光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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今回は飛鳥チームVS柳生チームです


5話「飛鳥とカエルの蛙吹梅雨」

「私、カエルが嫌いなの!!!」

 

「ケロ!?」

 

飛鳥の苦手なもの、それがカエルと知った蛙吹は初めて驚きの様子を見せた。蛙吹は本来、あまり感情を表に出さないのだが…今回、飛鳥がカエルが嫌いと聞いて、驚くのも無理はない。何故なら、蛙吹もカエルと似たようなものだからだ。

 

 

モニター室では、オールマイトも冷や汗を流してる。

 

(うう〜ん…まさか飛鳥くんの苦手なものがカエルだとは……まあ先ほどの戦闘訓練を見ればそりゃあ仕方ないが……また緑谷少年とは違った苦手意識を感じるな…)

 

緑谷は爆豪のことを嫌ってはいたが、飛鳥のとは、それはまた違う。だが…

 

(しかし飛鳥くん…これを乗り越えなければ、どうすることも出来ないぞ!!さあ、頑張れ!!)

 

オールマイトは、ギュッと拳を握り締めるのであった。

 

建物の核フロア。

 

「まさか、飛鳥ちゃんの苦手なものがカエルだったなんて…」

 

「仕方ない…嫌いなものはしょうがないのだからな」

 

飛鳥の嫌いなものを知った雲雀は、意外そうな顔をしている。

 

「けど、梅雨ちゃんはいい人だよ?」

 

「ああ、そうかもしれないな…だから蛙吹のことは嫌いじゃないと思うぞ」

 

「??どういうこと?」

 

「つまり、アイツはカエルが嫌いでも蛙吹とは友達だ。飛鳥は友達だけは何があっても嫌いにはならない…」

 

蛙吹は確かにほぼカエルと言っても過言ではないが、それでも飛鳥は蛙吹の個性がカエルだとは知らなかったのだ。気づいた途端に蛙吹にカエルの苦手意識が強くなった…だがそれは蛙吹の個性だからだ。個性が蛙であるだけで、蛙吹はちゃんとした人間だ。それは飛鳥も気づいている。だが、カエルに苦手意識がある飛鳥にこれを克服しろというのは難しい。

 

 

 

一方、蛙吹チームは…

 

「ケロ…まさかカエルが嫌いだとは思わなかったわ…今まで接してくれたんだもの…」

 

「ゴメンね梅雨ちゃん…決して梅雨ちゃんが嫌いとか、そういう事じゃないからね…??梅雨ちゃんとは大切な友達だし、ただ…やっぱり梅雨ちゃんが戦ったのを見ると……ちょっと…ね」

 

飛鳥は蛙吹に申し訳ない様子で頭を下げる。そんな飛鳥に気にしないで、と蛙吹は気を使う。

 

「仕方ないわよ、嫌いなものならね…それにしてもなんでカエルが嫌いなのかしら?」

 

蛙吹は首を傾げて尋ねる。

 

「だ、だって!!皮とかジメジメ、ヌメヌメしてるし…!!なんか気持ち悪いような感じがして!!」

 

「………」

 

「いや、だから梅雨ちゃんじゃないからね!?」

 

飛鳥のカエル苦手話に、言葉を失う蛙吹であった。

 

「そ、それに……」

 

「?それに…?」

 

飛鳥が言おうとした途端。

 

『さあ時間だ!制限時間はもちろん15分制限時!!少女達よ、頑張ってくれよ!!ではスタート!!!』

 

飛鳥が何かを言おうとした途端にオールマイトからの戦闘訓練開始がかかった。

 

「ケロ、取り敢えずまずはどうするかを考えましょう…苦手なものは仕方ないわ」

 

「うぅ〜…本当にゴメンね梅雨ちゃん……」

 

「気にしなくていいわ、例え苦手意識があっても、まず目的はクリアすることよ。第一優先そこをどうするか考えましょう」

 

「う、うん!」

 

蛙吹のサポートで、飛鳥は少し様子を取り戻す。蛙吹は感情こそあまり表に現さないが、相手のことをちゃんと思いやる心はある。蛙吹の良いところはそこなのだ。

蛙吹は建物を指差す。

 

「取り敢えず私は上からの様子を見てみるわ、飛鳥ちゃんは中をお願いね」

 

「うん!って、でもどうやって…あっ、そっか!」

 

蛙吹が一体何をするのかというと、まず建物にひっついてヒタヒタとよじ登っていく。そして核フロアの中の様子を見ては無線で飛鳥に連絡すると言ったところだろう。そもそも柳生と雲雀は忍びであるため、下手に動いて戦うよりもまずは飛鳥に中を行かせた方が安全だと判断したからである。忍びの力はヒーローたちは知らない…忍びは個性がない代わりに身体能力は非常に高く、また秘伝忍法という技を使う事が出来る。それに個性に似たような能力も出す事が出来るため、忍びもまた非常に戦闘力が高いと言える。ただ強いて言えば…ヒーローと忍びの違いにはもう一つある。

 

 

「さて、5階のフロアの様子はどうかしら?」

 

蛙吹はすぐ5階のフロアまで登りつめると、柳生と雲雀は何処からでも来ても良いように核を守る態勢に入っている。

 

「二人とも守備に入ってるわね…飛鳥ちゃんに報告しないと」

 

蛙吹は、敵の状況を教えるため無線で飛鳥と連絡する。

 

「飛鳥ちゃん聞いて、核フロアに柳生ちゃんと雲雀ちゃんを見つけたわ、今何処にいるかしら?」

 

「うん、私も5階のフロアに到着したよ!今扉の前にいるよ!」

 

飛鳥も同じくフロア近くに着いたらしい…蛙吹は「そう、なら合図を出した時に突入しましょう」 と伝える。

 

「分かった…!」

 

飛鳥が返事をして、合図をする。

 

「行くわ!」

 

「うん!!」

 

二人は合図を終えた瞬間に、核フロアに突入した!!

 

 

バァン!!

 

扉の開く音

 

ガシャアアァン!!

 

窓が破れる音。

 

 

フロア内にいた柳生と雲雀は、待っていましたと言わんばかりのように、瞬時に素早く二人の方に向く。

 

「来たぞ雲雀、遠慮はせず、本気で行くぞ」

 

「うん!雲雀、分かってるよ!!」

 

柳生と雲雀はお互い背を向き合い、戦闘態勢に入ると、柳生は飛鳥に…雲雀は蛙吹に向ける。

 

 

「つ、梅雨ちゃん…!頑張るね!」

 

ぎこちない返事をしながらも、なんとか刀を抜く飛鳥。

 

「ええ…頑張って、私も頑張るわ飛鳥ちゃん」

 

蛙吹も油断ない戦闘態勢に入る。

 

 

モニター室

 

 

「スゲェ!早速入って来たな! つか忍びの戦いって見るの初めてだよな〜…三人ともどんな戦いなんだろ?」

 

上鳴はモニターの三人を見て言った。

 

「確かアイツらは個性がない代わりに、身体能力及び技や個性らしい能力が出せるんだろ?だったら個性を知って戦うよりも難題だ…立ち回り方を考えない限り…な」

 

轟は目を細めて呟く。轟は今だに忍びを目の前にしてもなんの驚く表情も見せていない。気にしてないのか、無反応なのかは分からないが…

 

 

 

フロア内

 

「行くぞ!雲雀!!」

 

「うん!柳生ちゃん!!」

 

 

「あ、飛鳥!正義のために舞い忍びます!!」

 

「ケロ、飛鳥ちゃん気合い入ってるわね、私も負けてられないわ」

 

 

四人ともそう言うと、柳生は番傘で飛鳥を攻撃する。右に回避して刀と傘がぶつかり合う。柳生は刀を払いのけようとするものの、飛鳥が刀で防いでいる。

 

「梅雨ちゃん!早く!!」

 

飛鳥が横目で蛙吹に叫ぶが、蛙吹は雲雀と戦っている。

 

「えい!やあ!とう!!」

 

見え見えな動きで、殴る、蹴ると言った攻撃で蛙吹に攻撃するも、難なく躱される。

 

「今よ!」

 

蛙吹はピョンっ!と跳ねて核にタッチしようとするが…

 

「しまった…!だったら、お願い!忍兎〜!!」

 

雲雀も諦めず、大声で叫んだ。すると、先ほど蛙吹が破った窓から、ぬいぐるみのような兎が飛び出てきた。

 

「ケロ!?!」

 

流石の蛙吹も驚きを隠せないのか、大きな声でつい叫んでしまった。すると忍兎と呼ぶぬいぐるみ?みたいな兎は蛙吹に襲いかかる。

 

「雲雀ちゃん、こんな事が出来るのね…まずいわ…考えたら敵の数が三人になったわ!」

 

忍兎の殴る蹴るなどの攻撃を避けながらも小声で呟く。雲雀も加わり二人の攻撃を避けている。

 

「つ、梅雨ちゃん!!」

 

飛鳥はピンチな蛙吹に叫ぶが…

 

「よそ見をするな!!」

 

ドガッ!!

 

「かはっ…!」

 

柳生は飛鳥の横腹に番傘で横殴りをする。態勢が崩れた飛鳥にさらに追い討ちを試みる柳生はつかさず番傘を向けるが、直ぐに態勢を取り戻した飛鳥は、壁に足をつけて上へと飛び跳ねることで、柳生の攻撃をなんとか回避することに成功した。だが…

 

「秘伝忍法…!」

 

「あっ、しまっ…!」

 

 

柳生は秘伝忍法を使う。すると巨大な烏賊を召喚させる。

 

「薙ぎ払う足!」

 

 

ズドドドォォーーーーーン!!

 

「キャアアァァァァァーーーーー!!!」

 

柳生は巨大な烏賊と共に回転し、周辺を巻き込んでいる。飛鳥はなす術もなくもろに受けてしまう。

 

「ケロ…!柳生ちゃんは、大きい烏賊を呼び出したわ…!!飛鳥ちゃんもろに攻撃を受けたようにみえるけど…大丈夫かしら…?」

 

巨大烏賊の攻撃で、煙が上がってしまう。煙の中に飛鳥はいるのだが、視界が入らないのである。

 

 

 

モニター室

 

「柳生のやつスッゲェ!!巨大な烏賊出てきやがった!!」

 

「ああ、烏賊か…確かに良いな」

 

切島が叫ぶ横で障子は、柳生の烏賊を微笑ましい表情で見つめる。障子はタコやイカなどといった軟体動物が好きなため、柳生とも話が合いそうだと、この時そう思ったのである。

 

「けど雲雀ちゃんのあの兎も良いよな〜!」

 

上鳴が可愛いものを見るような目で、指差している。口田も可愛いものを見るような目でコクコクと頷いている。口田は喋るところは見たことはないが、何やら忍兎を見て表情が柔らかくなっている。口田は障子とは少し違って、動物が好きなため、雲雀の忍兎が可愛らしくてたまらないのであろう。

 

だがしかし、モニター室でそんな悠長な話をしているのも今のうちなのであった…

 

 

フロア内

 

「ケロ…煙が減って視界が見えてきたわ…飛鳥ちゃんの影もあるし無事のようね…!」

 

蛙吹は雲雀の攻撃からもなんとか回避しながら飛鳥の心配をしている。

 

「いったた〜…」

 

飛鳥は後頭部に手を置いて立ち上がると、煙の中から出てきて、柳生に襲いかかる。その時だった

 

「てえぇぇ〜〜い!!」

 

「ケロ!?」

 

蛙吹は見てしまった…飛鳥の服がビリビリになり、下着姿であるのを……

 

それはモニター室では大きな大混乱の状態であった。

 

 

「えええ〜〜!!??」

 

服がビリビリなのも無理はないと思うかもしれないが、それでも下着姿はほぼモニター室ではキッチリ映っていた。

 

「ちょっ!?飛鳥ちゃん!隠さないと!」

 

芦戸は顔を真っ赤に染めて叫んでいる。

 

「自覚がないのか…?戦闘の真っ最中だから気づいてないのかもな」

 

轟はなんの動揺もせず曇りない表情でいる。

 

「飛鳥ちゃん!?ヤベェよコレ!え?なに…破れるもんなの!?」

 

流石のチャラい上鳴も、飛鳥の姿に動揺を隠せないのであった。

 

「ひょーー!!神回ぃ〜!!最高だぁー!!飛鳥の姿が…これは…これは…!!」

 

「ちょっ…!峰田見んな!!」

 

バチィん!

 

「へぶうっ!?」

 

飛鳥の姿を見て興奮する峰田に、耳郎は思いっきり頬を叩いた。

 

「八百万!峰田の目隠すためになんか『作って』くれない!?」

 

「え、ええ!勿論ですわ!」

 

八百万は耳郎の意見に賛同し頷くと、体から目隠しの布が出てきて、拘束させておき、それを峰田の目に巻きつける。

 

「うおぉぉーーーー!!八百万!耳郎!離せ…離せよおぉーーーー!コンチクしょーー!オイラはもっと飛鳥の姿を!胸を、山を、オッパイを見てえんだあぁーーー!!」

 

峰田は暴れるが、八百万と耳郎二人が拘束してるため、手も足も出ない様子だ。

 

「てか、先生!これ完全なる事故じゃん!止めた方が良いんじゃないっスか!?」

 

切島は、モニターに注意しながら見ないようにオールマイトに語りかける。

 

「う、ううむ〜…確かにそうだが…まだ戦闘訓練の途中だし、そんな事言っても…それにそれだったら緑谷少年の場合もコスチュームが半分やられたわけだ…もしここで飛鳥くんの戦闘訓練を中止にさせたら悪いしな…」

 

「あっ、それもそうだ…不公平だしな…くぅぅ…!!」

 

「というか別の意味での事故だよなコレ」

 

紳士ある男性たちは、ろくにモニターを見ることすら出来ない状況でいる。オールマイトを除いて…まあオールマイトは先生のため、ちゃんとモニターを見なければならないのでコレは仕方ないのだが……耳郎は飛鳥をじっと見つめている。

 

「………デカい………」

 

耳郎は自分の胸に目をやって、小声で呟いた。

 

 

フロア内

 

「てやああぁ〜!!」

 

ガキィィン!!

 

飛鳥の二つの刀と柳生の番傘がぶつかり合い、鋭い金属音が鳴り響く。

 

「飛鳥も…随分と腕が上がったようだが……まだ召喚獣がいないんだろ?」

 

「…!!そ、それは…」

 

「その理由は…知ってるだろ?」

 

「…っ!」

 

 

飛鳥が召喚獣が使えない理由…それは、心を通わせれる動物がいないからだ。それは飛鳥自身の悩みでもあった。召喚獣、すなわち秘伝動物のことである。それを習得できれば、更に強くなれるのだが…召喚獣とは忍びの家系にまつわり、その家系が使ってた召喚獣が忍びに引き継がれ、使えることが出来るのだ。だが飛鳥の家系での召喚獣は…

 

ガマガエルなのである。

 

半蔵はガマガエルを使っていた、だが飛鳥はカエルが嫌い。そのため召喚獣は出せないのだ。

 

 

「知ってる…けど…でも!!」

 

ガキィン!!

 

なんとか薙ぎ払い、柳生との距離をとる。

 

「いずれ、召喚してみせるもん!!」

 

飛鳥がそう言うが、柳生はため息をつく。

 

「……どうやってだ?」

 

「え?」

 

柳生の答えに飛鳥は戸惑う。

 

「いまだに苦手を克服出来そうにもないお前が、一体どうやって、いつ召喚できるんだ?」

 

「そ、それは…」

 

「それになぜそこまでカエルが嫌いなんだ?」

 

すると飛鳥は少し下を向いてこう言った。

 

「だって…戦闘中にカエルが死んだりしたら…嫌だもん…可哀想だから……」

 

「……そうか」

 

飛鳥は戸惑う素振りを見せると…柳生は今度は蛙吹に目をやる。

 

「もういい、さっさと終わらせる」

 

柳生は素早く蛙吹の方へと向かう。

 

「あっ…!待って!!」

 

飛鳥は少し遅れて柳生を追いかけようとするが、もう遅い。柳生は直ぐに雲雀との戦闘に加わる。

 

 

「ケロ…不味いわね……柳生ちゃんまで来ちゃったわ…」

 

蛙吹は弱々しい声で呟く。

 

「さあ!覚悟してよ梅雨ちゃん!!」

 

雲雀も真剣な眼差しで蛙吹を睨み、追撃を仕掛けてくる。当然避けるが…

 

「掛かったな!」

 

柳生がそう叫ぶと、クナイを投げ蛙吹に襲いかかる。そして番傘で突こうとする。が…この時ピンチな状況に陥ってるにも関わらず、蛙吹は不思議そうな顔で疑問を抱いていた。

 

(そういえば…どうして柳生ちゃんは飛鳥ちゃんを見逃して私と戦う方を選んだのかしら…?)

 

雲雀は蛙吹に攻撃を受けてはいないが、それでも充分蛙吹の足止めとしてはいい線が通っている…だから柳生は飛鳥の足止めをすることだって出来るのだ。時間さえ切れれば敵チームの勝利になる。だが柳生と雲雀が蛙吹の相手をしていたら、その隙に飛鳥が核を触る危険性だってある。

 

(柳生ちゃんの考えなら、飛鳥ちゃんを止めて核に触れさせずに時間切れにすることだってあるのに…一体何が目的なのかしら?)

 

蛙吹はクナイに当たるが、あえて対人用としてなのか、切れ味はさほどない。だがそれでも蛙吹にダメージを与えることはできた。

 

「ケロッ…」

 

「すまんな蛙吹、やらせてもらうぞ」

 

番傘が蛙吹を襲いかかる。その時蛙吹は、瞬時に意味がわかった。

 

(!!そう言うことね…分かったわ柳生ちゃん!)

 

柳生と雲雀がやってること、それを瞬時に理解した蛙吹は、柳生の番傘の突きに当たってしまう。

 

「ああっ!梅雨ちゃん!!」

 

飛鳥は柳生の攻撃が、蛙吹に当たったことにより、大きく動揺してしまう。

 

「ケロ………不味いわ…」

 

蛙吹はお腹を押さえて少し態勢を崩してしまう。雲雀はなんとかその場を動かず、固唾を飲み見守っている様子だ。そんな蛙吹に、柳生は再び番傘を向ける。

 

「では、さらばだ…!」

 

柳生が蛙吹に攻撃しようとしたその瞬間。

 

 

 

「させるもんかあぁぁぁーーーーーー!!!!」

 

 

 

飛鳥が叫ぶと、咄嗟に体が動き、柳生と蛙吹の場に割り込んだ。すると柳生の番傘は蛙吹に当たることはなかった。

 

「いたたた〜…梅雨ちゃん…大丈夫?」

 

「え、ええ…大丈夫よ…それより、飛鳥ちゃん、ようやく私に触れることが出来たわね」

 

「え?あっ…」

 

今、飛鳥は蛙吹の体を掴んでいる。柳生の攻撃から庇ったためだ。普通今の状況なら「絶対に無理!」というだろうが…今の飛鳥は。

 

「全然…怖くない……」

 

飛鳥は蛙吹の頭を撫でると、蛙吹は「ケロ」と嬉しそうな声を出した。

 

「やっと、苦手を克服することが出来たな」

 

「柳生ちゃん!?」

 

「良かったね飛鳥ちゃん!」

 

「雲雀ちゃん…」

 

柳生は飛鳥に向かって微笑むと、雲雀も飛鳥の苦手を克服出来たことを満面な笑みを浮かべる。

 

「私も、もっと早く飛鳥ちゃんの『こと』を気づくべきだったわ…」

 

梅雨ちゃんも少し頬を赤く染める。

 

「どういうこと…?」

 

そんな飛鳥は何がなんだか分からず、ケロ?っとした顔を浮かべている。

 

「お前はあの時言ったな…カエルが死んだりしたら嫌だって」

 

そんな疑問な表情を浮かべる飛鳥に、柳生は説明する。

 

「蛙吹の個性はカエルだ…だがそれでも友達でもある。お前はたとえ相手がカエルでも、友達が目の前で傷つく姿は嫌なハズだ…だからもしその友達の蛙吹が傷ついたらお前は必ず守ろうとするからだ」

 

「あっ…そっか…」

 

飛鳥はなるほどという顔で頷くにつれ、雲雀も答える。

 

「だから雲雀と柳生ちゃん、フロア内で考えてたの、どうしたらカエルを克服することが出来るのかって…!」

 

どうやら柳生と雲雀がフロア内にいたのは、飛鳥の苦手を克服するために残ってたのである。

 

「あっ、でもなんで梅雨ちゃんはこのことを知ってたの?ずっと、私と一緒にいたし…その考えは分からないはずじゃ…」

 

確かに、飛鳥とペアを組んでいたら分からないはず…すると蛙吹も説明する。

 

「それはあの時、柳生ちゃんと飛鳥ちゃんの会話を聞いてたからよ、それに柳生ちゃんはとても賢いもの…普通に勝つことを考えるなら、柳生ちゃんは飛鳥ちゃんを止めて、雲雀ちゃんは私を止めていれば、時間切れで柳生ちゃんたちの勝ちだもの。なのに柳生ちゃんは敢えて飛鳥ちゃんから私に戦う方を選んだ、だからもしかしてって思ったのよ」

 

「す、すごい頭の回転の速さ……」

 

蛙吹の冷静な判断が出来たからこそ、彼女にしか出来なかったのかもしれない。あの時飛鳥が蛙吹に言いかけたのは、カエルが可哀想という話だったのだろう。

 

「これで飛鳥ちゃんは大丈夫そうね」

 

「み、皆んなあぁ〜…」

 

飛鳥は、三人の思いやりにあまりに嬉しくて、思わず涙が出てきそうだったのをなんとか堪えた。

 

「さて、話は終わりとして…まだ戦闘訓練は終わってないぞ…」

 

「あっ、そうだったね!あと少しだと思うけど、頑張ろう!」

 

柳生と雲雀は、再び戦闘態勢に入る。また飛鳥と蛙吹もだ。

 

「頑張ろう!梅雨ちゃん!!」

 

さっきまでの飛鳥とは違う、一歩成長した飛鳥は、いつもの元気いっぱいな女の子に戻った。そんな飛鳥の姿をみて、内心嬉しく思う蛙吹も

 

「ええ、勿論よ!」

 

態勢を整える。

 

 

モニター室

 

「アレ何があったんだろうな?さっきまで話してたようで、そんで急にまた戦闘になったぞ」

 

「よくわかんねーけど…けど飛鳥ちゃん様子変わったよな」

 

瀬呂と上鳴は首を傾げながら呟いている。

 

「……」

 

(わお、なんだよ柳生くんに雲雀くん…!そんで蛙吹くんまで……カッコいいじゃないか!!)

 

オールマイトは沈黙しつつ、内心はものすごく感激している。

 

 

フロア内

 

「てやぁ!!」

 

ガギィン!キィン!!カキン!

 

飛鳥は先ほどまでの様子とは違い、素早く刀で柳生に攻撃をかますが、柳生も飛鳥の動きに負けられないと、番傘で防御する。

 

「先ほどまでとは違うな…飛鳥」

 

吹っ切れたようなその様子に、柳生は少し安堵の息をつく。

 

「うん!!そして、『今度はこっちの番』だよ!」

 

「!?」

 

飛鳥の言葉の意味を分かった柳生は、直ぐに距離をとろうと番傘で刀を払いのけようとするが…遅かった。

 

「秘伝忍法!二刀繚斬!!」

 

パワーアップした飛鳥は、蛙の如く前方に跳躍して交差状に斬りつけていく。

 

「うああぁっっ!!」

 

ドガアァァァァン!!

 

もろに食らった柳生は、前方に吹き飛び、壁にめり込んだ。

 

「ああ!柳生ちゃん!!」

 

柳生が倒されたことに気づいた雲雀は、咄嗟に柳生の方に振り向いた。だがそれが蛙吹の隙となった。

 

「甘いわ雲雀ちゃん!」

 

蛙吹は長いベロを出して、雲雀を巻きつく。

 

「うわあ!捕まっちゃった!!」

 

雲雀は半泣き状態で必死にもがくが、蛙吹のベロは頑丈なため、身動きは出来ない。

 

「飛鳥ちゃん!核!」

 

「うん!」

 

蛙吹の言葉に飛鳥が頷くと、核に近づきタッチする。

 

「やった!」

 

触れた途端。

 

『ヒーローチームウィィーーーーーーン!!』

 

突如オールマイトの声が響く。

 

 

モニター室

 

「おお!飛鳥たちが勝った!!」

 

「おお…それにあの技も凄いな…」

 

切島と常闇は、飛鳥たちが勝ったのをみて内心感激している。だがその反面…

 

「……っ!!」

 

爆豪は更に表情を暗くし、歯ぎしりをする。

 

 

フロア内

 

「やったやったー!梅雨ちゃんやったよ!」

 

「ええ、やったわね飛鳥ちゃん」

 

雲雀の拘束を解除すると、飛鳥は蛙吹を抱きしめてその場でぴょんぴょん跳ねている。

 

一方柳生たちは。

 

「……負けてしまったな…」

 

「ふえぇ〜ん!ゴメンね柳生ちゃん!雲雀がもっと強くてしっかりしていれば…!」

 

柳生は泣いてる雲雀の頭を優しく撫でる。

 

「いいんだ…雲雀は良くやった…俺が甘かっただけだ…あの時飛鳥の動きをいち早く読み取っていれば…」

 

柳生は少し悔し混じりの表情を浮かべる。

 

飛鳥たちと柳生たちはモニター室に行き、皆んなの前に集合する。

 

「飛鳥!ただいま戻りました〜!」

 

「ケロ…」

 

「俺たちも戻ったぞ…」

 

「雲雀疲れたよ〜…」

 

四人が戻ってくると、他の皆んなやオールマイトは何故かまごまごとして、なかなか飛鳥を見ようとしてない。皆んなの異変に気づいた飛鳥は首をかしげる。

 

「皆んな、どうしたの?」

 

「いや、飛鳥……お前、服」

 

 

「え?」

 

 

自分の体を見てみると…下着の姿であった。

 

「あっ…」

 

「……………」

 

飛鳥はポカーンとした様子で、皆んなは見ていない。峰田なんかはほぼ見えない状態だ。数秒ぽかんとしてると、ようやく自分と皆んなの立場、そしてモニターを見て、顔を真っ赤っかに染める。

 

 

「い、いやああああぁぁぁァァァァァァァァァーーーーーーーーー!!!!」

 

 

羞恥心の激しい余り、飛鳥の顔は赤面し、目がぐるぐる状になり、その場に座り込み身体を隠す。もう遅いが…

 

「と、とりあえず飛鳥さん…これを着てくださいまし…!」

 

八百万は、忍装束の時の飛鳥が着てた服を差し出す。すると飛鳥は涙を直ぐに服を取り、ドアの方に隠れて服を着た。

 

「あ、ありがとう…八百万ちゃん///」

 

「い、いえ…気にしないでください!それにしてもとんだ災難でしたわね…」

 

八百万は心配そうに飛鳥に気遣う。

 

「ま、まあ何はともあれ…皆んな上出来だったぜ!!」

 

オールマイトは親指を立てると、皆んなを見つめた。

 

「さて、どうだったかな皆んな?初めての戦闘訓練は?先生としては皆んな良かったぜ!!それに忍の戦いもまた、我々ヒーローとは違ったところはあるが…こういうのを見て強くなるのも、一つのヒーローとしての成長なんだぜ!!」

 

オールマイトは皆んなに笑顔を見せて言うと…

 

「では戦闘訓練はこれにて終了!!お疲れさん!みんなこれから教室に戻ってね!」

 

そういうとオールマイトはアデュー!とだけ言ってその場を去った。

 

「オールマイト…なんであんなに急いでんだろ?にしてもカッケェ…!」

 

峰田は平和の象徴の後ろ姿を、輝く目で見てそう言う。オールマイトは走ってるなか爆豪に目をやり

 

「…爆豪少年…」

 

(生まれながらに才能に恵まれた彼は自尊心の塊のようなもの…膨れあがって爆発する自尊心はとても脆い……ヒーローとしてだけでなく、教師として彼のことをもっと見てやらねば…!)

 

オールマイトは内心そう呟いたのであった。




さてさて、今回は飛鳥の友情がどれだけ強かったかでした!ww
そして爆豪は飛鳥たちの力をみて何をどう思ったのか…ですねw

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