光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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みなさま、超絶お久しぶりです。覚えておられるでしょうか?また忘れてる方もおられるかもしれません、だからあえて言います、どうも夜空の星です!
この度投稿が遅くなり誠に申し訳ありません!今月はいつも以上に忙しい且つ、新作ゲームのドラクエジョーカー3 プロを買ってはやっていたので…だってアレハマると…ね?
そして後は気力との戦いでしたね…頭の中がゴチャゴチャになってたため、もしかしたらちょくちょく修正していく感じになると思います。何かあったら報告を…(バタん


49話「亀裂」

学炎祭が始まる前の日のこと、緑谷と轟は学炎祭について話があるため、半蔵学院に向かって飛鳥と会い話をした。

 

「ええ!?学炎祭見に来てくれるの!?!」

 

「う、うん…相澤先生が観に行くだけなら良いって言ってた…」

 

「戦うことは論外だがな…」

 

そう言うと飛鳥は嬉しいのか、頬が少し赤くなり、二人にペコペコと頭を下げた。緑谷からは「半蔵学院の皆んなも観に来てくれたんだし、頭下げなくても良いよ」と飛鳥の頭を上げさせる。

 

「しかし、同じ善忍だってのに…向こうが仕掛けてくるとはな…お前ら何かしたのか?」

 

「してないよ!初めて会う忍学生たちに急に学炎祭申し込まれたんだよ?」

 

「な、なんかかっちゃん並みの理不尽な人達だね…?」

 

飛鳥はぷんすかと頬を膨らませてそう言い、二人は相手が一体どんな人達なのかと、想像するものの浮かんで来なかった。

 

「まあよく分かんねえが…取り敢えず学炎祭は観に行くってことだけ伝えに来た。他はどうすることも出来ねえ…」

 

「うん…これ以上問題起こしたら今度こそ相澤先生に除籍処分にされるからね…」

 

二人は帰る支度をしながらそう言った。今回は連絡をしただけで、特にこれといったものは無かった。緑谷が先に行き、轟も跡を付いてくように帰ろうとすると…

 

「あ!ねえ轟くん!」

 

「?」

 

ふと飛鳥は轟を呼び止めた。そのことに轟は後ろを振り向く。

 

「どうした飛鳥?」

 

「……なんか、様子変わったね?」

 

「そうか…?そういや緑谷にも同じこと言われたな…」

 

轟はポカンとした様子で自分の髪をくしゃくしゃする。確かに()()()()ものの、一目見てそんなに変わるものなのか?と、疑問を抱く。

 

「うん…前までさ、ホラ…父親を完全否定するって言ってたし…あっ!悪い気起こさないでね!?それで…他の人たちは何にも見てなかったし…」

 

「…まあ、そうだな…」

 

飛鳥の言葉に納得した轟は、こくりと頷いた。少しだけ父親に対する怒りは篭ってるものの、体育祭に見せたソレとは違った。そして自分の手に目をやる。飛鳥はそんな轟に、真剣な目で見つめている。

 

「体育祭…緑谷の戦い以降でさ、自分は本当にどうなりたいのか…どんな人になりたいのか…どんなヒーローを目指したいのか…とかさ、色々悩んだり、あと母さんの事とかでいっぱい悩んだりした……俺は今のやり方で本当に良いのか…それが1番だった…」

 

「…うん、でも…今は?」

 

「そうだな……今はもう…()()()()()……やれること、やりたいこと…色んなこと見つけれた……緑谷もそうだけど…これに気づけたのもお前のおかげだ…」

 

「わ、私…!?」

 

自分のお陰、自分に当てられたことに驚く飛鳥と構わず、轟は話を続ける。

 

「あの時さ、お前…やるなら全力で掛かってきてって言ってくれただろ?あの言葉、前の俺だったら怒ってたけどさ……今だと、なんかありがとうって思えるんだよ…だからさ、改めて…飛鳥、ありがとな」

 

「轟…くん…」

 

轟の感謝の気持ちに、飛鳥は面食らった。前までの轟なら絶対にあり得なかった。しかし今の轟は、以前とは違う、別人になったかのようだ。

父親への憎しみを乗り越えた轟に、飛鳥はホッとして、心が安らぐように安心した。

 

「いいえ、どう致しまして…♪」

 

そして、飛鳥は満面な笑みを浮かべて、轟にピースサインを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在

 

「初めまして雄英生徒の諸君達…そして、半蔵学院の皆様、学炎祭の覚悟は出来てますね…?」

 

雪泉はこの場にいる雄英生徒の皆んなと、飛鳥たち半蔵学院の忍生徒を見やる。

 

「勿論だよ雪泉ちゃん…!」

 

「ほぇ〜…アレが噂に聞く月閃かぁ……こりゃまた個性的な生徒たちだなぁ…」

 

飛鳥は気合を入れ、遠くにいた切島は月閃の人たちを見つめている。

 

「学炎祭の前に一つ…いえ、二つお聞きしたいことがあります…」

 

「二つ?何のことか分かんないけど…うん!良いよ!その代わり私達にも聞きたいことあるからね…!お先にどーぞ!」

 

飛鳥は何を気になるのか分からないが、先に雪泉たちの質問に答えてあげようと思ったのだ。

 

「では早速…まず一つめ…

何故、彼ら雄英生が此処に居るのでしょうか?」

 

雪泉は、冷たい目線で、半蔵学院から雄英生に目線を移す。

 

「は〜い!それはオイラたちは月閃の皆がどんな美女たちで、どんなおっぱいをしてるのか…」

 

「アンタは黙ってて、話ややこしくなるから」

 

「グフッ!?爆音がぁ!!!」

 

峰田は頬を赤くしながらセクハラ発言をすると、耳郎が個性を使って峰田の耳に爆音を流した。そして耳がキーンと来てるのか、耳を抑えながらうずくまっている。

 

「そりゃ、まあ…半蔵の皆んな俺たちの雄英体育祭見に来てくれたんだし…それに俺たちも忍学生同士の戦いを観てみたいし…」

 

ここで上鳴が、この状況に冷や汗を流しながら主張する。

 

「てかてか、雄英の人たちが此処に来てるとか、チョ〜ウケる〜!あっ、初めまして〜♪私は四季って言うんだ〜、宜しく〜♪」

 

「うわぁ!何だギャルっぽい!ビックリしたぁ…」

 

突然金髪ギャルの四季が、ケータイでパシャパシャと雄英生の写真を撮りながら話しかけ、気配を感じなかった上鳴は四季に驚く。

 

「上鳴ちんだっけ?チョ〜驚いてるじゃん、マジでウケるんだけど〜♪私の友達のサチエも驚く時こんな感じなんだよね〜」

 

「ちん!?!てか何で俺の名前知ってんのこの人!?俺知らねえのに!てかサチエって誰ですかぁぁ!?」

 

「落ち着きなよ上鳴、私達体育祭でテレビとかで放送されてるか、多分その時に名前知ったんだと思うよ?じゃなきゃ知らないし」

 

驚き慌てふためいてる上鳴に、耳郎は落ち着かせる。耳郎の言う通り、今の雄英一年生はとても有名だ。外では有名人のように声をかけられ、中でも聞いた話、瀬呂なんかは小さい子供達からドンマイコールされたらしい…瀬呂ちゃんドンマイ。

 

 

 

「………」

 

「ん?」

 

轟はジッと自分を見つめている般若のお面の人に気づき、首をかしげる。

 

(なんだあの人、俺を見つめてるよな…てかお面?スゲェ懐かしい気分だな…いや、気のせいか…?)

 

轟は何か引っかかったように思いつめるものの、般若の少女、叢は轟を見つめる視線を変えない。

 

 

 

「しかし、何がともあれ学炎祭に彼らが来るとは思いませんでしたよ…」

 

ここで意外な顔で皆を見つめる青い短髪の少女、夜桜。

 

「おい、切島…見ろよアイツ…あの真面目そうな女…分かるよな?」

 

「ん?あー、あの子か?確かに真面目っぽさそうだな…てかぶっちゃけコケシとかで出て来そうな女の子だな、イメージ的に!」

 

ここで耳郎の個性から回復した峰田は、目を凝視させ、切島はニッとした笑顔で見つめる。

 

「はぁ〜…お前がここまで脳筋だとは、こんのバカ、ちげぇだろ…中身だよ中身…いいか?あーいう真面目でガードの堅い奴ほど中身はエロいんだぜ…」

 

「初っ端から何言ってんのお前?」

 

「いいから聞けよ…今からオイラの全ての力を使って…あの女子を堕とすぜ…!いや、堕としてみせる!」

 

「おい待て早まるな!あの人の場合、流石に耳郎や梅雨ちゃんみたいなレベルじゃ済まねえって!死ぬぞ!?」

 

「ヒーローは…プロはいつだって命懸け…!」

 

良からぬ気配を感じる切島の忠告に、峰田はグッドポーズをすると、そのまま夜桜の方に進んで行った。

 

「や、やあ…!」

 

「?貴方は…誰です?儂は夜桜じゃ…」

 

声に反応し、気付いた夜桜は峰田を見る。

 

「お、おぉ…最初に名前名乗る派なのね?そして方言とは驚いた……えっと、お、僕の名前は…峰田実!彼女募集中です!」

 

ここで早くもフラグを立たせ、顔を真っ赤にさせる峰田は、言葉を繋げる。

 

「あ、あの〜……夜桜…ちゃん?もし良かったら…えっと、まず…スリーサイズを…じゃなかった…おっぱいをお聞きしてもよろしいですか!?!?」

 

「何言っとんじゃ我ぇ!!」

 

ドゴオオォン!!

 

「ふげぇっふぅ!?」

 

早くも夜桜の拳が炸裂。トラックに跳ねられた様に殴り飛ばされた峰田は、地面に数回バウンドして気を失った。

「あ〜あ…言わんこっちゃない…」と切島は呆れてため息をついた。

 

夜桜は気を失っている峰田を、鬼のような怒りの目で睨みつけている。

 

「全く…何を聞くかと思えばセクハラとは…いい度胸してますね…だいたいセクハラとは…」

 

「夜桜さん…もういいです…」

 

「雪泉…!すいません…つい…」

 

ここで、雪泉が入り込み、止めに入る。雪泉の声は相変わらず冷え切った声…というより、冷たい何かを感じる。

 

「彼ら雄英生徒たちがどんな人達なのか…もうハッキリと分かりましたからね…」

 

その目は、体育祭に見せた轟と同じような目をしており…

 

 

 

「チッ…どいつもこいつも…下らねえな…」

 

学炎祭が中々始まらないことに、一人だけ皆んなから遠くに離れてる爆豪は、苛立ちのあまり舌打ちをする。するとここで爆豪より、背の小さいツインテの女の子、美野里が好奇心でトコトコと爆豪に近づいてくる。

 

「あー!やっぱりよく見たら()()()に出てた爆発のお兄ちゃんだー!」

 

「は?」

 

ここで美野里のことに初めて気付いた爆豪は、美野里に視線をやる。

 

(なんだコイツ…見たまんまガキじゃねーか、実力はさておき、運動会?)

 

心の中にいくつか疑問が湧き上がる爆豪を御構い無しに、美野里はにっこりとした笑顔で話しかけてくる。そして美野里は体育祭のことを運動会と言っている、雲雀と同じだ…

 

「私ね、美野里って言うんだよ〜♪宜しくね!ところでお兄ちゃんに聞きたいことがあるんだけど」

 

「あ?」

 

「爆発お兄ちゃんは運動会で優勝したのに、どうして最後縛られてたの?悪いことでもしたの〜?ね〜ね〜どうして〜?」

 

爆豪は美野里の言葉を聞いた途端、体育祭の最後の轟との戦いを思い出した。本気を出さず、納得のいかない勝利を手にし、終いには表彰台でガチガチに体全身を拘束されたのだ。そのことを思い出した爆豪は、屈辱と怒りと言ったあらゆる感情を思い出し、額に血管を浮かばせる。

純粋な子供の心を持つ美野里とはいえ、初対面。ましてや触れてはいけない所に美野里は触れてしまった…そう、爆豪の逆鱗を…

その瞬間、表彰台でオールマイトに見せたあの吊り目90度の厳つい憤怒の顔を100%に再現させ…火山の噴火の如く、怒りを爆発した。

 

 

「ぶっ飛ばすぞクソガキ!!!!!!」

 

 

瞬間。爆豪のこれまでにない壮絶な怒りが爆発した。更には怒りのあまり、思いっきし掌を爆発させた。校内グラウンドはおろか、学校の外にまで爆豪の怒号が響き渡った。そしてそんな怒りに満ち溢れてる爆豪の一番目の前にいる美野里は、まるで人生産まれて初めてこんなに怒られたと言わんばかりに、目をまん丸にし面を食らったような顔をした後、目をうるうると揺らし、顔を歪ませ、やがて目を瞑っては頬に大量の涙が零れ落ち、顔を真っ赤にして号泣した。

 

 

「う、う、うわあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんん!!」

 

 

そして怒号の次には爆豪に負けないくらいか、あるいは同じくらいか…学校の外にまで美野里の泣き声が響き渡った。

この場にいる皆は一斉に爆豪と美野里に振り向く。

 

「かっちゃん!!?」

 

「「「「爆豪(ちゃん)(くん)!?!」」」」

 

「「「「美野里(さん)(ちん)!?!」」」」

 

皆はなんでこんなことになったか分からず、駆け寄る。

 

「み、美野里さん!大丈夫ですか!?」

 

「こんなに泣くとは…()()()()()()()()()()以来だ…」

 

「美野里!美野里!?何があったんです!?」

 

「美野里ちんどーしたの急に泣いて!?てか何かされたの!?」

 

月閃の皆んなは美野里を心配するが…一方爆豪の方は…

 

「離せテメェら!!どけクソモブども!!此処にいる奴ら全員爆殺してやろうか!?どいつもこいつも俺をコケにしやがってぇ!!」

 

「落ち着けよ爆豪!何があったんだよ?!」

 

「爆豪くん!まずはその拳を鎮めたまえ!女性に、ましてや子供に暴力はいけない!」

 

「爆豪ちゃん何があったか分からないけど冷静になるのよ…」

 

「やめろ爆豪!落ち着け!…うわっ!?こいつ…!なんつー馬鹿力だよ!」

 

此処にいる雄英生全員が爆豪を取り押さえている。

 

「爆豪くん!?美野里ちゃんに何したの!?というか、何で怒ってるの!?」

 

「かっ、かっちゃん落ち着きなよ!何でまたそんな…」

 

「クソデクは黙って死んでろ!!いやぶっ飛ばさせろ!殴らせろ!!!」

 

「ええ!?酷い!!」

 

飛鳥と緑谷は止めるものの、またしても怒りが込み上がってきたのか、緑谷を見つめて殴ろうとする。そんな理不尽極まりない爆豪に、緑谷は驚く。

どうやら美野里と爆豪は最悪の組み合わせだったらしい…それも雲雀よりも…

ここで見てられないのか、仲間を泣かされたことに腹が立ち、月閃の皆は爆豪を睨みつける。

 

「爆豪さん?と言いましたっけ?儂らの仲間、美野里さんを泣かしたこと…断じて許しませんよ…!ブチのめされる覚悟は出来てるけぇーのぉ…?」

 

「爆豪ちんマジで許せないんですけど…!!アタシギャルだけど、仲間侮辱されるのは許せないんだから…!!」

 

ここでまず出てきたのが、夜桜と四季。夜桜は黒い怒りのオーラを出し、四季は目を細めて睨みつけている。四季はそれはそれで怖い感じはしないけど…

 

「う、うわぁ!月閃怖え…特にあの夜桜って人…マジでヤベェぞ!おい爆豪、謝れって」

 

「爆豪ちゃん、詳しい内容は分からないけど女の子泣かせるのは良くないわ…謝らないと…」

 

「テメェらクソモブ供は黙ってろっつってんだろ!!!」

 

しかし聞く耳持たずの爆豪は、荒ぶるだけの様子だ。

 

 

「美野里よ…お菓子だ…」

 

「うっぐ…ひっく……いらないよおおおぉぉぉぉ!!うえぇぇぇぇんん!!あのお兄ちゃん怖いよ嫌だあああぁぁぁぁ!!」

 

「なっ!?あの美野里が…要らない…だと?……重症だな…」

 

一方叢は取り敢えずまだ泣き止んでない美野里を落ち着かせるため、胸元からお菓子を出して美野里に渡すものの、美野里は首を横に振る。そんな美野里に信じられないという顔をする叢。

美野里には爆豪の怒りが相当なショックだったらしい…それもそうだ、まさかあんなにも怒られるなんて思ってもいなかったから…だがそれが爆豪という男だ。

 

「………叢さん…美野里さんをお願いいたします…」

 

「雪泉…?」

 

今まで黙っていた雪泉は、怒りを蓄えた目で、半蔵学院と爆豪抑える雄英生たちに向かって行った。

 

「半蔵学院の皆様、そして…雄英生の皆様!!」

 

近くまで来た雪泉が一喝すると、皆は一斉に振り向き、黙り込む。

 

「貴方たちの行動…そして体育祭での皆さまの実力、そして態度を見て改めて思いました…」

 

その言葉に、何故か胸騒ぎがした。緊張に近い圧迫を感じて…

 

「貴方たち雄英生も、半蔵学院と同じく悪そのもの…!!貴方たちに正義を名乗る資格はありません!!」

 

「「「「!!??」」」」

 

そして空気の流れが一気に変わった。先ほどまで爆豪と美野里があんな事になってたのに、今は違う雰囲気の流れになった。

 

「あ、悪…?正義を名乗る資格はないって…どういう意味ですか…?」

 

「そのまんまの意味です…」

 

お茶子の言葉に即答する雪泉。そして雪泉は峰田と爆豪を見やる。

 

「特にこの二人…一人のこの者は、性欲にまみれています…とても正義とは思えない…いいえ、寧ろ悪そのものです…!薄汚れたあの善忍と同じ…」

 

「あっ、それは納得いきます。よかったらコイツ懲らしめてやって下さい。煮るなり焼くなり好きにしてしまって構いませんから」

 

雪泉の言葉に、耳郎はスカッとした表情で気絶してる峰田の首をつかみ差し出そうとするものの、「要りません」と断られた。

 

(……薄汚れたあの善忍と同じ…?)

 

その言葉を聞いた飛鳥は、誰のことだろうと首をかしげる。

 

「まあ良いでしょう…次に問題なのは…そこの貴方です…!彼こそ…悪そのものです!!」

 

雪泉は気を改めて指をさす。その指差した方は考えるまでもない…当たり前だろう…

 

「……あ?」

 

爆豪勝己。

 

「あ、あ〜…」

 

皆は納得した様子で頷く。そして自分のことが悪だと言われ、自分のことだと理解した爆豪は、又しても怒りに染まる。

 

「んだとテメェ!!!」

 

「言ったそばから落ち着け!」

 

爆豪が暴れそうになるものの、皆はそれを止めに入る。

 

「本当のことでしょう?私たちの仲間、美野里さんを泣かせ、体育祭でも見せた野蛮である貴方のような暴力的な性格、悪と思わせる醜態…何より見苦しい……貴方のような人間はとてもではありませんが、正義とは思えれません…悪そのものです。私達で言う悪忍と同じですよ?」

 

雪泉の冷たい目線、ぐぅの根も言えない正論に、皆は納得するしかなく、爆豪はビキビキと怒りを露わにし、額に血管を浮かばせる。

 

「テ・メ・エ・!!!」

 

完全に目は真っ白、見ればわかる…これはもう完全に怒りで行ってる。

 

「そ、そんな…あのかっちゃんがこんなに物を言われてるなんて…月閃?この人達全員すごい人達だ…!!あのかっちゃんが罵られてるんだ…こんなの滅多にない…!」

 

「お前は何に怯えてんだ緑谷」

 

爆豪が罵られてることに驚愕している緑谷に、聞こえてた轟は軽く突っ込みをいれる。

 

「しかしまあ、確かに向こうも爆豪に対してあれほど言うとはな…口だけじゃねえ…恐らく…あの気配……」

 

(飛鳥達より強え…)

 

自分でも本気で勝てるかどうか…そう思ってしまうほど、雪泉の気配は只者ではないのだ。

 

「何より貴方たちは…全員弱いです…」

 

「「「「!?!」」」」

 

「貴方たちの体育祭を見てみましたが…どれもこれも力が足りてない…一年生だからと言うのもありますが……これで英雄(ヒーロー)を名乗るつもりなのですか…?笑止千万ですね…」

 

「な、んだと…?」

 

雪泉の言葉に悔しい者もいれば、歯ぎしりを立て、怒りを込み上げる者もいる…それもそうだ。皆んな個人によるが、ヒーローになる為の努力はしてきた、頑張ってきた、まだ始めたばかりとは言え、体育祭だって通してきた。それなのに、彼女は「弱い」の一言で片付けるのだから…

 

「そんな者たちならいっそ、この世の正義には必要ありません…」

 

「待ってよ雪泉ちゃんそれどう言うこと?」

 

「あっ、飛鳥さん!?」

 

ここで、雪泉と雄英生達の目の前に飛鳥が割り入ってきた。

 

「飛鳥さん、何でしょう?」

 

「皆んなが弱いってどう言うこと?この世の正義に必要ないってどう言うこと?それは本気で言ってるの?……テレビか何かで見てたから分からないかもしれないけど…少なからず私達は近くで観てきた…だから分かるよ…皆んながどれだけ努力したか…どれだけ強い想いでヒーローになろうとしてるのか…それなのに…そんなこと言うなんて…間違ってるよ!」

 

飛鳥はいつになく真剣な目つきで雪泉に抗議する。しかし雪泉は冷静さを保ち崩さない。

 

「では、逆に貴方に聞きます…何が正しいのでしょうか?何が正義なのでしょうか?」

 

「そ、それは…刀と盾だよ!戦うための力だけじゃない…誰かを守る力だってある…盾だって力だよ!」

 

飛鳥は皆と一緒に居て成長した。刀とは何か?盾とは何か?その答えは雄英の生徒たちにあった。それはヒーロー…

 

ヒーローは敵と戦う力を持ち、弱き人々、市民を、大切な人々を守る力だって持っている。

 

そう、この子たちヒーローがそう教えてくれたんだ…

 

 

「ふっ…聞くに堪えない綺麗事ですね」

 

しかし、そんな雪泉は、嘲笑うかのように、鼻で笑い、哀れな者を見るような目で小馬鹿にするようにそう言った。

 

「なん…ですって!」

 

「あの人…!」

 

バカにされた飛鳥は、雪泉を睨みつける。同じ善忍とはいえここまで違うのか、怒りしか込み上げてこない。

意見が違うのはしょうがない、だがその人の覚悟を笑うとならば別だ。

 

「貴方たち、何もわかっていませんね?いいですか、正しい力などこの世には存在しない。理屈をこねたところで力とは悪意でしかありません…ただ、力さえあれば全てを統べることができます」

 

「す、全てを統べるって…」

 

雪泉の言葉に皆(爆豪以外)は驚かされた。そりゃあ確かに力というものは理屈をこねたところで悪だ。力があるからこそ使い、人を苦しめる。自分勝手な敵(ヴィラン)に、悪忍だってそう…あの抜忍もそんな感じがした。それは事実上仕方ない、仕方ないのだが…だからこそ力で全てを統べる?何だかそれこそ本当の悪に近いような気がした。

 

行き過ぎた正義も、時には悪に変わる。

 

「力で全てを統べて…アンタはどうするんだ?何がしたい?」

 

ここで質問してきたのは轟だ。質問の声に雪泉は反応し視線を変える。

 

「それは…この世から悪を無くすことです」

 

「「「「え!?!」」」」

 

この世から悪を無くす?何言ってんだ?

 

悪といえば…悪忍だけでなく敵も無くすというのか?

けどオールマイトが現れてから悪忍は知らないけど、敵の出現率は抑制されている。

まだ街中などで犯行を行う敵はいない訳ではないが…

しかし、そんな事が許されるはずがない。

 

「この世から悪を無くす…雪泉ちゃん、そんな事、許されるはずが…」

 

「誰も許可なんて求めていません…悪の存在そのものは、人を苦しめます…それだけは何があってもならないのです…それとも何ですか?貴方たちは悪の存在を許すというのですか?」

 

「許すというか、なんというか…うぅ〜ん…難しい!」

 

「そんなこと、今まで考えてもなかったわ…」

 

尾白は髪をくしゃくしゃと掻き、蛙吹は自分の頬に指を当てながら、難しい顔をする。

ヒーローを目指す彼らには難しい話以前に考えたこともなかった。

敵がヒーローにやられて捕まる。逆の立場、敵がヒーローを殺すというのもある。そんなことが当たり前だった。いや、それしか見てこなかった。

しかしこの雪泉という少女は悪の考えそのものを否定している。

まるで、少しでも悪の可能性と感じるのであらば、確実に潰す。

彼女からは危険な雰囲気しか感じない。そう思えたのだ。

 

「それに聞いたところ、貴方たち一部の半蔵学院忍学生を含め、雄英生徒たちは『敵』との接触があったと聞いています…しかも二度も…」

 

雪泉が言ってるのは間違いなく敵連合のことだ。半蔵学院だけでなく、他の忍学校もこの噂は既に出回ってたそうだ。まあ無理もない…逆に出回らない方が可笑しいくらいだ。

 

「貴方たちはヒーローになるのでしょう?それなのに、数が多いにも関わらず敵の大将を捕まえられない醜態、二度も逃げられるような失態。恥ずかしくないのですか?」

 

「この人…痛いところ突くなぁ…」

 

「んの野郎…!!」

 

姿こそ見えないが、葉隠は恐らくため息をついてるのだろう。どんな顔をしてるか分からないが…

そして爆豪は怒り爆発寸前だ。物間に罵られてた時以来だろうか…

 

「そんな惰弱な正義など目障りだ…悪同様に消えてしまえば良いんです…」

 

雪泉のその言葉には、どこか怒りと憎しみが含まれてるように皆は感じた。ここまで悪の存在を憎む人間は見たことない。

 

「では…気を取り直し改めて、これにて今から、学炎祭を始めましょう…!」

 

目を大きく見開き、静かな声でそう言った途端、月閃と半蔵は武器を構える。

 

 

 

 

「貴方は確か叢さん…と、言いましたね?何がなんでも、負けるわけにはいきません…!」

 

義兄である村雨の忍になる夢、意思を受け継ぎ成長した斑鳩。

 

「斑鳩…!」

 

般若の面を被っている叢。因みにこの場で彼女の素顔を見たものはまだ誰もいない。

 

「アンタらの意見はよぉく分かった…だからってアタイらは負けねえさ!ところで…お嬢さんいい乳持ってますなぁ…こりゃあ揉み甲斐がありそうだねぇ〜♪」

 

情に厚い姉貴派、だがセクハラ大好き変態親父となって、手をワキワキ動かしている葛城。

 

「なっ…なんて破廉恥な…!先程の変態葡萄少年に続いて…ここにはマシな輩は居ないのですか!?何故セクハラ好きな輩が多いんじゃ!その性根、儂がぶち壊してやるけぇーのぉー…!」

 

峰田に続いて葛城へと、変態が続いて怒りが溜まる夜桜。

 

「柳生ちん!その眼帯めっちゃ可愛いんだけどぉ〜!あ、じゃあウチが勝ったらその眼帯もらうからね〜♪」

 

先程の様子が嘘に見えるくらい絶好調な様子の四季。

 

「やれるわけないだろう…この眼帯は俺にとっては特別なものだ…」

 

雪泉と同じく、冷たい氷の目線で睨む柳生。

 

 

「えっぐ……ひっく…、」

 

「美野里ちゃん、大丈夫?雲雀もね、爆豪くんのことはとても怖いしよく泣かされるんだ…」

 

ようやく落ち着いたのか、涙を拭う美野里に、慰める雲雀。

 

「ありがとう…雲雀ちゃん…美野里、大分落ち着いてきたよ…」

 

「それなら良かったよ♪雲雀もね、よく爆豪くんには泣かされてるんだ…怒ると怖いし、酷い暴言吐いてくるし…」

 

「え?雲雀ちゃんもそうなの?」

 

「うん!だからそんなに怖がらなくても良いんだよ♪」

 

「そうだったんだ!じゃあ雲雀ちゃんも美野里と同じ仲間だね♪」

 

意気投合したのか、いつの間にか仲良くなった二人。この二人だけ状況が違うのだが…

 

 

「なんか…凄いことになったな…しかも勝手に因縁つけられたし…」

 

雄英生徒たちは、なんとも言えない複雑な気持ちを抱きながらも、こうして学炎祭を観守るのであった…

 

「……やっぱあの人…」

 

轟は、雪泉の何かを感じたのか、ずっと見つめている。

 

なにやら自分に近い何かを感じる。自分と似ている気がする。そう思えたのだ……

 

 

 

 

 

山奥にある、古びたお屋敷…そこはかつて飛鳥たち半蔵学院が襲撃した蛇女子学園と同じ学校であった。いや、今は新・蛇女子学園という学校である。

何でもあの一件以来から、学校を修復したそうだ。再現度100%である。

その暗い屋敷の中には一人、今のリーダーなのだろう、白色の短髪をしたボーイッシュな女性、雅緋と名乗る者がある男の人物と話していた。

 

「んでそれで、俺に何か用か雅緋?」

 

「先程、元死塾月閃女学館の生徒が二人、『両備』と『両奈』という者がこちらに転校したいと申しておりまして…その報告に上がりました…」

 

「月閃…?ああ、あの善忍養成学校か…しかし今時こんな時期に転校するなんてな…ましてや善忍とは……んで、ソイツら二人は()()()()()使()()()のか?」

 

「…実力は保証します……二人とも新人の一年ですが、今此処にいる他の一年より彼女たち二人が一番かと…」

 

「そうか分かった…手配はしとく、もう下がれ…ご苦労だった」

 

「はっ…失礼いたしました」

 

そして雅緋が頭を下げ、部屋を出て扉を閉まると同時にこの男はこう言った…

 

 

「死にたくなけりゃあ、命を削れ」

 

 

灰色の厚いコートを着用し、水族館のようなヘルメットを被っているその男は…只者ではない雰囲気を漂わせていた。

そして、此処の新・蛇女子学園がどうなるのか、想像もつかないだろう…




求めすぎる正義は良からぬ方へ…最後の闇も、良からぬ方へ…?一体どうなってしまうのでしょうか?
次回もお楽しみに下さい。

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