転生したら滝本ひふみの彼氏になった件について   作:飛び方を忘れてるカラス

15 / 26
久しぶりの投稿になってしまいました。
色々と趣味を優先してみたら筆が止まってた…。


歓迎会

自宅。

風呂から出た俺は柔軟体操をしようと前屈を始める。

すると机の上に置いていた携帯電話が振動する。静かな空間に突然振動するので少しびっくりした。

画面を見てみればその件はメールだった。

差出人は涼風青葉。

その内容はというと

 

〈夜分遅くにすいません。

今日、八神さんから次は3日で終わらせろ〜と言われてしまいました(>_<)

なにか早くに終わるアドバイス的なのはないでしょうか?〉

 

…俺は彼女からどんな立場の人間として見られているのだろうか。

聞くならキャラデザの奴らに聞けよ…。

正直な話、あまりアドバイスというのは頭に浮かばなかった。

 

〈とにかくパソコンに慣れろ。以上〉

 

その後、数分足らずでまたメールが届き

 

〈酷い!もう少し何かないんですか!?〉

 

何かも何も、まず班が違うんだからそんな無茶振り言うでない。

 

〈その苦しみはキャラデザ班の人間全員が味わっているんだ、お前も謹んで受けろ。以上〉

 

〈そんな…立花さんが頼りなんです〉

 

だからなんで俺なんだよ…

 

〈そんなこと言うなら飯島にでも聞いてみろ。あいつと歳近いだろ〉

 

〈ゆんさんの連絡先知らない…というか、立花さんと遠山さんの連絡先以外聞いてないんですよ〜…〉

 

あー…なるほどね。それは後々にも響きそうなので、一応連絡先を教えることにした。

慣れない手つきで携帯を操作し、飯島とひふみと…篠田も一応入れるか。あとで泣きついてきそうだし。

送信。

 

〈今送ったのが涼風ちゃんの周りの人達の連絡先。一応俺からの紹介って挨拶をしとけよ。それじゃ〉

 

暫く経って返信。

 

〈ありがとうございます!立花さんって意地悪そうに見えて、意外と優しいんですね!〉

 

〈あ、間違えた。今の連絡先、お偉いさん方のだったわ〜、間違えてメッセージ送ったらクビになっちゃうかもな〜〉

 

君は今、言ってはいけないことを言ってしまったぞ。

 

〈すいませんすいませんすいません!調子乗っちゃいました許してください〜!〉

 

〈ま、それは冗談だ。そんじゃ、健闘を祈るよ〉

 

〈はい、本当にありがとうございました!〉

 

そして涼風ちゃんとのメール間での会話は終了する。

そこで壁にかかったカレンダーを見てふと思い出す。

そういえば、明日は涼風ちゃんの歓迎会があったな、と。

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「よーし、じゃあ青葉の入社を歓迎して…」

 

「乾杯!」

 

八神の音頭と共にジョッキをぶつける。

みんなそれぞれ目の前に出された鍋に箸をつける。

 

「あ、ちょっと八神さんそんな肉持ってかないでくださいよ!」

 

「こういうのは早い者勝ちなんだよー!」

 

「2人とも、もう少し静かに食べなさいよね…」

 

篠田が真っ先に肉に手をつけた八神に突っ込む。

ひときわ騒がしいその2人に遠山が軽く注意をする。

と、そこで涼風ちゃんが少し緊張した面持ちで箸を止めていた。

 

「今回は会社の奢りだ。好き放題食べとけよー。なかなかないからな」

 

「あ、はい。ではそうさせてもらいます…」

 

そう言ってやっと鍋に手をつけた。

うん、鍋の時はみんなテンションMAXで食べているのがいいな。

 

「戒くん、注文お願い」

 

「ん?お、そうだな。すいませーん!」

 

ひふみから注文のお願いがきた為、店員さんを呼ぶ。

人見知りがマシになったとはいえ、まだまだだ。こうして人に頼まないと注文が出来ない。

 

「えーっと、どれにするんだ?」

 

「じゃあ、これで」

 

そう言って指を指したのは、かなり高い方に入る日本酒だった。会社の奢りのため、容赦せずに飲むつもりなのだろう。

ついでに俺も同じのを頼むことにした。

 

「んじゃ、これを2つ」

 

「はい、ありがとうございますー!」

 

店員さんが足早に去って行く。

 

「ひふみん、今頼んだの結構高いやつじゃないの?」

 

「うん、会社の奢りだから」

 

そう言って「フフフフ…」と笑いそうなぐらいの黒い笑顔を見せる。

あれ、お前そんなキャラだったっけ。

 

「立花、立花ー」

 

「はいはい、なんだ?」

 

八神に呼ばれたので振り向いてみれば、たこ焼きが乗った皿を渡される。

 

「ささっ、どうぞ食べてみて」

 

「はあ?」

 

どういう意図があるのかわからないが、とりあえずたこ焼きを口に運ぶ。

 

「いや、普通のたこ焼きだぞ」

 

「ちっ、ハズレだったか…」

 

「お前は俺に何を食わそうとしてたんだ」

 

追求する気は無いから別にいいけど…。

 

「青葉青葉!これ食べてみて!」

 

「え?何ですかこれ…」

 

次の標的は涼風ちゃんか…。

渡されたたこ焼きを口に入れると、顔を赤くする。

 

「辛っ!何ですかこれ!?」

 

「ロシアンルーレットたこ焼き!青葉当たりー!」

 

子供のようにはしゃぐ八神に、涼風ちゃんは悔しそうな顔をする。

後輩相手に何をやってるんだこいつは…。

 

ピリリリリ…

 

「ん?」

 

何だ、携帯が鳴り出したぞ。

送り主は…葉月しずく。

 

「……」

 

「だれだれー?って葉月さんじゃん」

 

ぶっちゃけ出たくない。

俺は何だかわからないが、あの人が苦手だ。

何というか、底が読めないというか、掴み所がないというか…。

 

「出た方がいいんじゃないの?一応あの人上司なんだし」

 

「あー…出るか。少し席外すぞ」

 

腐っても上司だ。

後々どういう仕打ちを受けるかもわからないし。

言うことを言い、一旦店の外に出る。

 

「はい、もしもし」

 

『やあ、歓迎会楽しんでるかい?」

 

「あなたに電話をかけられるまではエンジョイしてました」

 

『そうか、それは悪いことをしたね』

 

「で、用件は何ですか?用がないなら切りますよ」

 

早く戻りたかったので、少し声を低くして言う。

 

『なんとなく』

 

「じゃあ、また今度」

 

『待て待て待て待て!悪かった悪かった、こっちが悪かった!』

 

ならさっさと用件伝えろ、と言いたかったが我慢する。

 

『いやまあ、ちょっと重要な話があってだね…』

 

「…?」

 

さっきとは違う葉月さんの真面目な声に、俺はちゃんと聞くことにした。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

「さて、男子もいなくなったわけだし…女子会トークでも開催しようか!」

 

戒が席を外したことにより、この席には女性陣しかいなかった。

そこをついて、コウは女子会トークを始め出したのだ。

 

「で、どうなのよ青葉。彼氏いるの?」

 

「えぇっ!?」

 

青葉は顔を赤くして驚く。酒気のせいもあるのだろうか、赤色は少し濃かった。

 

「そ、そんな、いるわけないじゃないですか!第一、関わりのある男性自体少ないし…」

 

「少ない、ということはいるんだなー?」

 

コウが意地悪そうな顔をして追求する。

 

「一応、高校の時の後輩とは今でも連絡は取り合うし、たまに会ったりもしますけど…。でも、そういう関係じゃないんですよ!」

 

必死になって否定する。

それを見て笑うコウは、やっぱり青葉は弄ると面白いなー、などと思っていた。

 

「むぅ…なら、八神さんはいるんですか?私にさんざん言ったんですから、まさかいないとは言いませんよね〜?」

 

「いっ…!?」

 

まさかの逆襲に、コウは思わず声をあげる。

 

「い、いないに決まってるんじゃん!…でも、好きな人は…」

 

「おお!」

 

「マジっすか、八神さん!」

 

「へぇー、意外やわー」

 

青葉、はじめ、ゆんの順に驚きの声をあげる。

彼女の恐ろしさを知っている3人は、コウのことをずっと仕事一筋の人間だと思ってからだ。

 

「そ、それより!はじめはどうなの?いたの?」

 

半ば強引にはじめにシフトチェンジをする。

 

「何で過去形なんですか…まあ、いませんでしたけどね…」

 

どこか遠くを見るかのような目でボソリと呟く。

その目からは哀愁が漂っていたので、これ以上は聞くのはやめようとコウは思い、その横にいた少女に聞く。

 

「ゆんは?」

 

「うちも右に同じです。弟と妹の世話が忙しかったので、あまりそういうことに関われてなくて…」

 

「あー…そう」

 

なんだ、結局はみんないないじゃないか。

 

「ひふみ先輩は彼氏さんいるんですか?」

 

「え…!?」

 

突然の話題変更に戸惑うひふみ。

顔を赤らめながらも、彼女は外の方に目を向ける。

そこには、上司との電話を終えて戻ってきた立花戒の姿が。

 

「え?」

 

今、ひふみは自分の質問に答えているのだろうか。

もしそうなのならば、それは立花戒ということに…。

 

「青葉ちゃん知らなかったの?立花さんとひふみ先輩は付き合ってるんよ」

 

「え、えええぇっ!?」

 

ゆんの言葉に、思わず青葉は声を上げた。

 

「高校の頃かららしいよ?いやー長いっすねー」

 

「うぅぅ〜…」

 

はじめからのひやかしに顔を赤くし、手で顔を覆うひふみ。

その可愛らしい姿に、少しだけ青葉はいじめたくなったが、それを心の内に押さえ込んだ。

 

「何話してんだ〜?」

 

そうこうしてると、戒が席まで戻ってきていた。

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

あれから1時間とちょっと。

殆どのメンバーの顔が赤い状態で、我々歓迎会組は店の外へ出た。

 

「えー、それではもうお開きなのですが…二次会来る人ー!」

 

「私はゆんを送ってきますので、この辺で」

 

篠田の肩には小さな寝息を立てた飯島が。

 

「なら、立花とひふみんは」

 

「俺は今日はいいや。ちょっと用事がな…」

 

そう言ってひふみの方を向く。

するとひふみは自分に関係することと気づいたのか、控えめな声で言う。

 

「そ、そういうことだから私も…」

 

「そっかー。なら私とりんと青葉で行くかー!じゃあまたねー!」

 

「あ、今日はどうもありがとうございました!」

 

「じゃあね〜まらね〜」

 

相変わらずテンションの高い八神と、律儀に頭を下げる涼風ちゃん、酒が入って完全に酔った遠山達は夜の繁華街へと姿を消した。

 

「それじゃあ私達もこの辺で。じゃあまた」

 

「おう、気をつけて帰れよー」

 

「じゃ、じゃあね…」

 

飯島を担いで歩く篠田を見送る。

そして静かな空気。

 

「それで…話って?」

 

「ん?ああ、まあここじゃなんだし、ちょっと移動しないか?」

 

ひふみは俺の提案に頷き、一緒に歩き出す。

 

 

 

 

着いた先は近場の公園。

この時間帯にはさすがに誰もいなく、ブランコが風に揺られてる音が響くだけだった。

 

とりあえず、酔いを覚ます(双方、酒には強いが)ために自販機で水を2本買う。

1本をひふみに渡し、もう1本は蓋を開けて飲む。

 

「それで、話って?」

 

「ああ、その…な」

 

なんだか、いざ言おうと思ったら照れ臭くなってきた。

 

「…結婚、のことについてだ」

 

「……!」

 

その言葉に、ひふみはわずかに反応した。

2人の体に、春にしては冷たい風が通り抜けていった。

 




一応、この物語の終わりは結婚を予定にしてます。
どれくらい先になるかはわかりませんが。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。