 

 

「え........だ、大丈夫です!」

 

サーニャは数秒悩んだ後答える。アンタレスは『そうこなくっちゃ!』と言わんばかりにニッと笑い前席に滑り込みシートベルトとハーネスを絞める

 

「エンジンコンタクト!」

 

エンジニア達が慌ただしく動く、F-14の巨大な空気取り入れ口のカバーを外しゆっくりと回転するF110エンジンのタービンブレードに異常が無いか確認し車輪の車止めを外しタラップを下げる

 

「サーニャ、HMディバイザーを起動、風防を閉めてくれ」

 

「はい!」

 

サーニャは慣れない手つきでスイッチ類を操作し風防をとじ、HMDを起動させグリーンライトを確認する。しかし、初めてにしては上出来だった

 

「左右のラダー、スラット、フラップを確認してくれ」

 

サーニャはそう言われて機体後方を振り向く、アンタレスはラダーペダルと操縦桿を動かしサーニャがそれを確認する。しかし

 

『痛っ!』

 

どうやら機体チェックを行っていたエンジニアの一人にアンタレスの動かしたエレベーターが当たったらしい『作業中に動かすな!』とエンジニアが怒鳴り、アンタレスも苦笑いしながら「悪い悪い」と謝る

 

「マスターアーム、IFF、その他電子器機全て以上なし。サーニャ、そっちの準備はいいか?」

 

「はい」

 

「行くぞ」

 

アンタレスはスロットルを押し、2基のF110エンジンの出力を上げ機体をタキシングさせる

 

「アンタレスよりミッドウェーコントロールへ、このまま滑走路まで侵入する」

 

《アンタレスへ、一時待機》

 

管制塔がアンタレスに一時待機を告げた、アンタレスが機体を止めると、鼻先を3機の蒼い機体が強引に滑走路へと侵入していく。

航空自衛隊の301飛行隊第6飛行小隊だ

 

《自衛隊機が緊急発進する、アンタレス隊はソード隊の発進を待て》

 

「ちっ!」

 

アンタレスは歯軋りをしながら、無線周波数を空自隊長機の個人通話チャンネルに切り替える

 

「おいブルドック!カッコつけてねぇでさっさと行け!後が詰まってんだよ!」

 

《うるせぇ!》

 

アンタレスは焦れったそうに空自機の発進を待った、3機の単発機はアフターバーナーに点火し一気に空へと飛び立つ

 

「ちっ、F110-IHI-129ターボファン、良い音出してるじゃねぇか」

 

アンタレスがF-2の搭載するエンジンを誉める、すると管制から無線が入る

 

《アンタレスへ、24番滑走路への侵入を許可する》

 

「了解した」

 

アンタレスは再びスロットルを押し真横から滑走路へと侵入、右ラダーペダルを踏み機体をゆっくりと右折させ滑走路と平行にする。

アンタレスは機体を一旦停止させラダー、フラップ、エレベーターの動作を再確認する、と同時に管制から再びコールが入った

 

《アンタレス、離陸を許可する。離陸した後高度4000フィートまで急上昇せよ》

 

「風速は?」

 

《ウィンド、スリースリーゼロ・ディズグリーズ・ツーファイブノッツ》

 

「(横風か....)」

 

アンタレスはそう聞くとスロットルを目一杯倒し出力を最大にし機体を空へと誘う

 

「アンタレス・フライト、クリア・フォー・テイクオフ!」

 

3機のSu-35を引き連れて蠍の操る雄猫が大空へと飛び立った

 

「レーダーの使い方はさっき説明した通りだ、わかるな?」

 

「はい」

  

サーニャは慣れない手つきでスイッチ類を操作しレーダーを起動させ捜索モードを切り替える。するとサーニャの頭に何やら黄緑色のアンテナらしきものが現れた

 

「あぁ、そう言えばお前魔女だったな」

 

「私、全方位広域探査と言う魔法が使えるんです。感知系魔法の一種で、短波を中心とした電波を発信して感知することにより水平線以遠までを探査することができます」

 

「言わば人間レーダーな訳だ、....いや、魔女レーダーか。レーダー員にピッタリじゃねぇか」

 

するとサーニャは何かに気づいたかのようにキャノピー越しに空の一点を見つめた

 

「どうした?」

 

「ネウロイを捉えました、すごく鮮明に」

 

「何だって?」

 

「今まではシルエットとしてイメージが見えていたんですが、今は形状の細部まで鮮明に見えるんです!こんなの初めて」

 

「(コイツのレーダーとサーニャの全方位ナンタラ探査と言う魔法がリンクしたのか?)」

 

F-14Dに搭載されているAPG-71レーダーは戦闘機用としては今日でも極めて強力な物の一つであり、370kmの最大探知距離を誇る。

戦闘機レベルの大きさの物なら250Km離れていても捕捉可能だ。

 

加えてAPG-71にはレーダー反射波の特性を分析して目標種別や機種を判別するNCTR(非協調目標認識)機能が付与されている。それらがサーニャの魔法とリンクしたとなれば説明がつくのだ

 

《こちらミッドウェーコントロール。ソード隊、アンタレス隊に告ぐ。未確認機は島の南を通過しブリタニアに向かうコースを取っています。高度5000、速度マッハ1.95》

 

「了解したグレン、全員聞いたな?3分でここを通過する。対象機を確認次第全機A/B使用!」

 

()()()

 

《ミッドウェーコントロールより、アンタレス、ソード各機へ。対象機が加速した、目視圏内までの時間を再計算。あと2分》

 

サーニャの魔法とF-14のレーダー、そしてアンタレス2、3、4のSu-35と3機のF-2のレーダーは敵を確実に捉えていた。しかし、専守防衛の自衛隊はともかく、マーティネズセキュリティ社は民間会社であるがゆえに先制攻撃は余程の事がない限り許可されない。

対象機を確認し、敵性かどうかを確かめなければならなかった

 

「全機、目標を確認次第、戦闘態勢に入れ。アレク、俺は敵より上で追いかける、戦闘隊長はお前だ。ただし!こちらからは仕掛けるな」

 

《了解》

 

アンタレスはそう言うと操縦桿を引き上昇した

 

《タリホー!》

 

《新撰組全機、続けぇー!》

 

《逃がすな、アンタレス隊全機行くぞ》

 

「揺れるぜ、舌噛むなよ」

 

アンタレスはスロットルを徐々に押し、2基のゼネラルエレクトリック社製F110-GE-400の出力を上げる。2基のエンジンはまるで炎龍の如く炎を吐き出し、空虚重量約18,9tの怪物に音の壁を越えさせるのに十分な推力を与える。

 

アンタレスがスロットルを押し、速度が上がると同時にマッハ・プログラム・コンピュータによりF-14の主翼は後退し、最適な揚抗比形状を取ろうとする。アンタレスが敵と平行した頃には、主翼は完全に後退し、F-14は巨大なデルタ翼機と化した

 

「対地速度は?」

 

アンタレスがサーニャに問いかける

 

「1300.14ノットです!凄い....」

 

この瞬間、サーニャはこの世界のオラーシャ人としては初めて音速を突破したのだ。

しかし、対地速度なんて前席に備えられている速度計器を見れば済む話だが、アンタレスは彼女に音速を越えた事を実感させるためあえて問いかけたのだった

 

「(約M=1.95....グレンの言った通りだな)」

 

アンタレスはネウロイの方を向く。形は巨大なデルタ型、両主翼にはエンジンらしき形状の物があるがインテークは無くその上面後方には内側に傾斜した垂直尾翼がある。

ネウロイの形状はアメリカ空軍が運用していたSR-71ブラックバード偵察機によく似ていた

 

「サーニャ、カメラで目標を撮影しろ」

 

「わかりました」

 

サーニャは左の専用スペースに置かれたポラロイドカメラを説明された手順通りに操作し、ネウロイに向かってシャッターを切った。するとサーニャはあることに気がつき驚いた様子、どうやら写真に色がついているのに対して驚いているようだ

 

「(そう言えばこの時代って....まだカラー写真はほとんど普及してなかったよなぁ)」

 

アンタレスはミラー越しにサーニャの驚いた顔を見て思った

 

すると、ネウロイは追尾するアンタレス達に対して赤いビームを発射、放たれたビームはアンタレス編隊とソード編隊の間を撃ち抜く

 

《撃ってきたぞ!》

 

《全機ブレイク!》

 

《ソード1よりミッドウェーコントロールへ!対象機からの攻撃を受けた、国際連合憲章第7章第51条に基づき交戦する》

 

_国際連合憲章.第7章.第51条_

 

この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

 

要は攻撃を受けた場合応戦はして良いが、後で国連(安全保障理事会)に報告しなければならないと言う事である。なんて面倒なんだ....

 

《Fox2!Fox2!》

 

《ダメだ!後ろからじゃ当たらない!》

 

各機が放ったミサイルは機首にある熱源を捉えていた、しかし機首へ届く前に膨らんだ胴体部分に当たってしまうのだ

 

《前に回り込め!》

 

《無理だ!速すぎて追うので精一杯だ!》

 

《生意気にスピード出しやがって!ムカつくんだよバカヤロウ!暴走族かテメェクソヤロウコノヤロゥ!》

 

ソード隊の2、3はイライラを隠せない。ソード隊の隊長である菅野も答えるはずのない敵に怒鳴り付ける始末だ。それを見ていたアンタレスも戦いたくてウズウズしていた

 

「焦れってぇ、戦いてぇ....!おいグレン!奴の目的地はブリタニアなのか?」

 

《進路からして恐らくそうです》

 

「ブリタニアの奴ら気づいてるのか?」

 

すると菅野がアンタレスに叫ぶ

 

《おい蠍!そっち行ったぞ!》

 

「うおぉ!」

 

ネウロイはアンタレスの乗るF-14に突進し、機体の鼻先をかすめた

 

「クソ野郎が横切った!」

 

「ネウロイが高速でブリタニアの方向へ離脱します!」

 

《奴は損害に構わず強引に突破するつもりだ!》

 

《追え!このまま行けばあと2、3分でブリタニアだ!》

 

《奴の後方乱流に注意しろ!フレームアウトしたら血税の機体がパァだぜ!》

 

「お前ら一度に喋るな!俺はショウトクじゃねぇぞ!」

 

《蠍!弾薬残ってんならやってくれ!こっちは弾薬がビンゴだ》

 

「クソッ!、後でおっちゃんにどやされるな」

 

「揺れるぞ」

 

「は、はい!」

 

アンタレスは軸先をネウロイに向け、目にも止まらぬ早さで飛び去ってしまった

 

《目視で隊長とネウロイを見失った》

 

《速すぎだろ....》

 

「サーニャ!HMD起動!敵をロックしろ!」

 

「え、えっと....確かこれを....!」

 

サーニャは慣れない機器を戸惑いながらも操作しHMDを起動させた

 

アンタレスはスロットルを目一杯押し込み、敵の前に出て機体を背面飛行をさせた。ネウロイはアンタレスの機体に向けてレーザーを放つがアンタレスは背面飛行をしたまま巧みに機体を操りレーザーを避ける。HMDとHADのノット数は『1413』、裕にマッハ2を越えていた

 

「(本来なら、ここで『こんちわー』とか言って、中指おっ立てるんだけどな....)」

 

ピイィィィィィィィィ! 

 

直後耳をつんざく様な電子音がコックピットに響き渡る、AIM-132アスラームのミサイルシーカーがネウロイの機首熱源をロックしたのだ

 

「ロックオンしました!」

 

「Fox2!」

 

発射されたAIM-132は、目標に向かわず一旦真っ直ぐ飛翔し始めた。サーニャは「外した」と言いかけたが直後AIM-132は突如Uターン、ネウロイの機首部分目掛けて突入し命中した。

 

ミサイルが命中した部分には巨大な開口部ができ赤く光る多面体の物体が姿を表した

 

「コア確認!」

 

「敵もやる気になったみたいだぜ!」

 

コアを露にしたネウロイは進路を変えアンタレスとサーニャの乗るF-14へと向かってきた

 

「雲に入るぞ!高度を下げる」

 

アンタレスは追撃を振り切ろうと、雲の中に突入した。しかし、雲は思った以上に薄く、あっという間に下へと抜けてしまった。しかも、そこはロンドン、テムズ川の上空だった

 

「なっ!」

 

「ロンドン上空です!」

 

「いつのまにこんなところまで....」

 

「(今度は領空侵犯って言われそうだな)」

 

嫌な思い出がアンタレスの脳裏に甦る

 

「危ない!」

 

サーニャが叫ぶ、アンタレスは咄嗟の判断で操縦桿を倒しビームを避わした。

 

「野郎ォ!」

 

アンタレスがネウロイを睨む

 

「ロックオンします!」

 

サーニャは先程と同様に機器を操作しネウロイをロックしようとする。その操作する手にもう迷いは無かった。しかし

 

「ダメだ、万一外したら地上に被害が及ぶ」

 

いくら高性能なアスラームと言えど命中率は決して100%ではない、万一ネウロイを外れて市街地に着弾すれば町には十分なダメージが及ぶ。アンタレスは振りきろうとするがネウロイはトリッキーな動きで食いつき離れようとしなかった

 

「この野郎、重力無視かよ!」

 

アンタレスは何とかして振り切るためテムズ川を超高速、超低空で飛行する

 

「橋です!橋!」

 

「!」

 

サーニャが指差し、前方を見る。そこにはロンドンを代表するタワーブリッジがあった

 

「くぐるぜぇ!」

 

アンタレスはスロットルを全快にし橋の方へ突っ込んだ

 

 

「ふぅ~、そろそろ交代の時間じゃな」

 

テムズ川に架かるタワーブリッジは極めて平穏だ、制御室ではある者は報告書を書きある者は水圧や船舶の運行表をチェックし、船が来れば橋を開ける。そんないつもと変わらぬ時間が流れていた。

しかし、そんな時間を奪うかのように聞いたことのない音が響き渡る

 

「ん?」

 

「何じゃ?」

 

タワーブリッジの作業員達は制御室の窓から音のする方を見た、そこには

 

「ね、ネウロイ!?」

 

「何でネウロイがこんなところに!?」

 

そこにはテムズ川を飛行するネウロイの姿があった、しかもこちらに向かってきている。このままでは橋に激突するコースだ

 

「つ、突っ込んでくるぞ!」

 

「橋を開けろ....早く橋を開けろぉお!」

 

作業員達はすぐさま開閉レバーを引いた、橋梁内部の水平式蒸気機関は轟音を響かせゆっくりと橋が持ち上がる。

車道では市民が向かってきているネウロイに気づきパニックを起こしていた。交通整理をしていた警官やたまたま通りかかった軍関係者、教会の神父、さまざまな人が我先にと橋から逃げ出す。そして橋が完全に跳ね上がった時ネウロイとそれに追われる形で飛行する見たこともない航空機が橋をくぐり抜けていった

 

「ひぃぃぃ!」

 

「あれは一体何じゃ....!」

 

「ネウロイが見たことない飛行機を追っかけとる....」

 

その日の夕刊の見出し一面には『恐怖!ネウロイと謎の航空機の空中戦!』というタイトルでアンタレスのF-14の写真が大きく掲載された

 

 

「まだ追ってきます!」

 

F-14の後席に座るサーニャは後ろを振り返り追ってきているネウロイを見つめていた。するとアンタレスは急に速度を落とした

 

「何で減速するんですか!?」

 

「もっと引き寄せるんだ!」

 

アンタレスはミラー越しに見えるネウロイに注意しつつ巧みなラダー操作でビームを回避しながら減速する。しかし、ネウロイの放ったビームは容赦なくアンタレスを襲う。そして遂に一本のビームがアンタレスへの直撃コースをとった

 

「しまっt....ッ!?」

 

しかし、突如薄青色の魔方陣らしき物が現れ直撃寸前のところでビームを弾き飛ばした。その魔方陣はサーニャが発動したものだった、サーニャはキャノピーに手をつけて魔方陣を展開、次々と襲いかかるビームを弾き飛ばし続けた

 

「やるじゃねぇかサーニャ!」

 

サーニャの努力をムダにしないべくアンタレスも操縦に専念する。そしてネウロイと一定の距離になったときだ

 

「今だ!」

 

アンタレスはスロットルと操縦桿を目一杯引き急激な引き起こしをかける。すると機体は急上昇し同時にアンタレスはロール機動をとった、すると空気抵抗により機体は急減速しネウロイはアンタレスの機体をオーバーシュートしてしまった。

 

ネウロイの背後を取ったアンタレスはここぞとばかりに操縦桿の引き金を引いた

 

「喰らえ!タングステン合金製20x102mm弾の最高級ブレンドだ!」

 

F-14の機首に左舷に搭載された回転式多砲身機関砲である6砲身のM61A1 20mmガトリング砲は毎分 4,000発のスピードで弾丸を弾き出す、1秒にも満たない射撃時間で百数十発の弾丸が発射され全弾がネウロイに命中した。

 

弾丸が命中し粉々に粉砕されたネウロイはバランスを崩し、そのままテムズ川に墜落、直後大きな水柱を立てて消滅した

 

《やっと追い付いた》

 

《仕留めたか?》

 

「さーて、帰るとしよう」

 

アンタレス編隊とソード編隊はブリタニア島を南に抜けて海に出た、意外にもここまで軍のスクランブルは無く、アンタレスはブリタニアのレーダー網の精度を疑った。

 

その時、アンタレスは遠くにサーニャが所属し彼自身も一時囚われた501基地が見えた。

アンタレスは直後に何かひらめいたようにニッと笑い、操縦桿を倒しF-14の鼻先を501基地へと向けたら

 

「た、隊長!?」

 

「お前ら先に行ってろ、後から追いかける」

 

直後、アンタレスはA/Bに点火、一気に最大速度まで加速した

 

 

「ん?」

 

「何だ?」

 

501基地に聞きなれない音が響き渡る。見張所に居る基地守備兵は音のする方を向く、すると

 

「おいあれ!」

 

視線の先には見慣れない機体が迫っているのが見えた、機体は回りに白い傘のような物を巻きながら瞬く間に上空を通過した。次の瞬間

 

ドォ"オ"オ"オ"オ"ォ"ン!

 

「うわぁ!」

 

先程から聞こえる音の数十倍もの耳をつんざく様な爆音が基地を襲う。驚いたことに機体が通過した後に遅れて音がやって来たのだ。

またその数秒後、今度は基地を衝撃波が襲った。基地の窓ガラスは粉々に砕け辺りに散乱する

 

「うわぁあ!」

 

「み、耳がぁ!」

 

「畜生!奴は音速を越えてきたのか!?音が後から来たぞ!」

 

そして、501基地の格納庫では、その一部始終を目撃した二人の人物が輸送機に乗り込み発進準備をしていた

 

「速度、機動性....素晴らしいを通り越して驚異的だ」

 

「えぇ、どんな奴が居るのか楽しみだ」

 

 

 

 

______________________

 

航空自衛隊301飛行隊第6飛行小隊、通称"新撰組"

正式なコールサインは"sword(剣)"

配備機:F-2A

 

一番機 

菅野 直 一等空尉  機体番号343-301-15

 

二番機

田中 弘 二等空尉  機体番号343-301-16

 

三番機 

笠井 智一 二等空尉 機体番号343-301-17

 

 




_次回予告__
高速ネウロイを撃破し帰りがけに501基地を挑発したアンタレス、その後を追い掛けるかのように基地から一機の輸送機が飛び立った

次回『我が名は天駆ける蠍アンタレス』
第9話
 
          _訪問者_


お楽しみに!

※タイトルや内容は予告なしに変更する場合があります

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