光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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やっと投稿出来ました…最近少し投稿ペースが遅くなってますが、最低でも一週間に一回は投稿すると何度も決めてますので、どうか気長に待っていただければ幸いです。
それはそうと、そろそろ81の日が近いですね。え?81って何って?違う読み方して見んしゃい。


87話「筆記試験より演出試験の方が難しい」

 

 

 

 

 

 

 

「敵の活性化の恐れ…か」

 

会議室。

教師達は期末テストの事を含め、会議を行っていた。

スナイプはマスクを付けてる為、表情こそは見れないが、声からすれば厄介そうな意味でため息をついている。

その事から、余り善くない問題なのだろう。

 

それもそのはず、ヒーロー殺しステインが捕まった今、社会は少しずつ変化して行ってるのだから…

まだ犯罪率が上がった訳でも、犯罪に関する事件が増えた訳でもない。

寧ろ…減ったと言った方が良いだろう――

では、それの何処が敵の活性化という課題と繋がるのだろうか?

 

「僕とオールマイトの予想から考えるとね、敵は犯罪を辞めたんじゃない…

恐らく、今は伏せてるんじゃないかな…?」

 

「どういう意味です?」

 

校長・根津の説明に小首を傾げるプレゼント・マイク。

いつも能天気で声が馬鹿が付くほどデカイ彼も、深刻そうな表情で質問する。

 

「簡単だよ、それらの敵は一時的に騒ぎを中断して、敵連合に赴いた…と見なして良いということだ」

 

「根拠は?」

 

「ヒーロー殺しの思想・信念、それらは善かれ悪かれ必ずしも感染する…

そもそも最初にデカイ事件を起こしたのは、敵連合が雄英高校に襲撃した時から始まっていた…

 

 

蛇女子学園という悪忍学校にまで攻めてきた連中だ。その時点でただの犯罪テロリスト共じゃない…

それが漆月と関わってたとしても、忍が敵と関係してる時点で処罰もんなんだから…

 

それがヒーロー殺しまで繋がりが示唆された……

ここまで敵連合が繋がっていれば…何かしらの影響を受け、バラバラな悪意が組織に興味を示す…つまり――」

 

「敵連合は戦力を増やして、再び攻めて来る危険性があるって訳か…」

 

これはあくまで予測に過ぎない。

それが本当に起きると断言は出来ない…

いつからかも分からないし、でも…可能性は極めて高い…オールマイト殺害の計画を立ててる敵連合…

つまり、オールマイトが雄英に居る時点で、雄英生に危害が加わる確率も高いと言える。

 

それもそのはず、ここまで計画的に雄英生だけが事件に巻き込まれてる…

次にいつ敵が攻めて来るか分からない…それと同時に組織は敵の活性化を目論みとしている。

 

事件を騒げば騒がすほど、敵は衝動を受け、解放を求める…

力があればそれを使いたがるのも当然だ、個性の規制化が進んでいる以上、抑圧されてる彼らは、悪意を培ってるのだから…

 

しかも小百合からの話によれば、巫神楽三姉妹の調査によると、数名の抜忍が消息を絶ったとのこと…他にも、善忍や悪忍も姿を消したとの証言。

敵連合はきっと、忍を仲間に引き入れることに、オールマイト殺戮計画を進めてるに違いない。

それと同時に、もし雄英生に巻き込まれば…ヒーロー学生は抜忍と戦う確率も…

 

蓋を取り除けば、そこには酷たらしい、最悪な未来が待ち構えてる…

それらを防ぐ為、我々教師は、生徒達の安全と共に対策案を講じてるのだ。

 

「生徒達の身を守るのは僕ら教師の義務だ。

社会の安否、そして敵連合についてはオールマイトに任せるよ…」

 

「ええ…必ずしも…捕まえます…敵連合諸共、アイツも…!!」

 

オールマイトはトゥルーフォームの姿であるが、力強い声が聞こえる…気合が入っている。

 

「その為に…今の時期は期末テストがある…筆記試験はともかく、演習試験の内容を変更しようと思ってね」

 

「仮想敵では意味がない…と言うことですか?」

 

「そういう事さ!」

 

仮想敵はあくまで生徒達に極力危害を加えさせない為。

親へのクレームや社会からのアンチが激しい為、金を支払いロボットを作った訳だが…

柔軟な行動や判断を取るには、仮想敵では意味がない…つまり、生徒の成長にはならないと判断したのだ。

入試の時から相澤先生は「んなもんアンチがしたい奴らの言葉だろ、好きに言わせてりゃーいーんだよ…俺らが気にする事ねえってのに…」とタメ口を呟く始末。

しかし、生徒達の安全を確保するのも教師達の役目なので、仕方ない点は存在する。

 

「だから、演習試験の内容は…

仮想敵ではなく、演習試験の場所にて教師達と戦闘する…

 

という訳さ――」

 

一方、教師達なら鍛えてる故に個性も強力で申し分ない。

寧ろ教師の場合では強過ぎて話にならないという意見が出るのも不思議ではないが、それに対してはちゃんとした案があるので、ここは良しとする。

問題は――

 

「では、忍学生の彼女らはどうします?」

 

18禁ヒーローのミッドナイトが質問する。

雄英生達は良いとして、彼女達に適材する者などこの学校にはいない…

強いて言うならオールマイトだが、彼は「私は決まってますので…」と言ってる為パス。

 

忍学校に所属してる霧夜も良いが、話によると霧夜は一度、焔達が蛇女にいた頃に修行として戦ったことがあるので、恐らく動きや行動パターンが読めてる可能性があるのでパス。

ならばここは半蔵!

という意見は少なからず出るであろう…オールマイトが出るなら半蔵も…しかし彼は小百合と共に敵連合の捜索をしてるのでパス。

半蔵と小百合の力を借りても未だに敵連合を捕まえれないって、どこまで用意周到な組織なのだか…もしかしたら国外なんじゃない?と思えてしまう。

 

だから――

 

「あっ、そう言えば…霧夜くんの話だと、半蔵学院に一人、卒業しないで留年し続けてる生徒がいるらしいですけど?どうします?」

 

「よし、じゃあソレにしよう――」

 

大道寺先輩が出たと言う訳である――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在に至った訳である。

大道寺は元々、三年生になって卒業試験に向かい、彼女の実力からして普通なら合格出来てるし、もう既に卒業している訳なのだが…

とある理由で彼女は留年している――

 

その理由は現在、蛇女子学園に在籍している教師、鈴音先生にあった。

鈴音先生は元々、半蔵学院の生徒であって、大道寺の先輩こそが、鈴音先生…凛なのである。

凛は昔っから強くて、大道寺に負けを取らない程に、負けず嫌いな性格で、「まいった」の言葉が出る前に、自分が負けてしまう…

必死に彼女に食らい付き、どれだけ激戦を繰り広げても、結果は同じ…

凛の強さがより身に染み渡り、敗北感の中に何処か嬉しい気持ちもあった。

 

――凛先輩が「まいった」と言うまで、挑戦を辞めない――

 

それを凛に話すと「あはは!それは卒業試験よりもずっと厳しいよ!」と笑いながら答えた。

馬鹿にしてるわけでは無い、大道寺の真っ直ぐとした答えに、凛は嬉しく思いつつ答えたのだ。

 

――では、ソレを我の卒業試験にしよう――

 

忍学科の人間や、霧夜に半蔵、名のある上層部達も異論はしなかった。

大道寺ほどの戦力が忍社会に貢献してくれるのは、さぞ嬉しいのだが、時に上層部は生徒達の思いを尊重する事がある。

と言っても、殆どが都合の良い時であって、本来は生徒達の事など無視して、命令に従わせることもあるのだが…この際はどうでも良いだろう。

 

 

凛が卒業試験に合格して去った後も「またいつでも挑戦を受けるよ!」と約束してくれた。

自分が一流の忍になって社会に出てるにも関わらず、自分の我儘に付き合ってくれる先輩ほど、優しい人間はそうはいない…

 

凛が忍社会で活躍する姿は、瞬く間に広がり、一流の忍として近づくのも夢ではない…そんな先輩が強くなると思う反面、とても嬉しかった。

自分も先輩に負けていられない…

 

 

 

だから、あの事件が起きたのは想像もしなかった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「合格を手にしたいのであれば、全力で我に挑め…さもなくば、これ合格、不可能なり…!」

 

気迫のある言葉、虎のような野生的な眼差し、圧倒的強者の余裕…

それらが垣間見えるのは、決して気のせいでは無い…

大道寺がどれだけ鍛錬を積み重ね、凛に再挑戦するべく強くなったのか…伝わってくる。

 

 

「だ、大道寺先輩と…?正気…ですか?」

 

「勿論だ、それにこれも先生方の決定事項だし、お前ら相手には忍じゃ無いと不公平だからな…

丁度これくらいで良いだろう」

 

いや全然良く無いですよ相澤先生。

しかし直接口に出すことが出来る訳がなく、決定した以上、何を言っても無駄だろう…

そもそも、自分達のことを考慮した上で大道寺先輩という答えなら、仕方ないかもしれない。

 

だって今思えば大道寺先輩以外に、他の人が思いつかないのだから…

 

霧夜先生は…ああ見えて上忍クラスに匹敵するし…半蔵は…伝説の忍ゆえに、強すぎる。

衰えたとしても、三人まとめて攻撃してもかすり傷一つすら付かないだろう…

 

なら伝説の大先輩の出番…という訳だ。

 

 

「試験の概要については各々の対戦相手から説明される、移動は学内バスだ…時間がもったいない、速やかに戻れ」

 

 

これも一つの合理的な事なのか、相澤は手短に説明をし終えると、軽く手を叩いて急かすよう皆んなが乗るバスを教える。

それぞれのバスは移動先が違うため、乗る人は決まってるそうだ。

 

各自生徒がバスに乗って行く光景、飛鳥達三人もそれに続き、気乗りせずして乗って行く。

大道寺先輩とは余り戦った事はないが、噂は聞いたことがあるし、何度か会ったことがある(少ないけど)。

 

何でも自分達が留守の間、蛇女の生徒達が攻めに来たことがあったそうだが、大道寺先輩一人で全滅させたことがある位だし、実際妖魔とは互角に渡り合える可能性を秘めてる程だ。

飛鳥は焔と二人で、超秘伝忍法を使ってやっと怨楼血を倒すことができたのだから、多分大道寺先輩はそれ以上なのかもしれない…

そう思うと、まるで妖魔と戦う気がしてならない…

 

 

三人はバスの中に入り、それに続き大道寺先輩が乗る。

普通バスの中でも、大道寺先輩が入るだけでこうも緊張感が増すのか…申し訳ないけど、歩くたびに何故がバスが揺れている気が…

何これ、大道寺先輩オールマイトより強いの?そんな筈ないけど…

 

各々が指定されたバスに乗ると、出発した。移動先は多分、そこまで遠くはないと思う。

演習試験場とは聞いたが、そこが一体どんな所なのか…どんな場所なのかは知らない…

出来れば、街みたいなごっちゃした場所ではないことを祈りたい…

 

「なんか…気不味いね」

 

唐突に雲雀が口を開く。

ビクッと二人は体を震わせるが、大道寺先輩は聞こえてないのか、或いは無視してるのか、反応しない。

 

「ひ、雲雀ちゃん…そう言うのはあまりこの場で言わないものなんだよ…?」

 

「でも〜…バスの中なんだからせめてもう少し楽しくしたいよ…」

 

小学校の遠足か。

出来れば自分も楽しくしたいのだが、相手があの先輩となるとどうしても…なるべく気軽に接してみたいものではあるのだが…これが中々…ボッチの人間がどうやってクラスの輪に溶け込めるのかって言う位に悩んでしまう。

話す事は全然良い、そこは問題ない。

でも、喋らないんだもん…まるで「余り騒ぐな…狩るぞ」と言わんばかりの雰囲気が漂っている。

そこまで先輩が怖い訳じゃないけど、喋ってくれないといのが何とも……

 

「お、俺は…寝るか…」

 

気不味い空間に耐えれないのだろう、柳生は目を瞑り仮眠に移る。

「あー!柳生ちゃんズルい!」「柳生ちゃん起きてよ!」と、飛鳥と雲雀が声をかけるも柳生は眠りに落ちる。

逃げたな…

寝てにげるなんて卑怯だ…というか、寝るにこんな奥の手が存在してたなんて…

ノリー吸い込んでコピーしたい…

 

気不味さで例えるなら、隣にナルシストの青山と無口の口田が挟むように隣にいる位だ。

なんだこのレベル高いの…というかあの二人とはあんまりコミュニケーション交わしたこと無いなぁ…

 

 

「えっと…あっ、そうだ!皆んな、尻取りする?!」

 

 

飛鳥がピンと人差し指を立てるが、誰も反応しない。

大道寺は無言のまま此方に振り向かないし、柳生は寝てるし雲雀は冷や汗たらしてるし…あっ、これ大失敗?普通気不味くなったら尻取りしようよーって幼稚園の頃から小学校の時まで使ってたんだけど…

と言うより、雲雀さえ食いつかないことに驚いた。

 

「ねぇ、飛鳥ちゃん……それは流石に子どもっぽいよ……」

 

「体育祭のことを運動会って言ってた雲雀ちゃんに言われるのはちょっと…」

 

「……龍が如く」

 

「え?」

 

前から大道寺先輩の声が聞こえたような…気のせいかな?

 

「次、『く』だ…次は誰だ?」

 

結局、大道寺先輩尻取りやるの?というか、龍が如くって知ってるの?ゲームやってたの?

なんて浮かび上がる疑問は置いといて…車内で尻取りをしてたとさ…

 

 

 

 

10分が経過してやっとステージに到着。

長かったようで短かったような…柳生は寝てたので尻取りに参加しなかったが、とても長い感じがしてならなかった…

因みに大道寺先輩、尻取りメッチャ弱かった…「ん」がついて負けたの5回だもん…もしかして、尻取りやったことが無いのかな?

しかし、そんな事は口が裂けても言えなかった。

雲雀ちゃんも流石にこの空気では言えないらしく、珍しく空気を読んだ。

 

「では、これにより試験のルールを説明する…!」

 

大道寺先輩はさっきの空気から一転し、覇気のある声を張る。

まるで何事もなかったかのようなその風格は、ある意味尊敬に値する。

 

「制限時間は30分、このハンドカフスを我に掛けるか、どちらか一人がステージから脱出することだ」

 

「えっ!?に、逃げても良いって事ですか?」

 

「うむ、また勝てるという自信があるのであれば、我と戦うことも有りだ」

 

 

選択は二択。

戦うか逃げるか――

 

先ず、試験官を敵だと仮想する。自分たちが敵と会敵したとして、そこからどう対処するのかがポイントとなる。

勝てる自信があれば、それで良し…しかし、実力差が大きすぎる場合、逃げて応援を呼んだ方が賢明である。

 

特に飛鳥達ならよく分かってることだ、ステイン戦の時、もし自分しかあの場にいなかったら、確実に飯田くんやヒーローが殺されてた可能性は高いと断言して良い、そんな危機的な最悪な状況にならない為にも、逃げて応援を呼んだ方が良い。

実際USJの戦いで、飯田がいなければ教師達が来ることも間に合わず、飛鳥も緑谷も、死柄木に殺されてたかもしれない…

それらに関しての経験は何度か経験してるので、飛鳥はいち早く理解出来た。

何しろ戦闘訓練とは格が違う…一つ一つの動作や行動が如何にどう重要なのか、どう繋がるのか…そこを評価される。

評価される…と言うことは、点数的な感じなのだろう……

筆記試験なんかよりも、演習試験の方が何倍も難しい気が…

 

 

この試験は自分たちの判断力が試される訳なのだ。

 

 

当然、先生達や大道寺はそこらのプロを凌ぐ実力を兼ね備えてる。

オールマイトに当たった人間なんか「絶対に逃げの一択」と思う人が多いだろう…

 

そこで、オールマイトが月閃女学館で言ってた、サポート科に頼んだ作品『超圧縮おもり』が出番となる。

 

 

超圧縮おもりとは発目がデザインでコンペして採用されたもの。

体重の約半分の重量を装着する、いわばハンデのアイテムだ、古典だが動き辛いし体力は削られるので、此方側としては有難いことだ。

しかし、裏を返せばこんな事も言える…

 

 

全然本気じゃない相手と戦うことになる。

 

 

不本意だが、ハンデとあらばチャンスは逃れない。

 

 

 

ペアは中央ステージからスタートとなり、クリアする為には逃走用ゲートを通らなければならない。

クリアさせない為にも、きっとゲート付近に待ち受けてる可能性は極めて高い。

相手は大道寺先輩…あの人の性格や体型から考えて、先ず小細工を仕掛けて来る人じゃない…

となると、真正面から攻めて来る危険性がある。

ステージはゴツゴツとした殺風景な石切場で、視界はほぼ岩で覆われゲートが見えない。

それぞれルートが分かれており、迷路に似たステージだと考えて良い。

このステージだとうってつけだゲートで待ち伏せしてるか、真っ直ぐ追って来るか…

 

この選択肢から考えると、待ち伏せの可能性がある。

こう言った攻略が難解なステージは、無闇に探し回るのではなく、目標の場にいるのが大切だ。

 

なら作戦はこうだ――

それぞれ三人ともバラバラに分かれ、どちらが先にゲート付近に近づくか…

大道寺と会敵したとしよう、先ず一人が囮となり少しでも多く時間を稼ぐ。

そして意識させないよう、無意識に引き付ける。

引き付けておけば、大道寺がゲートから離れることにより通過することが出来る。

ほんの少しの隙さえ狙えば問題はない、しかも相手が超圧縮おもりを付けてるのであれば、隙は必ず生じる。

 

次に追って来ると考える。

視界が悪い上に攻略は難問だと言うのに、大道寺が攻めに来れば間違いなく全滅する危険性がある。

相手は一人、こっちは三人…これでも戦力の差は埋めれないが、バラバラに行ったとした場合、一人ずつやられるパターンが大きい。

しかし、その問題は消滅することになる。

何故なら、ルートの攻略には大道寺も手間が掛かるからだ。

幾ら気配が読めるとしても、大先輩だとしても、どちらから先に片付ければ良いのか…必ず躊躇を生むはず…それに一人を潰したとしても残りの二人はゲートに向かっている訳であり、運が善ければ二人のいずれかがゴールする事だって出来る。

逃げることが全て…ではないが、任務としてなら時に逃げることも大切だ。

 

 

「となると…俺たちも攻略が難しいが…大丈夫なのかその作戦で…」

 

「うん…大道寺先輩とまともに戦りあっても、勝機が薄い…だから、合格するには突っ走ること!」

 

誰もが勘がそうで至ってシンプルな意見だが、悪くはないと思う。

伝説の先輩相手に小細工は通じない…自分より上級生の相手には簡単に見破られることが常識だ。

 

向こうもそれを分かってると思う…だが、想いの力ならこっちだって負けない。

 

「それに、戦闘中に作戦を立て直すことも出来ないからね…」

 

普通なら工夫して作戦は立てれるのだが、相手が相手だ、無理がある。

一瞬たりとも油断すれば即やられてしまう。

何よりも、開始まであと僅か…時間がない。

 

 

『皆んな位置についたね、それじゃあ今から期末テストを始めるよ!』

 

アナウンスが放送される。

声の主はリカバリーガール、あらゆる角度や位置から、監視カメラのモニターで見張っている。

何処にカメラが設置されてるのかは置いといて…

 

 

『レディ…ゴォ!!!』

 

 

演習試験開始の音が鳴る。

試験官も生徒たちも呼応するかのように動き出す。

 

「じゃ!作戦通りに!」

 

飛鳥の指示に二人も頷く。

柳生は冷静な部分がある為、視野が広く隠密行動で極力相手に気付かれないよう行動するだろう。

雲雀はドジを起こしたりおっちょこちょいな一面があるが、ああ見えても諜報活動は半蔵の中でも一番に優れてる。

やる時はやる女だ、雲雀は柳生とは正反対なルートに動き出す。

 

飛鳥は真正面から堂々と突き進む。

彼女の目はいつになく気合が入っており、やる気が満ち溢れている。

きっと飛鳥は、やる気なのだろう…大道寺と…

 

あれだけ戦闘を嫌がってた彼女だが、作戦と仲間の協力があれば…

 

 

 

 

――ズドオオォォォォォオォォォン!!!

 

 

 

「「「!?!」」」

 

突如遅いかかる、虎のオーラを放った衝撃波が、辺り一面を消し飛び、岩は跡形もなく崩れて行き、広大な平地が眼に映る。

幸い、衝撃を食らわなかった彼女たちは無傷であるが、突然起きた出来事に、驚きを隠せない。

いや違う…そもそも状況が把握できていない。

 

なんだ?何が起きた――?

 

開始して数秒も経つことなく、景色が変わった。

巨大な衝撃波が襲いかかり、迷宮と思わせる石切場は今じゃ広大な平地だ。

土煙が巻き起こるだけで、物影すら見えない始末、本当に何があったんだ?

 

「これは……」

 

「柳生ちゃん!飛鳥ちゃん!大丈夫!?」

 

「うん、私は問題…ないよ……

で、でも…何が…起きたの?…これって、まさか……」

 

考えたくない…自分たちの考えが浅はかだったのか?

こうなる事など、一切予測しなかった…

だって、こんな事が起きるなんて誰が思う?考えたくはないが…これは…まさか――

 

 

 

 

「我のことを敵と思え――

 

躊躇は無用、情けも無用だ、我が名は大道寺…!その胸に名を刻め!!

さぁ、行くぞ!熱き血が滾る…血祭りの始まりだァ!!」

 

 

小細工は通じない、それだけじゃない…作戦すら通じない後始末。

敵に常識など通じるはずが無く、大道寺は辺り一面の障害物を全て破壊し、土煙が晴れると、そこには大道寺が不敵な笑みを浮かべながら、仁王立ちで拳を突きつけてる姿が眼に映った。

 




この喋り方であってるんですかね…正直不安で仕方ないです。
大道寺特殊過ぎですから、喋り方が少し変でも責めないでね?それはそうと、次…どうしよう…(不安

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