光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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ヤバイ、今回なんか長くなったww朝から執筆してて、夕方になりました…
それはそうとアニメのヒロアカ、次は轟オリジンですね。次回予告だけで燃えました。来週が楽しみで仕方ありません。


6月1日、少し編集しました。


70話「仲間」

「クソ!アイツら絶対に許せねぇ…ゲホッ!ゲホッ!!」

 

夕焼け色に染まった空の下、とある街を歩く不良らしき三人の男たちは、何故か傷つき、ボロボロになっておりながらも、苛立ち声を荒げていた。

 

「クソ!あのゴキブリ野郎に…クソジジィが……ゲホゲホ!……はぁ…クソ!」

 

「おいおい落ち着けってば……アイツらもうヤベェよ…あのおっさんにしちゃあ不審者じゃねえか?」

 

荒立つ声をあげてる男は、髪がギザギザになっており、見るからに不良という印象がしっかりと伝わってくる。

一方、荒げる声を出す男の腕を、肩で背負い、嗜める帽子を被ったトカゲの男…

 

「いや、そもそも関わっちゃいけねえ奴らだったりして…」

 

図体が一通りデカく、体は赤色に染まり頭には火が灯っている大男は、見た目に反して内心はオドオドとしている。

 

 

この三人はある街中でうろつき、とある女性に絡んで色々と悪事を働こうとしたことから、今割と有名になってる親切マンと呼ばれてる男と、正体不明、顔は黒いバンダナやらマスクやらで素顔を隠してる、バットマンみたいな男に殴られ、酷い仕打ちを受けたのである。

彼らはそのせいか暫く気絶しており、気が付いたらもう既にいなかったという。

幸い路地裏のゴミ溜まりの場所だったため人目つかなかったものの、もし公道の場で喧嘩やら争いだのしていたら確実に警察に事情調査されるだろう…

不良である彼ら三人にとって警察やらヒーローの関係やらに関わるのは一生ごめんだ。

 

「おやおや、これはこれはお客様…大変なことで…」

 

「アァ?」

 

不意に死角から声をかけられ、声の主へと振り向くと、そこには黒ずくめの、社会人のサラリーマンのような男が立っていた。

 

それも不気味な仮面を被っていて──

 

 

「もし宜しければ、此方の『トリガー』と呼ばれる品物を使っては如何でしょうか?」

 

流通していく、闇のアイテムは、影に潜む悪意から少しずつ……少しずつ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は…人間だ!!」

 

ズズンと、鈍い音が鳴り響き、ゆっくりと頭を上げていくキュレーター。

その姿は正しく悪の支配者と呼ぶに相応しい称号を持つ、凶悪な鯨。

まるで冥海の底から現れたような…そんな風格を持つ彼は、先ほどの人間の姿をしていた伊佐奈とは、見間違えるほど悍ましいものである。

 

「焔さん!!」

 

詠は鯨と化した伊佐奈、キュレーターに目をくれず、先ほど詠を庇ってキュレーターの頭に押し潰された焔の元へと駆けつける。

先ほどの攻撃を、防ぐことなく食らったのだ。無事で済むはずがないし、何より反応がない。

 

呼吸はあるものの、それでもあの鯨撃を一撃食らっただけで、この威力。

伊佐奈がキュレーターと化し、力を解放、個性を発現、その上でトリガーと呼ばれる個性の活性化。

 

それらを合わせ兼ねての一撃、それなら納得がいくし、この高威力も筋が合う。

 

「個性と忍術…お前らが忍じゃなけりゃあ、忍の道に進まなけりゃあテメェらの特殊能力は個性として扱われてたそうだ。

また忍の家系じゃない人間、忍になる前の人間は個性として扱われていた……

 

俺はこの鯨の姿を隠し、個性による特殊能力を忍術として隠し通してきた。

 

お前らのような悪忍が俺を詮索しなかったお陰で、俺は個性を隠す努力をせずに済み、有意義に計画を進めることができた。

 

何が言いてえかって?今こういう状況になったのも、テメェらが苦しんでるのも、ぜんぶ全部蛇女の、悪忍の、甘さが招いたのさ…」

 

悪は善よりも寛容だ。

その蛇女の価値観が、言葉が、悪を許そうとする志が、逆手にとった。

キュレーターはそう言ってるのだろう、焔たちを虫けらのように見下ろす。

 

「この姿を見て、生きて帰れると思うなよ?小娘共が……貴様らに、弱肉強食という残酷な世界を見せてやろう」

 

フシュゥ〜…と、鼻息を荒くし、強い憎しみを込めた鋭い眼光を放つ。

春花は手早く倒れてる焔に駆け寄り、脈を確認し、無事であることが確認できれば直ぐに応急処置に取り掛かる。

詠はキュレーターを激しい怒りを震わせ、睨みつける。

 

「全て貴様らが悪いんだよ…このガキ、俺に刃向かいやがって…

 

こんな厄介な日はそうそう無い…仲間に入れてやろうと思ってたんだがなぁ…

 

俺が直々に始末してやる。此処がテメェらの墓場だ、そうと決まれば貴様ら全員大人しく、黙ってくたば──」

 

キュレーターが何かを言いかけたその途端。

 

「おい──」

 

 

ドスの利いた声がまたしても皆の耳に届く。キュレーターもその声の主に思わず喋る口を閉じ、視線を向ける。

キュレーターだけでなく、春花や詠、雅緋も…その人物はなんと──

 

──立っていた。

 

春花と詠は、近くにいたにも関わらず、焔が立ったことに、いや違う。

その前にいつの間にか立っていたのだ。別の意味で、二人は驚かされた。

 

紅蓮の炎はまだ燃え尽きてはいないのか、益々と燃え上がり、より紅いオーラが燃え上がるように激しく揺らめく。

 

(何…!?)

 

キュレーターから感じるは焔のより急激なるパワー、真紅に染まるオーラ、紅蓮の如く熱き魂の震え…

全てをその肌身で感じたキュレーターは、我に帰ると、いつの間にか身体が小刻みするかのように震えていた。

 

 

この俺が震えてる──?

 

 

信じがたいことに、焔はあの一撃をもろに食らっても、まだ死んでいない。

焔は先ほどまで、かなりダメージを負っていたにも関わらず、それでも焔はなお、立ち上がっていた。

 

「お前…詠に…仲間に手を出そうとしたな?」

 

「……何なんだ…?」

 

「別に戦いの場で誰かと戦うのも、誰かに手を出すのも戦場では自由だ…

 

だがな、お前だけは許さん……」

 

「テメェは一体何なんだ…?」

 

「お前だけは、忍には指一本触れさせない……例えそれが誰であろうともな…」

 

「テメェは一体……!!」

 

焔の発する言葉を聞く度に、キュレーターの怒りは高まり、頭に血管がこめかみに浮かび上がる。

 

 

「何なんだ!!!」

 

「はああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

二人の真に迫る雄叫び、瞳を震わせ、お互い負けないと言わんばかりか、二人は同時に攻撃を仕掛ける。

そして焔の炎月花とキュレーターの隕石のような鯨撃が、激しい鍔迫り合いをする。

 

キュレーターの頭は本当に隕石そのもののような硬度を誇り、あの炎月花が…代々伝わる家宝の、紅蓮の刀が、僅かながらに悲鳴をあげる。

 

(コイツ…!!やはり先ほどよりも全然チガ──)

 

ドオオオォォォォォン!!!

 

「「「!?!」」」

 

そして焔がここで初めて、鍔迫り合いに負け、キュレーターの隕石頭突き、鯨撃を食らうハメになった。

 

「何でなんだよ!!なんで!!」

 

それでもキュレーターは怒り昂ぶる感情のあまり、落ち着きや理性も殆ど無い、攻撃を何度も何度も、執念深く頭突きを繰り返す。

 

「何で倒れねえんだ!!俺の前で!倒れねえ!お前は道具!俺は人間様だ!

 

お前が俺に逆らうな!見下すな!俺が上だ!!」

 

頭突きを繰り返す度に、天守閣は地震が起きてるかのように激しく揺れ、どんどん地面は凹んで行く。

 

「お前に何度も攻撃しても!倒れねえ!ふざけんじゃねぇぞクソが!!

俺の過去も!苦しみも!何も知らねえくせに!粋がってんじゃねぇぞ!!

 

クソガキがあああぁぁぁぁ!!!」

 

「もうやめて下さい!!」

 

詠は叫ぶ。涙目になりながら、全力で。

目の前の悲惨な光景…キュレーターの激しい暴走…

トリガーの使用に理性が弱まったせいでもあるのか、焔の存在そのものが、彼に大きく刺激したのか、何にせよ、今のキュレーターは言葉は通用しない。

 

「ねえ!さっきから何の音よこれ!」

 

「え?」

 

幼いような声が後ろから聞こえ、振り向くと、そこには猫耳にゴスロリ衣装に身を包んだ未来と、蛇の紋が入った殺伐とした服を着こなしてる、日影。

二人は止まない地震の音に直ぐに駆けつけ、ここにやってきたのだ。

 

「未来さんに、日影さん!」

 

「詠さん、これ今どう言う状況や…?」

 

「え、えっと…」

 

突然やって来た日影や未来からすれば今のこの光景は、理解することができなかった。

武器を手に持つ詠と春花、何故か雅緋は虫の息、壁にもたれかかり、息を切らし、そして此処にいるは伊佐奈ではなく、巨大な鯨の化け物…

 

当然何も知らない彼女たち二人は、あの鯨が伊佐奈だということは知るわけがない。

 

「じ、実は伊佐奈が…」

 

「伊佐奈?あの鯨がかいな?」

 

「えっ、ちょっと待って…何よあれ……」

 

日影はあの鯨が伊佐奈だということを知り、驚きの声を浴びせるものの、未来はそれよりも、伊佐奈が…キュレーターがゆっくりと頭を上げ攻撃をやめたと同時に、血まみれになって、立ち上がることすらままならない…悲惨で痛々しい焔の姿に息を呑んだ。

 

「ああ?雑魚どもがさっきからゾロゾロと…」

 

「焔!!!」

 

ようやく二人の存在に気づいたキュレーターは、忌々しく二人を睨みつける。

二人は焔の名前を叫ぶ。

 

「ちょっ…待ってよコレ………焔に……何をしたのよ……?ねえ、何してんのよ…?」

 

「はぁ?

 

……あー、これか…やっとくたばったか屑が。お前らも確か紅蓮隊の……ああそっか、もうお前らのボスは…

 

使えねえな。ダメだなこりゃあ」

 

「何してんのよ!!!」

 

大切な存在を、仲間を、リーダーを、皆んなが大好きな焔を、キュレーターは屑呼ばわりし、見下し、嘲り笑う彼に、未来は激怒する。

しかしそれは当然、他の三人もまた同じ。

 

「秘伝忍法!【ヴォルフスシャンツェ】!!」

 

「行くで!秘伝忍法!【ぶっ刺し!】

 

未来はスカートの下から無数の凶器、数々の銃の武器を所持し、禍々しく妖しい色をした光の銃弾をブチかましながら超突猛進し、日影は自慢のナイフをひと舐めし、毒々しい色をしたオーラを解き放ち、ナイフの一撃の強さをより強く高める。

 

二人は同時にキュレーターの右腕に集中攻撃する。

 

「お前ら何様だ」

 

だがそれを、腕を振るっただけで難なく二人の攻撃を相殺し、二人まとめて吹き飛ばす。軽々しく吹き飛ばすその腕力、流石は海の支配者と名乗るに相応しい実力だ。

彼が蛇女を支配しようとするだけのことはある。

 

「私たちも黙って見ておられませんわ!秘伝忍法!【ジグムンド】!!」

 

「度が過ぎるわ貴方…!秘伝忍法!【Heart Vibration】!!」

 

焔がやられ、二人が吹き飛ばされたことに、詠や春花も黙っておられず、先ほどの日影や未来と同じように、一斉に秘伝忍法を繰り出す。

詠は重々しい剛剣に気合いと激しい怒りを込めて振り下ろし、キュレーターの左腕に斬撃を食らわせ、鋭い刃物が腕にめり込む。

春花は傀儡を操作し、金斗雲のように乗り、未来と同じく超突猛進する。

二人の重い攻撃が炸裂し、さしものキュレーターも思わず「うっ…!」と微かながらに痛々しい悲鳴の声を上げる。

 

「しつこいな!」

 

だがキュレーターは先ほどと同じように、小蝿を振り払うかのように彼女たちを軽々しく吹き飛ばす。

腕は多少傷を負い、血が流れ出る。キュレーターは彼女たちを睨みつけ、舌打ちする。

 

「よし、そこまでして死にたいのなら、お望み通り全員まとめて死なせてやるよ…お前らのリーダーと同じ場所…地獄へな」

 

キュレーターはズシン…と鈍く重い音を立てながら、彼女たち四人に近づく。四人は立ち上がるものの、それでもキュレーターに攻撃が通用しないのは微かに心を痛めた。

 

「そうだ、まずは金髪…テメェからだ」

 

「!」

 

突然自分が当てられたことに、詠は目を見開く。

 

「お前は俺の存在を否定した…人間じゃないと言ったな?この姿を見られ、俺の存在を否定し、何にも知らねえくせに一丁前に説教なんざしやがって、気に入らねえ…

 

だから、殺す」

 

怒りで頭に血がのぼるあまり、目が充血し、又も頭に力を入れ硬くする。メキメキとした音が嫌に聞こえる。

 

「……そんなに私が気に入りませんか?」

 

「ッ!なに…?」

 

突然口を開いた詠に、キュレーターは動きを止める。彼女の言葉に彼は逆に少し驚いたような表情を浮かべた。

 

「私のことが気に入らないのなら…それで構いませんわ……

貧民街で育ち、両親も亡くなり、貴方と同じように辛い思いを背負い、生きてきた。

貴方のやったことは許されないとはいえ、その気持ちは分かります…

 

悪は色々な形があり、貴方を見下してきた人間に復讐するというのも、止めはいたしません…

 

しかし、だからと言って忍を…関係のない人間を巻き込むことは別です!!それは理由に当てはまりませんわ!だから私だけでなく、私たちも言うんです!

 

貴方は人間じゃないって!!」

 

「ッ!!!クソガキがあああぁぁああ!!」

 

二度、人間ではないと断言した詠に、キュレーターは激怒する。

 

またしても…又しても──

 

「二度も同じことを言うか!クソガキいィィ!!!」

 

自分の全てを又も傷つけられ、否定され、滅茶苦茶にされたような痛みを感じるこの感覚に、キュレーターは頭突きをぶちかまそうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「秘伝忍法!【リコチェットプレリュード!】」

 

 

 

「ああ…?」

 

 

何処からか、聞き慣れた声が聞こえキュレーターは動きを止めた。

そして次の瞬間、詠の目の前に降り立つ少女が一人、見覚えのあるスナイパーライフルを手に持ち、標的を狙って機雷を放っては、狙い撃ち…

 

爆破した。

 

 

ボオオオォォォォン!!

 

 

「ッッッ!?」

 

機雷による衝撃的な大爆発が、キュレーターを飲み込み、爆炎が、爆風が襲いかかり、黒煙が巻き起こる。

幾ら素早くても、図体デカイ彼は、不意打ちやこう言った突然な反応には対処しきれないのであった。

 

「全く…私たちのことも忘れないでよね」

 

「両備さん!?」

 

目の前に立つのは、かつて…いや、先ほどまで姉の復讐に飲み込まれ、自分自身を苦しみ続けていた、姉妹の両備だった。

両備は後ろを振り向き、詠を見ると、優しく微笑んだ。

 

「これで、借りは一応…返したわよ?ほら、アタシ借りを作るのは性に合わないって言うか……」

 

「両備さん…」

 

両備は頬を赤らめ、恥じらいそっぽを向く。素直ではないが、彼女らしい可愛い反応に詠は思わず表情を綻びた。

しかし、どうしてここに?と一瞬疑問を思い浮かんだが、よくよく考えれば先ほどの地震が起きれば誰もが駆けつけるだろうと頭の中に浮かび上がり、疑問が消える。

 

「両備…お前…」

 

壁にもたれ、倒れていた雅緋は、両備が生きてたことに、こうして詠を助け出し、上層部…出資者に対し何の躊躇いもなく攻撃したことに、驚愕した。

両備は雅緋が此処にいることに気づいてないのか、振り向かず、ずっと詠を見つめていた。

 

 

「ブオオオォオオオォオーーーーー!!!」

 

 

そんな二人のほんわかとした空間を、海獣の雄叫びによって跡形もなく掻き消される。

激しい雄叫び、鼓膜が破けそうになる鯨の鳴き声、その場のみんなは思わず両手で耳を抑える。

 

「両備いいぃぃぃ!!貴様あぁ!!なんのつもりダァ!!」

 

これが両備による秘伝忍法だと分かったキュレーターは、怒りを孕ませた声で両備を見下ろし問う。

両備はようやく耳障りな雄叫びが止んだことで、抑えてた両手を離し、Sっ気に近い目でキュレーターを睨む。

 

「別に?私は私の好きなことをやっただけだけど?」

 

「おい待て、お前いつからそんな生意気な口を叩くようになった?あぁ?」

 

今まで選抜メンバーを道具として見てきたキュレーター(伊佐奈)は、両備の口答えに思わず眉間にシワを寄せる。

 

「それにどうせ怒るなら…私じゃなく他の人にも言いなさいよ?」

 

「他だ…と?」

 

キュレーターは両備の言ってることがイマイチ理解できず、疑問を抱くも、直ぐに知ることになる。

瞬く間もなく、三つの影が遮り、キュレーターは瞬時に理解した。

しかし気付くも遅し、その三つの影の正体が露わになる。

 

「両奈ちゃん行っちゃうよ〜〜!!」

 

「アチャぁーー!!」

 

「えいっ…!!」

 

二丁拳銃を軽々と使いこなし、氷の遁術に激しい銃弾の嵐、芸術と呼ぶに相応しいその光景は正しくバレリーナ。

美しさゆえに息を呑む人間も少なくはなかろう…両奈の攻撃。

 

電撃を纏わせた如意棒を長く伸ばし、素早い動きでキュレーターを翻弄し、息つく間もなく繰り出されるその攻勢は流石と呼べるもの、忌夢の攻撃。

 

紫色の禍々しい負のオーラを溢れ出し、大きな球体を作り出し、放出する。

強く念じた禍魂の力を難なく使いこなす、それは正しく、禍魂を持つ者代々伝わる継承者に相応しい才能を持つ紫の攻撃。

 

三つの攻撃が、キュレーターに襲いかかる。

 

「両奈ちゃんもいるよ〜♪」

 

両奈はべぇっと、小生意気に、可愛らしく舌を出す。

彼女もまた、両備と同じく此処へやってきた。

因みに他に食い止めてた蛇女の忍学生は何とかなったらしい…

 

「おい日影、こんな所でやられるなよ…お前はボクが倒すんだからな…!

だから、他の奴にやられるなんてこと、ボクが決して許さないぞ…!」

 

「忌夢さん…」

 

忌夢は日影に一切顔を向けることなく、振り向くことなく、背中を見せたまま、メガネをクイッと上げ、キュレーターを忌々しく睨みつける。

日影は「せやな…こんな所で負けられへんわ」と不敵な笑みを浮かべ、立ち上がる。

そんな日影に忌夢もつられて不敵な笑みを浮かべる。

 

好敵手と書いて友と読む。

 

 

 

「紫…」

 

「未来さん…」

 

紫は倒れてた未来に駆け寄り、手をさしのばす。

手を差し伸べてくれる友達に、未来もその差し伸べた手を掴む。

 

「ありがとう…助けてくれて…」

 

「い、いえ……そんなの、当たり前ですよ……。

だって、私たち、友達じゃないですか…それに、未来さんの、ネット小説の大ファンなんです……死なれたら、尚更……困りますし……」

 

オドオドとして気はハッキリしていないが、それでも未来のために想って言ってるのだろう、恥じらい頬を朱く染め、未来に笑顔を見せた。

そんな紫に、未来もつられて、嬉しくて、思わず笑みを零す。

 

 

「皆んな…どうして……」

 

雅緋は、駆けつけに来た皆んなに心の中でそう呟く。

自分もその気になればキュレーター(伊佐奈)斬ることだって容易い…

しかし、そうなってしまえば、上層部に、出資者に逆らえば、間違いなく問答無用に抜忍の身に堕ちてしまう。

しかし、他の四人は何の怯みも迷いもなく、躊躇なく彼に刃向かっている。

抜忍たちと共に戦っている。

 

──ああ、そっか。

 

ここで雅緋は、あることに気付く。

 

───目的は同じ…忍だから。

 

 

善も悪も関係ない。欲しいものがあるのなら、何かを成し遂げないのなら、命懸けで戦え、取りに行け。

鈴音先生から初めて教えてもらったことだ。

 

今、何かを成し遂げたいからこそ、目の前に戦うべき相手がいるからこそ、立場など、関係なく、お互い背中を合わせ、戦うことができる。

 

 

焔は、もしかしたら──

 

 

「雑魚共が調子になるなああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

空を、大地を、海を唸り轟かせる鯨の化け物じみた雄叫び。

超音波を周囲にぶつけたためか、周辺にいた周りの敵を吹き飛ばし一掃する。

紅蓮隊や蛇女も、跡形もなく吹き飛ばされる。

 

「テメェら道具共がああ!俺に逆らうな!何のためにこの俺様が態々と莫大な金を使ってここを作り直したと思ってるんだ!!

 

今こうして貴様らが蛇者を名乗れるのも!選抜メンバーになってんのも!全部俺様のお陰だろ!?

 

なのにその恩を仇で返しやがって…!貴様ら全員抜忍だ!!」

 

キュレーターは、自分に刃向かった選抜メンバー(道具たち)に憤慨し、荒々しい声で叫び続ける。

そしてキュレーターは壁にもたれ倒れてた雅緋へと視線を変える。

 

「おい、雅緋命令だ。コイツら全員を殺せ、始末しろ」

 

キュレーターは嫌味っぷりな笑顔を見せ、雅緋に又もや命令を下した。

雅緋に命令したことにより、雅緋がここに居たことに知らなかった他の皆んなは、目を丸くし驚く。

それは無理もない、ここにいるなんて思ってもなく、今まで雅緋がいたことに皆気付かなかったのだから。

 

「おい、どうした?早くしろよ。少しは俺の役に立ってみせろ」

 

雅緋は刀を杖代わりとして体を支え、立ち上がる。不屈な闘志を再び燃やし、戦うが為に刃を振るう彼女を見た紅蓮隊のメンバーは構え、蛇女選抜メンバーの四人は、雅緋に戸惑う。

 

私は────!!

 

散々苦しみ、悩みに悩んだ結果、雅緋は答えを出す。

自分が今この立場で、何をどうするべきなのか……

抜忍にならない為に、彼女らを斬るか、それとも…

 

 

無論。答えは決まってる──

 

 

「私は、秘立蛇女子学園の選抜メンバー筆頭、雅緋!!地に落ちた悪の誇りを、取り戻す!!」

 

 

そして刃を振るう。

 

 

ザグッ!!

 

 

「!?」

 

 

それも、キュレーター(伊佐奈)に──。

 

「なぁ!?」

 

黒刀はキュレーターの頭部を突き刺したことで、血が流れ滴り落ちる。

黒炎を纏わせた黒刀を、キュレーターに刺せば尚一層…

 

キュレーターは突然雅緋が攻撃してきたという予想外な出来事に、動きを止める。

 

「ぐうぅっ!?雅緋!!貴様までぇ…どういうつもりだ!!なんの真似だ!?ほだされたかあ!?寝返るとは…分かってんだろうなあぁ!?!」

 

今まで信頼してきた雅緋が、初めて自分に逆らったのだ。一番頼りになる道具として扱い、今までの任務も全て、彼女に押し付けていた。

最も、道具だと思っていた彼女が、いままで命令通りに生きてきた彼女が、初めて主に逆らったのだ。

その予想外な出来事への衝撃は重いし、何よりも雅緋の行動にキュレーターの誇りが、傷つけられたのだ。堪忍袋の緒どころか、袋ごと。

 

「私は…いままで伊佐奈の、貴様の為に戦ってきた…それは否定しないし、事実だ。

だが、貴様が妖魔を売るという悪事は、悪忍でも許されない…それでも、私は貴様に逆らうことが出来なかった…

 

抜忍になってしまえば、父親の立場も無くし、辛い思いをさせてしまうと…

それだけは避けたかった…自分が抜忍になっても、それだけは出来なかった…

 

だが、焔紅蓮隊を初め、私の()()()()()()()は命を懸け、貴様に立ち向かった。

 

尤も──旋風がそうだ。アイツは確かに褒められた成績もなければ、何処にでもいる一般的な下忍だ…

 

だが、そんな彼女が、命を懸けて貴様に立ち向かい、命を落とした。

 

 

旋風の方が…私よりも上だった……そんな彼女の死を目の前にして…私が貴様に立ち向かわないで…

 

 

 

 

 

何が悪の誇りだ!!!」

 

 

「ッ!?」

 

所有物だと思ってきた雅緋の、初めて見せる覇気に、キュレーターは後ずさりした。

雅緋は、旋風の死がキッカケで、考えさせられたのだ。

自分の力量の差を見て、勝てないことなど目に見えているにも関わらず、彼女は弱さを恥じらうことなく、己がやるべきことを、成し遂げようと命を懸けて刃を振るったのだ。

 

彼女は、悪の誇りを取り戻そうと、伊佐奈に立ち向かったのだ。

 

それなのに、自分は何もしなかった。何もやらなかった、何も出来なかった。

 

 

後輩が命を懸けたというのに、自分は何もしず、父親のためにと、抜忍の立場など、うじうじと考えていた自分が、馬鹿らしく思えてきたのだ。

 

 

そして、ハッキリと、決意をすることが出来たのは、共に戦ってきた選抜メンバーの仲間たちが、立ち向かったお陰でもある。

 

 

色んな想いが、色んな出来事があったからこそ、雅緋はハッキリと自分の気持ちを正直に、答えを出すことが出来たのだ。

 

 

「それに、もし本当に父親のことを思うのであれば、寧ろもっと早く立ち向かうべきだったのかもしれない…

父親の為に見て見ぬ振りをし、ただ貴様の愚かな行為を見過ごしていたとなれば、それこそ父さんに対して失礼だ……

 

 

何よりも、本当の忍は、己を顧みないものだから」

 

抜忍になりたくないから、立場を失うのが嫌だから。

そんな理由では、父親も嬉しくないし、それこそ忍として認めてもらえない。何よりも本当の強さではない、実力を持った唯の卑怯者に過ぎない。

 

「何よりも私は、強い奴と共に戦いたい。

少なからず、貴様よりも、強いヤツを見つけたんだ」

 

雅緋はキュレーターから視線を外し、再び違うところへ視線を向ける。

その視線の先はなんと…

 

「はぁ…?」

 

先ほど殺したと思っていた、完全にやられたと思っていた。

消えることのない紅蓮の炎を揺らぎ、ポタポタと血が地面に滴り落ち、身体中全身が傷だらけで、血まみれになりながらも、それでも、仲間のために、家族のために、蛇女のためにと、立ち上がる彼女、焔だったのだ。

 

「私は…まだ…だ。まだ負けてないぞ……伊佐奈あぁ!!」

 

消えることのない紅蓮の炎。どれだけ消そうと抗っても、それでも焔の炎は消えることがない。

 

 

それを、紅蓮の炎と呼ぶ。

 

 

 

「化け…物がぁ……!!」

 

焔の威圧に、更に後方へとたじろぐキュレーターは、冷や汗を垂らし、悍ましいものをみるような目で見下ろす。

 

「雅緋、焔、よく言った」

 

「「!?」」

 

全員が又も聞き慣れた声のする方へ振り向くと、その声の人物はなんと…

 

「鈴音先生!?」

 

昔、蛇女にいた頃に、焔たちに修行をつけさせ、今は蛇女の教師として勤めている、凛。いや…鈴音先生だった。

 

「鈴音…だと…?テメェか?これを仕組んだのは…?」

 

キュレーターは周りを見渡す。自分に刃向かい抗う紅蓮隊。

自分が最も頼りに信頼して来た、彼女たちの裏切り行為。

全ての元凶が鈴音なのではないか?と疑問を抱いた。

 

「いいや、こうなったのは私ではない…彼女たち自らが決意した出来事だ。

蛇女の忍生徒たちを道具のように扱い、処分し、そして妖魔を造り、今こうしてヴィランとして姿を現した。

 

これで証拠は全て揃ったわけだ」

 

 

「──は?」

 

 

なに…?証拠?

 

 

「上層部から伝達があってな…」

 

 

ちょっと待て──

 

 

「伊佐奈を監視しろということだ、お前の動きがヤケに怪しいとのことでな」

 

 

どういう事だ──

 

 

 

「つまりだ、お前の動きが怪しいと上層部はお前に悟られぬよう監視をしていたという事だ。

そしてその任務を受けた私は証拠を取るべく、いままでお前を監視していたのだ。

 

そして証拠は揃った…意味はもう分かるな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前はもう終わりだ伊佐奈。上層部から新たな命令が下された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊佐奈を倒せ、ということだ」

 

「!?!」

 

「えっ、ということは…」

 

逆に伊佐奈は忍の世界に追放され、現在、伊佐奈を倒せということになった。

それはつまり、逆らっても何ら問題はない、抜忍になる必要もないということだ。

 

それを聞いた皆の表情は、少し安心を混ざった顔色に染まり、伊佐奈を倒すという目的が一致し、敵だった者たちは、共闘として彼に立ち向かう。

 

 

「…………ふざけんな」

 

 

キュレーターもとい、伊佐奈は心の底から湧き上がる殺意と、怒りの闘志に、身も心も蝕んでいく。

いままで妖魔を造るのにどれだけの労力と時間と、金を使った来たか。

どれだけ長年かけて信頼を手に入れることが出来たか、蛇女にいる者は皆ただの所有物であり道具。

そんな道具たちに反逆を受け、裏切られ、そして鈴音の証言に衝撃を受け、そして自分はとうとう忍の世界から追放されてしまった。

 

 

それがどれだけ自分のプライドを、心を、逆鱗を傷つけたことか。

傷つけ過ぎた余り、憤る怒りに理性が吹き飛ぶ。

 

 

 

「ふざけんなああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

ブオオオォォォーー!!という鯨の雄叫びが皆の耳を突き刺す。

キュレーターは腕や頭、尻尾を駆使して暴れ狂う。

完全なる暴走状態となったキュレーターに、皆は防御をするだけで精一杯だ。

 

「テメェら分かってんのかあぁ!?はぁ!?忍の世界から追放だと!?俺の労力は?!努力は!?時間は!?金は!?!

 

ふざけんなゴミ共!!!」

 

そして部屋中暴れ狂う余り、天守閣そのものが、ビキビキとヒビが割れていく。

 

「何が忍だ!!何が悪は善よりも寛大だ!笑わせるな!

俺は人間だ!お前らは道具だ!どいつもこいつも俺をコケにしやがって!!

 

それにさっきから聞いてりゃなんだ?仲間?家族?想い?

 

下らねえよ!!何の価値もねえゴミがぁ!!」

 

理性はもうなくなり、ブチ切れ状態となってる。

 

「忍を殺すのが悪いだと?使えねえヤツを殺して何が悪い!!忍の定めは死の定めじゃないのか!?

殺した所で恨みを買われる身は無えんだよ!!

 

 

そもそも、任務で死んだ雑魚どもが悪いんだろ!?」

 

「ッ!何よ…それ……」

 

それを耳にした両備は、思わず眉間に血管を浮かべる。

彼女の姉は、両姫は任務で亡くなってしまったのだ。それも憎き妖魔に…

それを彼は「自分は何も悪くない、任務で死んだ雑魚が悪いんだ」と、言ってはいけないことを言ってしまったのだ。

 

 

「仲間だと!?自分の目的を達成するための、『道具』の間違いじゃないか!?えぇ!?」

 

「道具って…!」

 

詠や春花も両備と同じく、怒りを浴びた目で、激しい攻撃を防ぎながらも彼の言葉が気にくわず、怒りの矛先を向ける。

 

「仲間?家族?想い?そんなのただの…

 

 

 

 

 

 

 

 

『飾り』だろ!?!」

 

キュレーターは次から次へと頭突きを繰り返す。何度も何度も…そのあまり、蛇女の、天守閣の形が保つことが出来なくなって来てる。

 

「ッ!そうだ…本当に悪いのはお前だ焔」

 

「は?」

 

怒りから我に返ったキュレーターは、殺意を蓄えたその禍々しい目で、血まみれになってる焔を睨みつける。

 

「お前の存在そのものが、俺を苦しめたんだ……!!俺の存在を……何もかも、全て!!お前のせいで俺の人生は狂ったんだ!!!」

 

「ぐっ!?」

 

するとキュレーターは素手で素早く焔を捕まえた。

焔は体に力を入れ抵抗し逃げようとするも、キュレーターの握力で逃げることが出来ない。

キュレーターはゆっくりと近づき、焔の眼の前には、キュレーターの大きく開かれ巨大な目ん玉。

 

「もう、いいやお前要らねえ。死ねよ」

 

そしてキュレーターは口を大きく開き、焔を飲み込もうとする。

 

「「焔(さん)(ちゃん)!!!」」

 

紅蓮隊のメンバーや蛇女のメンバーも声を掛ける。

しかし鈴音は何も動じず黙って見つめている…この理不尽極まりないピンチを…

 

 

ゴクリ…

 

飲み込む音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ここは?

 

薄暗い空間。まるで違う別の世界に送られたかのようなこの感覚、彼女は意識が朦朧としている中、この空間に溶け込むかのように、少しずつ、力が弱まっていく。

 

確か私は……ああ、そっか。飲み込まれてしまったのか…

 

 

なら、もう助かる術はないのかもしれないな……

 

 

今まで傷が蓄積していた分、少しずつ、少しずつ、無気力と化してきた。

身体にはもう力が入ってもいないし残ってもいない…

動くにしろマトモに動くことが出来ない。

 

 

私は…もう……死んでしまうのか──

 

 

ふと、そんな想いが頭の中に遮った。

 

 

でも、それも良いのかもしれない……私は、アイツの闘いに、破れたんだ…

 

焔の意識が弱まると同時に、紅蓮の炎も消えていく。

 

 

外から何やら声が聞こえる…

何だろうこの声は……

 

この声は…仲間たちの──?

 

 

『本当に、これで良いの?』

 

「え?」

 

暗闇の世界に、ふと声が聞こえた。

振り向くとそこには、太陽のような光が差し込み、白く輝くその美しい光に、焔は目を細める。

 

「なんだ…これは…?」

 

その光の先から、こっちへ近づいてくる人影が見える。

それが段々と見えてきた、知らない誰か……

 

いままでに会ったことのない人だ…誰だろうこの人は?

 

 

 

『初めまして…焔ちゃん…だっけ?』

 

 

え?

コイツは今なんて言った──?

 

 

知らないのに…なんで、私の名前を──

 

 

『あの世で見てたから、名前は分かるわ…ふふ♪』

 

 

あの世?そうか、ここはその境目なのか…だから、自分はこんなにも無気力なのか──

 

少女のその姿は、白いワンピースを見に包み、薄赤い髪を撫で下ろし、白い肌が透き通ってる、美しく、優しい女性だ。

 

『今まで…見てきたよ。貴女の闘いも、強さも、悪の生き方も……』

 

「……そうか……そんな私に、何のようなんだ?」

 

焔はぶっきら棒な物言いをし、そっぽを向く。何だろう、この気持ち…彼女と近くにいるだけで暖かい…優しさが身を包み込む。

 

『何の用もなにも……貴女が、言ったのよ?是非とも私に会いたいって、すっごく嬉しかった♪』

 

「は?」

 

彼女の優しから来る言葉の反面、ぶっ飛んだ爆弾発言が来たことに、焔は目を丸く見開く。

 

「私はそんなこと言ってない!それに誰なんだお前は!?」

 

『……名乗る必要なんてないわよ。もう、知ってるんだし。それに、ううん…何でもない』

 

その女性は、目を瞑って首を横に振る。

 

分からな、一体誰のことだろ?こんな女性は今までに見たことがない…

自分が前にいた蛇女で戦い、斬り殺してしまった人間だろうか?忍の私のことを知ってるのだから、忍と見なして多分間違いないだろう…

 

『そんなことよりも、早く戻ろ?貴女はまだここに来るべき時じゃないわ…』

 

「ここは…やはり、あの世の境目なのか?」

 

『うん、まあね』

 

やはりそうか…私は負けてしまったのか……

 

焔は無気力から悔し混じりの気持ちに移り変わった。

誰にも負けたくない…蛇女を救うために、伊佐奈に立ち向かったものの、やられてしまったようだ。

 

「なら、私が戻るのは無理なようだな……私は…」

 

『焔ちゃん、じゃあアレ見て』

 

焔はあの世へとつながる光へ向かおうとしたその途端、その女性は焔の肩を掴んで指をさした。

指をさした方向をみると…その光景は──

 

「なっ!?」

 

巨大な鯨の化け物が、暴れまわり、紅蓮隊の皆は涙を流しながらも、伊佐奈に立ち向かっていた。

自分がどんなに吹き飛ばされようと、敵わないと分かっていながらも、立ち向かっている。

 

「アイツ…ら」

 

仲間たちは、命を懸けて、必死に戦っている。

 

 

『これを見てもそれが言える?ね?想い出して…貴女がやるべきこと、貴女のいるべき本当の居場所を……』

 

ポゥッと紅い炎が全身を包み込み、紅く照らす。焔の無気力の目に、再び熱きたるや闘志が芽生えてきた。

 

『貴女の目的は?貴女は、なにがしたい?貴女は何になりたい?』

 

 

私は────

 

 

 

 

「そうだ…私は──!!」

 

 

 

 

カグラになる────

 

 

 

 

 

 

それが己が決めた、紅蓮の道。

すると、光の世界とは反対の方向に、紅い紅蓮の燃える道が現れる。

そして、紅蓮の世界が広がっている。

 

「そうだ、私はまだ死ねない……仲間のためにも、蛇女の為にも、カグラになるためにも…そして、

 

 

 

飛鳥と決着を付けるまで…!!」

 

『うん、よく言ったわ♪』

 

その女性は満面な笑みを浮かべ、優しく焔の頭を撫でる。

そのことになぜだろう、焔自身抵抗心は全くなかった…

普通はこんなことされたら、嫌がり腕で払いのけるのに…

何故か、居心地よく感じるのだ。思わず頬をピンク色に染めてしまう──

 

『じゃあ、ご褒美として……ちょっとだけ…いいかな?』

 

するとその女性は手から光に似た何かの球体を作り出し、焔の胸へと吸い込ませるように、ゆっくりと、押していく。

 

「これ…は?」

 

『貴女と出会えた、ほんの少しのお礼よ♪ほんの一欠片だけどね』

 

その光は焔の身を包み込み、全身から闘志が湧いて来た。

それも、尋常じゃない程の…

 

(なんだ…これは……?この力は…!?)

 

『さあ、行ってらっしゃい♪未来あるカグラの卵たち……

 

 

新たな世代の忍たち……貴女なら、ううん、貴女達ならきっと──』

 

 

 

そして、少しずつ消えていく。この世界が…

紅蓮の世界へと吸い込まれ…こちらの意識が朦朧とし消えていく。

 

 

あの人の、あの女性の顔をしかと目に焼き付けて──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう終わりだ!!」

 

ズズンと、大地が唸る地響きを立て、キュレーターは周りにいる忍学生たちを、押しつぶそうと、頭に力を入れる。

 

「クッ…アカン…!」

 

「そんな…もう……」

 

「こんな所で……」

 

「諦めるには…」

 

四人は、地べたを這いながら、息を切らし、立ち上がろうと体全身に力を入れる。

しかし、体の言うことがもう聞かない…この化物は誰にも止められない。

 

「さあ、さっさとクタバレ…」

 

頭を振り上げ、渾身の頭突きを叩き込もうとしたその瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生・秘伝忍法!!【紅蓮爆王波】!!」

 

 

ボガアアアアァァァァァァン!!!!

 

 

「「「!?!」」」

 

瞬間。キュレーターの頭は、紅蓮の炎と爆破の衝撃波を合わさった炎に、包み込まれ、飲み込まれた。




長かった!!なんか凄く長く感じましたこの回!長すぎて文章力が…あ、あとヒロアカのもう一つのやつも書かないと…

と、ここでプロフィールです。



伊佐奈(キュレーター)
年齢25
身長176㎝
好きなもの 金、使えるやつ
血液型 A型

危険度S

パワーA
スピードA
テクニックS
知力B
協調性D

個性『鯨』(抹香鯨)

鯨っぽいことが大体出来る。抹香鯨をモチーフにした巨大な鯨で、肉食系最大の強さを誇る海の王者。
エコーロケーションといった超音波やクリック音で相手の動きを止めたり、連絡をしたりなどを使うことが出来る。
頭にある脳油を固めたり液体にすることができ、固めることで頭突きを強化していた。また、弱点は液状となった脳油の状態で頭を狙うことで、頭に大きくダメージがいく。また風や炎、爆破といった乾燥には滅法弱い。

「マッコウ勝負だ!」とは言わせない。


追伸、両備と両奈の二人が雅緋に謝罪するの忘れてました(ぺこり)

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