転生したら滝本ひふみの彼氏になった件について   作:飛び方を忘れてるカラス

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久々の更新です。そしてまたまた時間が飛んでます。なんか色々すいません。あと、NEW GAME!の方はゲームもバイオ7と一緒に買いました。


ネタバレ、だめ、ぜったい

 

フェアリーズストーリー3が完成した。ネットでゲームのことについて検索すれば、どのサイトを見てもフェアリーズストーリー3の発売の話題で持ちきりだった。

 

これには本当に苦労した。寝る間も惜しんで、精魂込めて製作したのだ。

…それなのにだ。

 

「………寒い」

 

「寒いですねー…」

 

「………」

 

「……早く、開きませんかねー…」

 

現在、我々…上から順に俺、篠田、ひふみは、とあるゲームショップの前で列に並んでいる。ひふみはポーカーフェイスですましているが、ガッチリ防寒具を身にまとっている。

 

「飯島ー、今何時だー?」

 

少し離れたところで見守っている飯島に聞く。

 

「えーっと、10時だから…あと10分てすー」

「あと少し…あと少し…」

 

篠田の目が死んでいる気がしなくもないが、放っておこう。こいつなら大丈夫だ、多分。

…しかし。

 

「なんで貰えないのかねー…」

 

フェアリーズストーリー3の完成、そして発売。我々製作スタッフにはそのソフトが貰えるという特典がつくのだ。

特に俺や八神、遠山のような班リーダーなどには特典も貰える…筈だったのだ。

 

これは、おとといの遠山との会話である。

 

ーーーいやー、発売が待ち遠しいなー。

 

ーーーあんなに苦労したからね。期待に応えれればいいけど…。

 

ーーー特典は何なんだろうなー。

 

ーーーあ、特典はないわよ。

 

ーーーはい?

 

ーーー経費の削減で、私たちへの特典はナシ。ソフトだけよー。

 

以上だ。

その直後に篠田とひふみの元へ向かい、「並ぶぞこんにゃろう!」と言って仲間に入った。

 

とまあ、こんな具合で俺は篠田とひふみと共に列に並んでいるのだ。

 

「あ、立花先輩、はじめ先輩とひふみ先輩。並んでますね…」

 

列の外から涼風ちゃん俺たちに声をかけてくる。後ろには八神、遠山もいる。

 

「まーな。特典貰えない言われたし、並ぶしかないだろ…」

 

考えれば考えるほど理不尽な仕打ちだよな、これ…。

 

「涼風ちゃんは並ばなくていいのか?」

 

「今から並びます。八神さんと遠山さんとゆん先輩も並ぶらしいので」

 

「そか。ま、頑張れよ」

 

「青葉ちゃん、幸運を祈るよ」

 

「……グッドラック」

 

なぜか激戦区に送り出される兵士を見送るかのようなセリフになってしまったかは置いといて。

 

「温かいコーヒーが飲みたい…」

 

「私はホットミルク…」

 

「…何でもいいから、スープ…」

 

願望を口にしながらさらに待つ事数分。

我々が待ちに待った瞬間は遂に訪れた。

 

「えーでは、これよりフェアリーズストーリー3の販売を開始しまーす」

 

「おぉぉぉぉ…」

 

「やっと…やっと…!」

 

俺と篠田は歓喜の声をあげる。

店から出る光が、眩しく見える。

 

ーーーああ、これが全て遠き理想郷(アヴァロン)なのか…。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「ふー、買いましたね」

 

「並んだ甲斐があったというものだ」

 

「しかし意外だな」

 

「何がです?」

 

「おまえがここの1店舗だけに絞るなんてよ。てっきり都内の店舗に全て行くのかと思ってた」

 

「あー、そのことですか。実はですね…」

 

篠田が含み笑いをする。

普段の行動もあってか、めちゃくちゃ変態チックだ。別の意味で。

 

「青葉ちゃんの友達の、テックのバイトの子いたじゃないですか」

 

「ああ、それが?」

 

「その子に頼んだんですよ。あ、もちろんお金はこっちが持ってですけど」

 

「あーなるほど」

 

持つべきものは友というやつか。こいつとあのチビっ子が仲良いのは今知ったが。

 

「くしゅん…!」

 

「大丈夫か?」

 

店で配られたパンフレットを見てたひふみが可愛らしいくしゃみをする。

 

「コーヒーか何か買って来るか。何がいい?」

 

「…じゃあ、缶コーンスープ」

 

「私はおしるこで!」

 

ひふみがコーンスープで、篠田がおしるこ、と…。

 

見渡す範囲では自販機は見つからない。

探すしかないか…。

 

「じゃ、ちょっくら行って来るわ。荷物頼むぞー」

 

「了解了解〜」

 

とりあえず自販機を探しに適当な方向に歩き始めた。

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「おひさー。買ってきましたよー」

 

「お、ありがとう!」

 

数多くの紙袋を手下げで持ってきたのは、涼風青葉の親友の桜ねね。

ねねにはじめが声をかける。

 

「ねねっち!ってなに、その荷物の量…」

 

「篠田さんに頼まれて、別店舗のも買ってきたのだよ!いやー、いい買い物をしたよ〜」

 

「助かったよ〜」

 

「仲良かったんですね、2人とも…」

 

青葉が意外そうな顔をする。

それもそうだ、青葉が知る限りでは、ねねの社内の人間関係は、上司であるうみこぐらいしか知らないのだ。

 

似た2人だなー。

2人の仲睦まじい様子を見てほっこりとする青葉。

…と。

 

「ん、携帯?」

 

ブブブ…とバイブが鳴る。

取り出すと、電話の差出人は高校の後輩だ。

 

「もしもし」

 

『あ、先輩ですか?ゲーム買いましたよ』

 

「え、本当!?」

 

「どうしたの、あおっち」

 

思わず声を上げてしまったために、周りから視線が集まる。

 

「友哉くんだよ。ゲーム買ってくれたって」

 

「え、本当に!?ちょっと変わって変わって!」

 

「わ…ちょっ…」

 

「もしもし友くん?」

 

『…そんな大声出さないでくださいよ、ねね先輩』

 

「あ、ごめんごめん…」

 

電話越しでもわかるぐらいのため息が聞こえる。

 

「ほら変わって、ねねっち。…もしもし?今変わったよ」

 

『相変わらず元気ですね、ねね先輩は』

 

「元気すぎて目が離せないけどね…」

 

その声には困憊が籠っていた。

ねねが申し訳なさそうな顔をする。

 

「で、どうしたの?」

 

『いや、ゲームを買ったという報告と、久々に先輩の声を聞きたいと思って…』

 

「ああ、そういえば暫く会ってないもんね」

 

相手は受験生。こちらは社会人一年目。お互いにかなり忙しくなっており、会える回数は多くはない。

 

ゲームを買っても、もう数ヶ月は待たないと箱も開けることも出来ないだろう。

 

「…今度のお正月に、祈願にでも一緒に行こうよ」

 

『……そうですね、じゃあその時にまた』

 

「うん、じゃあまた」

 

そうして通話を切る。

久々に話したな…そう思いながらメンバーのいるところへ向かう。

 

「誰と話してたの?もしかして彼氏?」

 

聞いてきたのは青葉の先輩、八神コウ。ニヤニヤしながら小指を出して聞いて来る。

 

「そんわけないじゃないですか!後輩ですよ、こ・う・は・い!」

 

「あー…歓迎会で言ってた後輩くん…」

 

つまらないなぁ。とでも言いたそうな顔で青葉を見る。

 

と、先ほどから周りの人がざわついている。何かあったのだろうか、と青葉がゆんに聞く。

 

「どうかしたんですか?」

 

「あー…やっちゃったかな、これ…」

「え?」

 

ーーー親友がラスボス?

 

ーーーそういえば、さっきあの人関係者って言ってたよね…。

 

「……まさか…」

 

「その、まさかっぽい…」

 

ネタバレだ。

おそらく思わず口を滑らせてフェアリーズストーリー3のネタバレを言ってしまったのだろう。

そして、このメンバーの中でそんなヘマを起こすのは1人しか青葉は知らない。

 

「ねねっち…?」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

全力で頭を下げるねね。

はあ、まったくこの子は…。青葉は困った顔をする。どう収拾をつければいいのか。

 

「青葉ちゃん…これ…」

 

ひふみが自身の携帯電話を見せて来る。

その画面に映っているのは、SNSのタイムライン。

 

 

ーーーえ、ラスボスってコナーなの?

 

ーーーラスボスはコナー。

 

ーーー犯人はヤス。

 

「もう広まってるー!?」

 

さすがネットの力…おそるべし。

などと関心している場合もなく、すぐに上司2人に見せる。

 

「八神さん、遠山さん、これ」

 

そして画面を見た2人の顔が青ざめる。

 

「はやいよ!」

 

「ど、どどどどうしよう…」

 

コウはあたふたして、りんは頭を抱えてぶつぶつと何か呟いている。

はっきり言って地獄絵図だった。

 

「ちゃいますよ!きっとフラゲしてクリアした人の情報ですよ!多分!」

 

すかさずゆんがフォローを入れる。

 

「そうだ、それだそれ!というかそういうことにしておこう、うん!」

 

強引に妥協をするコウ。

理由としてはやや不安が残る内容ではあるが、今はそういうことにしておこう。

 

「でも、それはそれとしておいても、周りからの視線が…」

 

「と、とりあえずここから一旦離れましょう!」

 

「そ、そうやな!」

 

青葉の提案に乗ったメンバーは、一斉に移動を始めた。

 

「あ、ちょ…」

 

「早く行くよ、ひふみん!」

 

ひふみが何か言いたげそうに声を出そうとするが、背中を押すコウによって声はかき消されてしまう。

 

「……あれ、そういえば誰か忘れてるような…」

 

はじめが立ち止まって考える。

…が。

 

「なにしとんの、はじめ!早よ行くよ!」

 

「あ、うん!……まあいっか」

 

ゆんに呼ばれたはじめは、考えを放棄して、ゆんの背中を追って行った。

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

「あれー…なんで誰もいないのかな…」

 

人数分の飲料水を持ってきたのだが、誰もいない。

 

「人の厚意を踏みにじりやがって…」

 

と、愚痴を言いつつ携帯電話を開くと。

 

ーーーあの人たち、なんだったのかな。

 

ーーー関係者って本当なのかな。

 

ーーーラスボスがどうこうって言ってたけど…。

 

聞こえてくる周りの声。

それらを統合して、一つの結論に至る。

 

「あいつらまさか…」

 

まさか、ネタバレをしたのか。

そしてそれに騒ついたため、熱りが冷めるまで別の場所に移動…そういうことか?

 

「はは…これは、上司として軽く雷落とそうかな…」

 

キレた。久々にキレた。

 

俺は携帯電話を割りそうな握力を込めて、ひふみの電話番号を掛けるのであった。





青葉ちゃんの後輩くんの友哉くん登場!勿論オリキャラ。
この子は、今作っている青葉ちゃんヒロインの物語のオリ主です。まさかの後輩設定です!
青葉ちゃんの方は早めに投稿できればと思っています。コウちゃんのはこの作品が一応の完結するまでお待ち下さい。

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