転生したら滝本ひふみの彼氏になった件について   作:飛び方を忘れてるカラス

2 / 26
聲の形を見に行きました。泣きました。直花ちゃんと結弦ちゃんが可愛すぎて内容に集中しきれてなかった気がする…
ご感想ありがとうございます!


ファーストコンタクト

天才。

それは生まれつき備わった優れた才能。

例えば、小学3年生なのに何故か中学2年の問題ができてしまう。いや、これは才能というより最早化け物だ。

事実、俺は今、中学2年生でも書けるか怪しい漢字を楽々と書いている。

国語の授業だ。転生前はそこまで頭が良い方でもなかったが、さすがに小学生クラスの問題は楽だ。成績は学年トップ。何処の誰がどう見ても文句無しの優等生だった。

だが優等生というのは中々に暇なものだということに気づいた。それが《《2度目の生》》なら尚更だ。

 

何も考えず、時は過ぎていった。気づけば俺は、高校1年生になっていた。

 

机に座ってぼーっとする。

転生したというのに、これじゃあ転生前と何ら変わりがない。

美人な彼女でもできたら何か変わるのか。などと頭の悪い考えを巡らせていると、担任の教師が扉を開けた。

 

「ほーら座って。まだ中学生気分が抜けてないのかー」

 

若い男性だ。教員歴は2、3年といったところだろうか。まあ俺にはどうでもいいか。

 

「俺の名前は……」

 

教師が自己紹介を始める。最低限、名前だけ覚えてりゃいいか。

 

「それじゃあ1年間よろしく。よし、じゃあ出席番号1番から自己紹介をしてくれ」

 

男性教師がそう言うと、出席番号1番くんが明るく自己紹介を始める。適当に聞き流してると、俺の番になった。

…適当に、普通に済ますか。

 

「えーと、立花戒です。部活は入ってません。趣味は…風景画を描くことです。1年間よろしく」

 

可もなく不可もなくといった紹介だ。…もうちょい何か言った方が良かったかもな。

などとどうでもいい後悔をしてると、1人の女生徒の番になった。

 

その時俺はーー何故かその女生徒を見ていた。無意識だ。何故か、本当にわからない。

髪色は薄めの紫色。背は高く、だか痩せているわけでもなく、バランスのいい体つき。目は半開きで、髪型はポニーテールだ。

美人だな…

捻りも何もない、ありきたりな一言。だが彼女の美しさを表すならその一言で十分だった。

さっきまで適当に聞き流していたが、この時の俺は文字どおり、一字一句の聞き逃さまいと耳を立てていた。

さして女生徒は口を開ける。

 

「えっ…と…。滝本…ひふみです。え、その…よ、よろしくお願い…します」

 

少し緊張気味な様子で、女生徒は紹介を終わらせた。

 

滝本…ひふみ。

俺は2度目の人生で初めて、気になる人間というのを見つけた。

 

 

 

……

………

…………

……………

 

あれから数日が経った。クラスのメンバーとは知り合い程度の関係を持つことに成功した。

そして今は昼休み。殆どの人は一緒に教室で食事をしたり、一緒に食べるために中庭かなんかまで移動してる。俺は昼飯に関しては1人で食べることにしている。理由については述べるまでもない。周りからすれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()じゃないからだ。

今日は弁当が無いため、購買に行ってパンを買い、自販機で飲み物を買う。その最中で、最近よくある当たり外れがある自販機で、当たってしまった。

555。どこの仮面ライダーかとツッコミを入れたくなったが、今はそういう気分でもなかったので、仕方なくもう1本飲み物を選ぶ。紅茶にした。

 

このまま教室に戻るのもアレなので、折角だから屋上で済ますことにした。わざわざ屋上で飯食ったりする物好きは俺以外いない筈だし。

しかし、このご時世に屋上を解放してる学校があるとは。今はどこの学校も屋上は立ち入り禁止となっていると聞いたことがあったが…例外もあるそうだな。とどうでも良いことを考えてると、屋上の扉の前に着いた。

…なんで屋上の前の階段ってこう汚いのだろうか。少し掃除しろよ。

心の中で愚痴をこぼしながら屋上に入ると、ないだろうと思っていた人影があった。

…わざわざ屋上で飯食う物好きって俺以外にもいるもんなんだな。

その人影をよく見てみると、見覚えがあった。薄めの紫色の髪にポニーテール、そして高い背。間違いない、彼女だ。滝本ひふみだ。

すると俺の気配に気づいたのか、滝本…さんは振り返る。

 

「…あ、ぁぁ…!」

 

俺の顔を見るや否や、顔を赤くし、素早く物陰に隠れる。

え、これって避けられてる?

 

「え、いやあのちょっと?」

 

「………」

 

ずっとこちらを見て黙りっぱなしだ。

 

「…あーっと、俺、昼飯、食いにきただけ。そちらも、普通に、座ってて、大丈夫」

 

俺は宇宙人にでも話しかけているのか、なんでそんな片言なんだ俺!

自分自身にしょうもないツッコミをしていると、滝本さんがやっと口を開いた。

 

「…その、すいま…せん」

 

そう言うとちょこちょこと元いた場所へ戻る滝本さん。…仕方ないので、俺も普通に座って飯を食うことにする。

 

……

………

 

それから何分が経っただろうか。お互い話すこともなく、俺はずっと空を見て、滝本さんはスケッチブックを片手に何やら絵を描いている。

…正直、もうこの空間には耐えられない。滝本さんから話しかけてくる様子はない。…やるしかないか。

意を決して、俺は滝本さんに話しかけることにした。

 

「その…何、書いてるの?」

 

「ぇ…ぃゃ…その…」

 

こちらの問いに少し戸惑っている様子だったが、問いの答えを言ってくれた。

 

「えと…その、キャラクターの…絵です」

 

「キャラクターの絵?…よければ見せてくれる?」

 

極めて友好的に、優しく語りかける。…さすがに無茶な要求だったか…と、諦めかけた時

 

「えも、その…」

 

目を逸らしながらもスケッチブックを渡してくれる。それを受け取って見てみると、そこには色んな絵が描かれていた。キャラクターの顔や、体、髪型など。その中でも特に目を引いたのが、衣装だった。

繊細に、でも描かれていたキャラの顔や体にあった衣装だった。

 

「すげぇ…」

 

思わず感動した。俺は転生前も含めて、色々な絵を見てきた。だがこの絵は今まで見た中で1番凄い絵だった。

 

「…!…ありがとう」

 

俺の感想に返事をしてくれた滝本さんを見ると、笑っていた。絵を褒められて嬉しかったのだろうか。その笑顔はとても綺麗だった。

キーンコーンカーンコーン…

彼女の笑顔をもう少し見ていたいと思ったが、タイミングよく鳴ったチャイムで思いとどまる。

滝本さんはいそいそと荷物をまとめ、足早に屋上の扉に手をかけた。

扉を開ける直前、こちらに振り向き

 

「ありがとう」

 

そう言って微笑み、扉を開けて階段を降りて行った。

 

一瞬の出来事に惚けていた俺の第一声は

 

「2回、言われた…」

 

などというアホ丸出しのコメントだった。

 




唐突だけど、ひふみんの髪の色って何色なんだろ。あの髪の色の名前わかる人がいたら教えて頂けるとありがたいです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。