光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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えー、皆さま大変お待たせいたしました!久しぶりの小説投稿です。やっとできました…ぶっちゃけ一週間前から執筆し始めてたのですが、なかなか手がつけられなくて…暇な時間を使ってなんとか投稿することが出来ました!取り敢えず一週間に1回投稿は守ったぞやったぁ!そしてこの話で体育祭編終了です。


46話「雄英体育祭終了」

轟と爆豪の決勝戦が始まる数分前では、轟は控え室で、ただ何処か悲しく迷いが見えるその目でジッと自分の左手を見つめていた。この力があったせいなのか、引き継いでしまったこの力を持ってた時は、ずっとちちおやを否定することしか考えたことがなく、その考えで生きてきて、今までずっとそうしてきた。

自分は父親を否定する、ただそれだけだった。

だがそんな自分の苦しんでいた思いを、壊してくれるかのように、緑谷は全力で必死で抗いこういった。

 

 

『君の力じゃないか!!』

 

 

その言葉を思い出すだけで心が和らぎ、優しさを感じる。たった一つの彼の行動が、想いが、人の心を変えたのだ。

だからあの時は一瞬、父親のことなど忘れて、本当の自分の強さを出しぶつかった。

けどそれが良いことなのかと言ったら頷けることではない。

自分がこの左の力を使えば、完全に父親の思い通りになる…それは嫌だ。

そう、それは嫌なんだが…記憶の中の母はこう言っていた。

 

なりたい自分になって良いんだよ。

 

お前はお前の力を持てば良いんだよ。

 

母の優しい言葉を思い出し、自分は本気で戦うべきなのかもしれないと考えてしまう。だがどっちが本当の答えで、どれを選ぶべきかが分からない。自分が自分でなくなってしまうかのように…

では一体どうすれば良いのか…?考えるだけより難しくなり分からなくなってくる。

 

「お母さん……俺は…どうすれば……」

 

いつの間にか思っていたことが声に出ていた。

何より、お母さんは許してくれるだろうか?この醜い左目も持ち、本気を出してしまったことを、お母さんは許してくれるのか?それすら不安だった。

今まで父親を完全否定していたから、他のことは考えられなかった。こんなこと考えられるのは初めてだった。

 

そんな時だった。

 

トガアァン!!

 

「?」

 

勢いよく扉が開き、振り返ってみてみるとそこには…

 

「ん?あァ?」

 

厳つい顔で、扉を蹴り開けた爆豪勝己であった。

しかしここの控え室には轟が入っている。爆豪がここに居るのは可笑しいハズだ。

 

「あぁ!?なんでお前がここに…?控え室はー……あっ!ここ俺の控え室じゃねえのかクソが!!」

 

「………」

 

自分がここの部屋でなく、間違えたことに気付くと軽く舌打ちをする。そんな爆豪に轟は無表情のまま数秒間黙って見つめると、また左手の方に目を移す。

その冷静、いや何の反応もない彼に対し爆豪は軽く苛立ちを覚える。

 

「おいおい……部屋間違えたの俺だ……それは悪かったよ……けどなぁ、決勝相手に黙りこんで………んでもって何だその態度はァ…?オイオイお前、()()()()()()()半分野郎があァ!!!」

 

机を思いっきり殴り爆破させた。壊れてはないが焦げ痕が付いてしまった。それでも轟は反応なしに、見向きもせずに左手を見つめる。

 

「どこ見てんだよ……か」

 

「ああ!?」

 

爆豪の言葉を思い出したのか、ポツリと呟いた。

 

「そういえば、さっきの戦いで緑谷にも言われたな……アイツさ、自分があんなにボロボロになってるのに、事情に割り込んで来て、人の抱えてるもんぶっ壊して来やがった…

 

お前、アイツとは幼馴染なんだってな、昔からああ言う無茶やるヤツだったのか?」

 

「……っ」

 

幼馴染、緑谷、それを聞いた途端、爆豪の眉間のシワがよせ、より苛立ちを覚えた。その脳裏に浮かぶその光景は、幼い頃の自分だった。

遊んでた時にたまたま川に落っこちてしまったことがあった。

皆んなは心配そうにしてたが、数秒後に直ぐなんとかなる。と思い、心配なんてしてなかった。しかしそれは、ある一人を除いて。

 

 

『大丈夫?たてる?頭打ってたら大変だよ!』

 

 

なんともなかった自分に心配の眼差しを向ける、石っころだと見下し続けてきた緑谷に手を差し伸べられた。

そのことを思い出すだけでよりイライラが溜まり、爆豪はとうとう机を蹴飛ばした。

 

ドガアアァァン!!

 

「そんなもん…どうでも良いだろうがァ!!」

 

蹴飛ばされたことに、無口ではあるが軽く戸惑いを見せる轟。

 

「あんなクソナードの話を俺にするんじゃねえ!アイツを思い出すだけで虫酸が走るんだよ……」

 

ギリッと歯ぎしりを立て、忌々しく轟を睨みつける。

 

「何でも良い、テメェが()()()()()()()()()抱えてたってなぁ、こっちはどうでも良いんだ…本気で来やがれ!!俺がお前のそれを全部、上からねじ伏せてやるからよ……!!」

 

「!」

 

吐き捨てるように背中を向けてそう言うと、控え室の部屋を出て行った…

 

 

 

 

 

 

 

 

んで現在。

 

『さぁいよいよラスト!勝っても負けても恨みっこなしの勝負だ!!雄英一年の頂点が今この戦いで決まる!!決勝戦、爆豪勝己VS轟焦凍

 

今START!!』

 

マイクの合図が開始した途端、舞台は氷漬けにされた。瀬呂ほどではないが、巨大な氷結が爆豪に襲いかかる。

 

『おおっとやっぱり来ました!轟、爆豪の近接戦を警戒したのか氷結技を繰り出したゾ!緑谷のような衝撃波は出ないため、爆豪もろに食らったァ!!これもう優勝者決定じゃね!?』

 

マイクがそう言うと、巨大な氷の中から爆音と声が響き渡る。

 

「どいつもこいつも緑谷緑谷って……んのクソがあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

ズバコオオォォォン!!

 

なんと爆豪は爆破で氷結を防ぎ、モグラのように掘り進めたのだ。そのためか爆豪にはダメージどころか何処も氷漬けにされてるところが見当たらない。

轟も想定内だったのか、直ぐに行動に入る。この氷結は一瞬で決めるものではなく、次に警戒しての攻撃だ。

 

「お前…本気出せっつったろ……!」

 

忌々しく睨みつける爆豪。轟が氷結を繰り出そうとするも、爆豪の方が早いのか、爆破を利用し空中に飛び、轟の方に通り越すと、左の髪を鷲掴みにして思いっきり投げ飛ばす。

 

「んの……ナメ…っっってんのかバァァアカァ!!!!」

 

投げると同時に爆破を使ったため一気に場外にまで飛ばされそうになる。しかし轟もやられてばかりはいないのか、右手で後ろに氷の壁を作り出し、場外はなんとか免れることが出来た。それと同時に右足で前方爆豪に向けて氷結を繰り出す。この威力だと爆破で空中に浮くにも、飛びすぎては直ぐ場外…また轟の近くにいれば、隙が出来て一気に氷漬けにされてしまう。

 

「んのクソ野郎…!!」

 

炎を出さず、氷のみを使う轟に爆豪は益々苛立ちを覚える。

 

「爆指斬!!」

 

爆豪は両手で3本の指、計6本の指、六爪で氷を斬るかのように指のみを爆破させ、氷結を一気に破壊する。その氷は瓦礫が崩れるかのように壊れていき、その目の前には轟が見えた。

 

 

 

「かっちゃん、もう既に技名まで決めてたんだ…」

 

「うわぁ…爆豪くんやっぱり強い……」

 

応援席のなか、緑谷とお茶子は二人の戦いを見守るように真剣に見つめている。確かに爆豪は強い、だが轟が強いと言うのも事実なのだが…今の現状では爆豪がほぼ押している。

 

「これって、爆豪くんが勝つのかな?」

 

「今のところは爆豪が押しているが、轟もやり手だ。炎を使えばどうなるか分からん……あいつ、緑谷戦以降どこか調子が崩れている。何があったか知らないが、少なくとも迷いが見える」

 

「迷い?」

 

轟の戦いの何処に迷いがあるのか分からない雲雀は、首を傾げて柳生を見つめる。

 

「炎を出した時からだ…轟のヤツ、一体何があったんだ?」

 

柳生はそう呟くと、雲雀から再び轟へと目線を移す。

 

(まあ轟の方はさておき、ムカつくことに爆豪のヤツは順調なのか?苛立っているようには見えるが、戦う度にセンスが光るな……戦闘訓練の時から大分強くなってるように見える、色々あったからなのか成長しているな…)

 

轟だけでなく爆豪の変化にも気づいた柳生は、心の中で呟く。

 

「轟くん……」

 

ソッと小声で呟く飛鳥は、轟の迷い見える顔を見つめている。

 

「まさか…まだあの事を、気にしてるのかな…?」

 

父親への憎しみの思い。炎を出した時からもう乗り越えたと思った。けど今の現状を見てまだ乗り越えてないことに気付く。

 

 

 

本気を出さない轟に、爆豪は歯ぎしりを立て、爆破を何度も叩き込む。轟はそれを防ぐかのように何度も氷の壁を張り巡らせる。

 

「いい加減に……本気を出しやがれええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

炎を使わないどころか、攻めに来ない轟に爆豪はますます苛立っていく。埒があかないと悟った爆豪は両手の掌を向け高威力の爆破撃を食らわす。

 

「っ!」

 

何層もの氷の壁を張った氷壁を、一気に全て壊し、隙が出来たところを爆豪は見逃すことなく、すかさず間合いを詰め左側を殴るように攻める。轟はなんとか避けることができ、肘を凍らせた。そのことに冷や汗を垂らす爆豪。

 

(左を使う気配が全くねえ……こいつ、俺じゃあ力不足だってのか…?)

 

そう思ってしまうのも無理はない、緑谷には左を使っても、爆豪には使ってこない。それはつまり、爆豪にとっては『緑谷は強いから使った、お前はそうでもない』、そう解釈することも出来るだろう。

 

「テメェ…人を虚仮にすんのも大概にしやがれ!!!俺が取るのは完膚なきまでの一位なんだよ!!」

 

大声で荒げる爆豪に、轟は軽くたじろぐ。その声は舞台のみならず観客側の全員にまで響き渡る声だった。

 

「舐めプのクソカスにとっても取れねえんだよ!!デクや彼奴ら(飛鳥)よりも上に登らなきゃ意味ねえんだよ!!」

 

爆豪の言葉から緑谷の名前が出たことに、緑谷は僅かながらに反応する。そして飛鳥の名前が出たのは、なぜ彼女を超えたいのか?それは伝説の忍の孫だと知ったからだ。

轟との会話を聞いてた爆豪は、あの時初めて飛鳥が半蔵の孫だと知った。今まで知らなかった爆豪にとっては、彼女の存在は大きくなった。

 

デクと同じ無個性みたいなヤツなのに、何にも感じねえのに…俺はアイツがその伝説の忍だの何だのとスゲェヤツの孫だってのを気付くことが出来なかった。

 

ヒーローとは、常にピンチを壊していくもの。

轟は忍の力をも越えるよう訓練された。なら、トップを狙うならヒーローも敵も忍も関係なく、上から捩じ伏せ一位を取れば良い。だから蛇女の時も負けられなかった。寧ろ全員相手をして勝ちたかった。

 

「勝つつもりもねえなら俺の前に立つんじゃねえ!!」

 

全員本気でここで立っている。お茶子だけでなく多くの、いいや…全員本気を出して挑戦している。それなのに轟は本気を出そうとしない。

まるで緑谷の時のようだ。

 

「何の為に此処に立ってるんだクソがあぁぁ!!!!」

 

此処まで人に怒鳴るのは緑谷を除いてそうそうない。爆豪の本気の気持ち。

一つ一つの言葉を聞くだけで轟の心は棘が刺さるかのように痛んでくる。

 

分かってる、爆豪…お前の気持ちは分かってる……けどな…

 

緑谷と戦ってから、俺は…自分がどするべきなのか、それが正しいのか、もう何がなんだか分からなくなっちまったんだ……

 

目を潤わす轟は、空中に浮き回転する爆豪を見つめる。

 

 

「負けるな頑張れ!!」

 

 

「!!」

 

緑谷に声をかけられた轟は、ハッと我に返る。

 

「んのクソナードがぁ…!!」

 

轟を応援する緑谷に、忌々しい目線で睨みつける爆豪、しかし…

 

(…そうだ、そうだよ…俺の前に立つ以上、テメェは)

 

グルグルと旋回し、不敵な笑みを浮かべ轟に迫ってくる。

そんな轟は、緑谷の言葉に心打たれたのか、とうとう炎を出す。

 

(俺に勝つ為に、頭を回してりゃあ良いんだよ…!!)

 

炎を出した本気の轟。それを見た爆豪は爆破の威力を一気に増す。実力は互角、後はどっちが勝つか…この一瞬で勝負が決まる。

 

その時だった、轟の脳裏に父と母の記憶が蘇った。

 

爆豪に当たる寸前、轟は下を向き炎を止めた。そして代わりに氷を出して…

 

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!!」

 

 

その時、巨大な氷は跡形もなく壊れ、舞台は大きな爆煙に包まれる。

そのためなのか、二人の姿は見受けられない。少なくとも二人のうち誰かが場外になってる可能性も考えられる。

 

『麗日戦に見せた特大火力に勢いと回転を加えた人間榴弾!!アレをもろに食らったとなると轟は無事じゃ済まない気がする!!』

 

マイクの言葉あらずとも、今のを見て応援席はおろか、観客側の皆んなは騒めいている。

 

『轟は緑谷戦で超爆風を撃たなかったようだが…果たして勝負の行方は……

 

 

……って、あ』

 

爆煙が消えていくなか、舞台の上にたつ景色とは…それは…

 

 

「……は?」

 

爆豪、舞台の上に倒れており、爆豪の目先には、場外で気絶して倒れている轟。

爆豪は記憶を辿っていくなか、蘇ったのは轟が火を消し氷を出したあの瞬間。

そう、火を消したのだ。後少しのところで、完璧に勝負が決まるところだった。

本気で戦うことができたのに、轟は炎を止めた。

その事実を知らされ、爆豪の怒りは頂点に達した。

 

「…っ!!!テメェおい!!」

 

怒鳴り散らかし近寄り駆けつけるが、轟は起きるどころか、目を覚ます気配がない。そしてとうとう爆豪は轟の胸ぐらを掴みだす。

 

「ふざけんなよ!!こんなのありかよ…!!!こんなの…こんなの!こん……な……」

 

何度も訴えかけるようにそう叫ぶものの、やはり目を覚まさない。

そして爆豪は何度もなんども揺さぶっていると、睡魔が襲ってきたのか、目を瞑りその場に倒れこむように眠ってしまった。

そして爆豪が眠っているのを確認したミッドナイトは…

 

『轟くん場外!よって、爆豪勝己くんの勝利!!』

 

以上をもって全ての競技が終わり、今年度雄英体育祭一年生は…ヒーロー科一年A組み 、爆豪勝己となった。

爆豪勝己は頂点に立つことができた、しかしそれはあくまで…立場の話、この場合話が別だ。お互い本気同士で戦ってこそ意味がある。なのに相手が本気を出さず、自分が勝っても意味がない。

相手が本気を出さずして自分が勝てるのは当然なのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから時間が経ち、爆豪も目を覚ましたことで表彰式が行われた。

それぞれ台には3〜1の番号があり、3番の台には飯田、常闇が立っており、2番の台には轟、そして1番は爆豪。

それは良いのだが…

 

「おい、爆豪のやつ締まらねえよな…」

 

「見ろよ、観客たちはおろか、飛鳥たちもドン引きだぜ?」

 

「いや、アレはな〜…爆豪一位なのによ…」

 

 

A組の皆んなは苦笑しながら爆豪を見つめている。当の本人、爆豪勝己は現在…

 

「〜〜〜〜〜!!!っっ〜〜〜!!!!」

 

口や腕、足、全身全体が鎖や手錠などで拘束されており、まるで何かを訴えかけてるかのように厳つい顔で轟を睨みつけている。そして轟はそんな爆豪を見向きもせず、ただずっと下を向いてる。

何故そうなったかと言うと、目覚めて早々状況を確認することなく猛威に暴れまわり、手がつけれなかった為、拘束具を使って無理やり拘束させたそうだ。彼らしいと言えば彼らしいが、そこまで爆発的な性格だと皆も引いてしまう。

 

一方飯田と常闇はいつになく荒々しい爆豪にため息をつく。

 

「爆豪くん…君は本当に…」

 

「悪鬼羅刹…」

 

二人はまるで鬼や悪魔をみるような目でそう言い引き気味になっている。

 

 

半蔵の生徒たちの反応は…

 

「なあ、アタイ…ある意味あいつのことスゲェって思えた」

 

「すごいというより…もはや拘束された猛獣…と言った方が正しいのでしょうか?」

 

「なんか…怖い…」

 

「雲雀、見るな」

 

葛城と斑鳩は猛威振るう爆豪に引き気味になり、雲雀はライオンでも見てるかのように怖がり、怖がる雲雀に柳生は手で目を隠す。

 

 

 

 

 

 

「さて、表彰式といえばアレね!メダルよ、メダル授与よ!」

 

そして今年でメダルを贈呈するのはミッドナイトではなく、あの超有名なヒーロー…

 

「私が来た!!!」

 

オールマイトだ。

 

 

「おおっ!オールマイトじゃん!」

 

「羨ましいよなぁ、一年はオールマイトに見てもらえるんだぜ?」

 

「しかも身近でな、こんなことそう滅多に無いぞ?」

 

 

オールマイトが現れては会場が大きく騒めく。それをも御構い無しにメダルを贈呈する。まずは常闇からだ。

 

「常闇少年おめでとう!君は強いな!ただ、相性差を覆すには個性に頼り切ってはダメだ!もっと自力を鍛えれば取れる択が増えるし、より強くなれるだろう!」

 

「御意…」

 

励まされるだけでなく、自分に足りないもの、自分が必要なことを教えてくれる、本当に良い人だ。それを実感した常闇は、一位を取れなかったことにほんの僅かに、悔しい目を見せる。

 

「次は飯田少年、君もおめでとう!いやぁ良い戦法だったよ!君の自慢な個性を活かして、一気に蹴りを付ける。相手が相手なら悪くなかったぞ!ただ、どれだけ良くとも必ず通じるとは限らない。もっと工夫し且つ、違う戦法も考えることも大切だ!後はその個性を他にどう活かすかによっても変わるぞ!君がもっと精進することを祈るよ!」

 

「っっ!はいっ!誠に有難う御座います!!」

 

(やっぱ硬いな飯田少年…)

 

飯田も常闇と同じく、言葉をかけられたことに常闇の表情とは違い、慢心な気分になってしまっている。

 

「さてと、次は…轟少年、二位…おめでとう。緑谷少年の戦い以降、何処か調子が悪かったようだね」

 

「っっ〜〜〜〜!!!」

 

「爆豪少年、少し煩いから待っててくれないかい?」

 

「っっっ!!〜〜〜〜〜〜〜!!!!!っっ〜っ!!!」

 

「ダメだこりゃあ…」

 

轟に話しかけるオールマイト、まだ轟をガン見し睨みつけてる様子に少し鬱陶しと感じたのか、オールマイトが声をかけるものの逆効果になった。

 

「仕方ない、話を続けよう…決勝戦で左を収めたのは、何かワケがあるのかな?」

 

「……」

 

ここで初めて轟はこくりと頷き反応した。

 

「緑谷戦でキッカケをもらって、分からなくなってしまいました……あなたが奴に気にかけるのも、なんとなく、少しだけ分かった気がします……」

 

迷いを生じていながらも、氷のように物静かにそう語り出す。

自分がいままで信じ、父親への完全否定、憎悪を糧に生きて来た。それが正しいと思ったしそれが己の生き方全てだった。だが緑谷の戦いでそんな考えが無くなってきたのだ。今はそれが、父親に引き継がれた力を使って正しいのかどうか分からないし、正直迷っている。

少なくとも父親に対する憎しみが消えていくような感じだった。

そして母の記憶を思い出した。思い出すだけで何処か心が安らぐような、癒されるような…そんな暖かい温もりを感じることが出来た。

 

「俺もアンタみたいな最高のヒーローになりたかった。俺がヒーローになりたかったのは、それなんだと思うんです………

ただ、俺だけが吹っ切れてそれで終わりじゃ駄目なんだと思った。清算しなきゃならないモノがまだある……俺が本当のヒーローになるには、それを片付けなきゃならないんだと……だから……」

 

「……顔が以前とは全く違う…そうか、緑谷戦で色んなことを感じたんだな……深くは聞くまいよ……今の君ならきっと、清算できる……」

 

何処か寂しく、悲しいような声で、懸命に言葉を繋げる轟に、オールマイトは労うかのように軽く抱きしめ、ポンポンと背中を叩いた。そんなオールマイトから優しさという暖かい、ほのかな温もりを感じる。

 

「さて、なんやかんやで色々あった爆豪少年!!全く、君が一位だってのに、この醜態はあんまりじゃないか…取り敢えず拘束具取ると轟少年に突っかかり揉め事になってしまいそうだからソレはこのままで良いか…」

 

「っっっ〜〜〜〜〜!!!!」

 

そんな彼は、轟から今度はオールマイトの方へと体の向きを変える。オールマイトが近づき口の拘束具を取り外す。

 

「取り敢えずまあ、伏線回収見事だったぞ!おめでとう!!」

 

「オールマイト…こんな1番なぁ、何の価値もねえ糞以下なんだよ!!!!世間が認めても俺が認めてなきゃタダのゴミなんだよ…!!!」

 

(目…スゲェ…ヤベェ…)

 

口の拘束具を取り外した瞬間にコレ。小さい子や雲雀が目の前にいたら号泣する位の怒りに染まった厳つい顔だ。

目なんかは90度近くにまで釣り上げており、多分こんな顔芸出来るのは世界で爆豪ただ一人だろうと断言できるほど凄まじいものだ。

ジッと見続けてると笑いが込み上げてくるがそこは笑ってはいけない…

 

「いやぁ、しかし君ほどのような人間はそうそういないさ…それにな、伏線回収なんてそう出来るようなものでもないんだぜ?寧ろ君はソレを誇って良いくらいだ!抑圧されたこの世の中、君のような勇敢な人間は数少ない。メダル(コレ)は、君の傷としての証だ!受け取ってくれよ!」

 

「要らねえんだよクソがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

メダルを差し出すものの、爆豪は今超絶機嫌が悪い。首を横に振るどころか、猛威振るう猛獣みたいに吠えている。

しかし結局メダルは渡される形となり、口に咥えさせられた。

オールマイトは小声で「似合ってるぞ」と言うものの、「煩えぶっ飛ばすぞゴラァぁぁ!!!」と爆豪は更に激怒した。

そんなやりとりをしながらも、オールマイトは観客たちや生徒たちを見つめる。

 

「さぁ!!今回は彼らだった、しかし皆さん!!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!ご覧頂いたとおり、競い!争い!高め合い!更に先へと向うへと登っていく勇敢たるその姿!!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!」

 

緑谷だけでなく、この場の多くの者はこう感じ、思った。

 

 

この体育祭で色々なことがあった。

 

誰にも見せなかった意外な一面があった。

 

圧倒的な強さを持つものを、その身肌身で感じた。

 

誰も知らなかった、その人の事情、本質を知った。

 

 

そして、次の次世代のヒーローになるのは自分だ、そうなりたいと思う人物も少なからずいるだろう…

 

 

他にも色々あるが、確実に言えること、それはその場の多くが体育祭を通じて大きく成長したことだ。

この戦いは勝っても負けても決して無駄にはならない…寧ろ更なる成長の高みとして持ってこいだった。

 

これから遭遇する理不尽、ある一部、恐らくヒーロー科の1年A組は必ずしも良からぬ最悪な悪意と遭遇するハズだ。

 

そんなピンチを乗り越えるためにも、強くなり、誰もが認めなくたって良い、誰かを助けれるヒーローにならなければならない。

 

 

「てな感じで、最後に一言!!!」

 

好敵手と書いて友と呼ぶ。

 

「皆さんご唱和ください!せーの!!

 

お疲れ様でした!!!」

 

「「「プルす…え?!」」」

 

「Plus Ultraは?!」

 

「そこはPlus Ultraでしょオールマイト!!」

 

皆はPlus Ultraの言葉だと思い言い出したのだが、オールマイトの予想しない発想に皆戸惑いを隠すことが出来ず、いろんな意味で騒めきだした。

そんなオールマイトは「あっ、やべ!……いやぁ、みんな早く終わりたいかなぁ…と」と言いつつ苦笑を浮かべる。

そんなヒーロー生徒たちとオールマイトのやりとりに、観客側は半分呆れたような様子だが、忍学生である彼女たちは、暖かく見守るように見つめていた。

 

「はぁ〜っ!終わったなぁ…!長かったよな〜!」

 

「一日中観てたわけですからね、長く感じるのも無理はありません…さっ、私たちはここで引くといたしましょう!」

 

斑鳩と葛城は先に帰ろうとする。しかし1年2年の彼女たちはまだ残るのか、皆んなの終わりを3人は待っている。

 

「ねえ、飛鳥ちゃん」

 

「ん?どうしたの雲雀ちゃん?」

 

突然声をかけられ振り向くと、雲雀は皆んなの様子をなんだか羨ましそうな目で見つめている。

 

「あのね、雲雀…この運動か…ううん、体育祭を見ててさ…思ったことがあるんだ……」

 

「思ったこと?」

 

「うん」

 

ここで初めて体育祭とちゃんと言った雲雀に飛鳥は内心少し驚いたものの、話を聞く。

 

「最初っから最後まで、皆んな諦めずに全力で競って、高みあって、戦って…一人一人誰にも見せたことのない一面を持ってて…この体育祭で初めて色んな人のことを知れた感じがして……その人の譲れない勝利や想いがあって………」

 

「……」

 

「皆んな、ああやって強くなっていくんだねって、なんかふとそう思っちゃうんだ。そう思うとなんか…羨ましくなって……雲雀も、出て見たかったなぁって」

 

「雲雀ちゃん…」

 

「……」

 

雲雀の言葉に飛鳥はおろか、近くにいた柳生も沈黙してしまう。雲雀の言うことは最もだ。自分ももしこの大会に出れたら、皆んなと戦ったら、自分はもっと強くなれるだろうと…そう思ってしまう。そう考えると雲雀の気持ちも分かる。

しかし自分たちは忍だ、忍というのは誰にも気づかれることなく、且つ誰にも存在を知られることなく世のため人の為に活動する。

忍になってからそんなことは当たり前だと思っていたし、覚悟の上だった。しかしこう思ってしまうと、ついそんな規則が鬱陶しく思えてしまう。そんな気がする…ほんの少しだけだが…

 

「それに…もし雲雀たちが忍じゃなかったら…雲雀たちはどんな生活を送ってたんだろう…」

 

そう言われてみれば確かにそうだ。もし自分たちが忍ではなかったらどうなってたんだろう?

自分たちは一般人として忍の世界を気にすることなく、こうした何気ない普通の超人社会に溶け込めるのか?

自分たちに個性が宿って皆んなみたいにヒーローを目指すのだろうか?

本当のクラスとして、1年A組の生徒となっていたのだろうか?

考えれば考えるほど色んなことを思い浮かべる。

でも逆のことも考えられる。それは忍のことだ。

自分がいなくなったら今の自分はどうなるのか?

他の仲間たちには出会うことがなくなり、忍の仲間はなかったことになるのでは?

 

 

いいや、そもそも自分たちは長く居すぎたのだろう。普通の生活に…誰もが住まう超人的となった一般社会。

忍の道とは離れた存在…そんな世界に自分達は此処に存在している。

それが敵連合や漆月を捕らえ、処罰する忍務とはいえ、自分たちが忍の世界の反対、ヒーロー世界に存在していることは確かだ。

そう、それは確かだ…でも。

 

「雲雀ちゃんの気持ち…分かるよ。でもね、私たちにだって私たちにしか出来ないことがあるし、それにもし私たちが忍じゃなかったとしても、きっと皆んなと会ってるかもしれない…それだけはハッキリ言えるかな。だって、私たちが忍でも、向こうはヒーローなんだから…だから今と変わらないかもしれないよ」

 

「飛鳥ちゃん…」

 

「それに、私もこの体育祭に出て見たかったって言うのは本心かな!だって皆んな強そうだったし、緑谷くんに轟くん、爆豪くんとは一度でも良いから手合わせ願いたいよ!」

 

天真爛漫にそう答える飛鳥に、いつの間にか雲雀は笑顔を見せていた。柳生は見せてはいないが、僅かながらに笑顔を…口角を吊り上げた。

 

「さってと!この後相澤先生の話があると思うから、それ終わったら皆んなで半蔵学院に戻ろうよ!」

 

 

これにて、雄英体育祭終了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレから時間は経ち、教室に戻った皆んなは相澤先生の話を聞いた。

相澤先生の話は至って短い、話によると明日、明後日は休みになるそうだ。

今日の体育祭の疲れを癒す為でもあるのだろうが、大きな理由は観に来たプロヒーローからの指名等を先生達がまとめるからだそうだ。それを休み明けに発表するらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

 

それは別として一方、体育祭終了の裏では…

体育祭で生徒たちの活躍を見ていた、仮面を付けている黒スーツの謎の人物は、人気のない歩道を平然と歩いていた。

 

「アレが次世代のヒーロー…ですか、流石は雄英、あれ程生きの良い個性を持った子供が在籍しているとは…まっ、セキュリティーの方は何とも緩かったですがね…っと、早速連絡しなければ……」

 

独り言を呟いていると、ポケットから携帯電話を取り出し連絡をしている。

 

「……もしもし、ハイ私()()()の『魔門』で御座います……ええ、ご依頼を頂いた情報は全て手に入れました。雄英の生徒に半蔵の生徒の写真も情報も入手済みです……ええ、では料金の方はよろしく頼みますね?

 

()()さん」

 

彼もまた、悪意を培う者だというのは、闇の者にしか知らない。

少なくとも攻め時ではない敵連合は今、忍とヒーローの寝首を狩る為に、少しずつ、的確に、次の戦いの準備をし始めているのであった…

 

 

 

 

 

 

 

 

たった一日で、これまでにないことを実感して来た。

そんな一日が過ぎて…翌日。

 

「え?ちょっと…轟…お母さんのところに行くって本当?お父さんに言わなくても良いの?病院のこと…」

 

「ああ、寧ろ親父にはそのことを言わないでくれよ」

 

轟邸は、相変わらず豪快な家で、日本だとより強く感じさせるような和風な豪邸であった。

No.2ヒーローだからこれくらいの家は持てて普通なのかもしれないが、実際これほど大きいとは思えないし、まず和風というのがまた良い。

鳳凰財閥である斑鳩の家にも似ているのかもしれない。

そんな轟邸では、轟は病院に行こうとするものの、姉、長女の轟 冬美は心配する。

 

「どうして?何で()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?!」

 

「……」

 

そう言われても反論することは、言葉を返すことは出来なかった。

いや、そもそも答える必要がないからなのかもしれない。どちらにしろ自分のやるべきことは変わらないと、轟は母の居る病院に向かった。

 

 

自分の存在そのものが、お母さんを苦しめ、追い詰めてるんだと思っていた。だから会わなかった。

お母さんはきっと、まだ俺に…父親に囚われ続けている。

 

お母さんがどの病室にいるか看護師に尋ねて、向かって行く。歩を進めるたびに不安と緊張が高まっていく。ぶっちゃけ正直に言えば緊張するなんてこと自体あんまりなかったし、久しぶりな気分がした。

そうだ、久しぶりと言えば…お母さんに会うのも物凄く久しぶりだ…自分が小さい頃から今までずっと会ってないんだから…

今はどうしてるんだろう?

今までどういう思いで生きて来たんだろう?そう考えるだけで胸が痛くなる感覚がした。

 

だから俺がこの身体で…全力で、『再びヒーローを目指す』には会って話をしなければならない…

 

そしてとうとう病室の扉の前に立つ。開ける前に深呼吸をする。

不安や緊張を研ぎほぐすように…

お母さんは許してくれるかな?

一つの言葉が頭の中に遮った。けど、此処まで来たんだ、もう関係ない…

例え許されなくても良い、それでも会って話をつけなければならないのは確かなのだから。

 

そう、沢山話をしないと…

 

そして扉を開けた。そこには、病室のベットの上で空を眺めている一人の女性だった。窓から日差しが差しこみ、その女性を照らすかのように…その女性は昔と変わることのない、轟の知っているお母さんだった。

 

 

例え望まれなくても

 

「お母さん」

 

助け出す

 

 

名前を呼んだ途端、お母さんは振り向いた。そして轟の顔を見ると…

 

「……焦…凍?」

 

懐かしい声、久しぶりに名前を呼ばれたような感覚。

何もかもが懐かしい…

会って話をつける。

 

 

それが俺のスタートラインだと、そう思ったからだ。

 

 

同じく同時刻。

 

「おもち〜おもち〜♪」

 

麗らかなお茶子は、ルンルン気分で自分の家のマンションに向かっている。

お茶子の手には買い物カゴを持っており、中には色んな食材が入っていたが、彼女はおもちが好きなのか、おもちが入っていた。と言ってもそれ程多い量でもなく、至って普通の量だった。大体3、4個くらいだろうか、まあ一人暮らしのうえ生活費も考えると贅沢は言ってられない。

 

「アレ?鍵が開いてる?」

 

自分の家に到着したお茶子は、鍵を使って開けようとするものの、逆に鍵をかけてしまった。

 

可笑しいな?鍵はちゃんとしたハズ…まさか鍵を閉め忘れたりとか…!?

または誰かが何らかの理由で鍵を使って入って来たとか?何らしらの個性ならあり得なくもないかもしれない…

でも何のため?まさか…

 

「泥棒…?だったりして…」

 

恐るおそる扉を開けて見ると…

 

「「お茶子おおぉぉぉぉ〜〜!!!」」

 

「!!?ホギャァアアアアアアァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 

二人の人物が獲物をかるかのように走り出し、向かって来てくる。突然のことにお茶子は思わず腰を抜かしそうになり、驚きのあまり思わずゴム◯ム人間が腕を伸ばす時のような感じで目ん玉が飛び出し伸びてしまった。

 

「父ちゃん!母ちゃん!どうして此処に!?!」

 

その二人の人物はなんと、お茶子の両親だった。二人は驚いたお茶子を見て笑顔を見せると「来ちゃった」「お祝いに来たんやで!!」と母親は満面な笑みを浮かべ、父親はガッツポーズをする。

 

「お茶子体育祭で頑張ってたしな!それに最初言おうかと思ってたけど…脅かす方がもっと良いやろ?」

 

「今日の晩飯は買って来たから、一緒に食べよう!」

 

「……っ!言ってよもおぉぉ〜〜〜!!」

 

お父さんとお母さん、二人が来てくれたことにお茶子は思わず頬が緩み涙が溢れてきてしまう。

 

 

そして同時刻、半蔵学院の門の前では…

 

「此処が半蔵学院ですか……」

 

見たことのない一人の女性は、門をくぐり、学校の前でしばし立ち止まると、ため息をつく。

 

()()()()()()の癖にこうもセキュリティーが甘いとは……呆れて物も言えませんね…」

 

その女性は、灰色に近い髪の色に、雪のような真っ白な肌をした清楚な女性はジッと半蔵学院を見上げて…

 

 

 

 

 

緑谷宅では…

 

「もう、7回よ!?凄くない!?!私、騎馬戦から7回も気絶しちゃった。ラスト2回はほぼ脱水症状によるもの!」

 

「僕が戦ったときなんかよりよっぽど壮絶だったんだね……」

 

朝、緑谷は母と一緒に朝食を食べている。お母さんは何度もなんどもその話をし始めている。もう何回目だろうか?昨日なんかは10回も聞いたし、今になって6回…人生、生きてきた中で1番インパクトが強かったと本人が言っている位だ、今まで息子が無個性だと思ってたんだ、驚くのも無理はないし何より緑谷のことを大事に、大切に思っている証拠なのだろう。

 

「急に奇跡的に個性が出たなんて…しかも今までにない例で……その個性がバッキバキのリスキーパワーでさ、それ聞いただけでも涙が止まらなかったもの!」

 

「お母さん、目疲れないソレ?というか目やばくなかった?」

 

そこまで涙が出る母親に、緑谷は逆に母の目が心配に思えてきた。

 

「まあ、睡眠とってから大分良くなったけど…それより!腕…」

 

「!」

 

朝食を食べてるなか、人差し指を緑谷の腕に向ける。その腕は包帯を巻いていて…とてもじゃないが大丈夫には見えそうにもない、見知らぬ人から見れば、事故でもあったの?と勘違いされてしまう程の重傷を負った腕だ。

 

「応援はするけど…それは心配しないってことじゃないよ?」

 

「……う、うん……」

 

母親に指摘されたことに、思わずぎこちない返事をする緑谷。そう、体育祭の時にリカバリーに言われた。今後ともこういった治療は受けない。と…

確かによくよく考えて見れば、自分はそんなつもりではなかったが、ほんの少しだけ、リカバリーの治癒に甘えてたのかもしれない。

また何度でも治せるからと、解決方法を探さなかったのかもしれない…

 

 

見てくれてる人を不安にさせてしまった。

 

 

誰も心配するこのない、僕なりのやり方が必要だ。

 

 

それが、「僕が来た」と言えるようになるスタートラインだ

 

 

 

 

一方爆豪邸では…

 

昼過ぎに起きた爆豪は…上半身裸になり洗面所に向かって…

 

「しね!死ね!んのクソ菌があぁぁぁ〜!!」

 

歯磨きしている。

 

「ちょっと勝己!昼に起きてきて叫ばないで!」

 

「煩えクソババァ!!!」

 

「煩いのはアンタの方でしょーが馬鹿!!」

 

何ともない日常?であった。




はい、なんとか無事終わることが出来ました!さて次回は新章に入ります。そう、知ってる人ならもう分かります…それではお楽しみに!!

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