転生したら滝本ひふみの彼氏になった件について 作:飛び方を忘れてるカラス
前知識無しで転生させられるなんてありかよ
目を開けると、そこは真っ黒な部屋だった。
俺は首だけを回し、周りの状況を確認する。これといって特に何もない。俺は椅子に座ってるということしかわからない。
「ここ…何処だよ。誰かいんのか?」
2、3回声を上げてみるが、返事は返ってこない。
あれ、そういえば俺って何してたんだっけ…。
頭の中にある記憶をかき分けていくと、一つ思い出した。
「あ、そうだ…そういえば俺、トラックに轢かれたんだ」
ならここは病院か?いや、こんな暗い病室を提供する病院なんてあるはずがない。というかあっていいはずがない。しばらく考えてみると、一つの答えが出てきた。
「もしかして、俺って…」
続く言葉を発しようとしたその時、女性の声が続きの言葉を代弁した。
「死んだ。そうよ、あなたは死んだのよ」
いつの間にか、目の前に俺と同じく椅子に座った女性がいた。茶髪の、身長は150ぐらいだろうか。シワがついたTシャツ…ご丁寧に歯磨き粉らしき物までついている。そんな女性だ。女性というより女の子という表し方の方が正しいかもしれない。
「先ほども言ったけど、あなたは死んだわ。藤井聡くん」
藤井聡ーー俺の名前だ。
「なんで俺の名前知ってんだ。つーかあんた誰だ?」
「あたし?あたしの名前はマリア。まあ、あんたの世界で言う神様ね」
「神…?」
神ってあれか。鍋かき回して島を作ったり、全知全能とか言いながら実はただの女好きのエロジジイだったりするあの神か?
「あんた今、世界中の神様に対してとてつもなく失礼なこと考えてない?」
「別に何も」
神ってのはエスパー的な何かも使えるのか?なんてどうでもいいことは後にして…
「俺が死んだってどういうことだよ。死んだってことは、ここは天国か?天国じゃないとしても、地獄に行くようなヘマを起こした人生じゃなかったと思うんだが…」
「あーもう、いっぺんに聞いてくんな!こちとら聖徳太子じゃないんだから」
などと小言を言いながら
「ま、さっきあんたが言った通り、あんたはトラックに轢かれて死んだのよ。詳しい死因は…普通に道を歩いていたらトラックが突っ込んできて、そのままトラックに引きずられて全身ズタズタになって死亡…運が悪い上にかなりエグい死に方ね。ちょっと同情するわ」
吹っ飛ばされて死んだかと思ったら引きずられて死んだのか。しかも普通に歩いてたら死んだって…俺泣いていい?
「で、ここが何処かって質問だっけ?」
そうだ、ここは何処なのか。こんな暗いところが天国なわけないし、かと言って地獄にも見えないし…。
「細かい説明は面倒くさいから省くわ」
省いちゃって大丈夫なのかよ
「一言で言って、ここは次の人生を決める場所…あなたの世界で言うところの進路相談室よ」
「何故に学校!?ってちょっと待て、次の人生を決める場所?俺が知る限り、死後の世界は天国と地獄の2つしか知らないんだけど…」
「死後の世界の規約みたいのがあってね。それに25歳以下で死亡した者は、1度だけ次の人生を選べるっていうのがあってね…」
え、それってまさか…
「それって俗に言う転生というものか?」
「転生?まあ言うなればそうね。あんたの世界のオタク文化でそういうジャンルが流行ってるって聞いたけど…」
どっから仕入れてるんだそんな情報…あんた神様だよね?
「転生っつーことは、ドラクエとかFFの世界に生まれることが出来るっつーことだよな?」
「ええ、そうよ。なに、もしかしてそういう系をご所望?」
「そういう系?」
「一概に転生って言っても、2つ種類があるのよ。一つは今あんたが言った、創作作品の世界に生まれることが出来るもの。もう一つは、自分が元にいた世界に生まれて、もう一度人生をやり直すもの」
口は悪いが、丁寧に説明してくれるあたり、多分この子は良い子だ。
「まぁあんたは前者にしたいっぽいわね。いいわよ、漫画やらアニメやらゲームやらの世界に転生さしてあげる」
マジか!結構すんなり転生って出来るもんなんだな。マリアは何やら機械みたいのを出していじっている。
よし、それじゃあ何にするか…。漫画は全巻読破したNARUTOか…いや、ここはあえてアニメにしてみるか。あまりアニメには詳しくないが、人並みよりは知ってる。大体の話は知っているSAOとかとあるとか?
などと悩んでいると、マリアがブツブツ呟いている。
「よし、準備完了っと。行く…は……それでいいか」
よく聞き取れなかったが、準備はできたらしい。
「よーし行くわよー。それじゃあNEWGAMEとやらの世界へ!」
「おう!…ってNEWGAME?何それ?行く世界って俺が決めれるんじゃないの!?」
こういうのって大抵は行く世界を自分で選んで、それで最強の武器を選べるって聞いたんだけど…
などと、もう一度、複数の質問をマリアににぶつけると
「?確かに創作作品の世界に行けるとは言ったけど、自分で選べるとは一言も言ってないわよ」
さも当然のようにマリアは言う。
は?何。これってそういうやつ?
よくゲームとかで「ルールブックに○○○をしてはいけませんって書いてないから、これはアリなんだー!」とか言ってかなり卑怯で頭が回るやつがやるアレか?
「…じゃあ!行ける世界は選ばれないとしても、なんか見た目とかは変えられるだろ!?」
さすがにそれくらいはないと…
「見た目変更とか最強の武器とか、そういうの?悪いけど、そういうご都合設定はウチに無いの」
「クソォォォォ!!え、何。じゃあ俺はこれから何も知らない世界に放り出されるっていうのか!?」
「まぁそうなるわね〜。あ、でも大丈夫よ、転生先の世界に馴染めることができないっていうのに気を遣って、赤ん坊から生まれるように設定しといてあるから」
清々しいほどの笑顔でマリアは言う。
「そんな無駄な設定いらねぇぇぇ!!」
「もうつべこべ言わないの。もうセッティングしちゃったんだから…。あ、カウントダウン始まった」
「待て待て、せめて何か、名前でもなんでもいいからなんか変えさせて!」
「名前は多分向こうで勝手に決められるわ。どんな名前になるかはそれまでのお楽しみ。…あ、あと10秒だ。じゅー、きゅー、はーち、ななー」
「待てぇぇぇ!俺ってあんな悲惨な死に方したのに、結局自分では何も選べれないのォ!?」
「ま、運が悪かったわね。さーん、にー、いーち」
ついにカウントダウンがゼロになった。すると、俺の周りが光始めた。
「う、うおおおおおお!」
「それじゃあ、あなたの次の人生に幸あらんことをー」
棒読み。超棒読みだった。
「送る言葉があんなら、もうちょい心込めて言え!」
恐らく、この人生(正しくは死んでいるが)最後になるであろうツッコミを、かつてないぐらいの声で叫ぶ。
「んじゃさよならー」
最後に彼女の声を聞いたところで、俺は意識を失った。
…
……
………
…………
「……成功です!」
「よかった…本当によかった…」
何やら声が聞こえる。光でボヤけて何も見えない。
少しずつ、目が慣れてきた。何か持ち運ばれてるな俺。なんというか…抱き抱えられている?そんな経験、もう数十年していないが…
運ばれた先には、見知らぬ女性の顔があった。すごい量の汗だ。それに顔も赤い。何か体力仕事の後だというのはわかる。
「あなたの…あなたの名前は戒よ。立花戒…」
立花戒?俺の名前は藤井聡だけど…ーーー!
その時、全てを思い出した。俺はあの神様に転生させられたんだ。名前も全く知らない作品の世界に。そしてその神ーーマリアは俺にこう言った。
″ーーー赤ん坊から生まれるように設定しといたから″
あー…つまりはそういうことか。
何ということだろう。心の中とはいえ、恐らく俺は世界で初めて生まれてから数分でため息をこぼした赤ん坊になっただろう。
だがグダグダ言っても、もうなってしまったのだ。これはもう受け入れるしかない。
私、藤井聡ーーーいや、立花戒は、今から2度目の生を謳歌することにします。
心の中でそう決心した。
そして、それと同時に一つ願った。
前世よりはマシな生き方ができますように、と。
超駄文ですが、よろしくお願いします。誤字脱字等などがごさいましたら、遠慮なくビシバシと言ってください。