まあそれは作者の都合によりますね。まあ自分で楽しむのが一番ですからね。だからホリーさんにはいつも尊敬します
河川敷のしめった風が頬に当たる。暗闇の空、漆黒に染まった暗雲が、光り輝く満月を覆い隠すかのように遮る。
車椅子に乗った私はぼんやりと、その夜空の景色を眺めていた。
「私は……空っぽだ」
「雅緋?何か言ったかい…?」
背中越しに忌夢の声が聞こえた。私が返事をしないでいると、忌夢は静かに車椅子を押した。
「時間だし、そろそろ戻ろうか?」
何を言われても何も思わない。
何をされても何も感じない。
空っぽだ。そう、私は空っぽなんだ……
どうして私がこんな風になってしまったのか…それについて考えることもない。なぜなら、私はからっぽだからだ。
「雅緋、ほら、見えて来たよ。僕たちの『蛇女子学園』だ」
忌夢が車椅子を止めて、うっすらと見える蛇女子学園を指差した。そこには月夜に浮かぶ天守閣。
蛇女…
蛇女…蛇女…蛇女…
空っぽな心に何か響く…蛇女という言葉に、私の心は揺さぶられる。
なぜだ、何故だろう…
空っぽなはずの心から、何かが湧いてくるような…この高揚感…これは一体。
すると、天守閣から妙な気配を感じる。それも、忍とは違う気配が何十人か…そして天守閣からは物騒な音が聞こえる。爆発、衝撃、炎、光、と言ったものが天守閣に飛び出ている。中で一体何が起きてるのだろう?
「アレは一体なんだ…!?」
忌夢は天守閣を見てそう叫んだ。侵入者?だとすればそれはそれで不味い…
どうやら不味い状況らしい…雅緋はこんな状況の中でも、心がないのか、何とも思わないのか、動揺する素振りを見せない。雅緋はある事情でこうなってしまい、廃人となってしまっているのだ。
「蛇女がこうも攻められてるなんて…ボクたちがいない間に何をやってるんだ…」
忌夢が忌々しそうにそびえ立つ天守閣を睨みつけ、奥歯を噛み締める。
しばらくすると、忍と思われる気配が二つ消えた。
「忍学生の気配が二つ消えた…?一つは知ってるやつだ…もう一つは、誰だ?敵か?」
しかし、雅緋からは別の気配が大きく膨らんでいった。しかも、ただの気配ではない…吐き気がもよおすような禍々しい気配だ。
するといきなり耳がつんざく轟音が聞こえた。天守閣が激しく揺れ、より激しい爆発音や衝撃音が聞こえる。それは勿論、天守閣の部屋から聞こえるものだ。それも、天守閣の屋上で…彼処の部屋は、道元と呼ばれる出資者がいる部屋、彼処で一体何が起きてるのいうのか。
そんな状況と共に、轟音と一緒に雅緋の中で何かが暴れ始めた。
まるで体の内側から獣が飛び出そうとしてるみたいだ。
その時だった。
ドガアァァン!!
巨大な爆発と衝撃と共に、天守閣の部屋に大きな穴がぽっかりと空き、ハッキリと見えた。今までの蜂の巣のような小さな穴ではなく、遠くからでも見える大きな穴。それと共に何かが吹き飛ばされ、次第にそれが大きくなってくる。それが、雅緋と忌夢の方に飛んでくる。
「マズイ!」
最悪なことに、今は戦えない。武器を持ってきてなければ、扱うことはできない。かと言って近くには特にこれといったものは何もないし、それがあったとしても解決出来ないだろう…
忌夢は雅緋を乗せてる車椅子を、逃げるように引く。そして、その何かしらの物体がこちらに飛んできた。
ズドオオオォン!!!
地面に衝突し、大きな土埃が撒く。土埃のせいか視界が悪く、咳き込んでしまう。忌夢のメガネが土埃のせいで、汚れてしまう。メガネケースにメガネ拭きを手に持ち、汚れたレンズを磨き、汚れを取る。
眼鏡をかけると共に、土埃が消えていく。すると物影が二つくっきりと見える。
アレは……人か?随分と大柄なものだ…
そして土埃が晴れて、その姿を見てみると、忌夢は目の前の光景に息を飲み、絶句する。
二つの物影は、人?らしきものが見るからにボロボロの状態で仰向けになっており、倒れている光景が目に映った。人らしき?というより、人型の化け物、と言った方が正しいのかもしれない。その明らかに人とは思えない異形の姿に、化け物と呼ばれても仕方がないだろう…
体色が、赤色と緑色、脳が飛び出た異常な怪物、改人脳無と呼ばれる化け物が今こうして忌夢と車椅子に乗っている雅緋の目の前にいるのだ。
「なっ!?こいつら…妖魔か?!」
忌夢は身構えるが、この二体の脳無は反応しない。目が真っ白になっており気絶しているため、動く素振りを見せなければ、動く気配もない。ただただ血まみれで、ボロボロになって倒れているだけだ。
「妖魔…?……ッッッ!!!???」
忌夢の『妖魔』という言葉に雅緋は反応し、激しい頭痛の苦しみに思わず髪を掻き毟り、霞んだ視界に崩れ行く天守閣が映る。そして、記憶が鮮明に蘇った。
仲間たちの悲鳴と、血で塗られた恐ろしい記憶が………
ふいに私の目から一筋の涙が流れた。
空っぽだったのではない…
逆だ。
私の心はあふれるほどに満ちていたのだ。あまりに大きな、怒りと後悔と悲しみに……
「雅緋!大丈夫?」
後ろに忌夢の声が聞こえる。そう、私は雅緋…秘立蛇女子学園の選抜メンバーだ。
いや、選抜メンバーだった。といった方が正しいに違いない。
恐らく私は、あの事件からずっと心を閉ざしていたのだから…私は車椅子から降りて自分の足で立った。
そして脳が飛び出た異形な姿をした化け物を見下ろす。
コイツらは、妖魔ではない。私があの日戦った妖魔の気は、血の気が引くようで、生臭い匂いがした…何よりコイツらからはそんな禍々しい気は感じない。感じるのは、先程の私と同じく廃人になってることだけ、直感的に伝わってくる。
「雅緋?」
雅緋の行動に、戸惑いを隠せない。何より驚いているのだ、雅緋が車椅子から立ったことを…雅緋は振り返って小さく頷いた。
「も、戻ったんだね!?」
確かに戻っていた。記憶も、力も…
目の前にいるのは忌夢、私の幼馴染だ。
「雅緋、ぼくは……ぼくはどれだけこの瞬間を待っていたことか………」
忌夢の目には涙が溢れ出す。どれだけこの時を待っていただろうか、待ち望んでいただろうか…来る日も来る日も、雅緋は空っぽで動かなかった……それが今、やっと、叶ったんだ。まさかこんな状況で、こんな場面で、雅緋が復活してくれるなんて……
「忌夢、泣いている場合じゃない」
雅緋の強い言葉、間違いない。完全に元に戻った。忌夢が一番よく知っている雅緋だ。雅緋は天守閣を見つめる。蛇女子学園の崩壊に、歯をくいしばる。
「忌夢!戻るぞ、私たちの蛇女に!!」
私は駆け出そうとするものの、まだ足が思うように動かなかった。復活したとはいえ、体の力が思ったよりも鈍い…復活しても、完全には復活してなかったらしい。力は確かに戻ったとは言っても、車椅子の生活が長かったためか、足が衰えてしまったらしい。
「雅緋、僕に掴まって」
忌夢の方を借り、ゆっくりと足を動かした。
数十分ほど歩いただろうか…やっと辿り着いた蛇女子学園に残っていたのは───
───瓦礫と死体の山だった。
死体には何者かによって、無惨に斬り刻まれた傷痕と火傷の痕跡があり、身体中が棘らしきもので刺されたのか、蜂の巣のように、見てるだけで吐き気がしそうな死体もあれば、血が赤黒色に染まり、口から消化液や唾液、苦痛の顔を浮かぶ死体が数えきれない程存在していた。
「なんてことだ……」
忌夢は余りにもの惨状を前に、ショックのあまりか膝をついた。やがて目から涙を流す。雅緋も目の前に映り出す残酷な光景に、思わず血が滲み出るほどに拳を握りしめた。
あの時…
あの任務の時、私が…
私が自分の力を制御出来ていれば……
そうすれば私は選抜筆頭として、蛇者に残っていたハズだ。
しかし、今は後悔してる場合ではない…私は座り込んだまま、涙を流してる忌夢の腕を掴んだ。
「忌夢、立て」
「雅緋……」
忌夢がすがるような目で私を見上げる。
「グズグズしている暇はないぞ……」
蛇女を襲撃してきた奴。
襲撃から蛇女を守れなかった奴。
蛇女の誇りを汚した奴らを、私は許さない。
絶対に…許せない。
「取り戻すんだ」
「取り戻す?何を?」
私は忌夢の腕を力強く引いた。忌夢はよろけながらも立ち上がった。
「決まっているだろ」
残骸となった校舎を見ながら言った。
「止まってしまった時間と…蛇女の誇りだ!」
雅緋はそう言って、他にも生徒が生き残ってるか見つけるべく、生存者を探しに残骸となった校舎に駆けつける。
そして見つけたのは数十人の生徒、そして…ボロボロになって気を失ってた、蛇女子学園教師、鈴音先生が見つかった。
それから一週間後、鈴音先生は見事完全に傷が回復し、動けるようになった。
そして、あの時起こった出来事を…全て聞いた。
半蔵学院と雄英高校が攻めてきたこと。
焔率いる蛇女子学園が負けたこと。
そして……敵連合という犯罪集団が、抜忍・漆月と共に奇襲を仕掛けてきたこと。
何でも敵連合は前に雄英高校と呼ばれるヒーロー育成学校に襲撃をもたらしたとか…
更にあの二体の化け物は敵連合の仲間であり、脳無と呼ばれる改人らしい。蛇女子学園に襲撃してきた人物は、抜忍・漆月と脳無と呼ばれる者、そして学校に襲撃した主犯格は姿を現さなかったとか…
だが、それでも許さん。半蔵学院も、雄英高校も、焔率いる忍達も、そして抜忍・漆月に敵連合。
覚悟しろ、お前らの寝首を必ず刈り取ってみせる。
それが、新たな蛇女子学園の誕生なのであった。
「我々秘立蛇女子学園は、貴様ら半蔵学院に学炎祭を申し込む!!」
雅緋と名乗るリーダーは、半蔵学院にそう言った。
「蛇女子学園…!?え?焔ちゃんの…」
飛鳥は雅緋という女性の言葉に、思わず目を丸め、目をパチクリさせる。蛇女子学園といえば、前に半蔵学院に襲撃したあの悪忍育成学校であり、焔たちがいた学校だ。
また、こっちが襲撃を仕掛け、ある事情で蛇女子学園は崩壊したはずだ。
「学炎祭…!?私たちは月閃と学炎祭の最中なのですよ!?」
「それがどうした?いや、知らんのか…学炎祭は一対一でなくとも、何校でも受けることが出来るんだ、いわばバトルロイヤルみたいなものだ」
雅緋は斑鳩の反応に薄く笑う。すると、半蔵学院の皆んなの後ろから、人の気配がした。
「飛鳥さん!?」
「おいなんだアレ?」
振り返ると、緑谷、轟、そして乗り気のない爆豪が駆けつけに来てくれた。
三人はただならぬ気配を察知して、来たのだろう。それもそのはず、ただならぬ殺気を感知したのだから…てっきりヴィランかと思ってみたが、どうやら正体は悪忍だったとのこと…
三人の存在に気づいた飛鳥は「皆んな下がってて!」というが、爆豪は「あぁ!?俺に指図すんじゃねえデカ乳女!」と暴言を吐く。そんな二人のコントに雅緋は鼻で笑う。
「ほぅ、貴様ら雄英の生徒もいるのか…丁度いい。お前たちも蛇女子学園を貶めた人物なのだからな」
「はぁ?何だテメェら!?!」
「自己紹介がまだだったな…私は蛇女子学園三年、選抜メンバー筆頭、雅緋」
「僕は忌夢だ…雄英の生徒たちには仕返しとして殺したいが…それは悪忍である僕たちとは言えダメだからな…」
メガネの掛けた少女、忌夢と名乗る少女は、半蔵学院のみならず、雄英生を睨みつける。
「………………………紫です…………べべたん、あの人………怖いね…………近づかないでおこっか………あと、帰りたい…………」
紫色のロングをした根暗な少女、紫は愛用のぬいぐるみ、べべたんというくま◯ンを抱きしめ爆豪を怖がるような目でオドオドしている。
「両備だ!お前らの胸に風穴開けてやる!」
右目が緑色、左目が青色のオッドアイの少女、両備は忌々しい目で女子陣を睨みつける。飛鳥たちは怖い!と思っただろう。そしてここに峰田がいたら、そんなことはさせんぞ小娘!と何処ぞの仙人みたいに言ってただろう…
「両備ちゃん良いよ!絶対に痛そうでいい!ああ〜♪両奈ちゃんも風穴開けて欲しいなぁ〜」
両備と同じく、目がオッドアイになってる両奈。目の色は両備とは反対だ。恐らく姉妹、いや…双子なのだろうと理解した。
そして…あ、コイツはアカンわ。と此処にいる全ての人は思っただろう。轟は「何言ってんだコイツ?」と、違う世界を理解してない天然だった。
何だこいつ等バラバラじゃねえか。と、男子陣は新蛇女子学園を見て思った。
「そうかいそうかい、一校でも二校でも何でも良い…やるなら絶対勝つぞ!」
「いくらでも相手になるよ!」
「なんなら俺一人で爆殺したるわ!」
「おい、お前は違うだろ。観る側だろ」
葛城と雲雀に続き、爆豪が喧嘩腰になって相手をにらみ舌なめずりするが、柳生に止めて突っ込みを入れるが、爆豪は「煩えお前が応援しとれや!」と無茶苦茶なことを言い出した。
「随分と仲が良いんだな…忍の存在を忘れてる甘ちゃんどもか…」
雅緋は相手のやり取りに目を細める。
「まあ良い…7日後、とは言わずとも…今此処で軽く前夜祭と行こうか?」
その言葉に皆は反応し、静まり返る。
「ではコイツら半蔵学院と相手になるのは私と……紫、出来るか?」
「わ、私は………早く……家に……帰りたい…」
紫は背を向けブツブツと呟く。ネガティブな女の子だ…それに、何しに此処に来たんだ?という質問は彼女にはNGです。
「そうか…では、忌夢と私が半蔵学院と、両備と両奈は雄英高校と…それで良いな?」
「「「「!!??」」」」
まさか、本気で雄英生と戦うとは…学炎祭は本来忍学校同士のはず…だが、雅緋はこう言った。
前夜祭と行こうか…と。そして、雅緋と忌夢は半蔵学院のメンバーと相手になると…と言うことは、数が不利でも勝てれば問題ない。つまりはそういう事だ。
また忍側はもちろん話題ない。本来雄英、いや、ヒーロー学生はダメなのだが、相手が仕掛けてきたのなら、と思い爆豪はやる気満々だ。しかし、轟と緑谷は止めようとする。
そう、相澤は言っていた。
観客ならOK、だが戦闘はダメだ。と、まあ爆豪は月閃で雪泉の部下たちと戦った時点でダメなものなのだが…
「問題ないな?お前たちの了承は聞かない…我々は我々のやり方で…貴様らを倒す!」
そして雅緋が剣を抜くとともに、蛇女子学園の皆は武器を構える。また、半蔵学院も同じく……
「葛城、お前の相手は僕だ。まあ、なんならお前ら四人とも全員まとめてかかって来い」
「随分と余裕があるんだな!」
「ならば、全力で参ります!」
「俺たちを舐めたこと、後悔させてやる」
「雲雀、いっくよ!」
また雅緋は…
「飛鳥、貴様の相手は私だ」
「雅緋ちゃんって言ったね、望むところだよ!!」
半蔵学院選抜メンバーのリーダー。飛鳥vs秘立蛇女子学園選抜メンバーのリーダー、雅緋。
そして…
「両備達の相手は貴方達ですか…まあ相手にとって不足なしですね…アンタ達、可愛い声で鳴きなさい。とことん痛めつけてやるんだから!」
「両備ちゃん両備ちゃん!あの三人の中で誰が一番両奈ちゃんを気持ちよくしてくれそう?」
「なんだこいつら」
「ちょっと僕には理解できない世界なんだけど……」
「取り敢えず寝言は寝てしね!!」
二対三?としての戦いになる、蛇女子学園vs雄英生三人。
そう、この三人が問題なのだ。爆豪がいることにコンビネーションはおろか、コミュニケーションすら取ることが難しい。轟と緑谷は戦闘はなるべく避けたいというが、爆豪はそんなの関係ねぇ、と言う。多数決的に緑谷たちの選択が正しいが、爆豪にとって多数決は関係ない。逆にそんな考えを壁のように越えていくだろう。だが爆豪も何も考えがなく戦う訳ではない。爆豪には爆豪なりの理由がある。
もし此処でルールだのなんだの言ってこの二人の戦いで重傷を負ったら?また、最悪の場合殺される確率だってあるのだ。相手は悪忍、何をしやらかすか分からない。その気になれば本気で殺しにくることだってある。戦いもせずに殺されるより、戦って勝って無事になった方が良いと判断したからこそ戦うのだ。いわば正当防衛。自分の身を守るために戦う。それについては爆豪の考えは正しいだろう。しかし、それでもこの社会にとっては間違いと見なすのだ。ヒーロー社会も忍の社会も…では一体何が正しいのか?それは、何もせず逃げること。だが彼らはヒーローを志す者、逃げることは許されない。
ではこの状況、どうするのだろう?相手は悪忍、悪だからこそ何をしても自由だし、許される。
この理不尽な状況。
「クソ!!テメェら俺に一々命令すんなや!」
「半蔵さんが言ってたろ!許可なく戦って黒影さんはどうなった!?最悪の場合俺たちもそうなるんだぞ!」
「煩え人いねえから問題ねえだろクソが!!」
「人がいねえから…?」
何故個性には使用規制が掛かっているのか?USJで13号先生が話したように、個性の中では使い道を間違えれば人を簡単に殺す個性がある。だから、この社会にはルールを作った。許可なく個性を使用してないけない、と……つまり、人を傷つけてはいけないのだ。また、人を傷つけないためにある。
バキュゥン!
「っ!!」
銃弾が飛んできた。そのため轟はつい咄嗟に氷の壁を作り、銃弾から守る。
「つべこべ喋ってなずにかかって来いっつーの」
蛇女子学園一年、両備はライフルを所持しており、様々な銃弾を用いて戦う、遠距離戦を得意とするのであった。
(遠距離、俺もその気になれば戦えるが、街への被害が半端ねえんだよなこれが!)
轟は思わず目を細める。
今みたいに相手へ傷つけず、また証拠もないように個性を使用するのは、最低限セーフの為、ありである。
「あっ!氷だー!
「こら両奈!
二人の会話は緑谷たちには聞こえなかった。
(何話してるんだあの人たち?それにしても遠距離射撃!両備さんって言う人は銃弾を自由自在に操ることが出来るのか?それじゃあまるでスナイプ先生みたいじゃないか!轟くんの氷の壁があるから当分もてるけど、これじゃあ先生を相手にしてるようなもの!)
因みにスナイプ先生の個性はホーミング。狙ったものを必ず当てる、百発百中の個性だ。
(いたってあの金髪の、両奈さん?って人は分からない…でも油断は禁物だ!相手の観察を…)
「じゃあ両奈ちゃんは氷の人と緑髪の子やるね〜〜、きゃうぅ〜ん!ご主人様〜あそぼ〜♪」
「「!?」」
なんと、氷の壁を飛び越え通り越し、轟と緑谷の真上に飛び二丁拳銃を構える。まずい、そっちも?と思った途端。
バゴオオオオオオォオオォン!!!
「!?」
「テメェ、俺を忘れてんじゃねえよクソ犬が!!」
なんと、使っちゃった。いや今更だけど、雪泉の部下たちに使っちゃったけど。爆豪、個性を使ってしまった。それも選抜メンバーの忍学生を、学炎祭参加の忍学生、変態両奈を爆破でぶっ飛ばした。
「え!?」
「おいマジでか」
「ッ!両奈!」
吹き飛ばされた両奈は地面に擦り付けられるように両備の元へ転がってくる。
「もういいわ…実際前から使っちまったし、コイツら忍なら大して傷つけたってこっち側にゃあバレねえだろ、あと人もいねえしな」
「おいけど…」
「まだ分かんねえのか?バレなきゃ犯罪じゃねーんだよ!!」
あ、ダメだこりゃあ…これ完全に犯罪者側のセリフだわ…
しかし、しかしだ…何かしらと爆豪の言ってることも一理ある。忍は本来この世では秘密にされてる存在、そんな存在が怪我しました助けて下さいなんて言うことはまず無い。そのため、これはこれでありなのだと、ほんの僅かに思えた二人なのであった。
それに、雅緋は両備と両奈に相手をしろ。と言ったのだから、これは此方側も許可をもらった。ような解釈なのでは?とそれも思った。
「……俺はもう知らん…」
「この世にかっちゃんを止められる人なんていないんじゃ…」
二人は小声でそう呟いた。
雪山に佇む一つの校舎、その名も死塾月閃女学館。今は夏に近い季節なのに、何故か此処だけ雪が降っている。まるで今は冬にいるみたいで、とても冷たい場所だ…因みに、ここも秘立蛇女子学園と同じく立ち入り禁止の場所だ。
月閃の忍学生でしかここに通る者はいない。
そう、いないはずなのだ…
「此処が死塾月閃女学館か…情報通りの場所だな」
なのに、忍学生ではない…また学生とは思えない大柄な人物は、顔にマスクを被っている、素顔を隠してるその大男は、月閃を睨みつけ、静かに歩み寄る。
かっちゃん、お前はヴィランか?いいえ、ヒーローです。まあ雪泉の部下たちと戦ってる時点でもう暴れても仕方ないという考えになったのでしょう。そして何を言っても止まらない爆豪に二人は仕方ないか、という考え方になってしまったのです。
まあでも、バレなきゃ問題ないという発想は実際、原作ステイン編の面構刑事の発想で思いつきました。だから、あり?これなら行けるんじゃね?と思いました。まあ先に仕掛けてきたのは蛇女ですから、助けてなんて言わないし、仮に戦いで怪我をしても当然だ。と自分自身たちは思うし悔いはないわけであって云々かんぬん