「半蔵学院…」
半蔵学院に到着した雪泉たちは、そびえ立つ校舎を見上げた。いつ見てもここの学校は普通の校舎とは何ら変わらないであろう。しかし、その中には確かにいるのだ。忍学科に所属する忍学生が…
校門を潜り抜け、屋上を見上げる。そこには確かに居た、飛鳥が。
飛鳥は既にやる気満々なのか、屋上で立ち尽くしたまま待っている。
「飛鳥さん……皆さん、準備は良いですか?」
「ええ、勿論ですとも雪泉」
「我らはあの日よりも強くなったのだ…」
「今なら誰にも負けないよ…!」
「うん!美野里も美野里も!」
四人の輝く笑顔、雪泉はコクリと頷くと、歩み進める。
すると、校舎の前に雄英生がいた。あの人影はどうやら雄英生徒だったらしい…てっきり一般人かと思っていたが…
しかし、あの時とは違い、人数が少ない。人は3人…
随分と減ったものだ…しかし、だらかと言って無視するわけにもいかない…何よりオールマイトの一件もある。雪泉たちが近づくと、3人も月閃が来たことに反応したらしい。3人は、緑谷、轟、そして飯田くんだつた。
「こんにちは雄英生徒の皆様…」
雪泉が軽く頭を下げると、二人は目を丸くして頭を下げる雪泉をジッと見つめていた。大したことないのにと思ってるかもしれないが、緑谷と轟は雪泉の先週の態度と様子が変わってることに大きく驚いてるのだ。前ならこんなことしなかったのに…と心の中で呟きながら。飯田は雪泉の過去は聞いたものの、戦いの場ではいなかったので、雪泉がどういう人だったのかをあまり知らない。
「ゆ、雪泉さん態度が…」
「ああ、変わってるな…何かあったのか?それとも変なもの食ったとか…」
「そこまで変わってます?」
雪泉は目を細めてギロリと睨みつける。緑谷は「あっ!すいません!」と頭を下げ恐縮するが、轟は性格がマイペースなためか、「おお、悪いな」の軽い一言で片付けた。
「そういえば…爆豪と言う人もいませんね」
「ああ、彼はあの後相澤先生にこっぴどく叱られたらしい!何でも月閃の生徒たちと戦ったから…だとか、商店街で新しい蛇女?の忍学生と闘ったとか…それを言うなら轟くんもと言う話になるのだが、どうやら轟くんは人を傷つけず、身を守っていた為厳しい注意で済まされたらしい!」
「厳しい注意どころじゃねえよ、俺も俺でさりげなく怒られたんだからな」
「僕はその場にいて何で最善な判断と行動が出来なかったんだって言われたよ…」
あの後、蛇女子学園が襲ってきたと言う話は、学校側まで知らされた。それも半蔵が直々に言ったらしい…いや、飛鳥から『漆月』と接触したことを話し、報告のついでに言ったのだった。本当は言いたくなかったらしいが、生徒たちの身の安全とこれからの対策を考え、報告しなければいけなかったのだ。そのため仕方がないとも言える。相澤先生も先生で大変だ。
よって爆豪は学炎祭を観戦するのは禁止、よって反省文5枚。そして轟と緑谷は反省文4枚書かされることとなったのだ。緑谷は個性を使ってないとはいえ、爆豪を止められなかったこと、そして適切な判断と行動が出来なかったため、彼にも責任はあると…
一流のヒーローはその場で瞬時に適切な判断と行動が必要となるのだ。
「ええぇ〜、ヒーローってそんなに大変なの〜?」
と…ここで美野里の可愛らしい声が聞こえた、身長が低くかったため、いることを忘れていた。因みに彼女の身長は144㎝、未来は身長150㎝だ。美野里は不思議そうに首をかしげる。
そう、ヒーローは一見単純そうに見えて実はとても複雑で難しいのだ。ヒーローはまず免許なしに個性を使ってはいけない。仮にヒーロー志望だとしても、人を救ける行為でも、犯罪となってしまう。それは
相手が忍というのは特殊の為、世論には公表されないが、それでもそれなりの対処はされる。因みに他のみんなは用事があってどうしても来れないらしい。その為今のメンバーがこうなったというわけだ。雄英生徒は20人いる。しかし、此処の3人と爆豪を除いて、16人居ないということになる。
「成る程、皆それぞれ事情があるのですね…」
雪泉はこの場に他の生徒がいないことに納得した。まあしかしこれはあくまで観戦は自由、強制参加ではないので何の問題もない。
轟は雪泉を見て、先週の雪泉とは明らかに違うと分かった。この一週間、見間違えるほどに…一体何があったのだろうか…
轟は今までつらみ恨みで動く人間を見てきたことがあった。そのため雪泉に憎悪がなくなってることが分かるのだ。だから、様子が違うことも、雰囲気が変わったことも、轟は分かっていた。
(あの人…変わったな…)
すると雪泉は、轟を見てふとあることを思い出したのか、近寄ってくる。そのことに轟も反応する。
「轟さん…でしたね。貴方に謝らなければならないことがありました…」
「?」
すると雪泉は大きく頭を下げた。謝罪。雪泉の行動にその場にいた緑谷や飯田だけでなく、他の四人も驚いた。いや、四人ではない…叢だけは驚かなかった。
「あの時、貴方に酷いことを言ってしまい申し訳ありませんでした…」
雪泉のその言葉に、轟はハッと思い出した。それは、一週間前、雪泉が轟に言った言葉だ。
『貴方、エンデヴァーさんの息子だそうですね?なのに息子である貴方は…エンデヴァーという偉大なるヒーローが父親であるのに、恥ずかしくないのですか?あの敗北を…』
確かに言われた、その時は思わず氷を出そうと思ったくらいだ。静かな怒りが炎のように揺らめいだあの時の感情は未だに忘れられない。しかし、飛鳥の言葉に冷静になり、ネットの反応…エンデヴァーアンチの一人だと解釈したため、気にしないようにしていた。しかし、まさか此処で謝ってくるなんて夢にも思っていなかった。一体誰が彼女を変えさせたのだろうか…無論、それがオールマイトだということは知らない。
「叢さんから聞きました…エンデヴァーと貴方のことを……あの時は、私は貴方のことを何にも知らなかった…しかし、知らなかったとはいえ許されることではない…貴方の心を傷つけたのは事実なのですから……ですから、これは私の謝罪です…本当に申し訳ありませんでした…」
「……」
轟は雪泉に手を差し伸べる。
「いや、俺の方こそ悪い…お前の過去のこと、何にも知らなかったのに…お前に無理に聞き出そうとしたり、お前の気持ちも考えずにいて……だから、もういい…これでおあいこだ。頭上げてくれよ…」
轟の言葉に、雪泉は頭を上げた。轟の顔には、もうあの時の怒りの表情は消えていた。雪泉と轟は本当に似ている。同じ氷を持つもの同士だからか…あるいは同じ憎しみを持ってたからなのか、共通部分が多ければ、反対な部分もある。例えば、轟は父親のせいで人生が狂い、親に恵まれなかった…しかし雪泉はどうだろうか?黒影は雪泉のことを愛しており、雪泉も黒影がいたからこそ今の自分がいる。他にも、氷を除いて轟が炎なら雪泉は風といった相性もある。風といえば、雄英試験で前にそんなのがいたような…
「ありがとうございます…!」
そして手を差し伸べお互い握手を交わす。
轟が許してくれたことに、雪泉はホッと息を撫で下ろした。雪泉自身も驚いたのだ、叢から轟の心境を…家の事情を…例えいくら人気が高くあろうと、皆から認められなければ正義だなんて言えない…
だから、悪の殲滅なんて行為は、皆のためではなく、自己満足でしかないのだ…
雪泉は、改めてそう思ったのだ。
そして、暫くして…
雲雀と美野里は…
「美野里ちゃん、勝負だよ」
「うん!美野里、あの時よりもぐ〜んっと!強くなったんだから!」
一方、葛城と夜桜は…
「夜桜か、来たなこの時が、待ってたぜ!」
「………」
「アレ?どうしたんだ?」
夜桜は沈黙したまま葛城を見つめたまま、動かない。そんな夜桜に葛城は首をかしげるのだが…
「貴方は…自由なんですね…」
「へっ?自由?」
ここでようやく夜桜は口を開いた。葛城は夜桜が何を思い、何をいってるのか分からなかった。しかしそれも直ぐに分かることだ。
「貴方は前に、戦いが好きだの、嬉しいだの言ってましたが……」
「ああ、アレか」
ここで葛城はようやく夜桜の言ってることが理解した。あの時、夜桜は葛城の言ってた言葉が理解できなかった。なぜ戦いが嬉しいのか…戦場とは生死を分ける戦い…そんな場所が楽しいだなんて正気の沙汰とは思えなかった。しかし、今の夜桜はそこまで葛城のことを悪だとは思えない。何故だろう…オールマイトヴィランの一件以来、雪泉だけでなく、自分自身の心も変われた気がするのだ。だからこそ今なら分かる…彼女たちは悪ではないと……しかし、それでも夜桜は葛城の言ってる『嬉しい』という気持ちがわからなかった…
「あのな夜桜、物事ってのは何でも単純じゃあねえんだぜ?」
葛城の言葉に、夜桜はここで「えっ?」と首をかしげる。
「アタイが嬉しいって思えるのは、自分より強い相手が居るからなんだよ。何でか分かるか?戦場は誰にだって負けられないだろ?…だからこそ、そんな中強い奴と戦って、ソイツよりも強くなって勝ち進む。アタイは、自分が強くなる気がして嬉しくなるんだ…そう思わないか?」
「成る程…つまり、戦いの中での成長ですか…対人訓練ばかりでは意味がない…知らない相手と戦うとワクワクする高揚感……貴方の言ってることが何となく分かりました…」
夜桜は葛城の言葉に納得し大きく頷いた。この世には自分たちだけではない、自分たちよりも強い忍など幾らでもいる。指がいくつあっても足りないくらいに…自分たちのまだ見ぬ忍や、これから忍になろうとする者もいれば、強くなった忍だってこの世には必ず存在する…ソイツらと戦えば戦うほどに強くなり、生き残ることだって出来る…そう考えると葛城の言ってることが大いに理解できる。
ああ、なんだ…単純じゃないか…こんな簡単なことに、自分はあんなにもムキになってたのか…なんだかバカバカしく思えて来た。けど、それと同時に、良い戦友と会えたことに喜びを感じた。
「話は終わりだ…さぁ、行くぜ夜桜!!」
「ええ!望むところですよ葛城さん!
具足と手甲、蹴りと拳が唸り、再び火花散る戦いとなった。
同じく、柳生と四季。
「ヤッホー、柳生ちん♪おっ久〜!元気にしてた〜?また来たよ〜」
「四季か…オレも待っていたぞ…この前のケリを早くつけたいからな…」
ノリが軽い四季に、柳生は「待っていた」と言わんばかりに無表情で答える。しかし四季は直ぐに表情を変える。
「うん、そりゃそうだけど…アタシ勝てるかな?だって柳生ちんのその隠鬼の目ってやつ、チョーヤバイじゃん?本気でやり合うのはごもっともなんだけど…力をつける為に眼帯で目を封印するなんてさ〜、柳生ちん本当に気合い入ってるよね〜」
「………お前、何か勘違いしてるようだな…」
「へ?」
「この眼は、力が欲しいが為に封じたのではない…」
柳生の予想外な答えに、四季は「違うの〜?」と首をかしげる。それは無理もない…四季は知らないのだから、柳生の過去を…妹である望の死であり、この眼帯はその死んだ妹の形見なのだということを…
「良い意味でも、悪い意味でも、人の記憶は時が経つと共に薄れて行く…それでもオレは永遠に忘れたくなかった……妹の望の死を…」
「え……?」
ここで四季は、柳生が何故眼帯をしているのか、そして死んだ妹の望のことを知ることになる。
「最初は妹の形見として作ったんだ…眼帯をすれば視界は見えずらくなるが、物の見辛さを感じる度に、オレは妹の望を思い出すことが出来ると思ったんだ…気がついたらオレの目には…」
「そうだったんだ……つまり、柳生ちんの妹さんの想いが力に変わったんだね」
四季はようやく柳生が何故眼帯をしているのかを知った。ただ単に力が欲しいが為に目を封じていたわけではない、望を忘れたくない…望みを失った悲しみを…その為だったのだ。
「いや、違うな…妹がオレにこの力をくれたんだと思っている。妹は、オレが忍になることを応援してたからな…」
柳生の妹の望は、いつも応援してくれていた。両親はいつも任務で遅かった為、二人っきりになることが多かった。柳生が修行をしていると「お姉ちゃん!」と健気で元気な声で呼び、作った泥団子を渡してくれた。当然泥団子は食えないので、柳生は食べるふりをした。しかし、それこそ望の思いやりが、笑顔が、柳生に力をくれた。柳生は嬉しかった…とても嬉しかった…ああ、こんな時間が永遠と続けば良いのにと何度思ったことか…
だから、望の死は忘れたくなかった。
全てを知った四季は、何処か悲しい表情を浮かべていた。それもそのはず、まさか眼帯に此処まで深い出来事があったなんて…いや、それ以前に柳生に妹がいたこと、そして柳生の妹が死んだという話に、四季はどうしても悲しくて仕方なかった。だから四季は思ったのだ。
この世から悪を無くすだけで、涙を流す人間が居なくなるとは限らない。自分たちが思ってるほど、この世は単純では無いという事を……柳生の話を聞いてより改めて分かったのだ。
「そっか……柳生ちんのことは分かったよ…ゴメン柳生ちん……アタシ、何も知らないくせに何でもかんでも欲しいって言っちゃってさ…そんなアタシがバカだったよ…」
四季は申し訳なさそうな顔で柳生に謝る。確かに欲しいものがあるなら力づくでも絶対に手に入れる。それが四季の常識だ。しかし、人の大切なものを力づくで手に入れても嬉しくなんて無い。まずそんな大切なもの、手に入れる気など毛頭ない。そんなことをしてしまえばそれこそ悪だ。
ただし…
「けど、その代わりに欲しいものが見つかっちゃったんだ♪」
「なに?」
四季は片目をウィンクすると、柳生は「むぅ?」と呆気を取られる。四季が欲しいもの…それは──
「柳生ちんの完全勝利!」
その言葉に柳生は不敵な笑みを浮かべる。
「だって柳生ちんの話聞いてマジで感動したもん!だから、柳生ちんには絶対に負けられないんだ!」
「ああ、望むところだ…!」
四季と柳生はお互い不敵な笑みを浮かべると、鎌と番傘が激しくつばぜり合いをした。
斑鳩と叢。
今回、斑鳩と叢の戦いを観戦するのは飯田くんただ一人。ちょこんと正座してるのがなんとも言えないが真面目な飯田くんならあり得る話だ。それにしても脚がエンジンになってるのによく正座したなぁ…と思った。因みに緑谷と轟は屋上の飛鳥と雪泉の戦いを観に行っている。では飯田がなぜ斑鳩と叢の戦いを観るのか?それは、似た者同士だからという理由なのかもしれない…同じ規律を重んじる者同士だからこそ、斑鳩の戦いは観ておくべきだと、そう思ったからだ。何よりもう一つの理由は、自分の兄である天晴のことだ…体育祭が終わった後、斑鳩のことで話していたのだ。彼女は自分と同じ兄を持ち、悩んで居たと……
本当に不思議だ、自分と彼女は規律を重んじ、クラス委員長だけでなく、真面目な性格だけでなく、兄までいるなんて…いや、斑鳩はクラス委員長というよりも風紀委員長ではあるが、ほぼクラス委員長と言っても過言ではないほど彼女は真面目なため、クラス委員長と言っても良いだろう。何よりもそれ位の器はあるのだから…
今の斑鳩の目は真っ直ぐで、迷いがない。きっと恐らく兄についての悩みも解消したのだろう…
成長した彼女の力を、この目で見とかねば。
体育祭で轟に負けてしまった分、今度はきちんと見て自分のものにしなければならない。飯田はそう思ったのだ。
そんな飯田を御構い無しに、叢と飯田は対立する。
「叢さん…」
「斑鳩か…」
斑鳩は叢を見つめる。この勝負は斑鳩にとっては負けられない。そう、貧民街に住む人達や、友人の詠の為にも…斑鳩は負けられないのだ。それに、叢だって斑鳩の考えは分からないまでもない。斑鳩が誰かを救おうとしてる事実には変わらないし、それも立派な正義の行いだということは、オールマイトとの一件で考えたから…
「例の貧民街都市開発計画の事なのですが…」
「何度も言わせるな、我に勝ってから要求しろと言ったはず…」
「すいません…失礼しました……」
斑鳩は貧民街をなんとしても救いたいがあまり、要求さてしまっていた。叢は血に塗られた巨大包丁と鉈を手に持つ。斑鳩は飛燕を抜く…
「では…いざ勝負!!」
そして最後に、飛鳥と雪泉では…
「飛鳥さん…ようやくこの時が来ましたね。この日をどれだけ待ち望んでいたか……この前の私とは、一味違いますよ」
オールマイトヴィランとの戦いで強くなった雪泉たち。彼女のその目は生き活きとしていて、純粋な青色の目だった。あの時に見せた憎悪の色はもう消えている。雪泉も雪泉で色々と考えたのだろう……しかし、それは完全に消えたわけではなかった。
「うん、それを言うなら私もだよ雪泉ちゃん!この前焔ちゃんに修行をつけてもらったんだ!」
「焔さんと…?」
「あっ…もしかして怒っちゃう?悪忍と関わってる〜とかで…」
「いえ…今は違います…」
飛鳥の言葉に雪泉は首を横に振る。昔の自分なら完全に許せなかっただろう…悪と馴れ合い、悪の存在を黙秘する存在…そんなもの前までの自分なら否定していた。なぜならそれこそ、善が悪に染まり、善から悪へと生まれ変わってしまうようでならなかったから…だから善を蝕む悪は許せない…しかし、思ったのだ。悪には色んな悪が存在するのでないか?と…
色んな善が存在するように、悪にだって色んな悪がいる。そう思ったのだ…
「確かに悪は許せません…悪という存在が人々を苦しめることには変わりはない…だから私は悪を許さない……しかし、悪にだって色んな悪がいる。全てを滅ぼすというのは、いささか極端な考えなのかもしれません…人を不幸にし傷つける悪は許しません…しかし悪はもう憎まない…つまりは、そういうことです」
しかし、それでは黒影お爺様の意思に違反してるのではないか?と、時々そう思ってしまう自分がいる……だから、お爺様の為にも、自分のためにも、覚悟を決めなければならない。
自分の本当の正義を見つける。
その答えは…飛鳥さん。貴方の中にある…貴方と戦えば分かるはず……私に何が足りなかったのか?私の求める正義とは?その答えを導き出すためにも、それを証明するためにも…
「完全に考えを改めるには、飛鳥さん……貴方と勝負してからです!!」
飛鳥も雪泉の想いが伝わったのだろう…飛鳥は不敵な笑みを浮かべ、二つの刀を抜く。そう、半蔵から託されたいつも使ってるこの刀で…
「勿論だよ…雪泉ちゃん!!!」
その場で遠く見ている二人組み、緑谷遠く轟は…
「なんか凄いことになったね…でも、前の雪泉さんとは違っていい感じになったよね」
「ああ…そうだな」
飛鳥と雪泉、何方が勝つかは分からない…しかしそれでもやはり飛鳥たちには勝ってほしいとそう思うのだ。
「変わったといえば…轟くんもそうだったよね」
「学校で言ってたな…まあ、オレはケジメを付けたからさ…」
「ん?」
(だから…雪泉…アンタもケジメを付けに来たんだろ?だから、飛鳥には負けたくないんだろ?)
同じ経験をした轟だからこそ、雪泉の気持ちは一番理解出来る。何より雪泉のその証明したいという気持ちも…
轟は緑谷戦で炎を使い、自分のやってることが本当にこれで良いのか?と悩んでいた。自分だけが納得してはいけない…ちゃんと精算しなきゃと…そのために、母と会って話をした。雪泉も同じなのだらう…自分だけが納得してはいけない、精算しなきゃいけない…雪泉にとって自分にケジメをつけるということは、飛鳥と戦ってケジメをつけるということだろう…では黒影に会えば良いのではないか?と考える人だっているはず…でも轟は何となく、薄々と分かっていた…なんで黒影ではなく飛鳥になのか…
轟は自分が変われるキッカケを作ってくれた緑谷と共に、
ただ、雪泉の言っていた通り…
『こちら!保須警察署!至急応援頼む!!』
べっとりとした血の海が地面に広がる路地裏に、倒れてるヒーローが一名。白いアーマーのコスチュームを着用し、顔をすっぽりと覆うマスク…そのヒーローの名はインゲニウム、飯田天哉の兄であり、斑鳩の悩みを聞いてくれた優しきヒーローだ。
「金…名誉……地位……どいつもこいつも、忍だのヒーローだのと名乗りやがって……ハァ…」
そんな飯田の兄を、何者かが虫を捻り潰すかのように、倒れてる体を足で踏む。
「テメェらはヒーローなんかじゃねえ……ヒーローを名乗る資格もありゃあしねえ……ハァ……ハァ…」
ソイツは手に持った血に塗られたナイフをぺろりと舐める。
「彼だけだ…唯一、俺を殺して良いのはただ一人……本物の
ソイツ名は、ヒーロー殺しステイン。全国指名手配犯とされてる最悪の
色んな悪が存在するように、許されない悪もいる。
あああああ!!ステイン!!!お前、とうとう登場してしまうのか!とうとう…少年少女達に刃を振るうのか!?
はい、ステイン編はなるべく盛り上がるようにしていきたいと思います。あっ、それはそうと、50話突破した時に、絵か何かを入れると言ってましたが、Twitterで上げることにします。なんか挿絵で引っかかったら嫌ですからね。あっ、ただしオリキャラは此処でも載せると思いますんで、ご了承下さい。