町の宿屋に戻って碧愛達の部屋の前に着くと、中から楽しそうな笑い声が聞こえた。とりあえず俺は、
「おーい、皆、出発するぞー」
ドアを開けるとそこには下着姿の皆がいた。どうやらお風呂から出た直後だったらしい。
碧愛はタオル一枚の姿。少しだけ見える足がなんとも目に悪い。
ティアもタオル一枚の姿だったが、彼女の場合は胸がもう少しで見えそうだ。
エルは丁度植物のローブを着る所だったが、彼女の胸に向かって勝手に目が行ってしまう。
影葉はパンツを穿いてスカートに手をかけた所で、思わず凝視してしまった。
ここまで暁が出てないのを不思議に思った人もいるかもしれない。理由は簡単だ。彼女は……何もつけていないのだ。
俺は彼女達の姿を見た瞬間、すぐにドアを閉めた。多分、二秒もかかっていないだろう。俺の心臓はかなりの驚きで、まだ鼓動が元のペースに戻らない。
俺は落ち着こうとして、まず深呼吸を始めた。すると次の瞬間、俺の身体は瞬く間に植物の
「これは……おいエル、なんのつもりだ!?」
俺がこう言った直後、ドアが開いて、中から暁とティアが呼び出したであろう、動物達が一斉に飛び掛かってきた。
「な…何のつもりだ、皆……?」
「…………」
「黙っていたら分からない…。確かに今のは俺が悪かったよ、だから頼むから何か言ってくれよ……」
俺がこう言うと全員が同時に、
「「「「「死ねー!!!!!」」」」」
と言って俺はボコボコにされた。何故だ…、すぐに閉めて謝ったというのに……。
こんな調子だが俺達は町を出た。出る前に町の住人や門番達に感謝の言葉を次々と貰ったが、そこまで大した事はやっていないと自分では思う。そして、その頃には彼女達の怒りも治まったのか、普通に会話が出来る様になっていた。すると碧愛が、
「ラティス、他の候補者達もあいつみたいに町を支配してるの?」
という事を聞いてきた。
「いや、そうでもないな。寧ろアリトンの様に町を支配している奴の方が稀だ。詳しくは知らないが、多分、皆自由に動き回っているだろう」
後ろから碧愛がお礼を言うのが聞こえたが、俺は考えていた。こんな話をしていたらどこかで鉢合わせるんじゃないかと……すると、前にいた人に見事にぶつかってしまった。
「すまない、ぶつかってしまって…っ!?」
そこには3m以上はある巨人が立っていた。彼は俺とぶつかった事に気付いていなかったようで、しばらく時間が経ってから返事をした。
「んん?お~、誰かと思えばラティスじゃねぇか!ルシファー様から死んだって聞いてたけど、確か見つけたら~……見つけたら~……何だっけな?ん~……、まぁ、いいか。さぁ!殴り合おうぜぇ!!」
こいつはアスモデウス。肌の色はなんとも周りと見分けがつけにくい灰色をしている。図体がデカくて、筋肉しかない典型的な馬鹿だ。しかし、こいつはバトルマニアのため、危険極まりない。全く……、どうしてこうも候補者は全員どこかしらおかしい奴等ばかりなんだ……。
しかし、今はこいつを相手にしている暇はない。何とか騙せれば……
「アタシにやらせてよ!」
突然暁が名乗りをあげた。
「暁、どうして……?」
「久しぶりに血が騒いでるんだ。それにこいつならラティスよりも殴り合えそうだからさ!」
いかん、馬鹿が増えた。早く止めさせないと……そう思ってるとアスモデウスは、
「何だぁ~?小娘がぁ~、この俺に勝てると思ってんのかよ、そんなにチビで!ガハハハハハ!!!」
すると暁の方からブチッ!と何かが千切れる音がしたのだった。あ、これはもう止められん。
「何だとぉ~!?誰がチビだって!?あんただってデカいだけだろぉ!?これでも…食らえ!!!」
その瞬間、暁はアスモデウスの腹を殴った。直撃したが、彼は全く微動だにしない。
「どうした小娘ぇ~、こんなもんかぁ~?」
「っ!まだまだぁ!!!」
そうして二人は殴り合いを始めてしまった。
「ど、どうするの!?止めないの!?」
と、碧愛が言うが、
「こうなったらもう止まらないだろう。とりあえず、先を急ごう」
俺がこう言うと、碧愛達は当然反論しそうになるが、俺は続けて、
「大丈夫だ、暁は強い。少なくとも負ける事はないだろう。今の内にどこか、被害の届かない町を見つけよう」
と言った。碧愛達はとりあえず納得してくれたようだが、状況はそこまで本当は甘くない。すると後ろから突然、気配を感じた。振り返って見ると、そこには、まるで病気の人の様な真っ白い肌と同じように白く長い髪をした、中性的な顔立ちの人物が立っていた。するとその人物は、
「ラティス、生きていたんだね、良かったよ」
と言った。すると碧愛が、
「ラティス、この人は?」
とこちらを睨みながら聞いてきた。
「碧愛、もしかして何か誤解してないか?
俺がこう答えると、碧愛から影葉までの全員が、
「えええええ!?男ぉぉ!?」
と叫び声を上げた。するとパイモンは少し気まずそうな顔をして、
「よく驚かれるよ」
と爽やかに笑いながら答えた。そして彼は、
「ラティス、宿が欲しいなら僕が住んでいる町に来ると良い。ここから歩いてすぐの所にあるし、あの馬鹿をどうにかしてくれるなら助かる。宿を得てからあの娘の加勢に来れば良いよ」
とまで言ってくれた。
「そうか、とても助かるよ。すまないな、パイモン」
俺がそう言うとパイモンは笑いながら、
「じゃあ行こうか」
と言って町まで歩き出した。
俺が行くまで頑張ってくれ、暁、すぐに戻る……
はい、かなり進めたと思います。いやはや、この作品は評価が良くてとても嬉しいです。まだ小説を書き始めて、3ヶ月と少しなのに……感動。
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