なんと、閃乱カグラアニメ二期決定!
PBSにて芭蕉も賛成決定!
シノビマスターにてアプリ登場!
シノビリフレの情報、
そして閃乱カグラ7…!!しかも来年!
更に原点回帰、初代閃乱カグラがPS4でリメイク版で帰ってくる!
いやぁこんなに嬉しいものは中々ないですよ!今週は驚かされることばっかでした…今週のジャンプに続き、カグラの最新情報…ヤバイなこれ…燃えすぎて小説投稿が…!
では、どうぞ!!
「おい黒霧、コイツら三人を飛ばせ…俺の大嫌いな奴がトリプルセットで来やがった…」
よりによってコイツ等か…
相手にするのさえ面倒だ、厄介な三人と話し合うなんて御免だ――
「ガキ二人と、礼儀知らず…」
「アァッ?」
「は?」
「ヘェ?」
死柄木の不快な発言に三人は反応する。
目の前にいるのに対して軽々しく嫌いな人間だなんてよく言えたものだ…
「まァまァ…
落ち着きましょう死柄木弔…折角三人ともご足労なさったのですから…話だけでも聞いてみては?
何よりも大物ブローカーの紹介…しかも抜忍とは言え忍の実力を持つ者がこちらに来てくれるのは本望だ…
少なからず無駄では無いはずですし、我々の戦力になるに違いはないかと…」
荒ぶる雰囲気になったところ、空気の読みが良いのか、黒霧がこの場を制する。
言われてみればそうだ、こっちは戦力が欲しい…更に欲を言えば忍も欲しい…
向こうは忍の力を備えているのだ、こちらも補充しなければ、打倒オールマイトは無理だろう…
「へぇ…皆んなクセ者って感じがあるねぇ、何だか楽しくなって来たよ!早くも仲間が増えるってね!」
「まだ入れるかどうか、決めた訳じゃ無いだろうが……俺の考え無しに決定するな」
早くも敵が此方側に来てくれた事に歓喜の声を上げる漆月に対し、勝手に決めつけられた事に腹を立つ死柄木。
しかし漆月は死柄木がどれ程怒ろうと、殺気を剥き出されようと、罵倒されようと、怒りの表情を見せない。
そんな二人を御構い無しに、ブローカーは一歩前に出る。
「まあ何でも良いが…紹介するよ。
先ず此方の可愛い女子高生、名も顔もメディアが守ってくれちゃってるが…
連続失血死事件の容疑者として追われてる身だ…まあかなりの殺り手故に経験も積んでる…個性から考えて悪く無いぜ、君らの戦力としては大きいはずさ」
「私、トガです!『トガヒミコ』!敵連合に入りたいです!何やらここには、秘密があるって聞きました!」
彼女の名前はトガヒミコ。
夏だというのに、袖の長いブレザーを羽織り、汗一つ垂らす事なく語り出す。
因みに秘密…とは忍のことだ、抜忍・漆月に他の忍たちのことを、ここに連れて来るまでブローカーは敢えて伏せていたのだろう…
「生きにくい世の中ですよね、でも私ね、ステ様みたいになりたいの!
ステ様を殺したい!だから入れてよ弔くん、ね?お願いだよ!」
「意味が分からん、ハッキリ言ってイかれてやがんなコイツ…破綻者かよ」
ステ様になりたいとか、ステ様を殺したいとか…
ステ様ってステインのことか?ステイン信者か、ダメだこりゃ…話が通じる気がしない…
そもそもこう言う話の成り立たない人物を操るのには一苦労する…
「会話は一応成り立つよ、きっと役に立つ…そしてもう一人のこの彼女…
三ヶ月前、とある悪忍学校を抜けた忍…漆月と同じく抜忍の身さ。
死柄木さんの交渉とか、話が通じ合わなかったら、漆月ちゃんに頼むのも良いんじゃ無いかな?」
成る程…忍同士なら分かち合う事が出来るかもしれん…
ブローカーの軽い紹介に、ボクっ娘少女はヘラヘラした笑みを浮かべて軽くぺこりと頭を下げる。
何だ、コイツは案外まともそうじゃ――
「弔くん、漆月ちゃん初めまして!
ボク、『鎌倉』って言うんだ!ある理由で学校辞めちゃったけど…そこは気にしなくて良いからね!
ステインが所属してた組織なら、ステインみたいにボクもいっぱい、いーーっっぱい暴れても良いってことだよね!
ボク、嫌なヤツらを殺したいんだ!ボクも仲間にいれて!弔くんや漆月ちゃんが嫌いなヤツもボクが殺すからさ、ね?ね!」
抜忍・鎌倉――
前言撤回、コイツもトガと同じく血の気盛んなイカれ野郎だった。
背中まで垂れてる長い白髪に、海のように青い瞳、そして服の所々には赤い鮮血…恐らくつい最近、騒動を起こしたんだろうな…
「漆月、お前相手にしてやれ…俺はこう言うのはパスだ…」
「はいはい、適当な事は全部他人に押し付けるんだから……」
死柄木の悪いクセ…
自分のメンドくさい事は大体、黒霧や漆月に押し付ける。
自分の調子に合わないヤツはスルーするのだろうか?
あんなに仲間を欲しがってた死柄木が…多分ヒーロー殺しの一件だと思う。
ステインの初対面では、彼は仲間に引き入れるヤツなら何でも良いって感じがあった…
でも、ステインと通じて分かったのだろうか…
自分の考えに賛成しない敵もいる、イカれた人間がいる、それらを知った死柄木は、仲間に入れるなんて今はノリ気じゃないのだと推測できる。
「そんで最後にこの真ん中の彼だ…
特にこれと言った事件を騒がしてる訳じゃないし、目立った罪を犯した訳じゃないけど、ヒーロー殺しの思想に大きく賛成してる」
「ふん…」
ツギハギ男は鼻で笑うと、周囲を見渡す。
そしてトガと鎌倉、死柄木を見比べたり、髪をボサボサと掻いたりと、落ち着きがない。
「なあブローカー…ここの組織大丈夫なのか?
ちゃんと計画とか、そういうの考えてるんだろうな?
それと何だ?忍…?悪忍?そんなヴィランがいるのか聞いた事ねえな?
つーかまさか…だとは思うがこのイカれ女二人、敵連合に入れる訳じゃないだろうな?」
「イカれ…」
「女ァ?」
それ私達に言ってるの?
という視線が半端ない、ツギハギ男はしっかりしてるのか、組織の向上や、これからの計画…組織の理想…それらを考えてる上での発言。
この男が二人を入れたがりたくない理由は、こう言った戦闘狂は紛れなくこちら側にも害が及ぶから…悪影響を与えるのでは意味がない、だから二人は極力避けたいのだろう。
「オイオイ待てよ、その破綻JKとイカれ鎌野郎に出来てお前に出来てない事がある…
自己紹介をしろと親から言われなかったか?まず名を名乗れ、大人だろ?」
しかし組織云々他人にどうこう言われるのはこっちも黙って居られない。
死柄木は敢えて挑発するよう指を差し向ける。
すると男はしばし無言になってから…口を開いた。
「俺の名前は『荼毘』だ…
今はこの名前で通してる……」
「オイ通すな本名を言え…」
「そん時になったら出すさ…
そもそも、本名ってのは案外人に明かしちゃいけねーのさ…いつ誰がどこでチクるか分かったもんじゃねえし、呼ぶならネームドで充分だろ……
まあ何がともあれ…ヒーロー殺しの意思は、俺が全うする――」
――荼毘。
ヒーロー殺し・ステインの意思に感化された男。
警察やヒーローから追われてる身でもなければ、重罪犯や逃亡犯でもない…そこらにいるごく普通な悪党だ。
罪は犯してないが、これから罪を犯すのだろうか?
見た所、三下のような臭いはしない。
「……はぁ」
死柄木のため息が、嫌に響く。
静まり返った空間…死柄木は首を掻き毟る。
「あのさぁ…はぁーー…なんでさ、皆んなヒーロー殺しの話すんだよ…
どいつもこいつも、口を開けばステイン、ステインって…お前ら病気か何かか?あァ?なァ…」
ガタッ。
死柄木は椅子から立ち上がる、それを見た黒霧は目を細める…漆月もここに来てから月日が経っている…
だから、死柄木が何をしやらかすのか…何をしようとするのか…いち早く理解した。
「あーあ、良くないなァ…良くない…
気分が良くない!!」
次の瞬間。
ドス黒い殺意が三人に向けられる。
荼毘、トガ、鎌倉は早くも迎撃態勢に入る。
荼毘はポケットに突っ込んでた手を出し掌を向け、トガは長袖の中から折り畳み式のナイフを取り出し、刃物を向ける。
鎌倉は背中に納めてた赤黒く染まった大鎌を取り出し、「きゃはっ!」と乙女らしい声を出しながら死柄木の首目掛けて刈りに掛かる。
「――ダメだお前ら…消えろ」
死柄木は両手を使って三人に飛び込む。
死柄木の手に触れた物は全て崩壊する…危険的能力を、あの三人に向け、漆月は死柄木のカバー&フォローをするべく、納めてた鞘を抜き、刀を取り出し鎌倉の鎌を弾くよう振るう。
「「「……」」」
「「……」」
しかし、何方の攻撃も、当たることは決してなかった。
荼毘、トガ、鎌倉、死柄木、漆月の攻撃は、黒霧の個性によって虚無と化す。
それぞれの空間に、五人の手がバラバラに向けられている。
あの五人の攻撃をああも容易く、簡単にワープを使って無害にするとは…
「死柄木弔、落ち着きましょう!
我々の敵は、彼らではない…また、貴方達も、我々の敵ではない…そうでしょう?
それに組織の拡大には、彼らの力は必須…
今ヒーローと忍が結束を固め、双方が成長してる以上、我々も成長しなければならないのですよ…
貴方が望むままを行うのなら…ね」
黒霧の言葉に、漆月、トガ、鎌倉は渋々と武器を納める。
荼毘は呆れた様子で手をしまう。
しかし、死柄木だけは手をしまわなかった…
黒霧の言い分は尤もだ。
自分たちが計画を練ってる間、ヒーロー学生や忍学生も着々と成長している。
特に成長部分を感じ取れたのが、体育祭と学炎祭か…
未知なる忍を見た、ヒーロー学生達の実力も見せられた…
一方自分たちはどうだろうか?
ろくに戦力を増やすことままならず、思い通りに事が運ばない…これ程苛つくものは無い…
それは死柄木にとっても不本意だし、さっさと計画を練ってオールマイトを殺したい。
その為には…
「我々にも、忍の力が必要になって来たのですよ…
漆月は確かに強い、先生が認め、唯一賞賛してる忍だ…しかし、強大な力も時に折れる事だってある…
一つの力だけでは限界が来る…その為にも、組織拡大は必要不可欠なのですよ…
奇しくも、注目されてる今がチャンス…
排斥では無く、受容を…弔」
黒い靄が死柄木にまとわりつく…
まるで闇が死柄木の耳元に囁くようなその光景は、見てるだけで禍々しいものだった。
「
彼が遺した思想も、信念も、何もかも全て…」
黒霧の囁きに死柄木は鬱陶しさを感じたのか、払いのける。
黒霧は元に戻るかのように引っ込む。
「……死柄木?」
「……煩い」
漆月の配慮に死柄木は一蹴するよう一言で片付ける。
「どこ行くんだお前…」
「どこ行くの〜?」
「うるさい!!!」
ガタン!!
荼毘と鎌倉の言葉に耳を傾けず、苛立に荒ぶる死柄木は、ドアを思いっきり蹴り飛ばす。
ガランガラン…という音が虚しく鳴り響き、死柄木はそのまま何処かへ行き姿を消した。
ドアの方へと視線が注目する。
初対面…出来れば都合よく、穏便に事を済ませたかったが、思ったより上手くいかないようだ…
「死柄木…嫌に機嫌悪かった…相当ヒーロー殺しのこと、嫌いだったんだ…」
「まあ…何が起きたかウチには分からんし、取引先にとやかくいう資格はないが…
彼はまだまだ若いねぇ…若すぎる、一言で言えりゃ子どもだよ彼は…」
「あーあ、久し振りだったなぁ…弔くんの殺気良いね、癖になりそうだよ!ボクここ気に入った!」
「ね!殺されるかと思った!」
「……意味分かんねえ、気色悪いし、ガキかよ……どーなってんだアイツの頭は」
それぞれがタメ口を吐く。
実際この三人は死柄木とは初対面だし、彼がどういう人物像なのかは知らない。
「…申し訳ありませんが、返答は後日で宜しいでしょうか?
――本当は彼も自分がどうするべきか、分かってるハズです…
分かってるからこそ、何も言わず出て行ったのですよ。
オールマイト、忍、ヒーロー殺し…三度鼻を折られた。
必ず導き出すでしょう、あなた方も、自分自身も、納得のいくお返事を……」
人の心は素直じゃないように出来ている。
自分が答えを分かっていても、納得がいかなければ、望んでる物を否定してしまう。
人は常に嘘をつくように出来ている。
素直になれないからこそ、嘘をつき、相手も自分も傷つけてしまう。
人間の愚かしき部分の一つであり、また成長出来る人間の魅力的な部分でもある。
死柄木がもし、自身の答えに納得すれば、きっと以前より断然的に成長するだろう…
ならばそれを見届けるのも、仲間の役目であり、死柄木弔の為なのだ。
時は遡り、期末試験終了した後日、教室内では組が二手に分かれていた。
筆記・実技二つが出来たもの、自信がある人、クリアしたものの納得しなかった人。
演習試験をクリアした組。
対するは、筆記試験こそは出来たが演習試験でタイムリミットを迎えて不合格となった組…
切島、砂糖、上鳴、芦戸、この四人は演習試験を合格出来なかったのだ。
それも当然、先生でも相手が悪ければ簡単に崩れてしまう。
砂糖と切島はパワーファイターとしていいコンビだが二人とも弱点が同じく、時間制限…つまりスタミナ消費が半端なく、個性による持続時間が短い為。
彼ら二人を選んだのは、お互いの弱点が共通し且つ、相手の個性をどう立ち回るかが問題となるからこそ、選んだのである。
芦戸と上鳴の二人も個性は強力なのだが、知性的な判断と適応力、それらが劣ってる分、相手は頭脳戦として攻めた来た。
超圧縮おもりなど関係なく、市街地そのものを使い、計算的に行われた策略の前で、知性の欠片も無い二人は圧倒されたのだ。
今回相手が悪かったとはいえ、気の毒だ…
林間合宿が行けないのだから。
そう――現に今四人は、この世の終わりでも見てるかのように絶望していた。
「皆んなぁ…土産話…楽しみに…してるからねぇ…!えっぐ…ひっく……う、うぅ…うああぁぁ…」
「あ、芦戸ちゃん落ち着いて…ね?」
今にも泣き出しそうな芦戸に、飛鳥は「大丈夫だよ」と、まるで大人が泣き出す子どもを嗜めるように、飛鳥は苦笑を浮かべて落ち着かせる。
「ああ…終わったな俺たち……」
「ああ…そうだな……」
あの熱くて頑固な切島も、今では鎮火した灰のように脆くなっている。
皆んな林間合宿を楽しみにしていたのに…可哀想だ…
「ま、まだ分からないよ…もしかしたらどんでん返しが来たりして…」
「な訳ねえだろ緑谷テメェ!この、野郎!!
演習試験クリア出来なかった者は不合格確定なんだぞ!!しかもお前、この野郎!!お前と爆豪の相手がオールマイトだってのに何で合格出来てんだよ!
相手はハンデ背負ってる化け物以上だぜ?だべ??べ?
それなのに俺たちはタイムリミットによってクリアならなかったんだ!
それなのにどんでん返しだぁ?寝言は寝て言え!来るわけねえだろうがそんな都合のいい話あったら誰だって苦労しねえんだよそう言うのは漫画の約束であってこっちは漫画じゃねえリアルであって――」
「あーあー!御免なさいゴメンなさい!分かった、分かったから!ちょっ、上鳴くんやめて胸ぐら掴まないで!ちょっ、目ん玉…やめてよ!!」
上鳴はえらくご機嫌斜めであって、頭のネジが外れたのか、興奮気味に捲し立てる。
緑谷の胸ぐらを掴んだり目潰しとか…
「でも、筆記試験で点数稼いでたら良いんじゃないかな?それに演習試験は点数付けるとしても、クリア出来てなくても立ち回り方とか…そう言うのに評価が行ったりすれば、良いんじゃないかな?」
飛鳥の以外的な発言に、上鳴…いや四人とも目を丸くする。
飛鳥ってこんな頭いい発言するっけ?一言で二行しか言えない子だと思ってた…
しかしそれを直接本人の目の前で言ったら紛れなく二刀綾斬される訳で、口が裂けても言えない。
「よしお前らおはよう」
予鈴が鳴ると共に相澤が教室に入って来る。
1分1秒たりとも遅れることなくタイミング良く入って来る相澤先生を見て「ドラ◯もんかよ」と突っ込むのは少なくはない。
相澤先生の扉はどこでもドアになってるのか?なんて思いながら皆んなは黙々と席に座り、一瞬にして相澤先生へ視線を送る。
「お前らもう既に知ってると思うが…
単刀直入に言う、今から期末試験の結果発表するぞ、一度しか言わねえからちゃんと聞いとけな」
――ドクン
胸が高鳴る、嫌に心臓の音がリアルに聞こえる。
四人は絶望に染まりきってるし、その内一人は悟りでも開いてるし…
アレ上鳴くんじゃん、このシーンはハ◯キューかな?
しかし、この場の皆んなも気が引けない…
何しろクリアはしても得点基準が分からない以上、合格なのか赤点なのか…不明なのだ。
その疑問が、人の心を大きく不安にさせる。
「えー、残念ながら赤点が出た…よって
――君たち全員林間合宿に行くことになりました!」
――どんでん返し来たアァァ!!!
まさかのコミック展開に四人は涙を流して大きく叫び、上鳴は「嘘だろ?」とリアリティを出した顔で思わず席に立ち上がり、天を拝む。
緑谷が言ったことが的中するなんて…夢にも思ってなかったし、諦めていたのでこう言う展開が来ると心の底から喜んでしまう。
「筆記の方はゼロ、だが実技での赤点は五人、上鳴・芦戸・切島・砂糖・瀬呂、以上だ…」
「ええっ!?俺もっスか?!合格はしたん…ですけど…」
「誰がクリアしたら合格になるっつった、お前は寝てただろ、寧ろ峰田大活躍したのお前観なかったのか?あの後試験担当のミッドナイトからVTR観させて貰ったろ?」
クリアしたから合格、という程この試験は甘い訳がなく、行動・判断・適応・コミュニケーション・それらが評価されるので仕方ない。
何故なら瀬呂は試験中に眠ってしまったのだから…
別に悪ふざけでもないし、真面目にやってる。
理由がある――
それは、ミッドナイトの個性で眠らされてしまったのだ。
ミッドナイトの個性は『眠り香』…体から放たれる香りで強制的に眠らされてしまう個性、対人戦としてもかなり有利な個性で、使い方次第では相手を傷つけず、穏便に事を済ますことの出来る、プロヒーローからも認められる人物だ。
18禁ヒーローというアダルトな名前さえなければ、彼女はきっとスーパースターにでもなれたのに…
瀬呂が峰田を救けたところ、眠り香で眠らされてしまった…
何分寝たか知らないが、少なくとも数時間は眠らされてたのではないか?香りが少しツンとした感じの強めだったのは何となく覚えている。
「あー…そっか、評価されてるし点数みたいな感じ…平たく言えば体育のテストみたいなもんか…うわぁなんかショックだ…クリア出来なかった人より何百倍もキツいし恥ずかしいしシンドイんだけど…」
クリア出来ずに不合格になるのならまだ分かるが、クリア出来て不合格とは、締まらないというか、ダサいと言うか何というか…
目茶苦茶恥ずかしい。
もう穴があったら顔を突っ込んで入りたい。
しかし、赤点を取ってしても林間合宿に行けるとは夢にも思ってなかったので、此方としては嬉しい限りだ。
「そもそも最初っから皆んな連れてくつもりだったさ…
そもそも林間合宿なんてのは強化合宿なんだ、赤点取った奴こそ力つけなきゃいけないだろ?」
「本気で叩き潰すと仰っていたのは?」
「追い込む為だ。
赤点取っても林間合宿やるなんて言っても、お前らの場合、本気を出さない奴だっているかもしれねえ…そんな輩はいないとは言いたいが…まあ、嘘ついて追い込ませた方が効率的だと思ったんだ…
まあこれも所謂…合理的虚偽…!」
ハッ!と不敵に笑う相澤に又しても騙されやられたA組の生徒たち。
確かにこの方が効率的だし答えが分かってても意味がない、なら敢えて伏せておいて生徒たちのやる気と向上心を最大限に引き出す…相澤先生なりの考えなんだろう。
因みに体力測定の時も相澤は嘘をついていたので、これが初めてでは無い。
赤点組の五人は安堵の息を吐き、席に立てば手を取り合い歓喜に満ち溢れている(但し瀬呂はまだ落ち込んでいるが)。
それもそうだ、あんだけ林間合宿を楽しみにしていたのだ、結果がどうであれ自分たちにとってこれまでにない至福だ。
学校で居残りなんて、仲間外れにされる以上に痛いもの。
しかし、相澤先生の話がこれで終わったわけではない。
「ただし合理的虚偽とは言え、赤点組は林間合宿で補習やるぞ、そこん所は勘違いしないように…
ぶっちゃけ学校に残って補習より大分キツいからな、死ぬ気でやらねえと林間合宿のイベントとかに参加出来ねえかもな、そこん所ちゃんと把握しとけよ。
まあ分かってるとは思うがな――一応先生からの連絡は以上だ」
で、ですよねぇ〜…
そりゃあそうだ。
これは学校のテストなんだから…無理はないし寧ろ補習があるのは当然だ。
夏休みにやるっていう考えはあるんだろうが、生憎雄英高校に夏休みなど存在しない、つまり飛鳥たち三人も雄英高校に在籍してる以上、彼女たちにも夏休みは無いのである。
夏休みにプールだのキャンプだの海だの遊園地など、行く暇すら無い…
悲しいことだがプロになる以上、これは避けられない道であり、ヒーローになるには険しい道を歩まなくてはならないのだ。
「んじゃ、一限の用意しろ…」と相澤はその言葉を残して教室を後にした。
放課後。一通り授業が終わり、皆んなは帰りの支度を始める。
だが帰る気配など微塵も感じない、A組の皆んなは林間合宿に向けて話し合っていた。
林間合宿は一週間みっちり、身体を鍛えるのでそれなりの準備をしなくてはならない。
強化合宿と聞いただけでなにをするのかは知らないが、準備は万全にしとかなくては、忘れたなんて済まないし、相澤先生の視線がかなり痛い…
大荷物になるため、各自生徒達は荷物を調達しなければならないのだ。
今まで親とかに頼んでいたが、もう高校生だ、やれる事はやらなくては大人にすら近づけない。
「というわけで…明日休みだしテスト明けだし…A組皆んなで買い物に行こうよ!!」
葉隠の提案にクラス中が騒めき、殆どの人が賛成の意見を出してきた。
準備するならこの日しかないし、雄英のスケジュールはビッシリしてるので、準備する暇が余り無い…
そのため、狙うなら明日の休日しかないのだ。
その日に生徒達は準備を済ませる…となると、どうせなら皆んなで行った方がノリが良いし、友好関係を築くにはもってこいだろう。
但し…
「すまん、俺は無理だ」
「俺もだ、行ってたまるか…」
轟・爆豪は首を横に振る。
賛成の意見の中には必ずしも…と言う訳ではないが、大抵反対意見も出る。
いや反対は少し語弊か、行かない人も出てくる。
「なんでだよ空気読めやKY男子がヨォ!轟はまあ…イケメンだし行ったとしても良い女が寄ってくるからお前は要らないけど…
爆豪!お前なんで来ねえんだよ!良いだろ別に来いよ!かかって来いよ!」
「んじゃ本気でテメェぶっ殺して良いんだな?あァ?」
「嘘ですスイマセン冗談ですホントに御免なさい調子乗りすぎましたご勘弁を…」
爆豪の爆ギレオーラ(冷静)に峰田は土下座をする。
この男にプライドという概念はないのか…
「ねーね、飛鳥ちゃん達もどーよ!?行こうよショッピング!」
「うん、私は別に良いんだけど…二人は用事とかあるの?」
「オレは特にないな…雲雀は?」
「雲雀も特に用事はないよ、それに皆んなで買い物なんて初めてじゃない?あっ、皆んなじゃないけど」
轟と爆豪が何故行かないのか理由は定かではないが、まあ何か事情があるのだろう…
無闇に理由を探るのは良くないし、特に爆豪なら逆に殺されるので理由探りとかは絶対にNG、それに行けないと言ってるのに無理やり連れて行くと言っても相手に失礼だし、行くか行かないかは個人の自由なので仕方ない。
「んじゃ行ける人だけ行くか!場所はどーする?」
翌日。
強い日差しが差し込み、夏だからかいつもより太陽が輝いてるようで、とても暑い。
最高気温は40℃くらいか、地球温暖化の影響を受けてる為か、去年の最高気温を更新していた。
休日だからか、ショッピングモールはえらく人混みが増しており、見渡す限り波打つ海のように人が大混雑していた。
今にも誰か一人でもその海のように広がる人混みに入れば、ほぼ高確率で迷子になってしまいそうな空気…とてもじゃないが苦しすぎて窒息でもしてしまうんじゃないか?
なんて馬鹿げた妄想を浮かばせながら、飛鳥は「ほぇ〜」と小さく呟き周囲を見渡していた。
飛鳥だけでなく、大体の人もこの光景に息を飲む。
こう言うショッピングなんてあんまり経験したことがないし、あるにしても大体は家族と一緒に行くものだ、保護者なしに子供同士でと言うのも、何かと新鮮なものだ。
「いやぁやっぱいつ見ても賑やかだねぇ、木椰区ショッピングモールは!」
芦戸の天真爛漫でハッチャケた声でも、人の声が飛び交い目立たない。
――木椰区ショッピングモール。
県内最多店舗数を誇る、ナウでヤングな最先端。
異形方の人間や、特殊な体をした人間にまで利用できる、信頼性の高い場所だ。
またここは男女がデートするにも相応しい場所だ、ショッピングの話題を出せば此処に行き着くのも不思議ではない。
ティーンやシニアまで幅広い世代にフィットするデザインが集まってることから、集客力が強く、老若男女が飽きる事なく気に入ってるのにも頷ける場所だ。
「なあなあ、こんだけ人多いと迷子になることあるしさ、時間決めて自由行動しようぜ!少なくとも昼飯食い終わった後が良いな、お前らもどーするよ?」
切島の提案に、皆んなも頷く。
そして纏まった意見、多数決の結果…
昼飯後…つまり一時半に目的地に集合する形となった。
昼食を取るのは此処を少し離れた場所にレストランなどの店舗が多く並んでるので、そこで取るのも良いだろうという考えになった。
少し時が経ち現在…
「緑谷くんあそこ行ってみよ?何かあるかもしれないし」
「あ、あ、うぉっす…!」
「も〜緊張し過ぎだって〜♪私もこう言うと所、全然こないけどさ、でも今は楽しもうよ!」
なんでこうなったんだろ…
ヤバイ緊張してるんだけど…ナニコレ?心臓がバクンバくんって鳴ってる…今僕顔赤いかな?
飛鳥さんと一緒にいるのってなんか…すごい新鮮というか…
今緑谷は飛鳥とペアになって店を見回っていた。
それには理由がある――
最初解散になった途端に「待ってました」と言わんばかりに皆んなペアになって何処かへ行ってしまったのだ。
残ったのが緑谷と麗日になって、最初は一緒に行動しようと言う流れになったのだが…
「虫除け〜!」と突然言われて何処かへ行ってしまった…つまり、自分は一人になってしまったのだ。
迷子になるといけないし…という意味でペアを組みたかったのだが、これは仕方ないと思い少し歩いていたら、偶々一人になってた飛鳥と合流し、「一緒にペアにならない?」と言う話になったのだ。
――そして現在に至るわけで、今は荷物やしおりの必要事項に記されている荷物の入手と、バックの購入、そして服を買うべくあらゆる店舗をしらみつぶしに探しているのだ。
まあ、一人より二人…なんてよく言うし、悪くはないのだが…
視線が痛い。
雄英生だ〜!という視線はもう慣れた。
学校通うのに電車とかバスとかで散々言われてるし、多分忍学科以外の皆んなも言われてるのだろう…
しかし問題なのが、雄英生と見知らぬ人が一緒になって買い物してる姿…これが何とも…
緑谷は異性に対しての羞恥心は凄いが、入学初日程よりかは耐性がついた。
昔の自分なら、お茶子と少し話しただけで顔を真っ赤にしていたが、今では良き友達として仲良く接しているし、飛鳥とも同じように接している。
しかし、こういう立場で男女一緒になって見回るのはちょっと…
飛鳥が悪いわけでもないが、周りからして見れば「オイ、アイツ付き合ってんぞ?」「可愛い、胸もデカイしスタイル抜群だ!」「リア充死ね」「僕たちもあの子達に負けてられないね」なんて言葉が所々聞こえる…
飛鳥は夢中になって気が付いてないので何とも言えないが…
そもそも爆乳ゆえにこんな美少女が僕と釣り合うわけ無いし、勿体無いし…
なんて逆にマイナス思考に考えてしまう自分がいる。
別に付き合ってる訳じゃないのだが…ん?
付き合う…?
ここはショッピングモールであって、皆んなと此処に来てるから別にデートって訳じゃないし…
ん?あれ?デート?なんでそんな無縁な単語が出て来たんだ?
「緑谷く〜ん?おーい!」
「ん? …――うおわあああぁぁ!?!」
「うわぁ!ビックリしたぁ…何今の?!」
「あ、えっとゴメンなさい…僕全然気付かなくって…ボーっとしてて…驚いちゃった…」
「も〜…驚いたのは私の方だよ〜…緑谷くんそんなに緊張しなくても良いのに、せっかくのショッピングなんだから、もっと楽しくやって行こ?」
ヤベェ可愛いんですけど…!
心の中で思いっきり叫んだ。
仕草とか、表情とか、もう…いやいや、そもそも忍学科の人って大体美人が多いし…
「あっ、あそこ結構人混んでるね…」
次に目指す店、行くには人が混んでるので逸れてしまいそうだ。
ああ言うところって大体迷子になる危険性があるんだよね…って、峰田くんとかなら絶対に迷子になりそう…
それよりも峰田は一人で行動してるので迷子もクソも無いのでご心配無用。
「よーし、キツそうだけど…行こっか!」
ギュッ
「へ…?」
手首が誰かの手に掴まった。
一瞬だけ頭の中が真っ白になったが、その手が誰の手なのか、大体想像が付くだろう…
飛鳥は緑谷の手首を握り、人混みに駆け走っていく。
「レッツ・ゴー!」
「ちょっおおぉぉあああわああおおぉお!?」
もはやこれは奇声と呼んで良いだろう、緑谷は何が起きたのか分かってはいるが、飛鳥の突然な行為に緑谷は又しても顔を真っ赤にする。そのまま引っ張られるように人混みに駆け、目当ての店に近づいていく。
(飛鳥さん幾らなんでも…!というか…手柔らかい…女性の手ってこんなに柔らかいんだ…って何考えてるんだよ僕!変態になるぞ?!頭冷やせボク!!)
これは異性との付き合いに慣れてない緑谷にとってハードなものだ。
急に手を掴まれるなんて、いや…デートでよく見る手を握る…よりかはマシだが…
それでも大体それに近いものだ。
というか…さ。
ショッピングモールに、手首掴まれて…
飛鳥さんと僕二人だけ…他の皆んなは見ないし気配もない…
これってさ、デート…じゃない?
デートじゃないが、デートっぽい。
しかし飛鳥には羞恥心がないのか、考えてもいないのか、飛鳥は無邪気な笑顔を作りながら、緑谷と一緒に店の中に入っていった。
ワイ実はあんまり恋愛描写とか、そう言うの得意じゃないんや…しかし、全然日常回がないですし期末試験編があっさり早く終わるのもアレですので…ね?
注意)デートではありません。