「それじゃあ皆んなさようなら〜!」
「じゃーね!飛鳥ちゃん、雲雀ちゃん、柳生ちゃーん!」
「また明日ね」
飛鳥はクラスの皆んなに言うと、芦戸と蛙吹は手を振った。
「それにしても、普通の学校ってこんな感じなのかな〜…?楽しいね!」
「飛鳥、忘れるな…オレたちは忍びだ……」
「でも柳生ちゃんも楽しいでしょ?」
「うっ…雲雀にそう言われると…否定できない……」
飛鳥たち三人は、話しながら長い道のりを歩いている。
「そうだ!久しぶりに半蔵学院に戻ろうよ!!」
「といっても、すぐに戻れるわけだし…それにオレたちが戻ったら他の連中にバレる可能性があるだろ?」
「気を隠せば大丈夫だよ」
飛鳥たちはそんな話のやり取りをしていると…
「ん?…ねえ、アレって緑谷くんじゃない?」
「本当だな…何やら少し落ち込んでたように見えるが…」
「お〜い!緑谷くん〜!!」
雲雀が大声で叫ぶと、「わっ!?」と声をあげ反応した緑谷は振り返ると、三人が駆けつけてきてくれた。
「ど、どどどどしたの!?///」
(やべぇ…可愛い…!!)
緑谷は照れながら内心可愛いと思っていると、柳生が質問する。
「それで、爆豪はどうだったんだ?」
「あっ、いやぁ…それが相変わらずで……ははは…」
「そうか」
「…ん?」
緑谷が苦笑いをしていると、雲雀は半蔵学院の方角に目をやる。
「あれ…気が強いのが感じる…」
「え?」
「そこって、確か半蔵の…!」
「は、半蔵…?」
緑谷は三人の顔が険しくなっている理由が分からなかったが、それでも何やらただ事ではないような雰囲気を出している。
「私たちも行こう!」
「えぇっ!?あっ、ちょっと…」
飛鳥たちは素早く半蔵学院にへと向かう。緑谷も渋々とついていくことにする。
「……」
そして、その物影で見ている、轟もまた………
「はぁ…はぁ…着いた!」
飛鳥は息切れをしながらも、他の二人もその場に着いた。
「確かに…強い気だな…」
「これ、霧夜先生や葛姉に斑鳩さんとは…違うよね?」
柳生と雲雀もそれを前に冷や汗を流している。
「も、もしかして…悪忍…!?」
飛鳥がそう叫ぶと、急ぐかのように学校に駆けつける。
本来飛鳥たちが居るのは、本学校とは違う、使い古びた旧校舎を使っている。『関係者以外の立ち入りを禁ず』という立て札がある。そここそが、本来飛鳥たち忍びがいる場所だ。
「葛姉に、斑鳩さんは!?」
「分からない…今のところ見かけてはないが……いるはずだ…」
「ふええぇ〜…雲雀、怖いよ柳生ちゃん!!」
「雲雀、オレの後ろに隠れてろ!」
柳生は番傘を開き、周囲を見渡す。すると…
「飛鳥さん!柳生さんに雲雀さん!!」
飛鳥たちの名前を叫んだのは、斑鳩であった。
「斑鳩さん!それに葛姉!!」
「お前らも無事だったか!」
葛姉たること、葛城が斑鳩と同じ、心配そうに駆けつけると飛鳥たちはホッとした。
「よかった〜…アレ?霧夜先生は?」
「霧夜先生を見なかったのですか!?」
「えぇ!!見なかったよ!?」
斑鳩の問いかけに、飛鳥たちは驚く。
「となると…何処に……」
「ね、ねえ…コレッて……何があったの…?」
「それは…つい先ほど……」
飛鳥が不思議そうに問いかけると、斑鳩は先ほどあった出来事を話し出す。
二人が修行を終えて、時間が経った時、警報が鳴った。
「なっ!?んだこりゃ!」
「これは…侵入者の…!」
葛城と斑鳩は直ぐに警戒態勢に入る。霧夜はレーダーみたいなもので、様子を見ると…
「ふむ…ただの普通科の学生のようだな……俺が行ってくる」
そう言うと、直ぐに向かうのであった。
「ちぇっ、んだよ…ただの普通科の学生か……」
葛城がつまんなさそうに呟くと、少し時間が経った時…奇妙な気が教室を包んだ。
「なっ!?これは…!!」
「なんだこれ…忍結界!?」
二人は周囲を見渡し警戒した。
「そうだ…霧夜先生は!?」
「霧夜先生は何を…!?」
一方に帰ってこない霧夜に、斑鳩と葛城も動揺を隠せない…教室から出て、辺り一面探してみるものの、霧夜の姿は見えなかった。その時、物影が出てきて、その正体が飛鳥たちだったのだ。
「そ、そんなことが…」
「恐らく霧夜先生もまた…忍結界に?」
確かに考えられる。外にいた飛鳥たちは見なかったのだ…それに斑鳩たちも中を探してもいない…となると、間違いなく忍結界に入れられたと考えられる。
「とりあえず…皆様気をつけて下さい……これは間違いなく、悪忍の仕業です!!」
斑鳩がそう叫ぶと、五人は警戒態勢に入る。が、次の瞬間…
「う、うわっ!?」
「皆さん!?」
「くっ!んのやろぉ!!」
「雲雀!!」
「柳生ちゃん!」
飛鳥、斑鳩、葛城、雲雀、柳生の順に突如、光が包まれ違うそれぞれの忍結界に吸いこまれた…
「いたたた…ここ何処?柳生ちゃんは…?」
雲雀が周囲を見渡すと、その忍結界の中には、ケーキやお菓子、リボンなどといったものがある忍結界。そこには…
「ふふふ…可愛い子兎ちゃんね…」
ピンクのリボンを髪に結んだ女性、春花が雲雀を見つめて呟く。
「あ、貴方は…!?」
「私は秘立蛇女子学園の、春花よ」
「へ、蛇女って…あの悪忍の…!?」
「雲雀!何処だ!!雲雀!!」
雲雀の名前を必死に叫ぶ柳生、柳生の周囲は戦場…戦争の兵器がいっぱいある忍結界。そこには…
「アンタが私の相手って訳ね…いいわ、悪忍の力、思い知らせてやるから!私は秘立蛇女子学園、未来よ!」
眼帯をつけ、ゴスロリ衣装を見に包んだ悪忍の未来だ。
「雲雀ー!何処だ、居たら返事をしてくれ!!」
「私を無視するなあぁーーー!!!」
「クソッ!なんだここ…!」
葛城の周囲は鬼の面や土偶、龍の顔など様々なものがいっぱいある忍結界。そこには…
「アンタが相手か…」
「誰だ!?」
「わしは秘立蛇女子学園…日影や、命令やから相手したるわ」
緑色の短髪の女性、悪忍の日影。葛城は日影をみると、ニッと、不敵な笑みを浮かべる。
「へっ、丁度良いね…アンタみたいな強いヤツとは一戦交わりたかったんでね!」
「ほう?」
「完全にハメられましたね…」
斑鳩の周囲には、緑色の空間にもやし?が沢山ある忍結界。そこには…
「あら、流石はお嬢様ですわね…」
「誰です!?」
声がする方に振り返ると、そこには長い金髪の女性は笑みを浮かべている。
「お金持ちは裕福で良いですわね…そう甘やかされて育ってきたのですね。鳳凰財閥のお嬢様…」
「な、何故それを…?」
斑鳩は、忍びでもあり鳳凰財閥のご令嬢でもあるのだ。しかしその女性に驚いてるのは、何より何故そのことを知ってるのか…だ。
「貴方のことは既に分かっていますわ、この薄汚れた善忍…!」
「質問に答えなさい!!」
その女性は敵意と殺意、なにより憎悪を宿した目で斑鳩を睨む。
「その上からの物言い…ますます気に入りませんわね…まあ良いですわ、私は秘立蛇女子学園の詠ですわ!!」
「やはり、悪忍がここに…」
「さあ、お覚悟!!」
そして…飛鳥は。
「み、皆んなは…それより此処って……」
飛鳥の周囲は、まるで戦国にでも居るかのような場所の忍結界。そして…そこには。
「やあ、随分と元気そうじゃないか」
「え…?貴方は…水上バスにいた……」
声がする方に振り返ると、そこには、水上バスで知り合いになった…焔だった。それがまさか、こんな形で再開するとは思わなかったのだ…
「ああ、何を今更驚いている?お前だって忍びだろ、なあ?伝説の忍びの、半蔵の孫よ…」
すると焔は笑みを浮かべながら睨みつけている。
「そんな…貴方が悪忍だったなんて……」
飛鳥は未だに信じられない表情でワナワナと震えている。
「あの時は邪魔が入ったしな…それに刀を抜く価値すら無かったが、今回は仕事なんでね」
あの時、それは前に街中で敵(ヴィラン)が暴れていた時だ。焔はそう言うと、一本の刀を抜く。その刀は、炎を纏わせて……
「なっ……」
(す、凄い殺気…!)
飛鳥がそう思った瞬間、
シャッ…!
「え?」
目の前には焔の刀が…飛鳥に襲い掛かる。
「っ!!」
飛鳥は間一髪避けた…が、
「怖いのか…?」
焔は飛鳥の耳元でそう囁くと…
ザシュ!!
「きゃあっ!!」
飛鳥は背中を斬られ、忍装束が破れる。そんな飛鳥をみて、焔は「ハッ」と小馬鹿にするように笑う。
「情けないな!!お前、伝説の忍びの孫なんだろ?だったらその価値の片鱗くらいは見せてもらわないとな!!」
再び追撃をする。
「そうだ…私は……!」
飛鳥は刀を抜き、焔の攻撃を防ぐ。
「じっちゃんの孫なんだ!!」
すると忍装束が一気に敗れ、弾け飛ぶ。
「ほう…いきなり命懸けで来るか…その意気は認めてやろう…」
命懸け。それは忍装束をなくし、防御が落ちる代わりに、一気に攻撃力を高めるもの。此処ぞという時に使うものだ。
「たああぁーー!!!」
ガキィン!!
焔は刀で飛鳥の二刀の攻撃をたやすく防ぐ。
「焔ちゃん…私、わたしはもしかしたら、友達になれるかもって、良い人だって思ったのに…なのに、なのに…焔ちゃん!!!!」
「お前…何処まで甘いんだよ!!!!」
飛鳥の言葉を聞いた焔は大きく怒り、上昇すると、飛鳥を払いのける。
「忍びの定めは死の定めだ…忍務が下れば、例え相手が親だろうと子供だろうと切り捨てる…それが、忍びだああァァァァーーーーー!!!!」
「そんなことない!!!」
お互いの刀が交差する。焔は飛鳥の背中を斬ろうとすると…
「タァッ!」
飛鳥はしゃがみ、蹴りで焔の持ってる刀を弾け飛ばした。その刀は宙に舞い、少し離れたところで地面に刺さる。
「や、ヤッタァ!」
飛鳥がやったという歓喜な顔を浮かべると…
「ふ、ふふふ…はははは!」
焔は不意に笑い出した。そしてニカッと飛鳥に笑みを浮かべると、突如背中に五本の刀が現れては抜き取る。
「やっと、本気を出せるな…」
「えっ…」
飛鳥は驚愕な表情で、焔を見つめる。刀一本がやっとだと言うのに、それが残り五本…その事実に飛鳥は戦慄した。
「クソっ…斑鳩に葛城は無事か?」
忍結界にハメられた霧夜は周りを見渡す。その忍結界とは…
「それにこの忍結界…前にも……何処かで」
その忍結界は、鈴がいっぱいある空間だ。
「たしか…前に、『凛』に忍結界を教えた時に似てるな…」
凛とは、前に霧夜が育てた忍び生徒だ。だが、ある忍務の失敗の際に、死んでしまったのだ。霧夜はその事実がどれだけ苦しんだか…そんな時に、女性の声が聞こえた。
「その通りよ」
「誰だ!?」
霧夜が振り返ると、そこには…紫色の髪に、メガネをかけた女性。秘立蛇女子学園の先生、鈴音だった。だが、霧夜はこう言った。
「お前は…バカな……『凛』!?」
その女性は霧夜が育てた忍び生徒であり、そして忍務に失敗し死んでしまったと思われてた凛であった。そう、鈴音ではなく、凛。それが彼女だ。
「お久しぶりね、霧夜先生」
はい、ここで霧夜と凛の再会ですw