光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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「物語の冒頭で語るのは初めましてでしょうか…貴方達の中に初めましての方々もおれば、そうでない方々もいらっしゃるかと。失礼――私は『ミカヅチ』。身体の方が『ヴァニタスコロニー』であり、遺影…絵画である顔の役割を持つ私は『ジョナサン』…と。

こうして皆様へのご挨拶、そしてこのような形で自己紹介する御無礼…どうかお許しくださいませ。然し今の私にはこれ以外の自己紹介、それを表現する形が御座いませんので、そこは悪しからず。私は天竜衆のなかで『傍観者』の価値、役割を担当する虚無の語り手で御座います。『虚無』と『非現実』である我々語り手は、対話するべき登場人物や、私を見て下さる者がいて初めて完成されると解釈しております。
当然、何方かが欠けては存在は不可能であると。そして私はこの世界で起きる様々な物語を見守り、完成された物語を後世へと語り継がなければなりません。

言うなれば『シナリオライター』と言えば安易な解として示せるでしょうか?

このように私は物語や歴史も作品の一種だと考えております。娯楽の物語書物、絵本、歴史の古文書…作品だと考えることにより生まれ出る概念、価値、意味は、作品に大きな影響を与えます。誰かが解釈することにより、作品の意味が変わるからです。
自身が解釈する作品は自分だけのモノであり、他者が解釈する作品は他者だけのモノ…つまり、『答えは自分だけの特権である』と――その答えに意味があり、作品を彩り価値を高めるモノだと私は意見を述べます。そして其れは私だけに留まらず、天竜衆である他の方々も同じです。何せ答えや価値観というのは己の『世界観』と同一記号にも等しく結合されておりますから。

然し物語こそ作品とは述べましたが、それが全てという訳ではございません。何せこの世界…いいえ、存在するもの全ては悉く作品であり、其れが例え生きている登場人物であっても、創作物、空想、凡ゆるものは作品で在るのだと。それが世界に対する価値観であり、私が導いたテクストの答えなのですから。

さて、話を戻しましょう。上述したように、物語は作品の一種であると述べました。その中でもクリーピーパスタとは違う、都市伝説に分類される作品を見出し顕現させる事に成功したのです。

お兄さん祭り――都市伝説と評される怪談話から引用しました。とても興味深い話であり、これには不可解な謎が存在しております。鬼を招き入れた里の住人達は、壮大なるオモテナシを施し、愉快なご馳走や快楽に歓喜を感じた鬼達は泥酔し一眠り就きました。然し里の者達によって縛られ、小鬼達は目を潰されながら鉄板で大鬼を担ぎ、里の者達によって祭りと評され、暴虐を受けながら焚き火で焼き殺された。この諸説には山の里に住んでたのは鬼ではなく山賊の一家と言われておりました。お兄さん祭りとは、鬼さん祭りという隠語であり、鬼を殺す為の儀式とも呼べる信仰であると。それが代々と語り継がれた信仰であるならば、それは歴史であり作品とも呼べる価値がある。
これには幾つかのテクストを思い浮かべたのですが…私なりの答えとして導き出したメルヘンの解説は――赤鬼怒と蒼牙鬼、この二匹の物語を準え赤鬼は焚き付く炎、青鬼は虐殺、二匹の鬼による虐殺進行、鬼ごっこ。嗚呼、これは山賊による祭りではなく、実は鬼達による祭りであると。それは人間たちに殺された鬼達の復讐?いいえ、山賊だと恐れられた人里は、実は鬼達の隠語であり、鬼達の宴となる為の遊戯――鬼の祭り、ごっこ遊び――お兄さん祭りと。これがメルヘン達による存在価値であり、顕現に込められた概念。赤と蒼の兄弟鬼の物語であると。

『Demon brother festival』――私はそう名づけました。もし貴下であれば、どのようにしてテクストを読み取り、解析、分析、追求し結論へと導くのでしょうか?この作品に対するアンタゴニストは、どう言う答えをテクストとして現すのでしょうか?」




7話「Demon brother festival」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 騒ぎが起きてから数十分。

 デー門は役立たずの部下達が襲撃者に襲われ、囚人達の脱獄を図る者達を始末するべく、予想を立てて隠し通路を使い出口へと通っていく。

 なに、工場の地下はアジトとなっており、構造もかなり複雑だ。この基地の把握は新人の従業員だって二時間は迷ってしまう仕組みとなっている。更なる地下は蟻の巣窟となっているのだ。

 隠し通路は一本線で直接、出口に到達するようになっているので、そのまま真っ直ぐ進めば出口に出てくる者達を焼き殺せば問題ない。

 相手がどんな強者だろうが、陽花よりかは何百倍もマシだ。嘗て第5支部を担う曽呂門が陽花に潰されたことでタナトス送りにされてしまったが…アイツが死んでくれたお陰で暫くは安泰となったのだ。それが、今では襲撃を食らう事態…直々に引導を渡してやろうと思い、通路を渡っていたのだが…

 

 

「秘伝忍法――『変身(トランス)・流星鉄球』!!」

 

 軍隊を連想とさせる黒服、携帯武器やらポーチ、防弾防御に武装した白髪の女性は、純白な髪を無数の黒鉄な棘鉄球へと変身させ、流星の如くデー門に襲いかかる。

 

「…珍しい秘伝忍法、だな!!」

 

 掌から炎の火焔玉を飛ばしていきながら、モーニングスターを相殺するように、的確に狙いを定めていく。鉄球は炎を弾き、熱が髪に伝うことはなく、攻撃の嵐が止むことはない。

 これを一発でも喰らえば無事では済まないと判断したデー門は、苛立ちに舌打ちをし、横へと飛び出す。

 

「秘伝忍法――【インフェルノ・ケイオス】!!」

 

 反撃として掌から灼熱の獄炎を放出する。悪魔の姿をしたデー門は、怒りと微かな恐怖に嫌な汗を流しながら、手を休むことなく秘伝忍法を連発する。

 デー門の忍法術は獄炎忍法。素の力では紅蓮の焔とでさえ対等に渡り合える上位互換の忍法は、万物を焼き払う地獄の業火。これならば、攻撃が幾ら飛んでこようと関係あるまい。

 

 

「………」

 

 

 すると姫と呼ばれる女性が白髪の女性の前に庇うように立ち、手を翳した途端――眩い光が空間に終結し、地獄の業火を相殺する。摩訶不思議な能力は、原因不明にして解析不可能。今度は無数に浮かぶボール型のドローン機器が、紫色の光を放ちながら、電撃のレーザー弾を飛ばしていく。

 

「チィ…ッ!!我の秘伝忍法を、こうも…」

 

 デー門の目前に佇むは、二人の侵入者――『Dースクワッド』

 微かだが噂で聞いたことがある…嘗て超常黎明期より昔…日本による空襲や戦争が絶え間なく続いていた時代から存在していた、国家テロリストの犯罪集団。殺すことに特化しており、忍や敵とも違う新たな枠組――スクワッドとして、危険視された存在は忽然として活動が絶え、今となっては都市伝説として扱われた、歴史の闇。

 それがどう言う訳か、自分たちに矛先を向けている。

 因みにこの二名とも名前が不明――本名どころか、ネームドさえ明らかにされてない。

 

「ガキ風情が――調子に乗るなあ゙あ゙ぁ゙ぁ゙!!!」

 

 とてつもない怒号を叫ぶデー門は、魔道書から魔法陣を発動させ、秘伝忍法を溜めている。

 刹那、漆黒の通路は爆破と炎で全て飲み込むかの如く支配していき、通路の一本道は豪炎に満たされる。

 コイツは、秘伝忍法を叩き込んでも無害だった。見たことのない術で次々と自分の忍術を相殺するこの女……忍術とも言えず、かと言ってチャクラとは違う…。個性とも違う、それはまるで――絶恵勇希という異常な存在に似た雰囲気を兼ね備えていた。

 

「【ディバインズ・フレア】…絶・秘伝忍法ならどうだ?」

 

 翼で全身を覆い守っていたデー門は、翼を広げて煙状の通路に佇み人影が無いことを知るや否や、ふぅ…と一息吐く。

 どうやら、今度こそ跡形もなく消し去ったようだ。

 

「とんだ時間をロスしてしまった…早く侵入者を始末しなければ、此処だけじゃなく我も危うい…」

 

 時間は有限。

 敵は未知数。

 情報は無い。

 部下は使えない。

 

 幹部さえいれば問題はないこともないのだが、何しろ妖魔を製造する担当なので、売買ルートでもない限り幹部は派遣されないのが決まりとなっている(そもそも幹部と称する程の実力者も多くはない)。

 それに幾ら相手が子供とはいえど、決して甘くはなかった。服は銃弾や刃物で破けられており、皮膚からは出血が溢れている。デー門も強さとしては申し分ない…にも関わらず、殺すこと…其れに特化したあの二人は洗練されており、とても強かった。手こずったとは言え、流石はあの有名で滅んだと言われたDースクワッド――得体が知れない。

 だが、なんてことは…

 

 

 

 ダァン!ダァン――!!

 

 

 刹那、背後から何発もデー門の背中に銃弾が撃ち込まれた。

 

 

「ッ――!!?」

 

 

 血反吐を吐き、威力の高い銃弾に思わず前のめりに倒れてしまう。焼ける様な痛みと、経験し難い未知なる激痛に、脳への痛覚が極限に働き、身体の自由が効かなくなった。

 

「な……にっ…!?」

 

 ガハッ!と、酸素を吐き出される。

 背中に重い足が踏み込まれ、首筋には銀白としたブレードがヒヤリと当てられる。

 

「バカだね本当……最後の最後まで油断するなんて。死体が残らないほどの火力を出したからといって、敵の数が未知であること、戦闘が終わっても気を抜くなって、教わらなかった?というか貴方…本当に第四支部長?偽物とかじゃないよね?」

 

 心底、呆れた様に愚痴を溢しながら冷徹な瞳で蔑むのは、白髪の女性。燃やしたと想定した筈の二人は、全くの無傷で、火傷後もなく、暗闇から姿を現した。

 

「な……かはッ…ひゅっ……!」

 

 然も舌が回らず、呂律が回らない。

 身体に力が入らなければ、秘伝忍法も発動できない…掌から炎を出そうにも無理なのだ。まるで忍術を封じられたかの様に。

 

「い、いやぁ…やりましたねぇ……『体刃(たいば)』ちゃん!それにしても、廊下のコンクリートが溶けちゃってるほど焼けちゃってますよぉ……これ、もしまともに食らってたら私達、死体の焼き肉盛り合わせみたいになっちゃってましたねぇ……えへへ…」

 

 そして三人目に姿を現したのは、見たことのない女だった。ボロボロの帽子からはみ出てる水色の髪…ポニーテールは腰まで届いており、おどろおどろとした口調で、根暗そうに呟いている。

 愛用のスナイパーライフル『セルフ・トーチャ』を抱き抱えており、銃口から硝煙の香りが漂う。

 

 

「助かったよ『黎子(れいこ)』――良いタイミングで撃ってくれたね、お陰で面倒な事せずに楽に殺せるよ」

 

「えへへ…その、御礼を言うなら『多摩子(たまこ)』ちゃんに……貰った銃弾が役に立てて良かったです……『神経毒』『忍術封印弾』『猛毒弾』…これだけあればある程度、人って簡単に殺せちゃいますもんね……えへへへ、隠れてて御免なさい、大人ってやっぱり怖いですね……自分より格下だからって理由だけで、直ぐに殺そうとしちゃいますもん……私たちも現在進行形で殺そうとしてるので、あんまり強くは言えませんけど……」

 

 待て、この女――一体何処にいた??

 気配、姿、影さえも確認できなかった…まるで突然そこに現れたかの様に、急に存在を現した『黎子』と呼ばれる少女に、眼光を飛ばす。

 

「う、うわぁ……物凄い鬼の形相でこっち睨んでますよぉ!?つ、辛いですよね…?苦しいですよね…?大丈夫ですか?なんて……えへへ、へへ…そ、それもそうですよね……私達スクワッドのような底辺の、生きることすら烏滸がましい…何から何まで無価値なゴミ虫以下にやられちゃってるなんて…それこそ絶望的で、もう生きてることが恥ずかしくて、苦しくて、辛くなっちゃいますよね………あへへ…えへ……」

 

 ……この腐れた言葉を漏らす根暗女を焼き殺したい衝動に駆られながら、憐れみな目で、自虐的な笑みを溢しながら目を逸らす彼女に、怒りが沸々と湧いてくる。

 然もなんだ?色んな銃弾…だと?

 

「あ、姫ちゃんこそ有難う御座います!流石は私たちの姫ちゃんです!絶・秘伝忍法を簡単に消しちゃえるなんて…!!」

 

 あの絶・秘伝忍法を消した?恐らく秘伝忍法を相殺させた、不可思議で未知な光の能力のことだろうが…あれは絶・秘伝忍法をも帳消しにすることが出来るのか?

 いや、そもそもあれは一体なんだ?

 

「………」

 

「ほら、黎子――姫と話すなら基地に戻ってから。姫のことが色々とバレちゃうと私たちが『先生』に殺されちゃう…それは姫も望んでない、そうでしょう?」

 

「……」

 

「あ、あうぅ…す、すみ゙ませぇん゙…うわぁぁぁん!どうせ殺されるならこの大人の稼いだ資金を盗んで三人で死ぬ前にワックでお腹いっぱいご飯食べた方が良いですよぉ!!此処に来る前に『ワックドナルド』という初めて見るお店があったので、是が非でも死ぬ前に……えぐ、ひっく…!うわあぁぁぁぁぁぁ゙あ゙ぁ゙んん!!!」

 

 泣きべそ掻きながら、大声で訳のわからんことを発狂しながら大声で喚く黎子とは裏腹に、こくこくと頷きながら姫と呼ばれる少女は手話でジェスチャーを送る。

 

「え?妖魔が上で暴れてる?かなり危険なやつ……基地が崩壊?分かった、なら脱出しよう。標的を殺してから…」

 

「ゲホッ!!ゴホッ…!!!」

 

 デー門の口から大量の血と粘液が嘔吐される。どうやら猛毒がかなり早い段階で回ってる様だ。どの道コイツが死ぬことに変わりはない…毒で蝕まれ、みるみると死ぬのも遅くはないが…万が一のことがある。

 徹底的に――標的を仕留める。それが、例え自身の手が犯罪に血を染めようと…

 

「…アンタはさ、私たちのこと下に見てたけど…知ってる?子供って、大人を簡単に殺せるんだよ。紛争地区で駆り出された幼少期の兵隊が、手練れの軍人を殺せたって……知らないか。忍術とか、個性とか、この世に溢れた超能力は、所詮人殺しを手助けるオプションにしか過ぎないんだよ。大事なのは過程とか、能力とかじゃない――明確なる殺意だ」

 

 

 それを、私たちは子供の頃から、殺されるほどに覚えさせられた。

 

 

「じゃあね、幾らでも恨んでも良い――なぜなら、全ては無意味…何もかもが意味なんてこの世に存在しないのだから」

 

 肉を斬る血飛沫、鈍い音が静かに響くと、通路にはデー門の想像を絶する絶叫が支配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 灼熱の炎が空間を焼き、息を吸うたびに肺が焼かれる様な感覚が、不快感を漂わせていた。

 赤鬼怒とラファエル――地獄の赤鬼と、楽園の天使の殺し合い。赤鬼怒は血を垂れ流しながら、鎧は剥がれ落ち、皮膚が露出され、右眼が先ほど光矢の威厳によって潰された。

 一方でラファエルの制服は既に焼き焦げ、頬には擦り傷…横腹には抉れた傷口が焼き爛れている。両者共に一戦引かず、血みどろな戦いが延々と続けられていた。

 

(これは…予想以上に手強いですね……腐っても、流石は大妖魔なるもの…。先程部位破壊した腕や顎がもう再生機能が働いている…)

 

 大妖魔ともなれば攻撃が集中的に続かない限り、時間が過ぎれば再生を施すという厄介な身体機能がある。巨大妖魔のように、身体の規模やスケールが大きい場合は、大きさと実力に比例し再生機能が届かない場合もあるのだが…。

 

「ヴォお゙ォォ゙おぉ゙……!!ちガイ、チがい゙ゾォ゙…!お゙、トうどヨ ……!キケ、ケケ…!!」

 

「多少、言語は喋れる様ですね…」

 

 弟…というキーワードが聞こえた様な気もするが、混雑されたノイズの様に、聞き取りにくい汚い声だったので、判別出来なかったが…。

 

「ギぬぬ゙ゥ゙!!ぬじゃらべっ!…ン ゙ォおぉ゙!!ま、ま゙つリ゙……お、ごッこ…!くキゃギャバッ゙!!」

 

「煩わしい…」

 

 唾液がボタボタと床へ垂らしながら、奇妙な笑みを浮かべてケラケラ笑っている。赤鬼怒は何を余裕を持って笑っているのか、表現や心理、この大妖魔には読み取れない不可解な現象が存在する。

 汚い穢れた笑い声、涎を垂らしながらケラケラと破顔う動作に、愉快感が煽られる。

 

「秘伝忍法――『星導のファロス』!!」

 

 妖魔術――『熱灰道憎』

 

 光を極限に集中させ、眩ゆい光源は熱を溜め込んでいく。光とは、言うなれば灼熱にも等しい炎と似た性質を持つ。炎は闇夜を照らし、周囲を暖めるように、光は電力や炎…太陽の光のように、炎の性質と似た本質を持っている。

 灯台の光が、烈火の如く敵を射抜くと同時に、赤鬼怒は常軌を逸した大きな口から、大量の液体を嘔吐する。それは灰色のように薄汚れた、焦げ臭い匂いが漂い、吐瀉物は壁のように撒き散らし、『星導のファロス』なる光炎の矢を灰へと化す。凡ゆる強力な秘伝忍法も、武器も、能力も、全てを灰色の石化に変えてしまう。

 

 光炎の矢は、形を保ち、パキパキ…と剥れる音を轟かせながら、無意味に、力無く崩れ落ちて行く。攻撃を読み取った防御技…からの全てを灰と石へと変化させる妖魔術を放った直後、自慢の巨骨大剣で一刀両断――ザン!!とした豪快に斬る音と共に、速攻で地面を蹴り飛ばし、間合いを詰める。猛撃を叩き込もうと、灼熱たる地獄の業火を二つの大剣に浴びせ込め、軽々しく扱いながら、縦横無尽に斬り刻む。

 

 妖魔術――『鬼神・双炎無双』

 

「ッ…!!」

 

 鬼神の如く、神速な剣捌きで空間に隙間無く、獄炎の斬撃を叩き込む。ゴゥ、ゴゥ…!!空気が震え、呼吸するだけで灼ける熱が肺を焼き尽くす。なので呼吸を閉じ、全集中…極限に意識を集中させ、タップステップな足取りで紙一重で避けて行く。それでも人間の身体というのは、避けるのに精一杯でも、回避不可能な位置からの斬撃は覆しようがない。

 なので、一旦宙を舞うように思いっきり地面を蹴り、バク転する。華麗に宙を舞い、それは美しながら鳥のように、回避不可能な斬撃領域の範囲から外す。

 

「ギゲッ…!!?」

 

「避けようがないのなら、一旦離れれば良い――」

 

 そこから構わず、回避と同時に光矢――トゥルムで眉間を狙う。それは決して狙ってやった訳ではなく、殺すのであればせめて脳天だろうと、そう解釈して光の矢を射る。

 

「ッッ…!!」

 

 だが其れを、腕で払い除けた。

 

「何ッ…??」

 

 赤鬼怒の行動に疑問が湧く。

 今まで攻撃を喰らっても、決して防御しようとしなかった。まるで痛くも痒くもないと言わんばかりに、えげつない攻撃を被虐されても、攻撃の手を止まなかった。それなのに…角を狙った途端――急に防御をした。まるで狙って欲しくないと言わんばかりに…。

 

「…まさか、そういう事ですか…っ」

 

 理解した。

 恐らくこの大妖魔は不死身だ――幾ら攻撃した所で、この世から肉体が消滅するほどの猛攻を浴びせても、こいつは肉体を復元させて何度でも、何度でも何度でも何度でもやり直す。

 だが、それは弱点を除けばの話――だが、まだ確証がない…。

 

 ラファエルはそれを確認するために、再度光の矢を解き放つ。弦が僅かに揺れると共に、光で生成された矢が数本、角を集中砲火する。それを体剣で防ぎ、身を守る。

 

「……なるほど、理解しました…」

 

 間違いない、この大妖魔はどう言う訳か鬼の角を折られるのを非常に嫌がっている。つまり、弱点は角であり、それさえ折ってしまえば無力化する事が可能と言う事だ。角以外ならどれだけ攻撃を受けても無意味となってしまうが、逆に角さえ狙って折ってしまえば造作もないこと。

 

 

「ゥ゙ッ、ヴぉあ゙ア゙ぁあア゙ア゙ぁ゙あ゙ぁぁぁ!!!!!」

 

 

 けたたましい大怒号が空気を震わせ、空間を轟かせる。痺れる大咆哮に、鼓膜が破けてしまいそうな音量…恐らく角を狙ったことが、返って逆鱗に触れてしまったようだ。

 あれだけヘラヘラしてた赤鬼怒は、文字通り怒りを根源に露わにし、灼熱の炎が更に熱を浴び、熱量が上昇する。

 

「矢張り…正解ということですか!」

 

 微温湯だった戦闘は、弱点証明…赤鬼怒の消滅の危機を理解した途端――状況は烈火の如く、地獄の業火と化す。

 剣を軽く振るうだけで、廊下は灼熱の炎へと焼き尽くし、退路を防ぐ。触れるだけで火傷どころか、骨をも焼き焦がす大灼熱地獄…どうやら、地獄の赤鬼は、逃がしてくれなさそうだ。

 選択肢を誤った?いいや、違う――もし此処で帰還してしまえば、折角救われた囚人達も、託した月光や、精一杯死守してくれてた閃光の努力を無駄にしてしまう所だ。

 

「どうやら…逃がしてくれなさそうですね…」

 

 これは鬼ごっこではなく――お兄さんの遊戯。周りは炎の檻となり、周りを囲む。攻撃を退け反撃を行うか、地獄の炎へと弾かされ、消滅の末路へと行き届く、火ノ相撲となるか…発気揚揚、遺った!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤鬼怒とラファエルとの鬼ごっこ遊戯が本格的に始動してから、閃光と蒼牙鬼との邂逅…最悪な結末を防ぐために、投げられた賽は、窮地に赴き最善たる行動に赴いた。

 

「月光!ラファエル様は…」

 

「それが…赤鬼みたいな妖魔と対峙してるわ…!忍務は一時中断――優先事項である囚人達を助けて逃げてって言う命令が……それに、此処にも大妖魔がいるなんて…しかも今度は青い方…?!」

 

「なっ……!?」

 

 こんな化け物が、もう一匹存在して、しかも単騎で挑んでいると言うのか?流石は上位の位置に属する優秀で、才能あふれるお嬢様なことだ。だが同時に流石は優秀な忍…と、思う反面――本当に任せてしまっても良いのか?助けに行かなければ危険なのでは?と、安心と不安の矛盾した思考が芽生えてしまう。

 

「ウギギ…!ギャバばぁぁ゙!!」

 

 ゾワッと、ドライアイスを背中に浴びせられたような、寒気立つ声が聞こえた。殺気を孕んだドス黒い声だった。

 目の前に、鬼の形相を表した蒼牙鬼が、大剣を握りしめている。

 

 

「く、くく、供物のおお゙ォォ゙!!テ、てて、手助けヲおをぉぉ、するナあぁぁぁぁぁァァァァーーーーッッ!!!」

 

 

 目の前で殺して良い、壊されるべき命に、救命しようと手を尽くす彼女に猛激怒する蒼牙鬼は、怒号を飛ばす。鬼の怒りの矛先を向けられ、平常を保てず、可笑しくなりそうな、吐き気をするような衝動を無理やり殺す。

 

「バッ――逃げッ」

 

 志久万は苦虫を噛み殺すような焦燥の顔を立て、逃げろと促す。

 だけど心の何処かで「無理だ、もうお終いだ」と呟いてる自分もいる。

 先程まで逃げ切ることも叶わず、図体似合わずスピードは桁違い。見かけ倒しとは正にこのことを言うのだろう、兎に角この鬼から逃げ切るなんて話は、非現実的な話なのだ。

 

「はああぁああぁぁぁぁーーーーッッ!!!」

 

 虎にも負けない咆哮と供に、破壊と拳の連打する衝撃の音が、絶える事なく続いて行く。

 重火器射撃で撃ち尽くす様な擬音に、蒼牙鬼の身体は停止する。後ろを振り向くと、背を何度も殴り続ける閃光が、血を流しながら手を休む事なく食い止めている。

 

「お前達さっさと逃げるんだ!!私が食い止めている!この命、お前たちの為にも…!!」

 

 囚人達は予期せぬ妖魔衆の襲撃に成す術なく、虫ケラの如く無惨に殺された。だけど…まだ生き残りがいるのなら、せめて逃げ果せて欲しい。

 最も最悪な事態に招き入れるのは、全滅だ――

 誰一人も救えず、そして自分達も死ぬ事は、命を無駄に捨てる行為と同じ意味になる。ならば、せめて…生き残ってる人間だけでも…

 

「ア、アに者…い゙るゥ゙…お、オまエ゙!ぢね…っ!邪魔、ズるな゙あ゙ぁぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁぁぁ――!!!」

 

 蒼牙鬼への猛攻の拳は、銃弾の嵐として叩きつけられて行く。蒼く硬質化された装甲は決して汚れることも、凹むこともなく傷一つ付けられない点然し、それでも邪魔ばかりする閃光が煩わしく思ったのだろう。気に食わない邪魔者に腹が立ち、けたたましい叫び声で喚く。

 

 乱打する殴拳を、一払いするかのように腕を振るえば、ガトリング乱射のように拳の嵐を叩きつけていた閃光が大きく仰け反る。その隙を狙うかのように、同時に巨大な骨の大剣を首元目掛けて振るいかける。

 

「秘伝忍法――『リフレクトミラー』!!」

 

 閃光の叫びと共に、円を描いた写鏡は盾のように閃光と蒼牙鬼を隔て、振るわれた大剣は自身へと跳ね返るようにカウンターを喰らってしまう。

 

「ボギャッ…!!?」

 

 リフレクトミラーによって反鏡された物理的な法則は、そのまま自信へと跳ね返り、勢いよく振るわれた斬撃は自身へと叩き込んでしまう。人を呪わば穴二つ――相手を恨むこと、相手への怨念は自分達へと返っていくように、呪術に関してある程度知恵が働き、呪いに関して勉学を通じた月光だからこそ編み出せる忍術。

 

「閃光!早くあの子達を…無事な人達を連れて逃げて!!」

 

「月光…!然し…お前だけアイツを相手にするのは……!!」

 

「分からないの!?死人が出てるのよ!!?あの人が私達を託してまで、命を賭けて妖魔と戦ってるのに…私達がそれを紡がなくては、意味がないでしょう!!?」

 

 かつて無い程の憤慨に満ちた震える声と、彼女の真剣な表情は、腹違いと言えど、双子だと勘違いされることが多い姉妹仲だとしても、初めて見る激情。

 月光だって充分に怒っている。

 何せ折角…いや、遂に救われたあの人達…囚人達が、まるでさもゴミでも斬り捨てるかのように、特別何の意味もなく虐殺進撃を進める殺人鬼の蒼鬼に、怒りが湧いて来ない訳がない。

 漸く救われたと、希望への渇望に満ちた瞳が涙を流し、生きる意味をやっと見つけ出した囚人達を、コイツは意味不明と体現せざるを得ないように、殺したのだから。

 

「…っ、すまない…!直ぐに、直ぐに戻るからな!!」

 

 出口まではそう遠く無い。一旦囚人達を安全な場所へと避難させてから、直ぐに月光の下へと赴けば、まだ希望はある…。何より、今優先すべきことはコイツの討伐ではなく、忍務の根幹である囚われた人間の救出。それと同じく妖魔討伐も大事ではあるが…何より、無罪で苦しんだ人達を救出する方がより大事なのだから。

 

「ええ、任せて――その代わり、もし忍務から戻ってきたら、沢山着せ替え…ごほん、試作の衣装を着せちゃうんだから…」

 

 …今、着せ替えという単語は聞かなかったことにしよう。

 大丈夫――全員死んだ訳ではない。幾ら憎まれ口を叩かれようと、構わない。今最も優先し、死守せねばならないのは…この人達囚人の命であり…。

 

「皆さん!出口はもう直ぐです…!!あと少しですので…!!」

 

「し、死人が出てるのに…!これ以上どうなるっていうんだ…!?」

 

「なぁ、俺たち助かるんじゃないのかよ!!?」

 

「どうして私達…!こんな目にばっか遭わなきゃいけないの!!?」

 

 閃光が先頭に走り、取り乱れ混乱する囚人全員を引っ張るように声をかけるも、目の前に映る現実を飲み込めず、現実を否定するかのように意を唱える者達は、段々と希望から絶望へと反転していく。

 先程まで統制が取れていたのは、助かるかもしれないという、夢にまで見た希望の光だった。

 それが今、目の前で人が簡単に殺されたこと、異形で気色悪い、理解不可能な化け物の存在に、囚人達は混乱してしまう。

 

「アンタ達は俺たちを助けてくれるんじゃなかったのか!!?人が死んでんのに…!アンタの言うことなんて信じられるか!!」

 

「ちょ、ちょっと皆んな落ち着いて…!」

 

「アンタも見ただろ!?君と変わらない子供が、無惨に殺されたんだ……!首が、と、飛んで…!!」

 

「何なのよおぉぉ!!私達が何したって言うの!!?」

 

 混乱から憤怒へと移り変わり、絶望渦巻く中で段々と統制は消え失せ、破滅へと導くかのように、怒りと醜い言い争いへと渦巻いていく。勇希が何とか囚人達を落ち着かせようと声を張るも、それも帳消しにするかのように掻き消されてしまう。

 

「わ、私はただ…」

 

「勇希…」「勇希ちゃん…」

 

「其れに関して…甘んじて批難は受ける…だが、今直ぐにでも此処から脱出しなければ…!それに今こうして言い争ってる時点で!!あの化け物はお前達を…!!」

 

「それでもあの子達が殺されたことに変わらねえだろ!?それによぉ!助けが三人しか来てねえってどう言う意味だ!!?どうせ助けるなんて名目で、本当は俺達を騙してたんじゃねえのか!?あの化け物の味方で、俺達を殺させるための…」

 

「オイ――」

 

 すると一人、閃光と月光に対して罵詈雑言を吐く中年の荒々しいおじさんの肩に、重くて痛烈な感覚が襲い、身体が強引に声主へと振り向かれれば、思いっきり胸ぐらを掴まれる。

 

「マジで良い加減にしろよテメェ、何様のつもりだ…???」

 

 それは尤も、この囚人達の渦巻く混乱の中…冷静でありながら身勝手で醜い欲と本音を曝け出す周りの連中に、業を燃やすのは…月光のお陰で救われた志久万だった。

 羆の威圧が、怒声が、眼圧が、先程まで捲し立てるように責めてた囚人は、冷や汗を垂らしながら萎縮し、ただただ棒立ちしてしまう。

 

「このガキンチョ共が俺たちを助けるために命張って戦ってたのが分かんねえか!?あ゙ぁ…?!!殺したのはあのクソ鬼で、コイツらは俺らを助ける為に命懸けで助けてくれたろ!?恩を仇で返す真似してんじゃねえぇ!!それとも何かぁ゙?おめぇはあの二人の代わりに化け物倒してくれんのか?肉壁になって少しでも俺らの手助けになるってか??そんな度胸もクソもねぇくせに、ガキ以下のようにピィピィ喚いてんじゃねえ゙!!テメェ大人だろ?だったらこう言う時こそ大人らしいことしてみせろクソハゲ…!!!下らねえ譫言吐いてる暇あんなら、その足動かせや!!受けた恩くらい、自分で恩を返せや!!!」

 

「あ゙…は、はぃ……はひゅ…」

 

 志久万の正論に、ぐぅの音も出ずに完全に媚びるように恐縮する中年の男性。幾ら自分たちがパニックになり、正常な判断が出来ず、こう言った非現実な現象に戸惑うからといって、助けてくれた者達を非難するのは話は別だ。

 

「クマさん…!超かっこいい!!」

 

「……クソ共が醜い言い争いしてる間に、俺たち含めて全員殺されたって死に方が一番嫌なだけだ。あと腹が立ったのと……まあ、良い。それより早く逃げるぞ!」

 

 それと、自分を助けてくれた嬢ちゃんの為にも――そう言葉を心に留め、カッコいいと言ってくれた光里の背中をポンと押しながら逃げるように催促する。

 

「すまない…いや、助かる!皆んな!先程宣告した通り、出口はもう直ぐだ!!辛いだろうが、もう少しでこの地獄のような惨劇も終わる!!持ち堪えてくれ!!!」

 

 元ワイルドヴィランズとはいえ、今となっては救出されるべき一人の囚人である志久万のお陰で、乱れ崩されかけた皆んなの心を一纏めにしてくれた。それにあの中で一番体力と根性があるのは、尤も他でもない羆の彼だけだ。その分個性による本質や迫力もあってより言葉の重みに説得力がある。それも月光のお陰で救われた、巡り巡った因果律なのだろうか。

 殆どの人達が再び勇気を取り戻し、走り出すように一斉に閃光へと続いていく囚人達。一時はどうなるかと思ったが、これで…――

 

 

「ヴォォッ…!!」

 

 すると突然――先程まで月光と死闘を続けていた蒼牙鬼は、彼女のことなど気にも留めず、何ともないように大きく地面を蹴り、跳躍する。蹴られた地面は大きくクレーターのように凹み、囚人達の列や閃光を飛び越え、出口を塞ぐかのように立ち塞がる。

 

「……は?」

 

 何か勘違いしていたようだ。

 蒼牙鬼にとって殺す順番などどうでも良い――ただただこの虐殺な鬼ごっこにこそ自分たちの存在意義を創り上げる為のものであり、鬼の遊戯…つまり、虐殺進行こそ祭りの、己に課せられた宿命なのだと。

 嗚呼――まさにこれは、この現象は、この鬼達による妖魔の行動は…『鬼さん祭り』だったのだ。

 だから一々月光と真剣勝負だの、ニ対一だの、そんな誰かが勝手に作った解釈と戦法など、一々付き従う道理など、この蒼牙鬼にとっては一才どうでも良いのだから。

 

 この姉妹がどう結論を述べようと、こちらもまた強引に自分自身の本質を、本能のままに従うまで。

 

 妖魔術――『木っ端微塵』

 

 巨柄な骨大剣を掲げ、低く構えてから斬撃の乱打を叩き込む。縦横無尽――撲殺、惨殺、殴殺、凡ゆる殺意を込めながら、勢いよく殴り付けにいく。

 

「がッ――は!!?」

 

 無惨に大剣で嬲り殺すかのように、肉体を打ちのめされ、斬撃の嵐によって木っ端微塵に打ちのめされた閃光は、瞬く間に戦闘不能と言わんばかりに、血反吐を撒き散らし、忍装束は破かれ、重傷を負う。

 

「閃光ッッ!!!??」

 

 月光の絶叫が廊下に轟くも、虚しく消える。

 ドサり、と…力無く糸が切れた意思のない人形のように倒れてしまった。対処が遅れてしまい、全身の痛みに苛まれながらも、何とか呼吸はしてる限り、生きてはいる。だがそれは先延ばしにされた延命にしか過ぎず、倒れていては殺される的になるだけ。

 月光の判断は間違いではない――どちらかと言えば正しい選択をしただけのこと。その結果、コレを招いただけ。

 誰かが悪いだとか、足を引っ張ったとか、そういう次元の話はどうでも良いのだ。

 

「ヴぁあ゙ァ、お…やっド潰せ、せせ…た?こ、ここ、こちラ、手ノ鳴る゙、方へ……」

 

 閃光が倒れ伏せたことを確認すると、頷く動作を見せながら、大剣を再び掲げ、首元目掛けて振り下ろそうとする。

 

「そんな…!」

 

「おい嘘だろ!?本気じゃなかったってのか!?こんなあっさり…」

 

「い、嫌…!ダメ…やめて!!」

 

 勇希、志久万、光里の、希望が打ち砕かれた絶望の声色に、囚人達は更なる絶望へと突き落とされる。

 最初っからこの鬼を倒すことなど、無理に等しい出来事だったのだ。

 月光は全力で駆け走り、囚人達の列を掻き乱し、たった一人の血筋…同じ血縁の閃光を、妹を助ける為にも走り出す。

 

「む、ムだ…あギらメろ…お前ら、全員ぢネ!!アに者も、もウ直ぐ…来る゙!!」

 

 赤鬼の兄、赤鬼怒がもう時期此方へと来る。挟み撃ちによる鬼ごっこの遊戯は、大妖魔である我々の勝利だと言わんばかりに、高らかに宣言する弟の蒼牙鬼――だがどの道間に合わない。

 閃光の首をギロチンで跳ね飛ばすかのように、大剣という処刑の断罪が行われようとする。

 

「やめろおおぉぉぉ!!!」

 

 だが其れは決して閃光には届かなかった。

 

「は…?え、守…?守!!?」

 

 月光ではなく、結城守が、倒れ伏せている閃光の前に立ち塞がり、蒼牙鬼の大剣を諸に食らってしまう。ザクッ――と、肉斬る音が響き、血の飛沫が噴き上がる。

 鮮血は床のコンクリートに付着し、ベットリと広がっていく…そして、一人の悲鳴が赤黒い空間を埋め尽くした。

 

 

 

 

 




軽く紹介、キャラクタープロフィール


絶恵勇希 CV:上坂すみれ
今作裏ストーリーの主人公役を担う少女。幼少期から両親の暴行や愛されないこと、周りの人間からも疎まれ敵対を見せられる少女は、既にこの世の理不尽を体験している。
そんな孤独の少女に手を差し伸べた守に、強い繋がりを持ち、好意を寄せ、誰よりも守を大切に思っている。
デー門曰く、無個性かつ忍術のない上に能力らしき物を持つ異端者らしいが…

誕生日6月30日
血液型:不明
出身地:東京都
好きなもの:オムライス、紅茶、守がくれた物
趣味:読書、可愛いぬいぐるみ集め、



結城守 CV:酒井広大
勇希と同じく、忍商会に囚われた奴隷の少年。青髪に気の優しい彼は、小学生の頃に勇希と友達になり、彼本人も勇希を守ろうと、今も理不尽の中で彼女を守っている。
彼女に強い繋がりを持ち、特別な感情を持ち、誰よりも勇希を大切に思ってる。

誕生日5月12日
血液型:A型
出身地:東京都
好きなもの:和食、
趣味:友達と一緒にいること、



ラファエル――『光凪楓』 CV:早見沙織
ユースティア女学園『秘忍』、大妖魔と一人で対抗可能な強さを誇るお嬢様。常に笑顔と気高き本学園の模範となるべく、取り乱さずにお嬢様として振る舞う女性。ラファエルの忍名は幼馴染と考えた名前であり、笑顔が癒しになる、という意味から、癒しの女神として命名された。月光が好みな理由は、職人顔負けの裁縫技術、冷静さを備え上品な振る舞いが出来る上に、名門の死塾月閃女学館の血筋…何から何まで自身の生徒になるべきに相応しい、優秀なエリート学生であることに目を付けたものの、その愛情が行きすぎた。同性愛に関しても興味を示している。

誕生日3月31日
血液型:AB型
出身地:愛知県
好きなもの:洋菓子、気品、紅茶
趣味:お茶会




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