光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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ようやく騎馬戦が終わって、轟は緑谷と飛鳥と話すことになり、オールマイトとエンデヴァーは対面しました。てか個人的にはオールマイトのあのノリ滅茶苦茶好きですww
てな訳で、どうぞ!


39話「お話ししようか?」

騎馬戦が終わり、皆は会場の応援席に戻って来た。勿論、緑谷と轟は早く戻って来て飛鳥を呼んだため、現在三人はいない事になる。

 

「お帰りおまえら〜!」

 

「お疲れ様です」

 

「皆んなお帰り〜!障害物競争に続いて騎馬戦までご苦労様〜!」

 

「よく頑張ったな…」

 

応援してた半蔵の忍生徒たち四人は、疲れに満ちたA組の生徒たちの労をねぎらった。

 

「くぅ…!JKのこの言葉!オイラずっと夢みてたんだよ!あぁ…神よ!ゴッド!ありがとうございます…ありがとうございますぅぅ!!」

 

そんな四人を見た峰田は、目から滝のように涙を流し、更にはヨダレも垂らしては、地面に膝をついて拝んでいる。

 

「飯田くんズルイや!あんな超秘あったなんて!」

 

「ズルイとはなんだ!アレも立派な戦術だったろう!?何が悪いんだ!」

 

「あれ面白かったウエぇぇ〜〜イィ!」

 

お茶子は飯田にあんな超秘があった事に驚き、上鳴は終盤までずっと個性を使いっぱなしだった為、アホになっている。

 

「芦戸ちゃんおめでとう、私なんて全然…悔しいわ!」

 

「まあまあ…でも私もよく分かんないんだ〜…爆豪私と手を組んでくれたけど、アレって轟の氷対策として私を選んだまでで…実際実力に見合ってんのか分かんないんだ〜…」

 

悔しいのか、プンプンしてる蛙吹に芦戸は頭をボサボサしながらキョロキョロと周りを見やる。

 

 

すると…

 

 

「よお天哉!お前凄かったな!」

 

「ん?あっ…!」

 

声をかけられたので、飯田は振り返ってみると、何とそこには…

 

 

「『兄さん』!?!」

 

「あんな技があったなんて凄いな!俺ビックリしたわ!」

 

なんと、飯田の兄、飯田天晴であった。

 

「え、え?えええぇぇぇえええええぇぇぇえええぇぇぇぇ!!??」

 

その場の皆んなは思わず驚きの余り、大きな声を出す。その顔を見ただけでも分かった。この人はあのターボヒーロー、インゲニウムだということを…実際は白いアーマーを着用してるが、実際スポンサーやメディアからの取材などがあり、素顔も見受けられてるのだ。何より有名なヒーローだからだ。

 

「い、飯田の兄ちゃん!?凄え…ターボヒーローインゲニウム……本物だ!」

 

切島は思わずゴクリと唾を飲み込む。

 

「アレが…飯田さんの!?」

 

特に一番驚いたのは斑鳩だろう…飯田に兄がいることは知っているが、まさかこう言った形で会うとは夢にも思ってなかったからだ。しかも兄は立派で有名なヒーローと来たものだ。血こそ繋がってないが、義理の兄の村雨とは大違いだ。

 

「飯田、あいつヒーロー家だったのか…」

 

「驚いたな…やはり弟の大会を観に来たんだろうか?」

 

柳生と障子はそれ程驚いてないが、関心はしている。

 

「まさか、本当に兄さんが来てくれるなんて思わなかったよ!」

 

「まぁー、相棒(サイドキック)たちが弟さんの大会を観に行ってやれって言われたし、それにまあ…弟の活躍っぷりも観に行ったって良いかなって思ってさ!まあ息抜きも含んでんだけど…」

 

真面目で堅いところがある飯田とは違って、兄の天晴はハハハ!と笑い、飯田の頭に手を置く。

 

「まあけどさ、お前が此処でヒーロー目指すの必死に頑張ってるの観ててさ、兄ちゃん安心したよ。あぁ、弟は今こうして頑張ってるんだな…ってさ!なんか、ホッとした!」

 

「っ!」

 

 

 

兄はニカッと笑みを浮かべると、飯田は嬉しくて思わず頬を緩める。

それを見てた斑鳩は、思わず脳裏に兄の姿を浮かべた。自分とはまるで反対…大違い……

 

もし自分もあんな風だったら…

 

もし自分に忍の才能がなければ…

 

もし自分にもあんな兄がいたら…

 

色んな、複雑な感情が湧き上がって来た。嫉妬もあるが、それ以前に飯田の兄がここまで立派な人だとは思わなかった。

 

何より自分は、生まれて義理とはいえ、兄の笑顔を一度も見たことがない。

 

自分と飯田は反対なのか…って思ってしまった。その事に思わず視線を下に逸らして顔を伏せてしまう。

 

「そんじゃあ、俺そろそろ行くは!んじゃあ午後も頑張れよ!」

 

飯田の兄はそう言うと、応援席から席を外して姿を消した。

 

 

そして、飯田の兄が皆んなの元から去った頃に…

 

「待ってください!」

 

「ん?」

 

後ろから突然声を掛けられたので、後ろを振り向くと…

 

「あの…少し、お話ししても、宜しいでしょうか?」

 

斑鳩の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ!飯田の兄凄かったなぁ!何よりカッケェ!」

 

「だよな、今度詳しく話し聞かせてくれよ!」

 

 

切島と上鳴は飯田を挟むようにして話をかけられ、飯田は思わず満面な笑みを浮かべる。

 

「ああ良いぞ!しかし、おかしいな…この時なら緑谷くんが突っかかってくるかと思ったんだが…おや?緑谷くんは?それと前々から気になってたんだが…飛鳥くんもいないぞ?」

 

「何処にもいないね?」

 

飯田とお茶子は、周りを見渡しながら、緑谷と飛鳥を探している。

 

「ま、まさか!アイツら…オイラ達がいないところであんな事やこんな事や…そして、◯◯◯や◯◯◯◯まで!?」

 

「何処までもブレないのね峰田ちゃん、そして皆んなの前で、ましてや女性の前で卑猥なことを言うのは良くないわ」

 

バチン!と長い舌を使って鞭を打つかのように峰田の頬を叩き、峰田は「グハァっ!?」と、その場に倒れてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話って…なに?轟くん?」

 

「………」

 

轟は静かに、そして冷たい目で二人を見やる。まずは、飛鳥の方に視線を移す。

 

 

「緑谷の前にまずお前の話をしとく…単刀直入言う…お前って……

 

『半蔵の孫』なんだろ?」

 

 

「「!!??」」

 

轟の突然の質問に驚き目を見開く飛鳥と緑谷。

 

「え、えっと…そ、そ…そうだけど……でも、何で?轟くんには言ってないのに…」

 

「俺には言ってねえってことは、他の奴らには言ってたんだな…」

 

飛鳥のぎこちない言葉に、轟は問い詰めるように聞く。

 

「勘違いすんな、他の奴らが俺に教えた訳じゃねえ……食堂ん時、飯田と麗日、そんで飛鳥…お前らが話してる時に聞いた」

 

「え?……あ!」

 

あの時、そうそれは緑谷がオールマイトに呼ばれて三人で食堂に行って並んでた最中のことだ。なるべく皆んなには聞こえない程度で話してた訳だが、どう言うつもりなのか、偶々轟が近くにいて聞いてたらしい。

 

「盗み聞きのつもりじゃねえがな……そんで、俺たちが悪忍養成学校、蛇女子学園に乗り込む際に戦闘許可出してくれたのも、USJの時に助けに来てくれたのも…あの人が伝説の忍、半蔵だろ?」

 

「っ…」

 

轟の推測に飛鳥は当然、緑谷も言葉を失った。

 

「何となくあの爺さん…お前と雰囲気似てた…それにただの忍がUSJにやって来るなんて訳ねえからな…だが伝説の忍なら俺らのピンチに駆けつけに来てくれたのも、雄英に居るのも納得が行く……

これも俺の推測な訳なんだが…否定しないってことは、そう言うことで良いんだよな?」

 

「轟…くん…」

 

そこまで推測してたとは予想外なのか、飛鳥は思わず顔を伏せてましう。別に仲間ならバレても問題ないのだが…それでも轟に自分が半蔵の孫だということを言わなかったことに、何処か罪悪感を覚えてしまう。

 

「ゴメンね…轟くん……その事言わなくて………」

 

「別に…何か理由があったんだろ?そこ深く詮索する気はねえし、忍としてなら尚更仕方ねえ事だ…」

 

轟はそう言うと、今度は緑谷の方に向く。そのことに緑谷は僅かにビクリと体を震わせ反応する。

 

(かっちゃんとはまた違う……冷たい威圧感……一体何の話を……)

 

ゴクリと固唾を呑む緑谷。轟は口を開く。

 

「気圧された…自分(てめぇ)の誓約を破っちまう程によ…」

 

そう言うと轟は左手を見て、拳を強く握りしめる。

 

(そう言えば轟くん…左を使えば有利な筈だったのに……なんで使わなかったんだろ?)

 

轟の左手を見て疑問を抱いた。多分それは飛鳥も緑谷と同じことを考えていただろう…もし全力で勝ちに来るなら寧ろ左側を使った方が良いに決まってるし、本気なら両方使うだろうと…

 

「応援席にいた飛鳥たちはどうか分からねえけど……飯田、上鳴、八百万、常闇、麗日、サポート科の奴も…何も感じてなかった。最後の場面、あの場で俺だけが気圧された……」

 

 

あの時敵の襲撃に立ち向かった、オールマイト(平和の象徴)を、身近で経験した轟だけ

 

 

「そ、それって……つまり、どういう……?」

 

「お前にオールマイトと同様の何かを感じたってことだ…」

 

轟の言葉に緑谷は冷や汗を垂らし、心臓の音が早くなるような感覚がした。

 

 

 

「お前さ……オールマイトの隠し子か何かか?」

 

 

「!?」

 

轟の言葉に飛鳥は思わず緑谷に顔を振り向く。もしそうだとすればそれはとんでもない事になる。

しかし緑谷はてっきり個性がバレてしまったのかと思ったが、違ったらしく内心少しホッとする。

 

「ち、違うよ!それは……か、隠し子じゃないし、違うって言うに決まってるし納得いかないと思うし疑いが晴れないわけじゃないけど、そんなんじゃなくて……!」

 

緑谷は慌てた素振りを見せながら首を横に振る。

 

「そもそも……轟くんは…何を話したいんだよ……そんな話ならわざわざ飛鳥さんを呼ばなくたって良いし……それに、その…なんで僕なんかに……?」

 

「そ、そうだよ……そりゃあ私がじっちゃんの孫だってこと黙ってたのはアレだけど……でも私と緑谷くんの話に関係性が見えないし…第一轟くんは何の為にそんな……」

 

忍のことを聞きたいなら飛鳥だけを呼んで話をした方が良いし、また緑谷となら緑谷とで話をすれば良いものを、なぜわざわざ二人を同時に呼んでこんな話をするのかが分からなかった。しかし、轟にとっては飛鳥と緑谷の話は重要だった……

 

「『そんなんじゃなくて』…って言い方は、少なくとも何か言えない繋がりがあるってことだよな?」

 

轟は眉をひそめてそう言った。

 

「俺の親父はエンデヴァー知ってるだろ?」

 

「!」

 

「ああ、うん!斑鳩さんから聞いたよ!鳳凰財閥と仲が良いんだってね?」

 

「勿論、大狼財閥ってところもな…彼処も割と有名だ」

 

轟の質問に飛鳥は頷きそう言うと、轟は二人を見つめて話しを続ける。

 

「万年No.2のヒーローだ。んでもって忍の社会でもアイツは有名だ…オールマイト程じゃねえが、忍とは深い関わりを持ってるし、忍が客に装い何度か家に来ることだってあった…」

 

なんと轟の家は鳳凰財閥のみならず、他の忍と関わりがあるそうだ。轟はまだ学生のため、忍の事はあまり詳しく知らなかったが、飛鳥たちと関わり轟にとっては忍そのものの存在は大きくなったそうだ。

 

「だから緑谷、もしお前がオールマイトと何らかの関わりがあるってんなら、尚更お前に勝たなきゃならねえ…もちろん伝説の忍の孫である飛鳥、お前もな…」

 

「「え??」」

 

轟の言葉に、二人は目を見開き首をかしげた。何故轟は緑谷と飛鳥…二人に勝たなきゃならないのだろうか?特に飛鳥は忍だ、体育祭で競える筈がない…それは本人もよく分かってる事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在。轟が二人のことを話してるなか、No.1ヒーロー・オールマイトとNo.2ヒーロー・エンデヴァー この二人は対面していた。

 

「や!久しぶりだねエンデヴァー!

10年前の対談振りかな!?あの日君はコーヒーによく拘ってたよね!覚えてるかな?見かけたら挨拶しとこうと思ってね!会っちゃった!なんて!HAHAHAHA!」

 

「……そうか、ならもう済んだだろ?去れ、俺の前から消えろ!」

 

相変わらず陽気で活発なオールマイトに、エンデヴァーは眉をひそめて吐き捨てるようにそう言うと、背中を向けた。

 

「ましてやこの俺が貴様と茶など冗談じゃない……便所に行くんだ失せろ!」

 

「つれないこと言うなよーー!!」

 

オールマイトは一瞬でエンデヴァーの前に立ち、絶えない笑顔を見せるとエンデヴァーは思わず舌打ちをした。

 

「折角お茶のついでとして君の好物な葛餅も二人で一緒に食べようと思ってたのに…アレ美味しいよね!

まあそれはさておき…君の息子さん、焦凍少年。力の半分も使わず素晴らしい成績だ!教育が良いのかな?」

 

「何が言いたいんだ…」

 

オールマイトの言葉に苛立ちを覚え、ボボゥと炎を揺らがず。

 

「いやいやマジで聞きたくてさ、次代を育てるハウツーってのを…良かったら聞かせてくれないかい?それにあんまり半蔵くんに会ってないとはいえ、忍との交流もいいって聞いてるぜ!何か参考になるものとかないかなぁ…ってね!」

 

「……貴様に俺が教えると思うか?相変わらずそのあっけらかんとした態度が…癪に障る……」

 

「ご…ゴメン…」

 

オールマイトはしゅん…とした様子で謝り、エンデヴァーは再び歩を進める。

 

 

 

 

 

 

 

「まあ…これだけは言っておく、覚えとけ…()()は…いずれ貴様や()()をも超えるトップヒーローにする!……そうするべく()()()()仔だ!!」

 

 

 

ゾワッ!

 

「な…にを……」

 

笑顔こそは絶えてはないが、エンデヴァーの気迫にあの平和の象徴オールマイトでさえゾッとし、背中に悪寒が走り、僅かに震えた。それほどまでに、この男の気迫は凄いものだと印象付けられる。

 

「今はまだ下らん反抗期だが…必ず超えるぞ……超えさせる!!忍の力を超越し、よもや貴様をも超える程にな!!」

 

エンデヴァーは激しく炎を揺らがせそう言うと、オールマイトに背中を向けて去っていった…その表情はとても厳つく、激しい怒りの色を染めて。何よりその目は、今の轟に似ているようで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたが…それだけ生ける伝説オールマイトが仕方なかったらしい。半蔵は忍だから別にどうってことないそうだが…」

 

場所は変わり、轟は緑谷と飛鳥に自分の家のことを話し続けている。

 

「自分ではオールマイトを超えられねぇ親父は、次の策に出た…

 

『個性婚』って知ってるよな?」

 

「個性婚?」

 

個性婚について知らない飛鳥は、首を傾げるが…

 

「し、知ってるよ…超常が起きてから、第二〜第三世代間で問題になったやつ…だよね?」

 

「ああ…そうだ」

 

緑谷は知ってるようで、難なく答えた。

 

「自身の個性をより強化して継がらせる為だけに配偶者を選んで結婚を強いる。倫理観の欠落した全次代的発想だ。アイツは実績と金だけはある男だ…親父は母の親族を丸め込み、『母の個性』を手に入れた」

 

轟の話はとても深く、聞いてるだけで気持ちが段々と重くなってきた。

 

「そこで今度は忍だ…」

 

「え?」

 

轟は片手で左目を押さえつけるように手を置く。

 

「さっきも言っただろうが、親父は忍とは交流がよくて、何度か客を装い家に来ることがあった…なんでだと思う?

 

 

 

 

 

忍の力を俺に持たせる為だ」

 

 

「「!?!」」

 

轟の言葉に緑谷もそうだが、飛鳥は思わず口を隠すように手で覆った。

 

「持たせるっつっても、特殊な忍法の力だのそういう意味じゃねえけどな。話を聞いたのは忍が受ける訓練、どうしたら強くなるのか…様々なもんだが、幼い頃の俺は、アイツに忍の訓練を無理やりやらされた…毎日反吐が出る程な…」

 

「と……ど……ろ…き…くん……その……話……ほん…とうなの…?」

 

轟の過去を聞き、真実を知った飛鳥は、震えが止まらなく、声を振り絞るのがやっとだった。

 

忍の訓練はとても厳しく、ましてや一歩間違えれば死ぬ危険性だってある。なのにそんな訓練を毎日、しかも無理やりやらされたと来たものだ。

 

「その事を良いことにして、様々な忍に訓練を聞いては、やらされて……そんなのが中学にまで続いた。今でも忘れねえ…何度死にかけたことか……」

 

轟の言葉を聞き、飛鳥は思ったのだ。斑鳩から話を聞いたときに、轟とエンデヴァーのことを知ったのだが…エンデヴァーが斑鳩に聞いた忍の訓練…それはもしかしたら、いいや…確実にその時の轟は無理やり受けられただろう。と…そう考えると鳥肌が立つ。だから飛鳥たち忍学生が雄英に転校する際に、轟は他の人たちとは違ってリアクションは取らなかったのだ。無反応で、冷静でいて…轟が驚かなかった理由が分かった気がした。

 

「忍の訓練を受け力を付けさせた俺を、伝説の忍である半蔵と、オールマイト以上のヒーローに育て上げることで自身の欲求を満たそうってこった……うっとうしい!!俺はあんな屑の道具にはならねえ!母はアイツに苦しめられ、いつも泣いていた……」

 

轟の目には、焔の時の戦いに見せたのと同じ…いや、それ以上にエンデヴァーに対する憎悪と怒りが含んでおり、母に対する悲しみ、苦しみが込められた。

 

 

 

 

 

 

「『お前の左側が醜い』と、母は俺に煮え湯を浴びせた」

 

 

 

 

「「!!!」」

 

大きすぎる衝撃、二人は言葉を失い絶句した。そして知って知ったのだ。何故轟の左側の顔に火傷の痕があるのかを……

 

「俺がお前らを呼んでこうして話した訳だが、飛鳥…お前に半蔵の孫かどうか聞いたのも、緑谷、お前につっかかんのも見返す為だ。クソ親父の個性なんざなくたって……いいや、使わず一番になることで奴を完全否定する!」

 

轟の顔は、蛇女子学園で焔に立ち向かった際に見せた時よりも憎悪が宿っていた。左を使わず一位になることで、父親を完全否定する。それが今回、体育祭で優勝する目的なのだろう。

 

「だから飛鳥、あの時言わなかったけど…今ここで言うな?

 

いつかお前にも勝つぞ」

 

「!!」

 

轟が飛鳥に宣戦布告。しかしそれはこの体育祭ではなく、いつか先のことだろう…轟と飛鳥この二人が戦うその日への…

 

 

 

 

 

「…………」

 

誰にも見えない、飛鳥にすら勘付かれない場所で、それを聞いてた一人の男、爆豪勝己は冷や汗を垂らしながら聞いていた。

 

 

 

「悪いな、長話になっちまって……まあ理由は何にせよ、俺は右だけで上に行く…」

 

「轟くん…」

 

背中を向ける轟に、飛鳥は一歩足を出し声をかける。その呼び声に足を止めて振り向くと、飛鳥は澄んだ目で轟をジッと見つめた。

 

「轟くんの過去を聞いて…驚いて正直混乱してるし、人には色んな事情を抱えてて、それが轟くんの覚悟だっていうのは分かった…だから轟くんの挑戦は勿論受けるよ。けど…」

 

飛鳥は数秒黙り込んだ後、息を大きく吸ってこう言った。

 

 

 

 

 

「やるなら…全力()で、かかって来て!」

 

 

 

 

ピタッ…

 

「なに……?」

 

「飛鳥さん!?」

 

飛鳥の言葉に轟は眉をひそめ、緑谷に至っては驚い大声を出してしまった。さっき話したばかりだ、なのに飛鳥は左も使えと言って来た。突然そのことに少し苛立ちを覚えた。

 

「轟くんの気持ちは理解したよ、でもね…全力でぶつかってみないと分からないことだってあると思うから…だから、全力でかかって来てって意味!」

 

飛鳥はいつの間にか、何時も見せる元気な笑顔を浮かべた。轟は呆れたのか、「ハァ…」とため息をついて、飛鳥に背中を向けようとすると…

 

「轟くん!」

 

「…緑谷…」

 

今度は緑谷から声をかけられた。緑谷は自分の手を見つめながら話し出す。

 

「……僕はさ、ずっと色んな人に支えられて、ここに立ってるんだ……誰かに助けられてここにいる。

僕は飛鳥さんみたいに、真っ直ぐぶつかって行って、んでもって半蔵さんの孫とかじゃないし、特別な力も持ったわけでもない…ましてや轟くんみたいな境遇にあった訳でもないし、控え室で話した時もそうだけど、力で比べたら君の方がずっと上だ……でも…!」

 

顔をバッとあげて、轟の顔を見つめる。

 

「僕を助けてくれた人たちに応えるためにも…!負けられないんだ……だから、僕もこれを機に改めて言うね…

 

僕も君に勝つ!!」

 

決意のある声に、轟は黙り込む。

 

(緑谷くん…なんかこー…こう言う時って凄くカッコいいなぁ…なんて)

 

飛鳥は思わず心の中で、そう呟いた。

 

 

轟は緑谷のみならず、飛鳥にまで宣戦布告したのは、やはり伝説の忍 半蔵の孫だからというのもあるが、何より半蔵もまたオールマイトと何処か似ているからなのかもしれない…

 

こうして三人の話し合いは終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり…斑鳩は飯田の兄、天晴に話しかけて五分が立っていた。

 

「へえ!天哉とは本当に気が合うな!タダでさえロボットみたいに堅い真面目なアイツと似たもんが居るのは驚いた!ははっ!」

 

「そ、そんなにですか?」

 

天晴はかれこれ斑鳩と色んな話をしたのだ。家のことや飯田とは気持ちが合うと…そして、弟がどんな人間かを…

 

「ああ、まあアイツは昔の頃から俺より凄くてさ、才能もあって…正直羨ましい位今もすごくてさ…」

 

「…っ」

 

何気ないことを口にした天晴。才能がある、羨ましい、自分より凄い…それを聞いては自分の家のことを思い出す。

軽蔑、憤怒に近い目でいつも睨みつけてた兄。

自分が忍だということを許せず、養女である自分が鳳凰財閥の家系に伝わる飛燕を手にしたことに対して、斑鳩そのものを拒む兄。

たった少しの才能で憎まれてきた彼女。それなのに飯田の家は自分と同じようで反対だ。この人は自分より凄い弟がいるに、それを拒まず、羨ましく微笑んでいる。

 

だから斑鳩には分からなかった……

 

自分と飯田は何が違うのだろう?と…兄の優しさ?それとも…血が繋がってないから?

いや、両方だ…

 

「才能があって…自分より凄い弟がいて…羨ましくて……私と飯田さんは一体何が……」

 

「ん?どうかしたのか?なんか悲しいような顔してるけど…なんかあったか?」

 

斑鳩はふと思わず思ってたことを口に出してしまってたらしく、斑鳩の様子に気付いた天晴は、首を傾げる。

 

「あの…天晴さん!」

 

そして迷いに迷って悩み、考えた斑鳩は打ち明けた…自分の悩んでたことを飯田の兄、天晴に話した。勿論、忍の家系や存在は秘密にして…

 

 

 

 

………

 

「ええ!?君ってあの鳳凰財閥の?!こりゃ驚いた……言うならもっと早く言ってくれよ〜…」

 

「も、申し訳ございません!ですが、急にそれを言ったら余計混乱を起こしますし…それに…鳳凰財閥の娘だなんて言ったとしても唐突すぎますし…」

 

「そりゃそうだ!あっははは!確かにな!」

 

まず最初に出た言葉は、斑鳩が鳳凰財閥の娘だということに驚いたそうだ。だが飯田の兄は優しい笑みを浮かべて笑い過ごしている。

 

「悪いわるい、話戻すか…んで、自分には才能があって、でも義理の兄には才能がなくて…たった少しの才能で憎まれてきた。ってか…んー、思ったよりもシリアスだなぁ〜…」

 

「す、すみません…こんなことを話して…」

 

「いーよいーよ!気にすんなって!」

 

自分の家系に悩む斑鳩は思わず頭を下げてしまい、天晴は少し動揺が混じった感じで斑鳩の頭を上げさせる。

 

「俺に話すってことは…さっき俺が飯田とお前は似てるなーって言ったことで、君は天哉の兄である俺となら打ち明けれる、何か分かるんじゃないかって思って話したわけか…」

 

「はい…天晴さんはとても優しく、兄とは正反対で……話しやすいという意味も含んでいるのですが…天晴さんの言ってることが一番正しいですね」

 

それを聞いた天晴は、「うーん…」と悩むように考えて、暫くしてから口を開く。

 

「……妬むのは、それは人には誰だってあることだし、仕方ないことかもしれない。んでもって血が繋がってないから…だからそんな他人が許せないってのは、少なからず世の中いるもんだな」

 

「………」

 

「けどさ、それでも家族って血の繋がりだけじゃないんだよな」

 

「え?」

 

天晴の言葉に、目を大きく開く。

 

「ただの血の繋がりなら誰だってそうだ。それだけが全てって訳じゃない…俺はそう思う。それは君だけじゃなくて、義理の兄も分かってるんじゃないのか?」

 

「お兄様が…」

 

確かに家族というのは血の繋がりだけではない。それは斑鳩が最も知っている。何せ斑鳩にとっての家族は、半蔵学院の忍生徒たちなのだから…

 

「うん、だからさ…義理だろうと血の繋がりだろうと関係ない…それに、向こうが認めないならさ、認めさせれば良いんじゃないか?」

 

「っ!」

 

天晴の言葉に、斑鳩は心を貫かれたような感じがした。それはとても大きな衝撃で、でも決して傷つくわけではなかった。

 

考えもしなかった。向こうにも認めさせる…自分は忍だということを。しかし今まで自分を拒んてきた兄は、認めるだろうか?

 

「君が今、何をどう頑張ってるのか、何の目標があるかは俺には分からないけどさ…けど、自分を拒む兄とちゃんと向き合って話すのも、大切だと思うぜ」

 

「向き合って…」

 

考えもしないことを言われて、斑鳩は何も言えない。向き合うなんて、そんなこと考えもしなかった…けど、確かに自分は一度も兄と向き合ったことはない……だが、向き合ってないのは兄もそうだった。お互い向き合ってないことを知り、斑鳩は言葉を失う。

 

「ですけど…本当にそれでお兄様は……向き合ってくれるのでしょうか…?」

 

「それは分かんないさ、けど…やらずに決めつけるよりかは良いだろ?」

 

「……!」

 

その言葉に斑鳩は、自分の悩んでた思いが吹っ切れたような感覚がした。

どうせ何かを言われるなら、やらずに決めつけるより、やって言われた方が良い。そんな感じがしたのだ。確かにそうだ…やらずに何でも決めつけては本当の答えは手に入らない。

 

「まあけど、きっと分かってくれるって!天哉が俺に憧れるくらいだもん、この先いつか、お前の兄ちゃんはお前のことちゃんと認めてくれるさ!」

 

「天…晴…さん……」

 

まだ出逢ったばかりで、初めて会ったのに、この人は自分のように優しくしてくれる。斑鳩はそんな立派な兄である天晴を見て、天哉のことが羨ましくなり、天哉が兄を憧れる気持ちも分かってきた。

 

「わざわざ私の悩みを聞いてくださり…ありがとうございます……」

 

「いいって良いって!ますます天哉に似てんな!それにホラ、困った時はお互い様だって言うだろ?…おっと、話してたらもうこんな時間か…そろそろ行くは俺、じゃあな!もしまた会えたらまた今度話そう!」

 

天晴は明るい笑顔を斑鳩に見せて、その場を去ろうとする。

 

「はい、誠にありがとうございました…!」

 

斑鳩は、そんな立派なヒーローである飯田の兄にもう一度礼を言い、頭を深く下げた。天晴はそんな斑鳩を見て微笑むと、姿を消して去って行った…

斑鳩は居なくなるのを見て確認すると、思わず一滴の涙が流れ、頬に伝わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休憩終了。

 

『最終種目の発表の前に予選落ちの皆に朗報だ!!あくまで体育祭!全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!そして見よ!!』

 

昼休憩が終わり、相変わらずマイクはテンションを上げている。そして会場にはぞろぞろとA組、B組、サポート科の発目に普通科の心操も姿を現わす。

 

『本場アメリカからチアリーダーも呼んで、より一層盛り上げ…て……ん?何だアリャ…』

 

「なーにやってんだアイツら?」

 

マイクと相澤は、何かに気づき眉をひそめる。それは…

 

『どーしたA組!!?何でチアの格好してんだ!?!』

 

A組の女子全員はチアの格好をして登場した。

 

「おぉ!発育の暴力!アイツらやるじゃねーか!!ヒャッホーーイぃ!一人一人のおっぱいを揉みてえぜ!」

 

「何を感心してるんですか葛城さん!それと卑猥なことはこの風紀委員である私が許しませんよ!?」

 

セクハラ葛城は、手をわしゃわしゃしながら、チアの格好をした女子全員を見渡す。そして峰田と上鳴にガッツポーズをする。どうやらこの事件の犯人は峰田と上鳴が原因だったようだ。取り敢えず席に戻っていた斑鳩は葛城を注意する。

 

「良いじゃねえか別に!それはそうと斑鳩さっきまでどこ行ってたんだよ?」

 

「そ、それは…何だって良いじゃないですか!」

 

葛城に聞かれた斑鳩は、頬を赤らめそっぽを向く。

 

 

 

一方チアの格好をした八百万は、峰田と上鳴の策にまんまとハメられショボンと落ち込む。

 

「何故こうも峰田さんの策にハマってしまうのかしら私……自分が惨めで……」

 

「気にすることあらへんよ!大丈夫だいじょーぶ!ね?」

 

そんな八百万の背中を、お茶子は優しく撫でる。

 

「アホだろアイツら…やられた……ましてやアホそうな峰田と上鳴に…!」

 

耳郎は恥じらいながら、屈辱を受けた目線で上鳴と峰田を睨みつける。

 

「良いじゃん別に!やったろーよ!!」

 

「透ちゃん…好きね」

 

葉隠はむしろハイテンションで盛り上がり、それを見た蛙吹は思わず呟いた。

 

 

 

 

何やかんやであったが、競い合うレクリエーションが終われば最終科目。いちばんの見せ所。それは…

 

『進出4チーム!総勢16名からなるトーナメント形式!!』

 

巨大モニターに映るはトーナメント形式の図が映し出される。

 

 

 

『一対一のガチバトルだ!!!』

 

それが雄英体育祭の優勝者を決める、ファイナルバトルだ。




はい、今回皆意外な展開があったかもしれませんが、まさかの飯田の兄、天晴が登場しましたww
しかしこれには少し理由がありますので、ご了承してくれると幸いです!まあ知ってる人は知ってると思いますがwww

そして次回はようやく熱いバトルがスタートします!次回もお楽しみに!

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