光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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THE・捕捉 なんですが、閃乱カグラの焔とヒロアカの芦戸って声一緒なんですって、知ってましたか!?作者はそれ知った時思いっきり驚きましたね。


26話「予期せぬ出来事」

斑鳩と飯田は、天守閣の最上階へと向かうべく、焦る気持ちを抑え込み、走り出している。

 

 

「それにしても斑鳩さん…まさか、貴方が養女だったとは……」

 

「その事は後にしましょう飯田さん、今私たちがやるべきことは…!」

 

「はい!真に倒すべき敵…ですね!」

 

 

飯田は手や腕で変な動きをしながら話し出す。当然斑鳩も飯田のその癖に少し驚き二度見してしまうが…そんな飯田は御構い無しに話し出す。

 

 

「こんな時に障子くんと耳郎くんが居れば…なんとか上へまで行けるが、ここの屋敷内全く謎だ!!あちこちに罠もある、階段が何処にあるかが分からないな…」

 

 

飯田は周りをキョロキョロしながら走っていると、斑鳩の方に、不意に矢文が飛んできた。

 

 

「っ!? こ、これは?」

 

「矢文…読んでみましょう」

 

 

飯田は矢文が飛んできたことに驚き、斑鳩は冷静な状態で読み始める。

 

 

「これは……屋敷内の見取り図!?」

 

「!一体誰が…?」

 

「分かりません…その者が一体なぜ私たちに…敵意は感じられませんが、それでも私たちは最上階へと向かわなければなりません…」

 

 

斑鳩はそう言うと、見取り図を見ながら最上階へと走っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

焔VS爆豪たちは…

 

 

 

「ハァッ!」

 

シュッッ!

 

 

「チィ…!」

 

 

焔の攻撃や動きを予測し、なんとか躱してる爆豪、逆にこっちも反撃するものの、爆豪と同じく動きを読み取られ、躱されてしまう。そんな焔は、憎悪溢れた目で爆豪を睨みつける。

 

 

「なかなかやるじゃないか…!」

 

「なかなか?お前、使う言葉間違えてんぞ?なかなか、じゃねえ…強えだクソがぁ!!」

 

 

爆豪はまた焔に煽るようにそう言うと、焔は殺気立ち、一呼吸してから刀を向ける。だが爆豪は真っ直ぐと臆することなく焔の目を見つめている。そう、真っ直ぐ……

 

 

「…お前みたいな奴は一々ムカつくんだよ!!飛鳥も、あのデクの棒も!」

 

 

デクの棒、それは緑谷のことだろう。爆豪は「ハッ!」と小馬鹿にするように鼻で笑う。

 

 

「デクの棒、クソデクか!それについては俺も同意見だ…あんのデクいつもバカにしやがるしな…」

 

「煩い!!お前たちは、何の苦労する思いも…辛さも…『裏切られた』人間の気持ちも知らずに、ただただ正義とやらを名乗り出る!そんなお前たちを見てるだけで腹ただしい……だから、正義なんてのは嫌いなんだよ!」

 

「?お前…何のこと言ってんだ?」

 

 

爆豪がそう聞くと、焔は過去にあったことを話し出す。

自分は元は立派な善忍の家系だった。親からも期待されており、自分もその両親の期待に応えようと、必死に努力してきた。小学校の時から個人授業制の塾に通わされてた。ある時中学二年生の頃、担任で仲良くしてもらっていた小路という男に進路を聞かれた。そして自分は、忍びの一族だと明かした。その途端、小路の態度は急変した…

そう、小路は悪忍だったのだ。その理由は、焔の忍家系の一族を抹殺するためであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私を利用してたの?どうして?』

 

 

誰もいない部屋に追い詰められた焔は、恐るおそる小路に尋ねた。殺すのであればどうして早くそんな事をしなかったのか?何より仲良くしてた担任が、そんなことをする訳がない…と。

疑問と焦り、恐怖…様々な負の感情が焔の心を蝕んでいた。そんな焔を見下して、小路はフッと鼻で笑った。そして、学校から善忍をあぶり出す為に利用してたと。

 

 

『う、嘘……わ、私は……貴方のこと、信じてたのに……し、信じてたからこそ……私の家系が忍びだってことも教えたのに……なのに、何で…なんで!!』

 

 

認めたくなかった。とにかく認めたくなかった……その為だけに利用してたなんて、今まで仲が良かった。殺す相手を仲良くするなんてことは想像できない。だからそれが嘘であって欲しいと思ってた。しかしそんな焔に、小路は悪意溢れた目で見つめていた。

 

 

『信頼させてから殺すのが一番良いんだよ。出来ればそうだなぁ〜…淡い恋心を抱かせたりとかな』

 

 

パリン……!

 

 

 

小路の言葉を聞いた焔は、心の何処かが割れるような音がした。

今までのことは全て嘘、たったそんだけの為に自分は相手の都合、感情次第で利用されていた。それに気付けなかった己の怒りと、小路に対する怒りが溢れ、頭の中が真っ白になり、近くにあったクナイを抜いて、小路を刺して半殺しにした。それによって善忍の忍学校の受験資格を失い、両親は勘当されて家を追い出された。

生きる希望もなく、誰にも受けいられずに町中を歩いてる中、蛇女子学園という存在を知り、悪忍となった。小路を半殺しにしたにも拘らず、むしろ蛇女の皆んなは大歓迎してくれた。何よりも悪は善よりも寛大だと言う。だから自分は悪忍として生きてく道を選んだ。

 

 

それを話し終えた焔に、皆んなは黙り込むことしか出来なかった。

 

 

(焔ちゃん……)

 

 

飛鳥はそんな焔に、受け入れたいと思う眼差しを向けた。もしこんな事が無ければ、きっと焔は飛鳥の仲間だったと思うからだ。

 

 

(……『アイツ』も、そうなのか……)

 

 

轟は黙り込みながら、いつの間にか憎悪溢れる目が消えていた。むしろ焔の苦しみ同情している。それは、『自分』も家族に『苦しめられた』から、分かるのである。

 

 

「そん……な……」

 

 

緑谷にとっては、焔は何処か寂しいようで、悲しいような雰囲気が伝わってきた。どうにか出来ないのか…でもそれは幾ら力があったとしても無理だろう……今まで緑谷は敵(ヴィラン)に対して、何かを思う感情はあんまりなかったし、敵の考え方もよく分からなかった。

だから緑谷は黙り込んでしまった、そんな辛い過去を背負って生きていく悪もいるのだと…その時、緑谷は焔を見て初めて分かった。こういう悪もいるのだと。

 

 

緑谷や飛鳥のように思う人も、その場に居るだろう…

 

 

 

 

 

だが、爆豪だけは違った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから、何だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「!!??」」」」

 

 

「かっちゃん!?」

 

 

その場に居る皆んなは、爆豪の言葉にドキッと心が揺れ、目をまん丸と見開く。焔自身も、意外な答えだった為か、爆豪の言葉に驚きを隠せれない。

 

 

「善忍になれなかった?だから何だよ?それで俺らぶっ潰す理由なんざ見えねえが?つかそれってぶっちゃけ言えば、唯の八つ当たりだろうが!!!」

 

 

爆豪がそう言うと、焔は歯ぎしりしながら、これまでにない怒りの目で爆豪を睨みつけ、六爪を向ける。

 

 

「……人の気持ちすら分からないのかお前は……!!名のある家柄に生まれ、人を疑うことも知らずに育ったお前らに!この私が負けるハズがない!!」

 

 

焔はそう言うと、斬撃と高火力の炎が、爆豪に襲いかかる。

 

 

「っっ!」

 

 

これは効いたのか、爆豪は斬撃こそ避けたものの、炎そのものを諸に食らった。

そんな爆豪が苦戦してる姿に、緑谷は冷や汗を垂らし、爆豪に近づき助太刀しようと足を踏み出す。

 

 

「か、かっちゃ…」

 

「来んなデクぅ!!!!!」

 

「!!」

 

 

緑谷が助太刀するのが分かったのか、爆豪は姿勢を立て直し、視線を焔から緑谷に移すと、吐き捨てるように言った。

 

 

「救けなんざ要らねえ!俺のことよりテメェらはさっさと上へ行けや!!」

 

「で、でも!かっちゃん一人でも無茶だよ…!だから」

 

「テメェが来ても足引っ張るだけだ!!さっさと行け!俺も『直ぐ』行く、さっさと術者ブッ飛ばせ!そうすりゃあ後は雲雀連れて此処出てきゃ問題ねえだろ!!そんだけだろ、クソナードの分際で俺のこと心配すんじゃねえ!!!」

 

 

爆豪の荒々しい言葉に、緑谷は「うっ…」と目を細めるものの、仕方なく向かうことにした。しかしそれを焔は許さなかった。

 

 

「逃がすかあぁぁーーーーー!!」

 

「っ!う、うわあ!?」

 

「み、緑谷くん!?」

 

 

飛鳥が振り向くと、焔は緑谷目掛けて刀を向け、斬りかかろうとしている。自分も刀を抜くが、間に合わない…そう思った時だ。

 

 

 

「余所見してんじゃねえええぇぇぇーーーーーー!!!」

 

 

 

ボオオオオオォォォォォーーーーーーーーンン!!

 

 

 

「あがっっ……!」

 

 

焔は緑谷目掛けて攻撃したため、横から来る爆豪の攻撃を防ぐことは出来ず、諸に食らってしまったのだ。爆豪の見た目からして、火傷の跡が多少あるが、それでも爆豪は諦めず、真っ直ぐな目で焔を見つめている。助けられた緑谷は、爆豪に「あ、ありがとう…」とお礼を言うと…思いっきり睨まれる。

 

 

「ああ!?助けてねえよクソが!俺ァただあのガングロ野郎がムカついたからぶっ飛ばしたまでだ!変な勘違いしてっと逆にテメェから殺すぞ!」

 

「り、理不尽!」

 

 

こんな状況の中でも、爆豪は緑谷に怒鳴り散らかす。それに理不尽な爆豪に向かって理不尽と言っても何の意味もないが…

焔はさっきのは効いたのか、忍装束が爆破で焦げてはボロボロになり、頭を強く打ったため、少し血が出ている。

皆んなはそんな焔から逃げるように走り出し、階段を登っていき、最上階へと向かっていく。皆んなの後ろ姿を見た爆豪は「ケッ…」と呟いた。

 

 

「はぁ……はぁ……クソ!お前みたいなヤツに…私が……!もうこうなったら…力ずくでもアイツらの所に行くしかないな……」

 

 

焔がそう言った途端、爆豪は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「……なあ、『まだ分からねえ』のか?」

 

 

「なに…?」

 

 

まだ分からない?考えてみたものの、一体どういう意味か分からず、首を傾げてしまう。そんな焔を御構い無しに、爆豪は話し出す。

 

 

「何で俺がわざわざアイツ等を先に行かせたか分かるか?俺の個性は爆破で、派手な攻撃バッカだ…クソ髪が要りゃあ話は別だが、俺が戦うとあのモブ共は巻き添え食らっちまうっつーことだ、だからさっきまでただ殴ってボンボン爆破打つ攻撃しかやらなかった訳だ……」

 

「つまり、さっきまで本気ではなかったと言う訳か?図に乗るのも大概にしろよ…!お前…」

 

 

焔は怒りを抑え、嚙み殺すように、低く唸りながらそう言うと、爆豪は「は?」というようなトボけ顔をする。

 

 

「誰がいつ本気ではなかったって言ったよ…?本気だったぜ?最初っからよ!」

 

「だったらお前は何が言いたいんだ!!さっきから遠回りするような言い方で…!巻き添えだの何だのと…」

 

 

 

「ああ、だってよ…『コレ』使うの…オールマイトに止められてたからよ!!何が言いてえかって?さっきの攻撃を超えるんだよ!!体で覚えろや!!」

 

 

 

 

爆豪は焔に叫ぶようそう言うと、腕に付いてる大きな手榴弾に付いてるコテとピンを抜いた。

焔はその攻撃を警戒してた。だが、そんな焔の想像を軽く超える攻撃が…

 

今起きた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボガアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っっっっ!!!?がっっああぁぁーーーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大な爆発が焔と部屋中を飲み込み、焔はその攻撃を防げることなく食らい、悲鳴を上げながら大きく吹き飛ばされる。そしてこの爆発により、地震で天守閣が揺れる。その天守閣は外から見たら突き出したように爆発が出てきた。当然、階段を登っている緑谷たちも揺れた。

 

 

 

 

「っ!?なに、この爆発!」

 

「まさか!」

 

「爆豪さん、もしや先生に止められてた『アレ』を使ったのでは!?本来は屋内でやるのは愚策ですが…まさか私たちが出たのを見計らって…アレを…?」

 

「おいおい爆豪のヤツ!術者を倒す前にあの女の人殺す気か!?」

 

「いいや、それより早く行かないとマズイんじゃないのか!?」

 

「慌てるなお前ら…!一番大事なのはパニックにならず、落ち着くことだろ!こういう非常時な時にこそ人は落ち着かなきゃならねえ……落ち着きながら、冷静になって、なるべく急いで咲き進むぞ!」

 

「うっ、うん!そうだよね!轟くんの言う通りだ!」

 

 

飛鳥、芦戸、八百万、上鳴、障子が眉をひそめると、轟は皆を落ち着かせるよう声をかけ、緑谷は頷くよう納得する。そんな緑谷は、ふと爆豪のことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『当たんなきゃ死なねえよ!!』

 

『なあ!騙してたんだろ!?楽しかったかぁ?ずっと俺のことを騙しててよ!』

 

『アァ!?随分と派手な個性じゃねえか!舐めてたんだろ?!そうやっていつもいつも!何で個性使わねえんだ!』

 

『使ってこいやぁ!!俺の方が上だからヨォ!』

 

『個性使えよデクぅ!俺は全力のテメェを、ねじ伏せる!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

戦闘訓練で爆豪に言われてた言葉だ。あの時は騙してた訳ではなく、ただただ心が痛むだけだった。だが爆豪はあの戦闘訓練の後、少なからず変われたんだと思う。だから、爆豪は無闇に『アレ』を使った訳じゃなかったと思う。ちゃんと、戦闘訓練での失敗を活かして、自分たちに巻き添えを食らわせないよう、皆んなを先に行かせたんだ。一見ただ単に怒ってるだけで、口が悪いように見えるが、爆豪は爆豪なりの考えがあり、皆んなの負担を掛けない為に、焔を止めてるんだろう。そう考えると爆豪は本当に意外と繊細だ。

 

 

「待ってて、みんな!」

 

 

緑谷は呟くと、皆んなの背中を見て走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋中が煙立ち、視界が完全に悪くなっている。だが爆豪は腕で煙を払いのけ、階段を探す。

 

 

「チッ!コレ撃った後だと煙が邪魔で鬱陶しくなるな!!……人影は見えねえ、あの野郎はまだやられてねえとは思うが…アイツが来る前に最上階に行かなきゃならねえな!」

 

 

爆豪は周囲を見渡し、誰も居ないと分かったら、緑谷たちを追いかけるように、最上階へと進んでいくよう走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、焔は…

 

 

「ゲホ!ケホ…!アアッ…ハッ! ……はぁ…はぁ……アイツ、こんな奥の手があったとはな…!」

 

 

焔の忍装束は完全に消えており、体は爆破を食らってボロボロ…そんな体でなんとか立ち上がり、周囲を見渡す。

 

 

「これは…っ!ちっ、大分引き離されたな……さっきの爆破で壁が壊れて、外まで見えるな………巻き添えとは、そういうことか…」

 

 

焔は爆豪の言ってることがよく分かった。確かにこれ程の大規模攻撃は屋内戦闘において愚策…また、仲間にダメージを与えてしまうなど論外だ。なら皆んなが逃げて、自分一人になったところを、先ほどのアレを撃てば、敵に大ダメージを与えて、仲間は無傷となる。屋内がボロボロになるのは充分愚策ではあるが、焔の足止めには十分だろう。

 

 

「クソ!………そう言えば、よくよく思えばあんなヤツ…今まで会ったこと無いな……」

 

 

焔は爆豪を思い出してそう呟いた。口は悪く、すぐキレ煽りだし、派手で怒ってばっかでいるが…

臆することなく立ち向かったり、折れない心を持ってたり、勝つことを目指してるあの男の姿は見たことがない。それは蛇女の皆んな、選抜メンバーの皆を見ても、爆豪のような人間は見たことがなかった。ヒーローであるのに悪人っぽい言い方で……よく分からない人間だ。

 

 

「………だからなんだ……もういい、今は戦いに集中しろ!」

 

 

焔は頭のなかの雑念を振り払うと、直ぐに気を取り直して、最上階へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斑鳩&飯田side

 

 

斑鳩と飯田は見取り図を見ながら、最上階へと進んでいる。するとそこへ会ったのは…

 

 

「おっ!斑鳩!」

 

「飯田ぁ!」

 

 

「葛城さん!」

 

「切島くん!葉隠君に尾白君も無事だったか!」

 

 

少し傷だらけの葛城達と合流したのだ。

 

 

「おう!柳生と常闇、青山は雲雀を救けに行くっつってた!あっ、峰田は無理やり連れてかれたけどな、緑谷たちは先行ってるから分かんねーけど!」

 

「そうか…他のみんなも無事だと良いが、先ほどの爆発が気になるな…爆豪くんの仕業なのだろうか?それとも悪忍との戦いでの爆発か……」

 

 

そんなことを考えていると、斑鳩は葛城に見取り図を渡した。

 

 

「っ!これって、見取り図じゃねーか!一体誰が…?」

 

「さぁ…私には…」

 

 

一体誰が見取り図を、半蔵に渡したのかは不明だが、それでも最上階へと向かうのであった。例えそれが罠だったとしても…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、天守閣の頂上では…下を見つめている、たった一人の女性が立っていた。それは一体誰なのか?言うまでもない、鈴音だった。

 

 

「それで良い…皆の者、超秘伝忍法書の元にやって来なさい…」

 

 

凛がそう呟いた時だった。

 

 

「凛…それがお前のやりたかった事なのか?」

 

 

後ろを振り向くと、その人物は…飛鳥達の担任の霧夜先生であった。

 

 

「自分の教え子が心配なようね…まあ、忍生徒ではなく、雄英高校の生徒たちまで来たけど…それでもやるべきことは変わらないわ…」

 

 

鈴音、いや…凛はそう言うと、霧夜は凛を見つめている。

 

 

「……俺は、お前に会いに来たんだ。以前、半蔵学院に攻め込んだ時に、お前は俺に会いに来た。そしてお前は俺にこう言ったな?まだやるべき事が出来た訳ではないと…ならそのやるべきこととは……」

 

 

霧夜が考えてると、凛は「クスッ」と笑みを浮かべ、霧夜に話し出す。

 

 

「流石は霧夜先生、分かってるじゃないの…そう、これは証明。善と悪の何方が強いか…もちろん私は悪だと思うわ…何故なら、私は悪忍に命を救われたんですもの」

 

「だからと言って、上層部に何の許可も得ることなくこんなことをして許されるとでも…!」

 

 

そう聞くと、凛は首を横に振った。

 

 

「いえ、それは違うわ霧夜先生。超秘伝忍法書を奪取せよと命じたのは私じゃない…自ら欲望に落ちた、学園の投資者である道元よ…」

 

「なんだと…!?」

 

 

初めてその真実を知った霧夜は、道元による何かしらの罠だと思い、生徒達に駆けつけようするが、凛がクナイを投げて、動きを止める。

 

 

「子供のいさかいなのでしょう?なら、大人である私たちが出るのは感心できないわ…それに、あの子達は急激に成長している。まあ、半蔵学院の内の誰かは雄英高校で修行し、もっと強くなったのだと思うけれど…」

 

 

凛がそういうと、霧夜はそんな彼女に目を細める。すると、霧夜の足になついてる黒猫がいた。

 

 

「これは…大道寺!?」

 

 

「あら、貴方も居たのね…」

 

 

霧夜の後ろに、大導寺は仁王立ちしていた。そんな大導寺はニヤリと笑みを浮かべる。それは、凛に会って嬉しいのか…それとも…

そんな凛は眉を細めて話し出す。

 

 

「貴方は優秀な後輩だった……まだ私に勝負を挑むのかしら?」

 

「……否!」

 

 

大導寺は目をカッ!と開き、凛に話し出す。

 

 

「この勝負の行く末…勝つのは我でわなく、我らの後輩なり!!そして真に友を思い、英雄を背負いし者達…雄英の生徒達である!!」

 

 

大導寺はそう言った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詠は…

 

 

「先ほどの爆発…上に一体何が…?」

 

 

先ほどの爆豪の爆発により、この天守閣そのものは大きく揺らいだのだ。それは出入り口付近にいる詠にすら響くほどだ。

 

 

「わ、私も急ぎませんと!!」

 

 

詠は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日影は…

 

 

「なんや…今の爆発……上で何が起きてるん?未来さんは下に行って柳生とかいう奴らは追ってったしな…こりゃワシも黙ってられへんは…」

 

 

日影はそんな皆んなの動きに、熱が入ったのか、走り出す。

 

 

「………」

 

 

(そう言えばワシ…熱くなるんやな……今までこんな感情…なかったのに……ん?感情…感情……)

 

 

日影は疑問を抱いたまま走り出し…そして……気づいた…

 

 

(これが、感情っちゅーもんか………悪くないな……)

 

 

 

 

 

日影は心の中で、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下室、春花と雲雀は…

 

 

 

「あら?もう諦めちゃうの雲雀?」

 

「う…うぅ……」

 

 

春花は鞭で壁に何度も叩きつけ、それを目の前にしてる雲雀は、恐怖のあまり体の震えが止まらなく、涙目になっている。

 

 

 

「ひ、雲雀ちゃん!」

 

雲雀の名前を叫ぶお茶子。

 

「くっ!私たちも縛られるなんて!」

 

悔しい顔で、見ることしか出来ない耳郎。

 

「…………」

 

無言のまま、雲雀同様に震える口田。

 

「ダルい…眠い…うぅ〜…!!」

 

個性のシュガードープの効果が切れ、頭が悪くなってる砂糖。

 

「おおい砂糖しっかりしろ!肝心な時にお前がバカになった所為であの痴女になす術なく捕まったんだからな!!」

 

砂糖に必死に声をかける瀬呂。

 

 

「ふふふ、次は貴方を痛めつけて、お仕置きしてあげるわね♡」

 

「ふぁっ!?怖えよガチめに!!」

 

 

瀬呂の言葉を聞いた春花はウィンクすると、瀬呂はガクガクと震えて恐縮する。

雲雀以外の皆んな、お茶子たちは春花の鞭で縛られてしまい、身動きが取れないのだ。

 

 

「とにかく、まずは雲雀からお人形に…」

 

 

その時だった。

 

 

ウイイィィィィーーーーーーーン!!!

 

 

天井からドリルが回るような音が響いてくる。その場の全員は動きが止まり、天井を見てみると…

 

 

バガアァン!

 

 

天井に穴が出来る。そこから現れたのは…

 

 

「柳生…舞しのぶ…」

 

 

柳生であった。

 

 

「「「「「柳生(ちゃん)!!!!」」」」」

 

 

春花以外の皆んなはそう叫び、柳生を見つめてる。忍びではなく、まるでヒーローみたいだ。

 

 

「やっぱり来たのね…救けに来たつもりなんだろうけれど、雲雀は渡さないわ…!」

 

 

春花が柳生に吐き捨てるようそう言うと、高速の鞭で柳生を巻きつける。

 

 

「くっ…!」

 

 

柳生は呆気なく捕まってしまった。

 

 

「柳生ちゃん!」

 

「おいぃぃーー!来て早々捕まったぞ!?」

 

 

雲雀は柳生が捕まってしまったことに心配し、瀬呂は直ぐに捕まってしまった柳生に大声で叫ぶ。

 

 

そして…

 

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!バガン!

 

 

突如、壁には銃弾が撃ち込まれ、壊れた。そしてそこから現れたのは…

 

 

「ふふふ…逃がさないんだから!」

 

 

未来であった。

 

 

「あらあら未来、せっかく此処からが面白くなるところなのに…」

 

「春花様だけ楽しむったって、そうはいかないわ!」

 

 

春花がそう言うと、未来は春花に振り向き反論する。そして傘を雲雀の方に向ける。

 

 

「さあ、覚悟しなさい!」

 

 

すると雲雀は「ブチッ!」という音を立てた。堪忍袋の緒が切れたのか、とうとう怒り出す。

 

 

「だからぁ…こんなことしてる場合じゃないんだってばあぁぁーーーーー!!」

 

 

雲雀がそう叫ぶと、突如天井から忍兎がやってきた。

 

 

ドガァァァァンン!!

 

 

「!?」

 

 

そして…

 

 

 

「待たせたな!」

 

「ふっ☆ヒーローとは遅れてやってくるもの!それ正に僕のこと!」

 

「うおおぉぉーーー!常闇ぃ!おちる、落ちる!!」

 

 

常闇、青山、峰田の姿も見られる。常闇の個性の黒影(ダークシャドウ)で、片方は青山と峰田を持ち、もう片方は壊れてない天井に突き刺し、なんとか保っている。

 

 

「なっ…」

 

「あ、アイツら!」

 

 

春花と未来は、またもや増援が来たことに驚いている。それは無理もない…

 

 

「常闇達が来てくれた!ナイス!」

 

 

耳郎がそう叫ぶと、皆んなも「やった!」という眼差しで見つめる。それを見た青山は

 

 

「フフフ☆今僕が更に輝き出す瞬間見せてあげるね!」

 

 

おへそからレーザービームを出し、皆んなが傷つかないよう、鞭を狙った。一瞬にして切れて、皆んなは直ぐに動けるようになった。

 

 

「やったぁ!青山くんナイス!」

 

「ノンノン、それを言うならグレイトだよ☆」

 

 

お茶子がガッツポーズをすると、青山は指を振りながらウィンクを向ける。

 

 

青山優雅 個性 『ネビルレーザー』 おへそからレーザーを放出することが出来る。ただし1秒以上撃つとお腹を壊しちゃうのがデメリット。

 

 

「っ!!」

 

 

柳生は命懸けの状態になると、忍装束が破けては下着姿になり、鞭が破ける。すると、柳生は雲雀に近づくと、雲雀も柳生に近づき抱きしめる。

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

「「合体秘伝忍法!!」」

 

 

「兎さん、お願い!」

 

「蹴散らせ…!」

 

 

 

 

そう言うと、またもや天井から巨大な烏賊が出現した。忍兎はそんな巨大な烏賊の上に乗る。また常闇たちも上に乗り、青山と峰田を離す。すると常闇は皆んなを救けるために、常闇の黒い影が皆んなを掴もうとする。だが、春花と未来もそう何時までも黙っていられない。

 

 

「はあっ!」

 

「でりゃあ!」

 

 

春花の鞭と、未来の傘で、救けに来た黒影を攻撃する。そのためか、お茶子たちを掴むことが出来ない。

 

 

「クッ…!踏ん張れ黒影(ダークシャドウ)!」

 

 

常闇は苦虫でも噛むような顔で、なんとかお茶子たちを助けようとするものの、なかなか上手くことが行かない。

 

 

「むむむ〜!こうなったら私たちでなんとかあの人たちの動きを止めれば…!」

 

 

お茶子がそう呟いた時だった…

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!

 

 

 

「??」

 

 

突然、何かが此方に来るように走り出す音が聞こえてくる。しかもそれは一人ではなく、何十人ものが走ってきてるような…

 

 

「今度は何なの!?」

 

 

春花がそういった瞬間だ。

 

 

ドガアアァァァァーーーーーーーーーン!!

 

 

 

「!?!」

 

 

地下室の扉が壊れた、その正体は…

 

 

「え…?動物?」

 

 

未来は首を傾げて、ポツリとそう呟いた。そう、その正体は人ではなく、動物なのであった。

 

 

「ワン!ワン!」

 

「カァー!カァー!」

 

「シャアァァ〜〜…!」

 

「ウガァーー!」

 

「フゴッ!フゴッ!プギャー!」

 

「グ・グ・グ・グ!!」

 

 

そこには…野良犬、大群のカラス、蛇、熊、猪、鹿などの大群の動物たちが、春花と未来を睨みつけている。

 

 

「な、なんダァ!?何で動物が…けどスゲェ!」

 

 

瀬呂や皆んなも驚いている半面、感心している。するとそんな瀬呂の肩にポン!っと手を置くように叩かれたので、振り返ってみると…

 

「………」

 

 

口田が無口で、どこか照れながら瀬呂を見つめている。

 

 

「どした口田?そんな照れてるような顔で………ん?この動物たち呼んだの、まさか…お前!?」

 

「「「「!?!」」」」

 

 

皆んなは驚き、一斉に口田に振り向く。そんな口田はやはり何処か照れてる。

 

 

「まさかあの無口な口田くんが!」

 

「スゲェ!見直したよ口田!」

 

「これが口田の個性か…!」

 

 

口田甲司 個性 『生き物ボイス』 声に意思を乗せて、生き物を操れることが出来る。

 

 

皆んなが感心してるのを見てる春花は、目障りと判断したのか、もう一度鞭で縛ろうとする。だが…

 

 

ジュワッ!

 

 

「えっ!?」

 

 

突然レーザービームが出てきたため、鞭が切れてしまった。それは勿論青山の仕業である。そして…

 

 

「うおおおおぉぉーーーーー!!アイツらぁ、あの未来っていうちっぱいの隣に、オイラ好みの痴女がぁぁ!!アレは間違いなくミッドナイトと競い合えるほどの……チクショーーーーーー!!!瀬呂ん所に行けば良かった!!」

 

 

峰田は目は充血し、大量の涙を流している。そんな悔しさの余り、峰田はもぎもぎをもぎ取って投げまくる。

 

 

「オイラだってモテたいんだよおおおぉぉーーーーーーー!!!」

 

 

煩悩の塊とも呼べる峰田は春花と未来に向かってもぎもぎを投げ飛ばす。

 

 

「な、何よアレ!?」

 

「し、知らないよ!てかキモ!本当になにあのボール!アイツの頭のアレって取れたんだ……」

 

 

そう言いながら、春花は足の無い空中浮遊の傀儡を出し、未来は傘で撃ち込まくるが…傀儡はボールを殴ろうとすると、くっついてしまい、大量のもぎもぎが傀儡にくっついてしまったため、身動きすら取れずブドウみたいになってしまった。

 

 

「なっ!あの子のもぎもぎ…粘着性が強いの!?私の可愛い傀儡がこうもあっさりと…」

 

「し、しかもなんかこれくっ付いたら取れなさそう…なんか意外と意地悪な個性ね!」

 

 

春花は峰田の個性に驚愕し、未来は峰田を睨んでる。だが、彼女たちの動きを止めるだけではなかった。

 

 

「回収成功だ…!」

 

 

「!?」

 

 

春花と未来が振り向くと、そこにはお茶子たちはもう居なかった。そう、青山と峰田が食い止めてる内に、常闇の黒影(ダークシャドウ)で救出したのだ。

 

 

常闇踏影 個性 『黒影(ダークシャドウ)』 影っぽいモンスターをその身に宿している。因みに喋ることが可能。昼や光には弱く、その状態だと弱ってしまい、威力は中の下といった所…また暗闇の中だと、威力は莫大に上がり、制御が難しくなってしまうので要注意。

 

 

「ありがとう常闇くん!」

 

「助かったよ常闇、ありがとね」

 

お茶子と耳郎は常闇を見て感謝する。

 

「………」

 

口田は無口ではあるが、お互い無口なため、言葉は不要。そのため口田がありがとうと感謝しているのも一目見れば直ぐに分かる。

 

「ん?うぅ…なんかようやく眠気と頭のダルさが、解放されてきたような…」

 

砂糖は頭を押さえつけ、周囲を見渡す。

 

「おいおい今頃か、まあいいけどな」

 

瀬呂はそんな砂糖に半分呆れてはいたが、個性の影響の為仕方ないと思い、半分は納得した。

 

 

「しまった…!」

 

「そんな…」

 

 

春花と未来は悔し混じりな顔で、常闇たちを睨みつける。するともう要件は済んだのか、巨大なイカと兎が、天井を突き破り、そのまま最上階へと向かう。それと同時に…口田は…

 

 

「良いですか皆の者!今こそ友のために、悪に染まった彼女たちを止めるのです!出撃!」

 

「メッチャ喋るじゃねーか口田ァ!!」

 

 

口田の個性のためか、意思を乗せた声で喋ると、生き物たちは一斉に頷き、春花と未来に突進するように襲いかかる。

 

 

「なっ!」

 

「ふえっ!?あっ、ちょっと!」

 

 

振り向いた時には遅かった。大群の動物たちが攻めてきて、なす術もなく邪魔をされてしまった。それにしてもさっきの口田、思ったより喋ってた。

動物たちが去ると、いつの間にか皆んなは消えていた。

 

 

「こ、こんなことがあるのね…」

 

「しかもさっきの柳生と雲雀のアレ、合体秘伝忍法なんて聞いたことがないわ…それに皆んなも色々な個性持ってて…」

 

 

未来がそう言うと、春花は「クスっ」と笑みを浮かべた。

 

 

「彼女たちとあの子たち、多分お互い成長し合ってるのよきっと…それに二人とも羨ましいわ…不可能を可能にしてしまう程、仲が良いのかしら?」

 

「うん…なんか羨ましいな…それにアイツらも、何だかんだ言って、一人一人個性溢れてて、私たち悪忍を目の前にしても、決して諦めないで立ち向かって……自分のように一生懸命頑張って…なんかアイツらも羨ましくなってきたよ…」

 

 

春花と未来は、何処か微笑みながらそう言うと…

 

 

「……追うわよ未来!」

 

「うん!春花様!」

 

 

春花がそう言うと、未来はニコッと笑みを浮かべて頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥たちは階段を登り、最上階の部屋に入った。

 

 

「こ、ここが…最上階?」

 

飛鳥は周囲を見渡す。

 

「なんか広い部屋だな!」

 

上鳴は感心している。

 

「最上階は良いんだけどさ、ここの部屋って何するところなんだろ?」

 

芦戸は首を傾げている。

 

「とにかく皆様!十分に気をつけて下さいまし!雲雀さんが言ってた通り、ここに術者がいるのなら、間違いなく油断は出来ません。それにその術者が一体どう攻めてくるか分かりませんわ!」

 

八百万は飛鳥と同じく周囲を見渡しながらそう叫ぶ。

 

「ああ、まずその術者が一体誰なのか分からない以上、此方がどう攻めに入るのか…そしてどう対策をとれば良いのかも考えなくてはな…」

 

障子は頷きながらそう言う。

 

「おい、彼処の奥に扉があるな…彼処にその術者ってのが居るんじゃねーのか?」

 

轟はそう言うと、緑谷は納得したように頷いた。

 

「なるほど!確かにその可能性はありそうだよね…でももし違ったらどうしよう?それに部屋に罠が貼ってあるかもしれないし…そう考えると無理に進むのは危険だ…やっぱり慎重に進んでいく方が…あっ、でもそれだと…」

 

「緑谷?」

 

「ん?ふぁっ!?あっ、ご、ごめん轟くん…なに?」

 

「いや、別に…独り言がスゲェと思って…」

 

「…!」

 

 

轟の指摘に、顔を真っ赤に染める緑谷。独り言を聞かれて恥ずかしいと思ってしまう。すると障子は個性の複製腕を使う。

 

 

「…なるほど、あの奥部屋に一人誰か居るぞ、もし轟の推測通りなら術者はそこに居る」

 

 

障子がそう言うと、上鳴は「よっしゃ!」と活気な顔で進んでいくと

 

「お待ち下さい上鳴さん!」

 

 

八百万に止められる。

 

 

「んだよ八百万!」

 

「無闇に進んではやられてしまう危険性がありますわ!此処は慎重に…」

 

 

そう言った時だった。後ろから階段を登る足音が聞こえた。

 

 

「誰!?」

 

 

飛鳥は咄嗟に二つの刀を構えて階段に目をやると、そこに現れたのは…

 

 

「あ?」

 

 

爆豪であった。

 

 

「おっ!爆豪オメェ無事だったのか!良かったぁ!」

 

「はぁー…ビックリした、てっきり焔ちゃんかと思ったよ…」

 

 

上鳴と飛鳥はホッと一息をつく。

 

 

「ああ!?何だお前ら!何でホッと一息ついてんだ!」

 

 

爆豪はよく状況が分からないため、取り敢えず怒鳴る。

 

 

「つーかここが最上階のようだな…んでその術者はどこに居やがるんだ?まさか怖じ気付いて逃げたりしてねえよな?」

 

爆豪はそう言うと、飛鳥は首を横に振る。

 

 

「ううん、術者ならあの奥の部屋に居るよ」

 

「だったら何で攻めに行かねんだクソカス共!とろとろしてんじゃねーぞ!さっさとブッ飛ばせば良いだけだろうがぁ!」

 

「そう言う訳には行かないよ!その術者が何しやらかすか分からないんだよ!?だったら無闇に突っ込むより、どう攻めに入れば良いか考えてるの!」

 

「あーもーー!面倒くせえなぁ!じゃあよ…」

 

 

すると爆豪は扉の方に歩み寄り、片方の手を扉に向ける。

 

 

「最大火力でブッ飛ばせば問題ねえだろ」

 

「待って!それやったら俺たち巻き添え食らうだろ!」

 

「知るか!てか食らわねえよ、テメェら俺の後ろに居るんだから巻き添えもクソもねえだろ考えてモノ言えアホ」

 

「………」

 

 

爆豪の口悪い論破に黙り込み、手で顔を隠す上鳴を御構い無しに撃とうとする。が

 

「お待ち下さい爆豪さん!」

 

「ああ!?今度はなんだポニテ野郎!」

 

 

八百万が止めに入る。

 

 

「確かに爆豪さんの爆破攻撃は食らいません…ですがもしそれを撃ったとしても、私たちは本当に無事なのでしょうか?屋内での大規模攻撃、それを撃てばその方向にのみ被害が出る…そうすれば術者は倒せますが…ですがもしそれを撃ったとして、その爆発の威力の余り、ここの部屋が崩れてしまったらどうするのですか?」

 

「何で俺が一々テメェらモブ共の心配しなきゃならねえんだよ!つかポニテ野郎、お前何でも物作れるだろ?だったら被害が出ない何かを作って守れや」

 

「そうなるとかなり時間を食らってしまいますわ…巨大な物を造るのには時間が少しかかります…そして次には原子などを分析し、爆破対策の道具を造るものを考えて、そこから…」

 

「何だこのクッソ面倒くせえの!!そんなに時間ロスすんのかクソが!!あーもーー!だったら殴り込みに行きゃ問題ねえだろ!」

 

 

時間がロスし、不合理的だと判断した爆豪は、そのまま奥の部屋に行こうとすると…

 

 

 

 

「秘伝忍法!『魁』!!」

 

 

 

ズドオオォーーーーーーン!!

 

 

「っっ!がハッ!?!?」

 

 

突如襲いかかった炎の六爪は、爆豪に直撃した。

 

 

 

「か、かっちゃん!!」

 

「爆豪くん!?それにこの技…まさか!」

 

 

そう、それは…

 

 

「ふん!つくづく甘いやつだお前らは!順路が一つだけだとは思うな!」

 

 

爆豪の爆破で吹き飛ばされたハズの焔であった。

焔は飛鳥たちを睨むと、皆んなは戦闘態勢に入る。

 

 

「嘘だろ!?爆豪のアレ食らってもまだ…化け物じゃねーか!」

 

「大丈夫爆豪?斬られた傷が…!」

 

 

上鳴は手からビリビリと雷を纏い、芦戸は先ほど焔に受けた傷を見て大丈夫かどうか心配してる。

 

 

「チッ…!クソがぁ!」

 

 

爆豪は焔を睨む。今の焔は完全に殺気立っている。ドス黒いような、赤黒い闘気を纏い、左右の三本の刀を構えながら、今度は飛鳥に振り向く。

 

 

「まずは飛鳥…お前からだ!」

 

「クッ!」

 

 

焔の殺気に、飛鳥も二つの刀を構える。

 

 

「あ、飛鳥さん!」

 

 

緑谷が叫んだその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ…選ばれし者たちよ、よくぞ来た!」

 

 

 

ふとその扉から光が差し込み、男の声が聞こえた。

 

 

「道元様!?」

 

「道元…じゃあ、あの人が術者…?」

 

 

焔は後ろを振り向き、飛鳥は道元が焔たちに外法を掛けた術者だと分かったようだ。

 

 

「あの人が…?」

 

緑谷は首を傾げる。

 

「ただのオッサンじゃねーか!」

 

爆豪はもう痛みのことなど知ったことではないのか、立ち上がり睨みつける。

 

 

そんな緑谷たちを御構い無しに、道元は話を続ける。

 

 

「焔よ…超秘伝忍法書の導きのままに、飛鳥という少女を連れてくるのだ!」

 

「道元様、どういう事です?」

 

 

焔は眉をひそめ、納得がいかない様子でそう聞くと、道元はニヤリと口の端を上げる。

 

 

「お前たち選ばれし者を依り代として超秘伝忍法書の隠の巻と陽の巻…二つの秘伝忍法書の力を我が手中に収めるためだ…」

 

「なっ!そんな事が許されるわけガッ…!?」

 

 

焔が反論したその瞬間、静電気が走ったかのように、体がバチバチと音を立てる。焔は苦痛の顔で体を手で押さえてる。

 

 

「抗ってはならんよ焔…元より蛇女子学園など、私にとってはただの『手足の道具』に過ぎん……クックック……私はこの力で悪忍組織…いや、忍びの社会を己が者とし忍びの存在全てを超越するのだ!」

 

 

道元は勝ち誇った顔でそう言った。それを聞いた焔は苦痛の顔でも道元を睨みつける。

 

 

「組織を…裏切るつもりか!」

 

「元よりそうするつもりだったが?」

 

 

道元がそう言うと、他の皆んなも黙っては居られない様子でいる。

 

 

「おいおい、これって…」

 

「どうやら焔ってヤツや、他の奴らもこの道元って野郎に良いように利用されてたようだな…」

 

 

上鳴は冷や汗を垂らし、轟は道元を睨みつける。

 

 

「おいオッサン!んなこと言ってねえでさっさとかかって来いやァ!!忍び全てを超越するダァ?んな事言って来てねえテメェは何だゴラ取り敢えず殺すぞ!」

 

「か、かっちゃん…」

 

 

敵であるものに対して取り敢えず煽る爆豪に、緑谷はもはや言葉が出ない。

 

 

「クックック……貴様らヒーローの卵共が、図に乗ってはならんよ……それにまさか忍びがヒーローの卵たちと繋がっていたとはな…まあ良い…どちらにせよ、バレてしまったならば貴様らも生かしては帰さぬ…」

 

「ハァ?何でこのオッサンは偉そうなんだよ!!」

 

「爆豪落ち着け!取り敢えず状況が分からん…裏切った?どういう事だ?」

 

 

苛立つ爆豪を落ち着かせる障子。それは皆んなも同じだった。一体何がどうなってるのやら…そして焔を裏切った理由がその超秘伝忍法書とどう関係してるのか…と。

 

 

そんなやり取りの中、階段が登る足音が聞こえてきた。

 

 

「お前ら!」

 

それは半蔵と雄英の皆んなが駆けつけに来たのだ。

 

 

「みんな!」

 

 

飛鳥は皆んなの方に振り向く。

 

 

「どーなってんだ?」

 

「今はどういう状況なんだ!」

 

 

皆んなは今起きてる状況が掴めず動揺している。

 

 

そして…

 

 

「「「焔(ちゃん)!!」」」

 

 

詠、未来、春花が駆けつける。

 

 

「これって一体…どういう事!?」

 

 

体を手で押さえてる焔を、三人は支える。そんな三人も勿論状況が掴めず、道元を見つめる。それを察した焔は、道元を睨んでいる。それも今まで自分たちが良いように利用されてた事に、組織そのものを裏切った事に大きな怒りを溜めて…

 

 

「道元は、自分の欲望のために私達を…そして、悪忍組織そのものを裏切ったんだ!」

 

「「えっ!?」」

 

 

詠と未来は焔の言葉を聞き驚愕し、春花は睨んでいる。

 

 

「なるほど…そういう事だったのね…」

 

 

「なんかよく分かんねーけど…」

 

「取り敢えず、なんかヤバいことは分かったっす!なんかややこしくなっちまったぞ!」

 

 

葛城と切島も道元を睨みつける。

 

 

すると…そこへ現れたのは…

 

 

「つまり、標的は道元っちゅう訳やな…」

 

「日影!」

 

 

後ろから日影が現れ、葛城の肩に手を置き、道元を睨みつけている。これで全員揃い始めた。

 

 

雄英、半蔵、蛇女の皆んなは、真に倒すべき敵、道元を睨みつける。

今まで自分の都合の良いように利用されてきたことを知った焔たちは、勿論道元を許すはずなどない。

 

 

「ふっ、こうなれば…!」

 

 

そんな道元は、二つの超秘伝忍法書を使うと、飛鳥と焔は空間に飲まれるように消えてしまった。

 

 

「「「「飛鳥(ちゃん)(くん)!?」」」」

 

「「「「焔(ちゃん)!?」」」」

 

 

皆んなは飛鳥と焔の二人が光の粒子のように消えた事に驚きを隠せない。道元の仕業だということは勿論わかっているのだが…

 

 

「クソが!どこ行きやがったアイツら!!」

 

二人がいなくなったことに、何故かと怒る爆豪。

 

「チッ…あのオッサン……飛鳥と焔をどうするつもりなんだ?」

 

轟はそんなグニョグニョと歪んでる空間に眉をひそめる。

 

「忍結界に取り込まれた!?」

 

斑鳩は、飛鳥と焔が忍結界に取り込まれたことに気づいた。

 

「取り敢えず、私たちでどうすべきかを考えましょう…」

 

詠がそう言ったその瞬間。

 

 

 

 

良からぬ出来事が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガアアアアアァァァァァァァァンンン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の大爆発。

 

 

「えっ!?」

 

「なっ!?」

 

 

皆んなはその爆発が起きた方に振り向く。してその爆発から煙が巻き起こり、見てみるとその中から人影が二つ存在する

 

 

「だ、誰でしょう…?人影が二つ?」

 

 

斑鳩は首を傾げてる、それは一体誰なのか?煙が晴れると共に明かされるその正体とは…

 

 

 

「っ!!?なっ、な、なな……何ですの…?アレは……?」

 

「これは…!まさか!」

 

 

詠はその正体を見て、手で口を押さえつけ、己のうちに湧く恐怖をなんとか抑え込む。

緑谷は目を擦り、その二つの人物を見て驚愕する。

 

 

(嘘だ…嘘だろ??なんで、なんでこんなところに!)

 

 

それは緑谷だけではなかった。

 

 

「!!や、柳生ちゃん!柳生ちゃん!!」

 

「そんな…バカな……なんで、なんで…!」

 

 

雲雀はそれを見てガクガクと体を震わせ、柳生ですら微かに震えている。

 

「なんや…アレ?なんかヤバそうなのが来よったで?」

 

日影は首を傾げて見つめる。

 

「おい…嘘………だろ?」

 

切島の表情は絶望に覆われる。

 

「チッ……!クソ!何がどーなってんだオイ」

 

「知るかぁ!………マジで何なんだよコイツら!」

 

轟と爆豪は苛立ちながら見つめる。

 

 

 

そう、その二つの人影とは?

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で…なんで……!」

 

 

緑谷は恐怖に耐えながらも、叫び出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脳無(ヴィラン)が此処に!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホホホゥホォーーーーウゥ!!!」

 

 

「ネエアエエェェーーーーーエェ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

二体の脳無が奇声を上げ、部屋を壊しながらやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然やってくる理不尽…

 

ヒーローとは何か…忍びとはなにか?

そして、善忍とは、悪忍とは何か…彼らは彼女らは、この戦いで互いに思うことがあっただろう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、(ヴィラン)とはなにか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中…

 

 

天守閣の最上階へと一人で向かっている水色の長髪の女性…漆月はこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあーってと…私たちもひと暴れしますか…!クフフ…ウフフ…!!あっははははははは!!」

 

 

 

漆月は、暗闇の階段を登りながら、残酷な笑みを浮かべて笑い出すのであった。




ここからまさかの予想外の出来事!皆様覚えていますか?23話の最後を!アレが此処に繋がってましたwwさて、次回は敵(ヴィラン)と漆月の乱入によりまさかの大乱闘です。では次回もお楽しみに!

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