後継者達と世界の運命   作:AZΣ

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明けましておめでとうございます!しばらく投稿出来なかったのですが、これからも頑張っていきます!
ではスタートです。


第伍話-本性

俺が暁を抱えて町に戻ると、町は先程の美しい姿が想像も出来ない程に荒れ果てていた。あれほど白かった町の建物は血が飛び散ってどす黒く変色しており、建物の多くは原形をとどめていなかった。

「何…だ、これは……っ!碧愛ー!ティアー!エルー!影葉ー!!」

俺は暁を瓦礫(がれき)がない場所に下ろし、彼女達の姿を探して走り出した。

すると少し先、町の中心の辺りにエルの姿が見えた。

「エル!良かった、無事だったん……」

その瞬間、エルは倒れ、その先の景色が見えた。

「あ……あああああああ………」

その先には、血塗れのティアと影葉の姿があった。

「皆ー!!!」

俺は彼女達の側に行って呼吸と怪我の具合を確かめる。…良かった、皆、まだ生きてる。だが、このままでは命が危ない……。一体誰がこんな事を……!

すると突然、俺の気持ちを読んだかのように後ろから、

「俺だよ」

聞き覚えはあるのだが、そんなはずはない…。彼は味方なはず……!

俺は不安に思いながらも振り返った。振り返るとそこには、邪悪と表現するに相応しい笑みを浮かべたパイモンが立っていた。

「パイモン……!?何故だ!何故こんな事を……」

俺は信じられなかった。

彼は俺が孤独だった時にはずっと側にいて、俺を決して一人にせず、絶えず笑顔を浮かべていた。そんな優しかったはずのパイモン……。

彼は俺の問いを聞いてしばらく黙っていた。そして口を開いた時、そこには俺の知っている彼の面影は全くなかった。

()()()、だってぇ?くく……はははははははぁ!!!決まってるじゃないか!」

彼は俺に偽りの優しい笑みを浮かべてこう言った。

「お前の!今のような…苦悶に歪むその表情が見たかったからさぁ!全く…お前に取り入るには苦労したぜ……くくく……ははははは!」

そう言うとパイモンは指を鳴らした。すると彼の少し後ろに魔法陣が五つ現れ、そこから五人の人影が現れた。

彼の後ろに現れた五人を見て、俺は我が目を疑った。何故ならその全員が候補者だったからだ。

服も肌も白と黒で唯一、目だけが金色に輝いているアスタロト。

アスモデウス程ではないが、筋肉質で奴よりも頭が回るオリエンス。

痩せていて、背中には(はえ)の羽が生えているベルゼブブ。

ベルゼブブよりも血色の悪い、土気色の肌と髪をしているアマイモン。

そして……

「いよぉ、ラティス!久しぶりだなぁ……!」

(みにく)い小男、マゴトが下卑(げび)た笑いを浮かべて立っていた。右手は再生しているが、大きな傷が見える。

マゴトが俺の様子を見て(わら)っていると、突然パイモンの腕がマゴトの胸を貫いた。

「あがっ……?パイモン…様?」

パイモンを見ると彼は怒りの形相(ぎょうそう)を浮かべ、言った。

「おい……、誰の許しを得て(しゃべ)ってるんだぁ…?ああ!?俺の命令に従えない奴に生きる価値はないよなぁ……?」

「ひ…ひぃ!パイモン様…お許しをぉぉ…」

するとパイモンは突如優しい笑顔を浮かべた。

マゴトは許されたと思い、安心した表情をした。しかし次の瞬間、彼は徐々(じょじょ)に膨らみ始めた。

「パ、パイモン様!?お許し下さったのでは…!?」

「俺に従えない奴は……死ね」

「ひぃぃぃ!嫌だぁぁぁぁぁ!!!」

パァンッと音を立ててマゴトの身体は砕け散った。周囲には彼の血や脳漿(のうしょう)が飛び散った。

「あーあ…服が汚れちまったじゃねぇかよ……ったく…ふぅ……さぁて、てめぇら、ラティスを…殺せ」

パイモンの声と共に四人の候補者はそれぞれの方法で俺に襲い掛かって来た。

「地の者よ、我が命に従いて(かたち)を持て」

アマイモンがそう言って地面に手を当てると、巨大なゴーレムが現れた。サイズはアスモデウス並みで、数は五~六体だ。しかしその重さ故に動きが遅い。

俺がそのゴーレム達を切り伏せていると、

眷属(けんぞく)達よ、奴を囲め!」

とベルゼブブが言った。するとどこからともなく大量の蝿が俺を取り囲んだ。

「くそっ……ベルゼブブか…!」

すると次の瞬間、周りにいたゴーレム達が徐々に溶け始めた。

「水よ……彼の者に滅びを与えよ……」

「アスタロトめ……!だがまだ……っ!?動けん!?」

「炎よ、奴を縛れ!」

オリエンスが火の魔法でゴーレム達を急速に熱して固めた。そのため、俺の足は見事に封じられた。ベルゼブブの蝿の一部が燃えて酷い匂いがする。

そして俺の全身は水に濡れている。すると次に来るのは当然……嫌な予感がした。

(いかづち)よ、墜ちろ!」

パイモンが風の魔法で雲を呼び出し、俺にベルゼブブの蝿ごと雷を落とした。

「ぐあああああ!!!!」

俺の苦しむ様を見てパイモンは笑っている。

「はははははは!!!あ~……笑った笑ったぁ……。それはそうとラティスゥ~?こっちを見てみろよぉ~?」

朦朧(もうろう)とする意識の中、俺がパイモンの方に顔を向けるとそこには……

「ラ、ラティス!」

自分の首にナイフを突き付けた碧愛の姿があった。

「碧…愛…パイモン、貴様ぁ……!」

するとパイモンは俺の顔を見て喜びの表情を浮かべていた。

「ラティスゥ……お前のやっと…やっと苦しむ表情が見れて嬉しいよ……!俺はずっとお前のそんな顔が見たかった……。

俺の能力は覚えてるよなぁ?ここにいる四人の候補者は全員、俺の能力で操ってる。俺が本気を出せば万物を操れる!だが、生物は難しくてなぁ…たまに俺の命令を聞かない馬鹿がいる……。まぁ、この女の意志は操ってないけどな、楽しみが減る。

さぁ、どうする?このままだとこの女は死ぬぞ!」

俺が起き上がろうとしていると碧愛が、

「ラティス!皆を連れて逃げて!私はどうなってもいいから!」

と叫んだ。パイモンはそれを聞いて俺に再び、

「どうする?女はこう言ってるぜぇぇ?」

と俺を(あお)った。

この時、俺の中で何かが切れた。




中々投稿出来ず申し訳ありません。書き溜めるペースが遅くなっているせいです。アイデアはあっても地の文が……という状況です。
こんな作品を最後まで読んで頂きありがとうございました!今年もよろしくお願いします!

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