光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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久しぶりの更新です!そしてお待たせ致しました!30話です!そして…ヒロアカ11巻、買いました。そして感動しました…(泣


30話「思い吹き飛ばせ」

「ネエエエェェーーーーアアエア!!」

 

「ホッホホオオーーウオウ!!!」

 

二体の脳無は煩い奇声を上げながらも、子供達を殺すため猛スピードで迫ってきてる。赤の脳無は既に手が刀に変わっており、両肩を使ってバズーカを連射する。

一方緑脳無は一気に間合いを詰めようと、ホッパーで跳躍し、相手の攻撃から身を守るために、ニードルを覆っている。そこから口を大きく開いて衝撃波を溜めている。

この二体の脳無の目的は、漆月から下された命令、ここにいる者全てを殺すことだ。ならば、遠慮はいらない…思う存分暴れて殺すのみ。思考能力を持たない脳無は考えることは出来ないが、漆月の命令が出てるのであれば、それだけを集中する。

そう、脳無達はいま目の前にいる少年少女を殺そうと…

 

ドガアアアアアアァァァァァァァァァンンン!!!

 

まず緑脳無の強烈な衝撃波が炸裂した。その破壊的な個性で目の前のものを跡形もなく吹き飛ばすように…

 

「そう何度も掛かると思うなよ脳筋野郎が!!」

 

爆豪たち全員はそれぞれ半々の数に分かれて、左右に回避した。そのため真正面の衝撃波で吹き飛ばされたものは一人もいない。全員無傷だ。

 

「よし!一気に畳み掛け…」

 

「ホウホーウ!」

「!」

 

切島が皆んなに言葉を掛けた途端、切島の目の前に赤脳無が飛び出てきた。赤脳無は切島目掛けて刀を振るう。

 

ガギイィィィィイイン!!

 

「っつ!!」

 

切島の体は硬化し咄嗟に腕を交差するよう赤脳無の刀から身を守った。腕と刀が交差し、ガチガチと不快な金属音を鳴らす。幸い切島にダメージはない。こんな攻撃を詠はもろに食らったとなると、痛いというレベルでは済まないだろう…この攻撃を耐えれた彼女から強さを感じるくらいだ。

 

「チッ…!刀結構危ねえな!けど…これで!」

 

「ああ!助かった切島!」

 

「今度は私たちの番よ!」

 

「!?」

 

切島がニヤリと笑みを浮かべると、突如切島の後ろから常闇と未来が飛び出てきた。

 

「秘伝忍法!『バルキューレ!』!」

 

「行け!黒影!」

 

「アイヨウ!任セろ常闇!」

 

赤脳無は咄嗟に両肩からバズーカを使おうとするものの、常闇の黒影と未来の秘伝忍法の方が早かった為、先手を取られた。未来の一発一発が強力なエネルギー弾と、黒影の強烈な鉤爪攻撃の連携攻撃が赤脳無を襲う。そのことで強烈な弾丸は両肩や足、腕に当たる。黒影の攻撃は胴体の腹部に鉤爪で抉るかのようにダメージを与えた。すると…

 

「ホバッ……!!」

 

苦痛の声なのか表情こそは変わっては無いが、ゾウのような鼻の口から血潮が噴き出し、態勢を崩してよろめいてしまう。

 

「えっ!?あいつ…私たちの攻撃をくらって…」

 

「ああ、効いている…確実に!」

 

その姿を見て常闇はわずかな希望を見るような目に変わり、未来に至っては歓喜の顔に変わった。

さっきの攻撃で確かな確信を得れた。目の前で、無表情で苦しんでる赤脳無の光景に。

先ほどまでどれほど攻撃しても何のリアクションも取らず、ただただ漆月の命令のみ行動してただけの脳無に初めて、常闇と未来の連携によってダメージを与えれたのだ。そう、それはつまり…

 

こいつは絶対に倒せれない敵ではない。むしろ、倒せる敵だと確信した。

 

「や、やった!この調子でもう一踏ん張り…」

 

「っ!待て未来!」

 

「へっ?」

 

だが未来が喜ぶには、まだ早かった。

 

「ホオオオォォーーーーアァァァァァァァァァーーーーーーーー!!」

「っ!!」

 

それはあくまで倒せるという話。決して倒した訳ではない。赤脳無はギョロリと目を未来と常闇に視線を変えると、甲高い声を出して刀を切島の腕から離す。

すると今度は赤脳無は常闇目掛けて刀を振り回す。だが常闇は距離を離しながら黒影を使って赤脳無に攻撃する。赤脳無の刀による攻撃は黒影には効かず、透き通るのだ。そのため常闇に対して刃物の戦いは愚策。だが思考能力を持たない脳無に当然考えることも出来ず、ただひたすら標的を仕留めるようとするのみ。

 

「ふっ…なるほど…命令通りに動くだけであり、思考能力は持たずといったところか!なら、こいつとの戦いでは俺が有利か?」

 

しかしそんな有利な立場はそう長く続く訳ではなかった…常闇が不敵な笑みを浮かべると、赤脳無は大量の息を吸い、炎を吐きこむ。

 

「っ!しまった…!黒影!」

 

「分かっテルよ常闇!」

 

黒影は直ぐにその炎から離れた。赤脳無は辺りを燃やし尽くすような勢いで火炎放射していると…

 

「だったらコイツでどうだ!」

 

パキイィン!!

 

「っ!轟、スマン助かった!」

 

「いや、良い…それよりアイツの炎攻撃とバズーカ攻撃が厄介だな…」

 

突如轟が離れた所から氷を繰り出す。パキパキと地面を這うような勢いで凍りついていく氷結は、赤脳無ごと凍らせる気なのだろう。氷は赤脳無に効かないと分かっていても…そう、『今』は…

 

 

 

 

一方、緑脳無は…

 

「ネエエアァァァァァァァーーーーーーーーーーー!!」

 

ニードルは不必要のため、引っ込ませた緑脳無は何度もなんども衝撃波を放出している。そのためか、部屋中がハチの巣みたいに穴だらけである。しかし緑脳無は動きが単純なため、慣れれば直ぐに見切ることが出来て、躱すのも容易いものになってきている。重傷を負っている詠を除いて…

 

「はぁ…ハァ……無理に動くと傷が……いえ、そんなこと関係ありませんわ……」

 

詠は息遣いが荒くなりながらも、それでも緑脳無を倒すために、大剣を向けて…

 

「秘伝忍法!『ジグムンド』」

 

秘伝忍法で振り下ろす。だが緑脳無はホッパーを使い後方に下がって避けてしまう。

 

「くっ…やはり…」

 

詠はそんな緑脳無を見て、悔しい表情を浮かばせる。緑脳無が後ろに下がったは良いが…その後ろにいる人物のことまでは分からなかったようだ…

 

「「秘伝忍法!!」」

 

その二人の声の主は…血気盛んの姉御肌の葛城と、感情を表に出さない日影であった。

 

「『トルネードシュピンデル』!」

 

「『ぶっ刺し』!」

 

蹴りとナイフが緑脳無の背中に攻撃する。葛城の蹴りが背中を食い込み、日影のナイフは背中を突き刺す。

 

「ネガバッ…ハッ!!」

 

緑脳無も赤脳無同様に口から血が流れ、一瞬だけ白目をむいた。

 

「おっ!今のは効いたみたいだな…!」

 

「せやな、流石に二人の秘伝忍法の力を同時に喰らえばダメージは出るんか」

 

二人は感心するよう頷く…ダメージを与えた。それはつまり、緑脳無の標的になるとも言える。

緑脳無は後ろを見ると、ニードルを覆いながら、二人を殺すために両手の掌から衝撃波を放出する。

 

ズドオオォォン!ズドオオォォン!という激しい崩壊の音が響き渡るが、二人はなんとか直ぐに避けたものの、それでも近距離でいたせいか、日影は左足を食らってしまった。

 

「日影!大丈夫か!」

 

「っ!葛城後ろ!」

 

「なっ…!」

 

「ネエエエエェェーーーー!!」

 

緑脳無は口から血を垂らしながらも、葛城を殺そうと迫ってきている。地面ごと殴るかのように、上から下へと拳を振り下ろす。

ドゴオオン!!と衝撃でクレーターのようにへこんだ。

 

「チッ!結構しぶといな…!」

 

葛城は間一髪で躱すものの、脳無は直ぐに視線を変えて、動こうとするが…

 

「秘伝忍法!『忍兎でブーン』!」

 

横から雲雀が忍兎が乗ってる金斗雲に乗り、突っ込んで行くが、それを察知した緑脳無は直ぐにホッパーで真上に跳躍する。

 

「ふえ!?あ、あれ?」

 

雲雀は突然のことに驚いて真上を見ると、緑脳無は衝撃波を出すため力を溜めている。どうやら雲雀を一撃で仕留める気なのだろう…

 

「まずい!雲雀!」

 

葛城はそう叫ぶと、雲雀はその場から離れようとする。しかしそれは無意味だった、なぜなら衝撃波は遠距離攻撃にもなれるのだから…軽くホッパーを使って空中浮遊してる緑脳無は雲雀の向きを変えない。そのことに気づいた葛城は、緑脳無を攻撃しようとする。だが、避けられる可能性だってある。また衝撃波が自分の方に来る可能性だってあるのだから…

 

「チッ!クソ!んじゃあどうすれば…」

 

その時だった。

 

「うおりゃあ!」

 

シュルルルル!ピタッ!

 

「ネ?」

 

緑脳無は思わず何かが脚に貼っついた方に振り向き見て見ると、それは瀬呂のテープであった。瀬呂のテープは緑脳無の脚に巻きつく。当然緑脳無は何のために脚に巻き付いたのか分かるはずもなく、そのまま標的を雲雀に変えるが…それが思考能力を持たない緑脳無のミスだった。

 

「いまだ!爆豪!」

 

「わーってらあ!!」

 

爆豪は爆破を応用して空中浮遊するように飛び、緑脳無目掛けて

 

「死ねクソ脳筋があぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ボオオオオオォォォォン!!

 

「っ!」

 

強烈な爆破の一撃が、ニードルを覆っていない腹部に腹パンすると、緑脳無は思わず唾液を吐き出してしまう。そして瀬呂は脚を巻き付いたテープを思いっきり壁側へとぶっ叩く。

 

ドガアァァァン!!という激しい崩壊の音が鳴り響き、緑脳無が放出した衝撃波は外れた。

 

「た、助かったあ〜…」

 

雲雀はそんな緑脳無を見てホッとした。だが…

 

「ホエエアアオオオォォォォーーーーーーーーー!!」

 

「っ!?」

 

雲雀の後ろから突如、赤脳無が襲いかかってきた。赤脳無は刀を向けて雲雀に斬りかかる。その後ろには、未来、常闇、轟が追ってる姿も見受けられる。

 

「きゃああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「不味い!雲雀!避けるんだ!」

 

常闇が叫ぶものの、雲雀は咄嗟に目を瞑り、腰を落として態勢を崩してしまう。するとスッ!と目の前に影が遮った。それは…

 

ガギイィィン!

 

「雲雀に、手を出すな…!」

 

「柳生ちゃん!」

 

番傘で赤脳無の刀を弾き返す柳生の姿であった。柳生は雲雀を一目見て無傷だと知ると、ホッと安心した表情を出してから、直ぐに赤脳無を攻撃しようとする。

 

「一気にケリを付けさせて貰うぞ!!」

 

柳生が叫んだその時だった。

 

「秘伝忍法!『混沌の渦の刀』!」

 

「何!?」

 

瞬間。柳生の横から、渦巻く禍々しい黒い風が刀を巻きつき、柳生を殴るように横から刀を振るう。

 

「っ!!」

 

「敵が脳無だけだと思ったら大間違いよ…アンタら結構有利な立場になっちゃってさ…生意気!」

 

漆月はかっ飛ばすように柳生を刀で殴り飛ばそうとするものの、柳生は咄嗟に番傘で漆月の刀をガードしていた。そのため守ってる番傘は柳生の体に食い込んでいるが、それでも漆月の攻撃を食らわないよりかはマシだ。

 

「生意気は…お前だ!秘伝忍法!」

 

「なあっ!?しまっ…」

 

「『薙ぎ払う足!』」

 

「きゃあぁっっ!!」

 

漆月は女らしい悲鳴をあげて、忍装束も少しボロボロになり吹き飛んだ。それだけでなく、近くにいた赤脳無も吹き飛ばされた。柳生は吹き飛んだ漆月と赤脳無を見て、ホッと一息つく。

だが油断はするな、戦いにアクシデントはつきものだ。

 

「ネガアアアァァァァァァァァァァァァァァァアア!!」

 

「!?」

 

甲高い、気味の悪い雄叫びが部屋中に響き渡る。そう、緑脳無はホッパーを使って部屋中を飛び回ってる。そのせいか、中々攻撃をすることが出来ない。攻撃が当たらない、どう対応すればいいかも分からない爆豪は目を吊り上げて思わず掌を爆破させる。

 

「ピョンピョン跳ねやがってぇ〜…!!こんのバッタ野郎がぁ!!」

 

ギチギチと歯軋りする爆豪は、緑脳無を睨みつけていると…

 

ドガアァァァン!

 

「っ!」

 

爆豪の足元近くに穴が空いた。それは、緑脳無が衝撃波を飛ばしたからだ。そう、緑脳無ニードルを覆いながら、ホッパーで部屋中を飛び回り、衝撃波を飛ばしまくっているのだ。まさに今の緑脳無は無敵。そう言わざるを得ない。

 

「チッ!……アイツを倒せる方法は、一か八かだと…」

 

爆豪は残ってるもう一つの腕に付いてる手榴弾の籠手を見つめる。これなら大規模な爆発攻撃でどれだけ飛び回っても関係ない…必ず当たる。だが…それと同時にここの部屋ごと潰されてしまう可能性だってあるのだ。ましてや緑脳無の衝撃波のせいでこの部屋のバランスも滅茶苦茶になっているのだ。そんな状態で撃ったらどうなるのか…言われなくても爆豪は分かっている。

 

「あ〜!クソが!!これどうすりゃあ…」

 

爆豪が頭を抱えて唸っているその時だった。緑脳無は衝撃波を何度もなんども撃ち、その衝撃波が…

 

「……え?」

 

重傷で弱っている詠に迫ってきている。

 

「ばっ!」

 

ドガアァァァン!!

 

それに気づいた爆豪は、咄嗟に声をかけるものの、声が途絶えて詠の方に爆発が炸裂した。そう、詠が吹き飛ばされたという最悪なアクシデントが起きたのだ。

 

「詠ちゃんっ!こうなったら…秘伝忍法!『DEATH×KISS(デス キス)』!」

 

春花は投げキッスで大量のハートを出すと、運良く緑脳無に直撃し、大爆発を起こす。ホッパーの音はなくなり、衝撃波を止んだ。そのことを確認すると、春花は視線を詠の方に戻す。土埃で視界が悪く、見ることが出来ない。だが、そんななか一つの疑問が湧き出てきた。

 

「…?あら?あのガミガミ言ってたあの子は?」

 

 

 

 

 

「……ここ…は?」

 

目を覚ました詠は、気がつくと仰向けに倒れていた。強烈な衝撃波の所為で、自分は吹き飛ばされたのだと分かった詠は、直ぐに立ち上がる。

 

「…?痛くない?」

 

詠はまず第一にそれが不思議に思った。確かにあの時自分は衝撃波によって吹き飛ばされた。だから自分はこうして倒れてた訳なのに…なぜ?その疑問は、直ぐに明かされる。

 

「チッ…!ハァ…ハァ……ハァ……足引っ張んな…怪我人がぁ…!」

 

「えっ!?」

 

それは衝撃波をもろに『受けて』、詠を庇い、ボロボロになってる爆豪の姿であった。

 

「な、なぜ…あなたが…?」

 

「はぁ…?んなつまらねえ当たり前な質問すんな…自分で考えろや!」

 

爆豪は呼吸のペースを徐々に戻していき、いつものような爆豪は一喝する。

 

「っ!私は…貴方に助けてなんて言っていません!」

 

「アァ!?んなもんわーっとるわ!つか助けたんじゃねえよ!俺が勝手にやった行動だ!」

 

「結局助けたと言ってるようなものではありませんか…」

 

「よし、んじゃあのクソカス連合の前にテメェを爆殺させてやろうか?」

 

爆豪はガルルと狂犬のような目線で低く唸る。だが詠は爆豪にどんなことを言われても、何故か憎くはない。むしろ何処か安心するような、そんな気がしてきたのだ。そんな詠はハッ!と我に返ると、首を横にブンブンと振る。

 

(何のんきなことを考えてるんですか私は!私は…)

 

そんなことを考えてると、爆豪は視線を変える。

 

「とにかく、早くあの脳筋野郎ぶっ潰してやる!俺様をぶっ飛ばしたんだ。ミンチっつーレベルじゃ済まさせねえ!」

 

「ちょっとお待ち下さい…」

 

「あ?」

 

爆豪が行こうとすると、詠は咄嗟に爆豪の腕を掴んで止める。詠は真っ直ぐ、真剣な目で爆豪を見つめる。

 

「貴方が先ほど、私に言いたいことがあると言っていましたね?何ですかそれは?」

 

「は?何だよ急に…今は…」

 

「いいえ、もしかしたら、今ここで聞かなければならないことなのかもしれませんから…」

 

「……」

 

詠はそう言うと、爆豪も真剣な顔立ちになり、数秒黙り込むと口を開く。

 

「お前あの時、俺たちが辛い思いなどしていないからとか、どうこう言ってたよな?」

 

「っ…え、ええ…それが…?」

 

それはあの時、雄英の生徒たちが蛇女に乗り込んで、爆豪が詠にキレてた時の話だ。詠の言葉に、爆豪は黙っていたのだ。そんな詠はぎこちない顔で返事をして頷くと、爆豪はそんな詠を見て再び話を続ける。

 

「辛い思いをしていない人間なんて本当にいると思うか?」

 

「え?」

 

爆豪の気迫溢れる言葉に、詠はキョトンとしてしまい、ピクリと、少しだけ体を震わせる。

 

「そう思ってたら大間違いだ。人間なんてな、心ある以上辛い思いするんだよ、そこは絶対に変わらねえ…テメェがどれだけ辛い思いをしてたかは知らねえし…俺がお前自身の事情をとやかく言うことはねえよ…」

 

「っ!なら、何でそんな分かってるようなこと言うのですか…!辛い思いをしてない人間なんていない?分かったような口でベラベラと言わないで下さい!じゃあ私の何が…」

 

「んじゃあ、テメェが辛い思いを抱えてるのを知って欲しいのか?俺らに?同情して欲しいのか?」

 

「なっ…!!っっ!」

 

微動だにしない爆豪は、爆豪の言葉に軽く戦慄した詠に近寄る。同情などして欲しくもない。だが確かに詠の言葉には、同情して欲しいと言ってるようなものも含んでいる。

 

「んで、テメェは辛い思いがあるから何をしたいんだ?憎いからなんだ?それで、テメェのその辛い思いをどうしたいんだ?」

 

「そ、それは…」

 

「………」

 

詠はそんな爆豪の眼差しに耐えられないのか、そっと視線を逸らしてしまう。すると…

 

バガアァァン!

 

「っ!」

 

瓦礫、木柱などが倒れた音が響く、その音で詠は思わず態勢を崩して座り込んでしまう。そこには二つの人影が…それは…

 

「いたいた…ったた…柳生めぇ…私を吹き飛ばしたりして…思ったよりもこんだけ数いるとこっちが不利ね…」

 

「ホウホーウホウ!」

 

「「っ!」」

 

なんとそこには、長い髪をくしゃくしゃしてる漆月と、木柱の破片やや、瓦礫の破片などで体が突き刺さっている赤脳無の姿であった。赤脳無の体には所々血が垂れている。

 

「まあいいや、少人数から消していけば…何とかなるかもね…脳無と一緒にやれば少なからずガキ二人は殺れる」

 

漆月がそう言うと、赤脳無と漆月は走り出す。そんな二人に爆豪は苦虫を噛み潰したような顔で、二人に立ち向かう。

 

「っ!貴方…正気ですか!?あの脳みその化け物を相手するのにやっとなのに…!」

 

「五月蝿え!!テメェも俺らより強いとかほざいてたんなら立ち上がれや!!」

 

爆豪はまず漆月に爆破攻撃をするものの、バックステップで難なく躱され、赤脳無は刀を振り回して、爆豪は何とか見切り避けている。

 

「テメェ、辛い思いとかで自分を囚われてるんじゃねえ!!いつまでもそんなクソな思いを溜めてるんじゃねえ!」

 

「!」

 

爆豪は叫び続ける、たった一人の蛇女の生徒の詠に…

 

「それなら正直言ってお前はまだ強くねえ…そんなんなら永遠に俺には勝てねえ。それだけはハッキリ言えるわ」

 

「なっ…んですって…!!」

 

爆豪の言葉は挑発混じりな言葉ではない、本気で真剣な言葉だ。それを聞いた詠は思わず拳を強く握りしめる。

 

「ちょっとちょっと〜…戦闘中に仲間割れ?随分と余裕があるのね?」

 

そんな二人の中に、漆月は呆れた声で呟くと、爆豪は漆月を睨みつける。

 

「ああ!?五月蝿え端役は黙って倒れてろ!!」

 

「ウザっ…煽りタイプか…」

 

爆豪の発言にピクリと眉をひそめる漆月は、静かに怒りのコスモを燃やして突っ込んでくる。

 

「チィッ!っぜぇな本当に!」

 

爆豪は滝のように流れる汗を拭いながら戦う。自分がピンチな状況に置かれてもだ。そんな爆豪は詠の目の前に立って、敵連合に立ち向かう。

 

「あ、貴方……」

 

詠は思わず声を出した。何でそこまでして何かに立ち向かい、戦うのかが詠には分からなかった。

自分の立場ががピンチなら、わざわざ庇わなくても良いのに…なのに爆豪は退かない。むしろその後ろ姿は、詠を守ろうとするような姿であった。口ではあんなこと言っていた彼が、なぜ?何の理由でそこまでして守ろうとするのかが分からなかった。

 

「あなた…命を狙われてるのですよ?なぜこのような状況で私を庇うのですか?いいえ、例え庇う気がなかったとしても……!」

 

「だったら立ちやがれ!!」

 

「なっ…」

 

爆豪は詠に振り向かず、一切目をくれずに、目の前の敵に戦うので精一杯だ。

 

「辛い気持ちも…苦しみも…全部ねじ伏せて立ちやがれや!!」

 

「…っ!」

 

赤脳無の刀が、爆豪の肩をかすめてわずかに傷口が出来た。それでも爆豪は話し続ける。

 

「その辛い思いも、苦しみも全て…強さに変えろや!!負ける以外に……何が辛いんだよ!!」

 

「負ける…以外……」

 

漆月の闇を爆破で吹き飛ばす。斬りかかる漆月に爆豪はなんとかアクロバティックな動きで躱しつつ、反撃を試みるもの、漆月も手強いのか、攻撃が当たらない。それでも尚、爆豪は話すのをやめない…詠のために。

 

「辛い時こそ、前を見ろよ!!!」

 

「………っ!!」

 

辛い時こそ前を見ろ、その言葉を聞いて、詠は脳裏にあるものが浮かんだ。それは自分が幼い頃からお金がなくて、貧民街で育っていた時だった。鳳凰財閥のお屋敷に見下されていて、辛かった。けどそんな時はいつも下を向いていた。

辛い時こそ下を見ろ。それが詠の座右の銘である。

どんだけ罵られようと、ひもじい思いをしてようと下を見る。そうすれば…少しは辛い思いも和らぐから…だから。詠はいつも下を向いて生きてきた。それなのにこの男は…

 

『辛い時こそ、前を見ろよ!』

 

こんな自分に、一生懸命になって怒鳴ってくれる。目の前の人が、ヒーローが…

 

 

 

 

「立ちやがれ詠ぃ!!!!」

 

 

 

初めて自分の名前を呼んでくれた。

 

 

「私は……!!」

 

思わず目から涙を流してしまう詠は、ジッとその背中を見つめた。徐々にダメージで受けた傷の痛みや、今まで通してきた辛い思いも、徐々に和らいでいき、透き通るように無くなっていくような……

 

「あーあ、ウザい!本当にうざい!脳無!」

 

漆月がそう叫ぶと、赤脳無は大量の息を吸い込む。炎を吐くと察知した爆豪は、その前に攻撃しようと試みるが…

 

「イガグリは焼かれてなさいよ!」

 

漆月は爆豪に斬撃を飛ばす。爆豪はなんとか躱すが、赤脳無の方はもう間に合わない。火炎放射がやってくる。その時だった。

 

ビュオォォォォォーーーーー!!

 

「なっ!?」

 

突如強烈な風が爆豪の後ろから吹き出し、その火炎放射は逆に赤脳無を襲った。

 

「ホオアアアアァァァァァーーーーーーー!!」

 

「赤脳無!」

 

漆月は間一髪で避けたため、何ともない。その風の正体はもちろん…

 

「立ち上がれ?言われなくても…わかってますわ!!!」

 

「ケッ…なら最初っからそうしろや…!」

 

詠である。

 

 

しかし、それだけではなかった…

 

ズドオオォォォォォォォン!!

 

漆月の前から突然、横から何かが吹き飛んできた。それは…ボロボロな状態の緑脳無であった。

 

「は?何で…他の奴らは?」

 

「ネェ…ネェ…アッアッ!」

 

緑脳無は息を切らして何とか立ち上がり、何かを睨みつけるような目で見つめている。それは…

 

「お前ら大丈夫か!?」

 

「あっ!抜忍の野郎もいる!」

 

「見つけたよ!」

 

他の連中も…この騒動に駆けつけた。

 

「み、みなさん!」

 

「それにクソナードもかよ…」

 

詠はみんなを見て笑顔になり、爆豪は緑谷を見つめて舌打ちをする。

 

「あっ、か…かっちゃん…」

 

「そうだ緑谷、この二人にも『あの事』話しておいた方が良いんじゃねえか?」

 

「っ!そ、そうだね…」

 

轟が肩に手をポンと置くと、緑谷は冷や汗を垂らして頷く。そんな二人は首を傾げ、話を聞くと…

 

「はい、分かりましたわ。その事なら…!」

 

「はぁ!?ざけんじゃねえ!なんで俺が従われなきゃいけねえんだクソ野郎が!!」

 

「お、落ち着いてかっちゃん!」

 

詠は納得するが、爆豪は納得せず、腹を立てて緑谷の胸倉を掴んだ。そのことに緑谷は困る表情をして、皆んなは荒ぶる粗暴の爆豪を止める。

 

そんな中漆月は、増援が来たことと、ワイワイ話し合ってることに腹を立てる。

 

「チッ…少人数でぶっ殺す気だったけど…やるっきゃないね…向こうはヤケに仲良しごっこやってるみたいだし、思いっきりリンチだね…」

 

そう言うと、赤脳無は刀に向けて口から炎を吐く。すると二つの刀は炎を纏わせ、緑脳無は先ほどと同じだ。二体の脳無は、血走った眼でみんなを見つめて走り出し、殺しにかかる。これだけダメージを与えて、充分に苦しいにも関わらず、二体の脳無は尚、戦い続ける。

 

「皆んな!来るよ!」

 

緑谷が叫ぶと、皆んなは態勢を整える。そして、二体の脳無が攻撃するその時だ。

 

パキイィン!

 

「秘伝忍法!『バルキューレ』!」

 

「黒影!」

 

「えっ!?」

 

なんと、赤脳無と緑脳無の目の前に氷の壁が出て来たのだ。しかし二体の脳無はその氷の壁を壊す。そのくらい容易いだろう…だが氷の壁を壊すことが皆の狙いだった。

 

「行け!()()()()()()()()()()()なら!」

 

「うん!コイツらを倒せるかもしれないからね!」

 

轟の言葉に、未来は頷く。先ほど、爆豪と詠が吹き飛ばされた時、緑谷達は駆けつける前に話し合っていたのだ。敵をどう倒すのか?単直に、短い時間で皆んなの意見を出し合った結果、それが作戦となったのだ。ただ単に戦っては体力が消費するだけなのなら…考えて戦えば良いと。

未来はバルキューレで二体に乱射し、黒影は殴りまくる。

赤脳無と緑脳無は標的を変えると…

 

「秘伝忍法!『DEATH×KISS』!」

 

「うおりゃああぁぁぁぁぁーーー!!!」

 

突如大量のハートと紫色のボールが飛んで来た。それは春花と峰田の攻撃だ。

 

「ふふふ、あなたの個性は期待してるわ…頑張ってね?私の『下僕』♪」

 

「はいぃ!喜んで春花様あぁぁぁーー!!」

 

春花の大量のハートに躱すことが出来ず、もろに食らった二体の脳無は爆発し、そして動きが止まった脳無たちは峰田のもぎもぎに当たりくっついてしまう。因みにもぎもぎを取りまくって投げては頭から血が出てる峰田は、いつの間にか春花の下僕となり、様付けする始末だ。だが峰田は嬉しそうなので良いのかもしれないが…

 

「っ!!小癪な…!」

 

邪魔ばっかしてくる皆んなに、漆月はますます腹を立て、苛立つ。

 

「こうなったら私自身で…」

 

「邪魔はさせない!!」

 

「えっ!?」

 

振り返るとそこには…走って来てる緑谷の姿であった。

 

DELAWRE(デラウェア)!」

 

「二度も引っかかるかってえの!」

 

漆月は真上にジャンプすると…緑谷はワザと攻撃しなかった。そして、残ってる指を漆月の居る真上に向けて…

 

「えっ!?あっ、ちょっ!」

 

SMASH(スマッシュ)!!!」

 

ズバコオオォォォォォォオオオオン!!!

 

真上に天井が開くような勢いで大爆発が炸裂した。

 

「っっっづあ!!いっっだぁっ!!」

 

緑谷は三回も個性を使ったため、痛みに悶絶し、とうとう弱音を吐いてしまう。

 

「抜忍に二回も使うなんて…!!けど、これで!」

 

「させるかって言ってんのよ!!」

 

「えっ…嘘…!」

 

真上から声が聞こえたので、見てみると…頭から血をダラダラと流れ垂らし、息を切らしてる落下して来てる漆月の姿があった。

 

「そ、そんな…」

 

「倍返ししてあげる…死ね!」

 

漆月が刀を振り下ろすその瞬間…誰もが思いつかない予想外なことが起きた。

 

 

「ハイ!タッチ!」

 

「「え?」」

 

 

漆月は誰かに触れられた瞬間、体が浮いた。

 

 

「こ、これは…この個性は…まさか!」

 

「大丈夫?デクくん!」

 

 

声がする方に振り向くと、そこには…

 

 

「麗日さん!?」

 

 

麗日お茶子の姿があった。

 

「やっと見つけたよ!お〜い!『皆んな』!こっちに居るよ!」

 

お茶子が後ろを振り向いてそう叫ぶと…ガヤガヤと個性あふれる声が聞こえて来る。それは…

 

 

「緑谷くん達は無事か!?」

 

「下の部屋にまで飛ばされて大変だったよ…」

 

「尾白くん、埋もれてたからね…」

 

「俺のパワーとお茶子の個性でなんとか障害物は退かせれたからな!」

 

「ああ、それに俺と耳郎二人の個性で音がする方へやって来たが…ビンゴだったな…」

 

「当然でしょ」

 

「フフフ、友情とは素敵だね…そう思わないかい?」

 

「え?あ、えっと…その…まあ、うん…」

 

「青山くん、口田くんもう呆れて困ってるよ〜」

 

「そもそも何故毎度まいど口田さんに話を振るうのですか!?それと皆さん緊張感が足りません!まあ、緊張しなくても良いのですが…」

 

「とにかく、これで全員揃ったわね、ケロ」

 

そこには、緑脳無の衝撃波によって吹き飛ばされた、雄英の生徒達であった。

 

「俺たちもサポートに移るぞ!」

 

「負けらんねえぜ!」

 

「その前に緑谷さん!今の状況は?」

 

「あっ…え、ええと…」

 

緑谷は今起きてることを、皆んなに、手短に話した。

 

「分かりました…それなら!」

 

「おう!やれる!」

 

皆んなは希望あふれる表情で、二体の脳無を睨みつけた。そんな皆んなを見て、空中浮遊してる漆月は…

 

「クソ!体が浮いて落ちれない!無重力ってところかしら…?てか、アイツら何をする気なのよ…」

 

疑問を抱いて呟いた。

 

 

場所は変わり…

 

「ネ・エ・エ・エエェェーーーーー!!」

 

「オラァどうだ!久しぶりの出番だぜこんにゃろ〜!」

 

緑脳無が雄叫びをあげた。それも苦痛の声が混じって…ビリビリという音が鳴り響いて居る。それは、緑脳無が電撃を浴びて、そんな脳無にくっついてる上鳴であった。緑脳無はホッパーを使うので攻撃が当たりにくくなってしまう。なら足止めをすればいい、その為には未来と常闇の攻撃と、春花と峰田の奇襲をしかけて、隙が出来た所で足止めするという作戦だ。上鳴の個性なら容易いことだ。

 

上鳴電気 個性 『帯電』 電気を纏わせることが出来る。ただし使いすぎるとW数を超えて許容オーバーすると脳がショートしてアホになる。また、放電などといった無差別攻撃も可能。そして今の所130万ボルトを出すことが出来る。

 

そして…

 

「ほな、助かるわ…」

 

「ケロ」

 

赤脳無の前には、足を怪我した日影と、日影の怪我してる足に負担をかけさぬよう、腹に舌を巻きつけて振り回してる蛙吹の姿であった。振り回して速度をつけてから、思いっきり日影を赤脳無目かげて投げ飛ばす。

 

「ほな、覚悟しいや」

 

「ホアアアアオオオオオォオオォォオオオォォ!!!!」

 

赤脳無は血走った眼で大きな声を叫び、バズーカを撃つ。だが…

 

ボガアアアン!!

 

「ホバアッ!?」

 

不発。そして両肩が大爆発した。何故その現象が起きたかというと…両肩に峰田のもぎもぎがくっついてるからだ。そう、あの時、峰田は無闇に投げたのではない、真っ先に両肩を狙ってたのだ。くっついたことを確認してから、あとはデタラメに投げれば問題ない。

春花の秘伝忍法の力なら、当然爆発して二体は動きを止めるだろう、動きが止まってる隙に峰田がもぎもぎを投げる。そうすればほぼ確実に両肩を防ぐことだって出来る。それはつまり、個性を封じるという意味でもあるのだ。

そんな状態でバズーカを撃ち、両肩が爆発した赤脳無は、逆にダメージを負った。怯んだ赤脳無に、日影と…

 

「アタイもいるぜ!!」

 

葛城も参戦。二人は秘伝忍法の力を使い赤脳無に直撃する。

 

「っっっっ!!!」

 

バシャリ!!

 

赤脳無は激痛で白目をむき、口から大量の血を吐き出す。そんな赤脳無はヨロヨロな状態で炎を纏った刀を振り回す。

 

「コイツ!アタイらの攻撃を食らってもまだ…!?」

 

「ダメージは食らってても命令に従うっちゅー訳なんやな…」

 

葛城は、二人の最大の力でも、まだ倒れようとしない赤脳無に驚愕し、日影は嫌なものを見るような目で呟いた。だが、ここで更に赤脳無には苦痛な出来事が起こる。

 

パキイィン!

 

赤脳無の体が凍りついた。それは勿論轟の仕業だ…氷はみるみると上半身を覆い、刀にまで覆っていく、すると氷は溶けていくものの、それと同時に火も弱まり、やがて刀も凍りついた。赤脳無が炎を吐こうとするが…

 

「ホ…ホオォォーーー!」

 

わずかな炎で氷を溶かすのが精一杯な様子だ。それを見た轟は納得したかのように頷いた。

 

「なるほどな…緑谷の言った通り、コイツらはもう体力に限界があるようだな…それだから、炎の勢いも弱まってるんだろ?」

 

轟がそう言うと…赤脳無の目の前に二つの影が遮った。それは…

 

「秘伝忍法!『飛燕鳳閃・壱式』!」

 

「レシプロバーストオォォ!!」

 

真面目な委員長の斑鳩と飯田であった。斑鳩と飯田の二人の力が炸裂し、

 

バキイィッ!!

 

赤脳無の二つの刀を折った。

 

「っっっ!!!アァァァァァァァオォォォォオォォォォオォォォォアァァァァァァァ!!!!」

 

もはや悲鳴と苦痛しか聞こえない赤脳無の叫びに、罪悪感を感じてしまうところもあるが、凶器を取り払えた。

 

「やりました!」

 

「ああ!轟くんの氷で刀の耐久力を落とし、俺と斑鳩さんの二人の高火力の力で凶器を消したぞ!」

 

二人の力で、またしても赤脳無の個性『手刀』は封じることが出来た。

 

 

それを見てる緑谷たちは、段々と歓喜の顔に変わってきた。

 

「す、すごい…デクくん達の作戦が…こうも…」

 

「す、すげぇ…リンチだ…」

 

赤脳無の光景に、若干うわぁ!ってなった所もあるが、勝機が見える状況に、お茶子と砂糖は思わず声を漏らしてしまう。

 

「うん、確かに脳無はどういう理由かで個性を複数持っている…それに感情もないし、雲雀さんが言ってた通り、心もない…オマケに人間離れした身体能力を持ってるし、正に化け物…でも…無敵って訳じゃない、USJほどじゃない!」

 

緑谷は叫ぶ。そう、心がないだけで、限界があるんじゃないか?脳無だって化け物じみても、人間だ。生きている…必ず限界がある。そう、オールマイトが脳無と戦ってた時と同じように…

確かにこっちだって体力は消耗してる、けど全員が戦えない訳じゃない。個性が複数あるから?なら、こっちは何人もの力で、個性で戦えば良い。向こうが一体につき個性三つ、二体で六つ。だがこっちは20人いる、それはつまり、一つの集団で20個の個性があると言えば良い。それをどううまく活用するべきか、どうすれば良いのかを考えれば、必ず勝利は出てくる。

 

 

そして緑脳無の方は…

 

「ネネネエェェーーーーー!!」

 

「ウエェェェエーーイ!!」

 

やっと電撃が止み、上鳴の目の前に立つ緑脳無に、個性の使いすぎで頭がショートしアホになり、ウェイしか言ってない上鳴。上鳴は親指を立てて緑脳無に何度も「ウェイウェイ」言っている。

そんな緑脳無は上鳴を消そうと掌を向けて衝撃波を撃とうとしたその時。

 

「爆音ビート!」

 

「秘伝忍法!『ニブルヘイム』!」

 

「私も手伝いますわ!」

 

「でりゃあ!」

 

耳郎の個性が炸裂し、詠は秘伝忍法で遠距離射撃、そして八百万は詠のボウガンを真似て、詠と同じく遠距離射撃し、柳生はクナイを投げつける。

 

四つの攻撃が緑脳無を襲うと、緑脳無は動きを止める。

 

「ネッガッアッバハァッ!!」

 

強烈な一斉攻撃に緑脳無は思わず吐血してしまう。

 

「ネエエェェーーー!」

 

緑脳無は上鳴よりも、四人を狙いホッパーで跳躍すると…

 

ブシュウゥッ!

 

「っっ!?」

 

ホッパーを使った途端、緑脳無の脚の傷口から血が噴き出す。それは…詠と八百万の二人の力で脚を狙ったのだ。詠の秘伝忍法ニブルヘイムは、火薬物だけでなく、刃物を飛ばして脚を傷つけさせ、ホッパーを使用不可にする為のものであった。そんな緑脳無は思わず転倒してしまう。直ぐに立ち上がると…

 

「うおりゃあああぁぁぁ!」

 

切島は緑脳無の背中目掛けて走り出す。緑脳無は背中にニードルを覆っている為切島の攻撃は効かないわけがなかった。

 

ドッ!!

 

「がアッハ!」

 

なんと、緑脳無のニードルはへし折られており、切島は傷一つ付いていない。それは硬化により鋭利なニードルが効かないからだ。そんな切島は緑脳無の背中の傷に思いっきりぶん殴ったのだ。その傷とは、前に葛城と日影の二人の力でつけた傷のことだ。

 

「へへ、あん時俺を思いっきり地面に叩きつけたこと、しっかり返してもらったぜ!」

 

緑脳無は顔を変えようとした瞬間…

 

ビッ!

 

「アバアアぁ!?」

 

光ほとばしるレーザーが、緑脳無の三つ目、真ん中の目に直撃した。その個性は勿論青山だ。

 

「フッ…華麗に決めさせて貰ったよ☆」

 

青山は緑脳無に向かって、自慢げに指を向けウィンクする。

 

そして…

 

「おっしゃああぁぁぁ!!そろそろフィニッシュと行くぜ!!」

 

瀬呂は思いっきり叫ぶと、テープを赤脳無と緑脳無に巻きつけ、背中を合わせるようくっつけさせ、更に巻きつける。

 

「これでどうだぁ!!」

 

ブチッ!とテープが切れると…あとは…

 

 

「「「「緑谷!!!!!」」」」

 

「「「「爆豪!!!!!」」」」

 

皆んながそう叫んだ途端、緑谷と爆豪は前に出る。

 

 

「チッ!何でテメェなんかと!!けど…」

 

「かっちゃん…うん!今は!」

 

爆豪は舌打ちして、緑谷を睨むが、思うことがあり直ぐに視線を脳無に変えて、緑谷もぎこちなく苦手意識があるが、爆豪と同じく、直ぐに視線を変える。

 

 

((勝つことに集中だ!!))

 

二人は心の中でそう叫んだ。

 

「「「行けええぇぇぇぇーーーーー!!!」」」

 

雄英生徒の皆んなの声が、

 

「お二人共!」

 

「ああ、派手で高火力出せるお前らなら、出来るさ!」

 

「緑谷…爆豪…」

 

「頑張れ〜〜〜!!」

 

斑鳩、葛城、柳生、雲雀の、半蔵の忍生徒たちの声が、

 

「緑谷さんに爆豪さん!どうか!」

 

「頼むで!!」

 

「全力でアイツらぶっとばせーー!!」

 

「これならいけるわ!!!」

 

詠、日影、未来、春花の、蛇女の忍生徒たちの声が、

 

 

勝利を願う。

 

 

 

「吹き飛べええええぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!」

 

 

DETROIT(デトロイト)!!!!」

 

 

緑谷は緑脳無を、爆豪は赤脳無を目掛けて…

 

 

 

いま!!

 

 

SMASH(スマッシュ)!!!!!」

 

ボオオオオオオオオオォォォォオォォォォォォォォォォオオオオン!!!

 

 

強力な敵、二体の脳無を吹き飛ばした。

 

 

ドガアアアアアアァァァァァァァン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天守閣が激しく揺れる。外から見ると焔のように、突き出したような大爆発が炸裂した。そのことに、外にいた鈴音、霧夜、大道寺は吹き飛んだ何かを見やる。

 

「なんだこの爆発は!?」

 

「あれは一体?」

 

その吹き飛んだものとは…

 

「「…………」」

 

完全に白目をむいており、ほぼボロボロな姿で吹き飛んだ、物言わぬ人形と呼べる二体の脳無の姿であった。それを見た鈴音は目を丸くする。

 

(ヴィラン)!?となると…」

 

「ああ、後輩らと教え子、そして英雄が、邪な者達を見事打ち勝ったのだ!!」

 

大道寺はニヤリと笑みを浮かべてそう言った。

 

 

天守閣の中では…

 

 

「やったあああぁぁーーーーー!!」

 

 

皆んなは歓喜の顔で、勝利の嬉しさに叫び出し、それが部屋中に響き渡った。

 

そう…その部屋にいる、お茶子の個性により空中浮遊したまま、ジッと戦いを見つめてた漆月を除いて。

その漆月は、忌々しく、怒りと殺意のこもった目で、不愉快そうに少年少女達を睨みつけるのであった。




ようやく二体の脳無を倒すことが出来ましたね!これ見てるとなんだか痛々しいwwそして緑谷父についてですが、どうやら敵連合は関係ないようですね、なんかホッとしました。

赤脳無 危険度A

個性 『バズーカ』
『手刀』 手を強靭な刀に変えることが出来る。両手可能。そして砥石などで磨けば磨くほど強くなり、切れ味が増す。勿論刀から手に変えることも可能。
『火炎放射』 口から炎を吐き出すことが出来る。熱の調整可能。また高熱を長時間使いすぎると、エネルギー切れが早くなる。また、緑谷曰くお父さんに似てると言われているが……

緑脳無 危険度A

個性 『衝撃波(ソニックブーム)』
『ニードル』 背中や自身を傷つけさせないため、外側から鋭利な棘が出てくる。ウニみたいなものだ。長さは最低5㎝〜最高10mまで伸ばすことが可能。ただし一本ずつ伸ばすことは出来ず、伸ばす時は全体が伸びる。
『ホッパー』太い脚は、ホッパーの跳躍によるものであり、空中や壁、地面などから使うことが可能。回避性能に優れてる個性だ。

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