光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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今更ですが…やっと、やっと、やっと閃乱カグラnewwaveやり始めました!!まあ、PBSで麗王、夕焼、総司が出ますからね……無知な自分は、「ふぁっ!?」しか出ませんでしたよ(苦笑

まあ彼女たちについては知ってくつもりなのですが、この作品にも出そうと考えております。けど、総司が蛇女子学園だと聞いてますので、不安定なんですよね…
まあ、そんなわけで、よろしくお願いします。


雄英体育祭編
32話「君が来た」


数時間後…蛇女子学園、天守閣は跡形もなく完全に崩壊した。

その後名のある他の悪忍達は彼女たちを探した訳だが、蛇女子学園の生徒全員は誰一人も見つからなかった…そして、鈴音も…

道元は今回の事件の主犯となり、忍の社会から追放及び、処分対象とされている。忍の存在が世間に知られてしまうどころか、最悪の場合多くの犠牲者、そして大災害をもたらすところであったため道元を見つけ次第即処分しろとのことだそうだ。

 

一方、多くの忍達が探してたと言われる抜忍・漆月も、上層部からの命令により、見つけ次第処分しろとの事だ。詳しいことはまだ不明ではあるが、抜忍の漆月が敵連合と関わっていたことが明らかになった。そのためまた、敵連合は見つけ次第ヒーローたちに連絡をとる、または捕縛しろとのことだ。理由は当然、敵連合の存在は全国のニュースで放送されているからである。となると、もし忍が敵連合の敵たちを殺せば、こちらの忍の存在がバレてしまうことがあるのだ。

 

だが少なかれ、忍達にとって、敵連合の存在は大きくデカくなり、忍の社会は世間に広まった。

 

抜忍・漆月は逃がされてしまったものの、忍達が捜索している中、敵と思われる人物、赤と緑の色をした二体の脳無は捕まえることが出来たそうだ。その二体の脳無はボロボロの重傷ではあるが、無抵抗で大人しいとのこと。忍達が何をどう問いかけても反応なし。そのことに敵連合、漆月を調査することが出来ないというのだ。

 

 

半蔵学院の忍生徒達と、雄英の生徒達は速やかに避難する。半蔵学院の皆んなは寮に戻り、雄英の生徒達は家に帰ったそうだ。各々の皆は死闘を繰り広げた、それもまた、ヒーローや忍達は大きな成長になる。

 

だがそれは、逆もまた然り…

 

 

ズズズ…

 

薄暗いバーの中、黒い空間が現れ、その中からは死柄木、漆月、黒霧、そして眠っている道元が現れた。

 

「道元は捕まえたのは良いとして…悪忍を仲間にするどころか、善忍を殺すことが出来なかったうえに二体の脳無が倒された……しかも漆月の話によりゃあ、あのガキ共もが居て、善忍と悪忍が共闘だぁ??何だよその流れ…何をどうしたらそうなるんだよぉ!!!」

 

死柄木はあの時道元に見せてた表情を一気に一変し、怒鳴り散らかしては近くにあったバーの椅子を思いっきり蹴飛ばした。

ガシャアアン!と鳴る音が部屋中に響く。そのことにやはり罪悪感があるのか、漆月はショボンとした様子でジッと下を向いている。そんな漆月を見て黒霧は「まあまあ、貴方が悪いわけではありませんよ…気になさらないで下さい…」と優しい言葉を掛けた。

 

「うん…ありがと黒霧……けど死柄木ヤケに苛立ってるし、そのことには…」

 

「ああ、大丈夫ですよ。死柄木弔のアレはいつもの事なので、そう一々気にしなくても問題ありません、落ち着けば治りますよ。それに…」

 

すると黒霧は道元の方に視線を移す。

 

「何も、手ぶらで帰ったわけではありませんから…」

 

黒霧は静かにそう言った。すると次の瞬間、パソコンの画面が起動した。

 

『随分と荒れてるね、死柄木弔』

 

「……チッ……聞いてたのかよ……」

 

その声の主は先生であり、死柄木は聞いてた事に思わず舌打ちをした。

 

『その様子だとやられたか…ははは、残念だったね』

 

「残念どころじゃねえよ…漆月の話によりゃあ居ないはずのガキ共が居ては善忍と悪忍が共闘したそうじゃねえか、しかも俺らの誘いを断りやがって……何だかソイツらも気に入らなくなって来たなぁ……」

 

『そうかそうか、なら仕方ないね…。それにしてもそんな数を相手にしてた漆月はさぞ苦戦しただろうに、とんだ災難だったね』

 

先生の声からは何一つ怒りや憎悪、悔しさなどと言ったものは感じず、むしろそれだけの多くの数を相手によくぞ帰ってきてくれたと、褒めている。そんな漆月は、パソコンに視線をやり、ぎこちない反応をとる。

 

「えっと…先生…?失敗した私を……責め、ないんですか?まあ…怒らないのは良いのですけど……でも、私は……」

 

『漆月。失敗は悪いことじゃないんだ』

 

初めて見せる漆月の表情に、先生は優しい言葉を掛ける。

 

『忍は大きな失敗をすれば最悪の場合、死が待っている。けどね、此処ではそんな概念に囚われなくても良いんだ。大事なのは失敗を通して、何がいけなかったのかを考えて、次をどう成功に活かすのか、どう成長するのかが大切なんだ』

 

漆月は『生まれて初めて』、そんな言葉を掛けられた。もし此処が自分の通ってた忍学校であったら必ず殺害されていた。だが、先生はそんな彼女を責めなかった。

 

「せん…せい……」

 

『漆月、君は敵連合を通じて成長するんだ。そうすれば、多くの忍たちとは違う力を持てる。忍の強さは心の強さなら、絶望、憎悪、怒りもまた心の強さとなるだろう。それを自ら己がものとして成長しろ!』

 

そう言うと、パソコンの電源が切れた。

 

「成長…」

 

漆月はその言葉を聞き、ソッと自分の拳を握りしめ、見つめるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

暗闇の中、先生は再びパソコン画面に目を移し、カチカチとキーボードを打ちながら何かを調べてるそうだ。すると、暫く手を休めて、画面をジッと見つめている。それに気づいた老人は、首を傾げて手に持ってた資料を机の上に置く。

 

「……先生?『あの子』たちの話は終わっというのに、何故まだパソコンの画面を見つめてるんですか?何か調べ物があったりして?」

 

「ああドクター…いやね、彼女のことを調べてたのさ、何か『懐かしい』気がしてね……それで調べてたらあったので、見ているんだよ」

 

「ああ、そうでしたか…まあ先生なら何もかもお見通しだとは思いますがね…」

 

 

先生の言葉にドクターは頷きながら、再び資料の整理をする。先生は漆月のことについて調べていたそうだ。普通ならパソコンで調べても漆月は愚か、忍については当然書かれてる訳がない…だが、この人物が扱うものだけは違った。なんと、漆月のプロフィールに…忍名だけでなく、『本名』までもが書かれいたのだ。その人物は暫くジッとパソコン画面を見終わった後…

 

 

「……………なるほど……そういうことか」

 

納得した様子でそう呟いた。

 

「はははっ、まるで点が線になったような気がするなぁ…そうかそうか、そういうことか、何処か『懐かしい』気がしたので調べてみれば、案の定やっぱり全て繋がっていたんだな。彼女は『前の忍名』を消して、漆月という名前になっていたから、分からなかったよ。だがまあいいか、彼女は敵連合として唯一欠かせない人材だ!」

 

死柄木や漆月のレベルを超えるほどに、その人物の闇や悪意は深く、もはや軽く戦慄してしまうくらいだ。

 

「これで後は、ドクターと一緒にやるべきことをやり、『彼』を仲間に入れれば…全ての『用意』が終わる!あとは待つだけだ…結果をね。いやあ実に楽しみだな、この先どうなるのか…

 

 

 

 

ヒーローと忍の社会の崩壊をね…」

 

その男の発言は、未来を見据えての言葉なのか、計算をしている。この先の、次の闘いに向けての…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。雄英高校では、教師陣とオールマイト(トゥルーフォーム)だけでなく、半蔵と霧夜までもが会議室に呼び集められた。

 

 

「なるほど……半蔵くん、君が皆んなに戦闘許可を出したという訳だね?」

 

「ああ、そうじゃよ…」

 

質問をしたのは校長の根津。それに頷くのは半蔵であった。半蔵は飛鳥たちだけでなく、雄英の生徒達にも、蛇女子学園の襲撃を許可した為、全ての責任は半蔵にあるのだ。まあ本人はそれを承知のうえでやったことなのだが…

 

「それなら良かった…もし生徒達の単独行動なら、とても不味いことになっていたからね」

 

根津は紙コップに淹れてあるコーヒーを啜りながらそう呟いた。そんな根津は、いつもの笑顔ではなく、真剣な顔つきに変わった。

 

「それで、本題に移そうか……

 

蛇女子学園の襲撃に敵連合出現、現在も尚、指名手配されてる抜忍・漆月が敵連合に入っている。そして謎に包まれてる戸籍不明の大男二人の脳無と呼ばれる人物。更には蛇女子学園の裏切り道元は現在消息不明。もちろん蛇女子学園の生徒達も居ないとのこと…霧夜くんの話によると道元が原因で生徒達は危険な目にあった挙句、選抜メンバーと呼ばれる彼女達は生徒達を救いに行った結果、こうなった……と、これにて異論はないかい?」

 

根津は昨日にあったこと全てを話すと、その場にいる皆はコクリと頷いた。ただ…それ以外の異論があるのなら…

 

「私は全く…己の愚かさに腹が立つ!!」

 

深刻なため息をついたのは、ガリガリのオールマイトであった。

 

「私があの時マッスルフォームで蛇女子学園の居場所を無闇に探さなければ…また、半蔵くんに話を聞けば、駆けつけれることが出来たというのに!!そして道元と呼ばれる者を捕まえることが出来れば…少年少女達は…!」

 

「子供のいさかいに首を突っ込むのは良くはないが…凛のことについつては一理あるわい…のう?霧夜よ…」

 

「はい…半蔵様…」

 

オールマイトは怒りの余りに、額に血管を浮かばせている。半蔵はオールマイトを見てそう言うと、霧夜に視線を移すが、霧夜は相変わらずといった様子だ。まあ大切な教え子が消えて、そのような態度になってしまうのも無理はないが…

 

「しかし、敵連合にはまだ主犯が居るのでしょう?」

 

「うん、まあね…」

 

霧夜は根津にそう聞いた。

そう、昨日の襲撃では漆月と脳無、黒霧を目撃したとの情報はあったが、リーダーである死柄木の姿は一度も目撃しなかったそうだ。

 

「しかも蛇女子学園の生徒達を敵連合に入れようとするなど、思いもつかんわい…」

 

「結局問題ナノハ敵ノ目的ダ。雄英襲撃ニ続キ、蛇女子学園ニマデ襲撃シテキタノダ、必ズ裏ガアルト我ハ思ウノダガ?ソノ意見ニツイテハドウ考エテオルノデスカ校長?」

 

難しい顔で眉をひそめる半蔵に、隣にいたエクトプラズムは校長に問う。

 

「その意見についてはちゃんと考えている。問題なのは何故わざわざ蛇女子学園なのだろうと思ったんだよ…悪忍の居場所ならどこにだってある。しかも向こうは居場所を知っていて、我々は知らなかった…知っていても半蔵くんだけだね。更に半蔵の忍生徒達の話によれば、雲雀くんの救出に赴くと同時に超秘伝忍法書の奪還として蛇女子学園に乗り込んだことも向こう側は知っていた。居場所もそうだが、どうして半蔵が乗り込んでくることを知っていたのか…だ」

 

根津の顔つきは、可愛らしいマスコットのような様子ではなく、真剣に、怒りを込めた表情を浮かんでいる。

 

「確かに………ん?いや、待てよ…」

 

「どうかしたのか霧夜よ?」

 

霧夜の様子に気づいた半蔵は首を傾げて横目で見る。

 

「前に蛇女が半蔵に攻めに来た際、凛と会ったんだが…その時に言っていたな…この忍との戦いは大きな戦いであり、抜忍も来る可能性があると……何故そうなのかは知らないが…それと何か関係が…」

 

「なるほど…もしかしたらそう言った大きな事件を狙って攻めにきたってことかもな」

 

霧夜の言葉に、オールマイトの隣にいたスナイプは納得して頷く。

 

「つーことはアレか!?結論的に言えば敵連合っちゅーバカ共が忍の存在知ってたのは、抜忍の漆月ってやつと関わってたからなのか!?」

 

スナイプの隣にいたプレゼント・マイクは荒々しい声を出してそう言った。そんなマイクに静めさせるようスナイプは口を開く。

 

「落ち着けマイク、そうとは限らねえだろ…」

 

「だってよ他に誰がいるんだよ!!漆月って奴は敵に忍の存在を知れ渡してたんだろ!?そんで敵連合は忍の存在を知ってて、それで蛇女子学園に襲撃しに来たってことだろォ!?ここまで計算的に行われてんのならそれしかねーだろ!」

 

「いや、それはないね…」

 

「校長!?」

 

プレゼント・マイクの言葉に異論を出したのは根津だった。

 

「確かに最初は僕もそう思ったさ、でも考えてみよう……塚内刑事の話を」

 

「あっ…」

 

皆は口をポカンと開いた。何かを思い出したように。

 

「学校襲撃で捕まえた敵72名に聞いてみたが、そのような人物は一人も居なく、また忍の存在なんて聞いたことないし知らないと…当時質問し終わった際に警察が記憶消去機を使ったから良いけど、彼ら全員の発言によればその頃に漆月は居なかったと考えられるね。しかも生徒達の話によると、主犯格の敵は忍の存在は知ってたものの、それ以外のことは分からなかったそうだ…もし言い渡してたのなら、学校襲撃ではもっと最悪な事態を招いていたよ?」

 

「umm……ん?じゃあよ…結局なんで敵連合は忍のこと知ってたんだ?」

 

マイクは難しい顔で悩んではいたが、考えれば考えるほど疑問が湧き上がっていき、根津に質問するが…

 

「それは現在調査中だね…尻尾も手がかりも掴めれてない…」

 

「ダァァァーーー!チクショう!」

 

「ちょっと落ち着きなよマイク」

 

根津の言葉にマイクは頭を抱えてはうなされ、近くにいたミッドナイトはため息をつく。そんななか…オールマイトは…

 

 

 

(忍の存在を知ってる敵連合に、抜忍・漆月……脳無………いいや、

 

まさかな…)

 

オールマイトは何かに思い当たったのか、冷や汗を垂らすものの、それは違うと首を横に振る。

 

(なにせ、『ヤツ』は私が……

 

『殺した』のだから…)

 

その殺したという言葉は、犯罪としての言葉ではなく、まるで正義のためにと、人のためにと、皆んなのためにと言ったようなものが含まれた。

 

 

「まあ、考えても答えが見つからない一方、むしろ謎が多くなったね……とにかく、今言えることは奴らの目的は…

 

打倒オールマイトってところだね。逆に、良い報告としては敵連合の敵を二人捕まえたこと、そして雲雀くんが無事救出されたこと、更に超秘伝忍法書の後継者が出てきたことだね」

 

根津はいつもの顔に戻ると、椅子から降りた。

 

「事件についてはまだこれから調査していく訳だが…より一層厳しくなったはずだ、特に忍ではね。半蔵くん、『小百合』と『巫神楽三姉妹』に連絡をしてくれないかい?敵連合の調査と漆月を捕まえるために…ね?」

 

「ブフォッ!?」

 

根津の言葉に半蔵は思わず飲んでたお茶を吹き出した。「ちょっ、半蔵さん!汚いっスよ!」とマイクは布巾で濡れた机を拭いていく。

 

「す、スマンすまん…あの〜…根津よ……確かにことが事とはいえ……巫神楽三姉妹ならさておき、小百合は……それに連絡しても来ないしのう〜……」

 

あの半蔵が汗を流しながら横目でそう言うと、根津は半蔵の考えに勘付いたのか、ニヤリと笑う。

 

「そっか〜…なら僕が言おうかな…」

 

「ちょっ!まっっ!うそウソ嘘じゃよ!わ、わかっておる…連絡くらいちゃんとするわい……ワシがおりながら敵連合が捕まえれてないと小百合が知れば、どうされるやら…」

 

「ハハッ…伝説の忍の名が泣きますね…」

 

根津の脅しのようなものが混ざった言葉に、半蔵もぐぅの根も言えず、渋々と頷いた。

 

「あっ、その前に……ワシはまだやるべきことがあるからのう…それもやらねばな…」

 

「やるべきこと?」

 

マイクとミッドナイトは首を傾げると、根津とオールマイトは納得したように頷いた。

 

「ああ、アレか!まあ大変だとは思うが頑張って下さいね半蔵くん」

 

「うむ、まあそれが終わったら小百合に連絡するわい…それで良いかの?校長」

 

「ああ!君の問題は君に任せるさ!」

 

半蔵がそう言うと、根津は親指を立てた。

 

こうして会議が終わったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄英の生徒たちは普段何気ない、いつも通り学校に通うのであった。それは当然飛鳥たち三人もまた同じ。斑鳩と葛城は前みたく、半蔵学院で授業だそうだ…

皆は教室の中で何時も通り、ガヤガヤと騒いでいる。どうやら昨日あった事の話と、あの後どうなったのか、そして蛇女子学園の皆は無事なのか?そう言った話を飛鳥たちに聞いてみるものの、飛鳥たちも分からなかったそうだ。ただ言えることは、消息不明とのこと…

まるで昨日の事件が嘘のように思えてしまうくらいだ。

だがそんな少年少女たちの時間は、学校のチャイムが鳴る音と共に終了した。

 

「おはよう諸君達…」

 

ピタッ!!

 

チャイムと同じタイミングで相澤先生が教室の中に入ると、皆は一瞬で姿勢を正しては席についている。相澤は皆を見渡すと、目を瞑り口を開く。

 

「……朝のSTの前にお前らに話すことがある……お前らも知っての通り、昨日の蛇女子学園襲撃の件についてなんだが…」

 

「っっ……」

 

相澤の重みのある言葉に、皆は気不味い雰囲気の中黙り込む。やはり当然というべきか、相澤は分かっていたようだ。

 

「伝説と謳われてる忍、半蔵がお前たちに戦闘許可を許し、お前たちは蛇女子学園に乗り込んだそうだな?」

 

皆は気不味い沈黙の中、首を縦にふり頷く。相澤の表情からは怒りに似たものを感じ取られる。

 

「んで…行った奴らは誰だ?手を挙げろ…」

 

相澤がそう言うと、皆は冷や汗を垂らしながら手をあげる。それを見た相澤はそれも分かってたのか、大きく溜息をつく。

 

「………そんで?半蔵に許可を貰ったのは何時だ?」

 

何時?それは放課後のことだ。放課後に半蔵に話を聞き戦闘許可を貰い潜入したのだ。それを聞いた相澤は、目を細くし、目に暗い影を覆わせる。

 

「なるほど…な。つまりお前たちは半蔵の許可を得れたから、『俺が言ったこと』は聞かないって訳か…」

 

「っっ!そんな、つもりじゃ!」

 

咄嗟に席から立ち、首を横に振ったのは緑谷だ。緑谷はつい無意識に動いてしまった。

 

「そんなつもりじゃなくとも昨日の事件に変わりはない。俺は半蔵が言う前に言ったよな?朝のSTの時、『安静にしてろ』って…」

 

「……っ!」

 

それは、雲雀が捕まった際に皆が動揺してる中、相澤が言った言葉であった。確かに相澤は言ってた、安静にしてろと。半蔵が許可を出す前に……

 

「お前ら…分かってんのか?お前たちはヒーローの学生だ。もし万が一、誰か一人でもお前らが忍に殺されたらどうするんだ?それでもお前らはヒーローを目指せれるのか?」

 

「…………」

 

皆は相澤の言葉に黙り込むしかなかった。それもそうだ、確かに皆の力があったとはいえ、誰か一人でも死んだら最悪だ。そんな状態で、そんな志でヒーローになるなどと…ましてや緑谷にとっては立ち上がれないだろう…オールマイトから託された想いも、個性も無駄になってしまうことだってある。緑谷が殺されたりとか……

 

「それだけじゃねえ、もしこのことが世間にバレたら社会は一層に混乱を招くぞ……半蔵が許可を出したとはいえ、俺が言ったことを忘れるな……俺から言えることは以上だ、通常授業があるぞ、一限の用意しろ」

 

(先生……ダメだ、こんな重い空気の中で授業出来ません……)

 

皆は心の中でそう悟ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんやかんやで時間は進み、四限目終了後…

 

 

「はぁー…先生の言葉はキツかったけどさ、アレってやっぱり俺らのこと心配してだよな…」

 

教室の中、切島はポツリとそう呟いた。元はと言えば先に言い出したのは切島の方だし、やはり何処か罪悪感を感じるのだろう。

 

「ケロ…そうね、確かに……私が同じ立場なら誰だってそう言うし、私たちは学生だもの……周りに心配かけちゃダメよね…反省しなきゃいけないわ……」

 

「オイラ…確かに殺されそうになったけど、けど…死ぬならせめて女性ののおっぱいで死にたい!」

 

「ゴメン、マジで死んで」

 

「………」

 

皆んながしんみりムードのなか、峰田は相変わらずこんな時でもブレなく、いい加減にしてほしい耳郎は本音を峰田にぶちまける。

 

「けどさ、もしUSJに襲撃してきた敵連合に、抜忍ってやつがいたとしたら…俺たち相当ヤバかったよな…」

 

「だな…しかも蛇女子学園の事件では、俺たち全員いたからよかったものの、もし全員いなかったら、今頃飛鳥たちはどうなってたんだと思うと、心が痛むな…」

 

冷や汗を垂らす尾白に、同情し頷く障子。

 

「みんな……」

 

そんななか飛鳥は自分たちを心配してくれる仲間に、相澤先生に叱られて反省してる皆の姿に、涙目になる。

 

「よっしゃあ!そんじゃあ、もうこれ以上そうならねーようになんとかしなきゃな!」

 

すると切島は席に立ち上がり、皆を励ますように笑顔を向ける。

 

「切島…」

 

「それにさ、もう昔のことばっか悔やんだって仕方ねーよ…やっちまったもんは戻らねえ…なら次は叱られないようにすりゃあ良い!そんだけだろぉが…そんだけ!!な!爆豪!」

 

「な!じゃねえ!!クソ髪野郎…お前喧嘩売ってんのか?あぁ?表出ろや…!」

 

切島に真似された爆豪は、胸ぐらを掴み掌を爆破させる。そんなプンプン怒ってる爆豪を見て、はははと笑う切島。なんだか皆も口元が緩み、いつしか笑っていた。

 

それを見ていた半蔵の生徒たちも…

 

 

 

 

 

廊下では、いつものメンバーと決まっているのか、緑谷、お茶子、飯田、飛鳥は食堂に向かい、階段を降りている。

 

「それにしても、除籍処分とかにされなくて良かったあぁ〜…」

 

ホッとしながらお茶子は頬を赤らめる。

 

「確かにね…もし私たちのせいで皆んなが除籍処分になったら私、耐えられないもん…」

 

飛鳥はみんなに申し訳なさそうに謝る。

 

「い、良いよ!とにかく飛鳥さんたちだけでも無事で良かったし…ね?飯田くん!」

 

「ああ、俺たちは俺たちが正しいことをしたまでだ!何も謝ることじゃあないさ!」

 

緑谷は飯田に視線を移すと、相変わらずすごい手の動き方をして頷く。

 

「で、でも…あの抜忍の漆月って人と敵連合が攻めてきたんでしょ?それなのに私は…その場にいなくて……」

 

飛鳥は何処か申し訳なさそうにそういった。確かにその時飛鳥と焔はいなかった。道元の忍結界に利用され、怨櫓血という化け物に散々な目に遭わされたのだ。

 

「いやいや、それを言うなら寧ろ僕たちの方だってそうだよ!飛鳥さんたちがあの化け物と戦ってたのに、僕たちは戦うことが出来なかったんだから…」

 

緑谷は「気にしなくていいよ」と言うと、飛鳥は満面な笑みで「ありがとう!」と言った。

 

「う、うおおぉぉぉぉーーーーーー!!」

 

そんな飛鳥の表情を見た緑谷は両手で顔を覆う。

 

「ど、どうしたの緑谷くん!?顔真っ赤っかだよ?」

 

飛鳥は緑谷の顔を覗き込むように見つめると、緑谷はますます体を縮ませて、顔を見られぬように隠す。

 

「だ、だ、大丈夫!りんご病みたいなものだから…気にしないで…」

 

「いや、りんご病なら不味いぞ!直ぐに病院に!いや、リカバリーガールの元へ!いやしかしリカバリーガールは怪我の治療…実際病気はどうなのだろうか…?」

 

「飯田くんホンマに真面目や!」

 

緑谷を心配する飯田は、心配のあまりに独り言を呟き、皆のやりとりと飯田の真面目さに思わず笑いがこみ上げ止まらなくなりとうとう吹き出してしまった。すると、そんな皆んなのやりとりから…

 

 

「私が来たあァァァァァ!!」

 

曲がり角から突如やって来たのは、あのムキムキマッスルフォームのオールマイトであった。

 

「お、オールマイト!?って、どうして?」

 

緑谷だけでなくみんなも驚いた様子でいて、眉をひそめていると…オールマイトは後ろに隠してた右腕からあるものを出した、それは…

 

 

「仮眠室で…お弁当一緒に食べようか?ね?」

 

可愛らしいお弁当であった…

 

「オールマイトって乙女なの!?」

 

飛鳥は意外なオールマイトの一面に驚いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷はオールマイトの昼飯の誘いに乗り、仮眠室へと向かった。何を問い出されるのやら…また、何を言われるのか…相澤先生みたく怒られるのかなぁ…なんて心の中で思いながら歩いていると、仮眠室が見えた。オールマイトは仮眠室の中に入り、誰もいないことを知った途端、ガリガリのトゥルーフォームにへと姿を変えた。

 

「あ、あの…話ってなんでしょうか?」

 

ソファに腰掛けた緑谷は、恐るおそるそう聞くと、緑谷の思ってることはお見通しなのか、オールマイトは「ははは、そう恐縮しなくても大丈夫!」と声を掛ける。

 

「さて、まあまずは…緑谷少年、昨日の事件では、君が死ななくて良かった…他の生徒たちも…命に別状がなくて何よりだ……」

 

「オールマイト…」

 

やはりオールマイトにも心配を掛けてしまった。しかしそれでもオールマイトは責めない。緑谷の行動を…それは自分と重なるからなのだろうか…あるいは…

 

「まあね、君の気持ちは分からない訳じゃないさ…けどね、私の目の届かない場所でことが起きてからでは遅いんだ…それにぶっちゃけいえばワンフォーオールの時間は50分前後…分かるかい緑谷少年、

 

もう平和の象徴として立つ時間は、もうそんなに長くないんだ…」

 

「っ!」

 

その言葉に緑谷は言葉を失う。そう、緑谷が思ってた話とは違う。もっと深刻で、社会全体に関わり、そして自分とオールマイトのみの話…

 

「分かっていたことだし覚悟してたことだから、そう気にすることはないさ!」

 

オールマイトは緑谷に不安を掛けさせまいと、豪快に笑い吐血する。

 

「ただね…昨日君達と戦った敵連合、もしかしたら悪意を蓄えてる奴のなかに、このことを、それに気付き始めている者がいる…」

 

オールマイトの目は窪んではいるものの、その窪んでる目の瞳には、光が差し込むような輝かしい瞳であった。まるで魂が、信念が折れないような、そのようなものを感じ取れた。

 

「君に力を授けたのは!私を継いで欲しいからだ!!」

 

その言葉を聞き、緑谷はあることを思い出した。脳裏に浮かぶその光景は…幾つか…それは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴方みたいなヒーローになれますか!?』

 

 

 

 

 

 

初めてオールマイトと出逢った時のこと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君は、ヒーローになれる』

 

 

 

 

 

初めて憧れの人に、今まで生まれてきたなかで、言って欲しかった言葉を…

 

 

 

 

 

 

『なりたいんだ……貴方みたいな、最高のヒーローに!!』

 

 

 

 

 

 

力を継ぐために、ヒーローになるために精一杯死ぬほど努力してきたあの日々を…あの言葉を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「体育祭、それは全国が注目するビッグイベント!!今話してるのは他でもない、次の世代のオールマイト…平和の象徴の卵…!そう!君だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君が来た!ということを、ヒーローと忍の社会に!!世の中に知らしめて欲しい!!」

 

オールマイトは緑谷に、真っ直ぐな目で見つめ、そう言った。




体育祭、そう…体育祭が迫って来てます!一難去ってまた一難!
次回もお楽しみに!

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