光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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昨日は寝落ちしてしまい投稿できませんでした…(ネムネム


19話「各々の想い。そして…」

「逃げられちまった…何てことだ、こんだけ派手に侵入されたにも拘らず…クソッ!」

 

悔しげに声を上げるスナイプは銃を降ろし、生徒達が傷ついてることを知らなかったことに対して後悔してる。

 

「うーん…とりあえずセキュリティ強化が必要だね。皆んな、反省は後だ。取り敢えず警察を呼ぼう、パワーローダー。連絡しくれ」

 

「はい、分かりました」

 

パワーローダーは頷くと、直ぐに警察に連絡をする

 

「ワープだなんて個性…ただでさえ希少なのに、よりによって敵側だなんて…」

 

横にいるミッドナイトはポツリと呟いた。

 

 

 

 

飛鳥と半蔵は…

 

「あっ、そうだ!オールマイト先生…大丈夫かな!?」

 

飛鳥は思い出したかのように、オールマイトに振り向き駆けつけようとすると…半蔵は飛鳥の肩を掴んだ。

 

「じっちゃん?」

 

「オールマイトについてはワシに任せてくれないか?それにちと話もあるしのう……出入り口の方で先生たちが生徒を集めてるそうじゃ、何やら生徒の安否を確認したいと言っておったの……飛鳥、行ってくれないか?」

 

「そうなんだ……うん!分かったよじっちゃん!!」

 

 

そう言うと、飛鳥は頷き出入り口の方へと駆けつける。

 

 

一方オールマイトの方では…ある先生がコンクリートを操り、オールマイトと緑谷を隠すように壁を作り出す。

 

 

 

「さあ、生徒の皆んなは無事かどうかの安否を確認したい…だからゲート前に集まってくれ」

 

「はい!」

 

 

残ってる生徒、切島、爆豪、轟にそう言うと、三人はゲートに向かって行った。その様子を見た先生はオールマイトと緑谷に振り向く。

 

 

「いやぁ、それにしても毎度無茶しますねオールマイト」

 

「やあ、助かったよセメントス!」

 

「ええ、俺も一応アンタのファンですから」

 

 

ニー…っと笑顔を見せるその男は、体は角々ではあるが、心優しそうな一面も見える。

 

 

セメントス 個性 『セメント』触れたもののコンクリートを操ることが出来る、柔らかくしたり、硬くしたり…現代社会では鬼強いぞ!

 

 

 

「オールマイト、無事か?」

 

「!!半蔵さん!さっきは助かったよ」

 

オールマイトは半蔵を見て驚いた後、死柄木を拘束して、動けなくしたことにお礼を言う。

 

 

「なに、気にすることはない……孫と生徒たちの受けた傷を、ちと返してやりたかったもんでな」

 

 

「あ、あの〜……」

 

 

「ん?」

 

 

オールマイトと半蔵の話を聞いてる緑谷は、手をあげる。

 

 

「あ、あなたは……?しかもオールマイトの知り合い、なんですか……?」

 

 

「!ああそっか…!!緑谷少年には話してなかったな!」

 

 

何が何だか分からない様子でいる緑谷を見て、オールマイトは半蔵を見て紹介する。

 

 

「この人が、伝説の忍びの……半蔵さ!!」

 

 

「本来ワシが自己紹介するのじゃが……まあ構わんわい」

 

 

オールマイトがそう言うと、緑谷は「ええ!?」とした顔で驚愕している。

 

 

「は、は、半蔵って……飛鳥さんの……それに半蔵学院の……」

 

「なんじゃ、飛鳥から話は聞いておったのか?」

 

 

「あ、いいえ!!詳しくは聞いてなくて……忍びの事情もあると思いますし……ただ孫だということと、半蔵学院を作ったというのは聞いたことがあります……」

 

 

緑谷は敬語で話しながら、半蔵を見つめていると、「ガハハハハ!!」と豪快に笑う。

 

 

「そうかそうか!なら話は早いわい………どうじゃ?飛鳥の体は?胸がデカイじゃろ?」

 

「は!?ふへえぇ?!な、なななに言ってるんですか!?/////」

 

「ははは!冗談じゃジョーダン!!まあ本題じゃが、お主がオールマイトの個性(力)、ワンフォーオールを引き継いでることは知っておるぞ」

 

「え!?!」

 

緑谷は一瞬焦り、動揺するが、二人は緑谷に話し出す。オールマイトと半蔵が深く関わっており、同じ社会を支えて守ってきたことを説明すると、緑谷は「なるほど…」と呟き納得した。

 

半蔵はオールマイトの姿を見てため息をつく。

 

「それにしても……お主も毎回無茶するのぅ…………まあ、ワシも人のことは言えんがな…」

 

半蔵がそう言うと、オールマイトの表情は険しくなっていく。

 

「あの、数秒がなければ…殺られていた…そう思わせるほど…敵は強かった…!それに……ヤツらは、忍びの存在を知っていた!!」

 

「っ!なんと……!!」

 

オールマイトは顔についてる血を拭い、そう言うと、半蔵もオールマイトと同じように表情が険しくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、とある「バー」にて……

 

 

 

 

ズズズ

 

 

何もないバーの中から、突如ワープゲートが現れ、そこから縛られ、苦しんで倒れてる死柄木と悔しい様子を見せる黒霧が現れた。

 

「いってぇ〜〜……」

 

ワープゲートから出てきた場所から、死柄木の両腕両足からは、血が流れていた。

 

「クソジジイにワイヤー巻かれて縛られた挙句、両腕両足撃たれた……完敗だ………!!子供は強かった、手下共も瞬殺だ、脳無もやられた、平和の象徴は健在だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全然話が違うぞ『先生』!!!!!」

 

 

 

 

 

 

死柄木は物凄い殺気立つ、血走った目でバーの中にある一つのパソコン画面を睨みつけて怒鳴り散らした。

 

 

『ううん、違わないよ』

 

『ふむ、けど舐めすぎたな…敵連合なんちうチープは団体名で良かったわい……』

 

 

パソコンの画面から二人の声が出てきた。一人は優しい声が、もう一人は老人の声が……二人の映像はパソコン画面には映し出されてない。音声のみだ。

 

 

『ああ、そう言えばワシと『先生』の共作脳無は?』

 

『回収してないのかい?』

 

 

脳無がいない事に気付いた先生と老人は尋ねると、数秒間を空き、黒霧は口を開く。

 

 

 

「………吹き飛ばされました…………」

 

 

『なんと!?あのオールマイト並の脳無が…!?そんなバカな……』

 

 

黒霧の発言に驚きの声を上げる老人。黒霧は話を続ける。

 

 

「いくら私がワープゲートとはいえど、正確な位置座標さえ分からなければ探すことは出来ないのです…そのような時間は取れなかった!」

 

 

黒霧は悔しそうに声を上げる。

 

 

『折角オールマイト並みのパワーとスピードにしてやったのに…!!残念じゃな……』

 

 

老人はため息をつくと、今度は先生と呼ばれる人物が話し出す。

 

 

『なるほど…では、弔と黒霧、どうだったかい?

 

 

 

 

 

 

 

『忍学生』は存在してただろう?』

 

 

「………はい……」

 

「…………」

 

 

黒霧は返事をし、死柄木は無言で見つめている。死柄木と黒霧も、最初は忍びなんてものは存在しないと思ってたし、おとぎ話だと思っていた。忍びは大昔に存在してたもので、そんな古いものが今も居るだなんて信じてなかった。

だが今回の襲撃でハッキリ分かった。忍びはこの世に存在すると……奇妙な技を使ったり、個性らしきものは見なかった。何より身体能力が高かった。それに先生が言っていた。今回忍びを殺せばこの社会は大きな悪影響を与えれることだ。と……

 

 

 

 

 

 

『僕の言った通りだろう?忍学生の強さはどうだった?』

 

 

そう聞くと、まず黒霧が喋り出す。

 

 

「弱かったようで、強かったです……彼女たちの秘められた強さに、正直驚きを隠せません……脳無が居たからこそ、我々は有利でしたが、もしあの場に脳無が居なければ我々は確実にやられてたでしょう……」

 

『なるほど…弔はどう思った?』

 

 

先生と呼ばれる者の質問に、死柄木は暫く黙って地面を見つめている。

 

 

「気に入らない……が、第一印象だな。でも…確かに黒霧の言う通り、アイツらは弱かったようで強かった。あの柳生とかいうヤツは脳無の一撃食らったのに生きてやがったし……雲雀とかいうヤツは脳無に心がないと見抜かれた……まあそれは別にどうでも良いんだけどさ。後は変な動物みたいなのも召喚してたな……」

 

『心がないと見極めた?その忍学生の特徴は?』

 

 

死柄木がそう言うと、先生と呼ばれる人物は疑問を持った声で尋ねる。

 

 

「ピンク色の髪に、目には華のような綺麗な瞳でした………それに兎らしきものを召喚してましたが……先生、何か知っているのですか?」

 

 

黒霧は不思議そうにそう聞くと、先生と呼ばれる人物は少し沈黙して答え出した。

 

 

 

『………華眼だね』

 

「華眼?」

 

『うん、だけど今の弔たちはこのことはまだ知らなくて良い……弔、君は自分が一体何をやるべきことなのかを考えなくてはね』

 

 

死柄木と黒霧は首を傾げてそう聞くと、先生は何も答えてくれなかった。そして先生は意味深な台詞で話を流した。死柄木はつまらなそうな顔をするものの、「だったら早くワイヤー外せよ」と呟く。

 

 

『ははは、ゴメンごめん…では黒霧、僕のところへ』

 

「かしこまりました」

 

 

黒霧はワープゲートを開くため、黒いモヤを揺らがずと、死柄木は突然何かを思い出したように言った。

 

 

「あっ、そうだ先生……」

 

『ん?』

 

「パワー…スピード……一人だけオールマイト並みの速さを持つ『子供』がいたな…」

 

『……へぇ……』

 

 

先生と呼ばれる人物は、何か興味深い声で反応すると、死柄木はワイヤーで拘束されてながらも、手を地面に向けて掻き始める。爪が傷つくほど…

 

 

「あのガキさえ居なけりゃあ、オールマイトを殺せたのかもしれないのに……なのに、なのに…!!ガキが…ガキ!!クソが、クソぉぉ!!!」

 

 

突然。死柄木は怒り混じった大きな声で叫び出すと、先生と呼ばれる人物は『まあまあ』と死柄木をたしなめる。

 

 

「あとよ先生……あの飛鳥ってガキも気に入らなかった………なんかあのオールマイト並みのスピードを持ってたガキと似てるんだよ……それにこのワイヤー…アイツのジジイのせいでこうなっちまったよ……」

 

 

死柄木はまた思い出したようにそう言うと、先生は何も言わなかった…まるで何かを見据えてるような……

 

 

「くそ、クソぉ!!!どいつもこいつも俺の邪魔ばっかしやがって!!アイツら今度あったら絶対にぶっ殺してやるぜ……殺して殺して殺して殺して殺しまくって……それで…それで………

 

 

 

 

 

……アアァアアアアーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

 

死柄木は余りの怒りに、精神が限界まで達したのか、狂い始めるように叫び出す。

 

 

『まあ、悔やんだって仕方ないさ!今回の戦いだって無駄ではなかったはず…それどころかいい経験になったハズだ。我々は動けない、だから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪のシンボル死柄木弔、君という名の恐怖をこの世の中に知らしめろ』

 

 

 

 

 

プツン!

 

 

 

 

パソコンの音声は消えた。

そして先生と呼ばれる人物は、もう一人の老人に話しかける。

 

 

「ドクター、弔の傷を治してやってくれ、僕はワイヤーを切るよ」

 

「ええ、分かりましたよ」

 

 

老人…ドクターと呼ばれる人物は、救急箱や、応急処置に必要な道具を整理し準備している。

 

 

「…………」

 

 

先生は暫くパソコン画面を見つめている。

 

 

「華眼に、飛鳥という人物の………なるほど、やっぱりか」

 

 

先生は何か納得した様子で頷くと、ニヤリとした笑みを浮かべる。それは、死柄木と同じようで、何処か似ていて……

 

 

「となると……華眼を持つ少女と、飛鳥の『祖父』、半蔵がオールマイトと繋がっているから、恐らくもう気づいてるだろうね…『僕の存在』を……それにしても『久しぶり』かな、半蔵という名前を呼ぶのは…」

 

 

そう言うと、カチカチとパソコンのキーボードを打っている。そしてその画面には、まだ見ぬ犯罪者たち、そして……

 

 

「うん、次は『彼』の出番かな、そして上手く事が運べば……忍びの存在を言い渡している『彼女』もまた、死柄木率いる敵連合の仲間に入れよう」

 

 

先生は、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃雄英高校では…

 

USJ内に襲撃してきた敵(ヴィラン)は、警察とヒーローの協力により捕まえた。そしてオールマイトによって雑木林に吹き飛ばされた一人の敵、脳無も逮捕された。警察からの話によると、脳無に外傷はなく、無抵抗で大人しいそうだが、いくら話しかけても一切反応がないそうだ。72名の敵が逮捕され、残りの2名は今も現在逃走中だ。

 

また重傷を負った人は、相澤、13号、柳生、緑谷、オールマイトの計5人。柳生は今回忍び専用の病院ではなく、リカバリーガールに診てもらう事になった。

 

柳生は頭部に重い打撃を打たれ、傷が酷く、血の量も酷かったが、リカバリーガールの治療で命に別状はない。

 

相澤先生は両腕の損害骨折…そして顔面骨折…眼窩底骨が粉々になって、目の後遺症は残るが…命には別状はない。

 

13号も背中から上腕にかけての裂傷が酷いが…リカバリーガールの治癒でなんとか命に別状はない…と

 

 

保健室にて……

 

「………」

 

頭に包帯を巻いてる柳生は、ベッドの上で眠っていた。

リカバリーガールに治療して貰った後、疲れが出てきて寝てしまったのだ。

柳生の夢の中に、聞きたくも無い声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『脳無、殺れ』

 

 

 

『そうかそうか、じゃあ俺が雲雀くんを殺せば良いんだな?』

 

 

 

『せっかく大切なお友達が勇気を振り絞って守ろうと頑張ってるんだ……俺がそれを壊そうとしないでどうするんだ?』

 

 

 

『俺たちは敵(ヴィラン)だぜ?殺してなにが悪いんだ…??』

 

 

 

 

『二人とも…ゲームオーバーだ……!!』

 

 

 

 

 

「っ……!!」

 

 

ハッ!と目が覚めると…

 

 

「柳生ちゃん…?」

 

 

雲雀がいた。ベッドの横の椅子に座って、ずっと柳生を看病してくれたのだ。

 

 

「ああ、雲雀か……良かった…」

 

 

柳生は嬉しそうに一安心すると、目に涙を浮かべる。そんな柳生を見た雲雀は、首を傾げる。

 

 

「どうしたの?何か怖いものでも見たの?」

 

「怖い……かな……雲雀が消えてしまうのは……」

 

「え?」

 

 

柳生の答えに、雲雀は驚いたように目を丸くする。

 

 

「オレは、怖かった……あの時、雲雀が死柄木に殺されそうになったのを……オレは直ぐに救けに行きたかった……でも、オレの弱さのせいで、身体は動くことが出来なかった……どんな理由であろうとも、オレは雲雀を」

 

「それは違うよ柳生ちゃん」

 

「雲雀?」

 

 

柳生が話してると、雲雀は首を横に振り、柳生の手を優しく握る。

 

 

「雲雀ね、柳生ちゃんが来てくれて嬉しかった。あんなにボロボロになってるのに、雲雀を守ってくれて…もし本当に弱かったら、柳生ちゃんは雲雀のことが友達でも、守ろうとはしなかったよ。強さは力だけじゃないんだ……だから、柳生ちゃんは強いよ。ずっと強い…!!自分を責めなくて良いんだよ」

 

 

雲雀はニコッと笑顔を向けると、柳生の頬から涙が伝わった。堪えてて、溜めてた涙が一滴一滴溢れ出た。

 

 

「ひばり…雲雀……!!」

 

「うん、うん……それに雲雀と柳生ちゃんはお友達だもん…雲雀は消えないから…死なないから大丈夫だよ」

 

 

雲雀は柳生を包み込むように抱きしめ、優しく頭を撫でた。

 

柳生は、雲雀と初めて会った時の頃を思い出した。それは入学式の頃だった。

雨が降っており、傘で学校に入って行こうとした時だった。柳生の目の前には、水たまりで遊んでる雲雀だった。雲雀は自分を見ている柳生に気づき、初めて会うと言うのに笑顔で話しかけてきた。

 

 

「ねえ、貴方も雨が好き?一緒に行こ!」

 

「あっ…」

 

 

雲雀は柳生の手を握り、一緒に学校にまで走って行った。柳生はその時嬉しかった。雲雀を見てて、心が温かくなるような優しさに包まれて……『氷のように悲しみに固まった』柳生の心を溶かしてくれた。

 

柳生には『望』という妹がいた。望のことが大好きだった。望がいたから、柳生は立派な忍になれるよう頑張れた。どんな辛い時があっても、苦しい時でも、望が側に居てくれた。望の輝かしい笑顔……そして望は、忍びの修行をしている柳生にいつもこう言ってくれた。

 

 

 

「お姉ちゃん!立派な忍びになってね!」

 

 

 

 

 

その言葉を聞けて、柳生は幸せであった。しかしそんな幸せも、長くは続かなかった。

 

 

ある日、望は交通事故で死んでしまった。

 

 

ツバサ医院に望は居ると聞いて、柳生は駆けつけ、見た時はもう遅かった。両親は泣きながら死んでしまった望を見つめていた。柳生は目の前の出来事を受け入れることは出来なかった。

 

 

「せん…せい……望は…?望は……!?」

 

 

柳生はツバサ医院の院長に尋ねると、柳生を落ち着かせるようにして、こう言った。

 

 

 

 

「諦めた方が良いね……」

 

 

 

 

「え…」

 

「辛いのは分かるけどね……君の妹の望くんはもう……救からないよ……」

 

 

そう言われた途端、目の前が真っ暗になった。

 

 

 

「う…あ…あ……あああ……!ああああーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

 

 

柳生はその場で泣きじゃくり、溢れる涙を止めることが出来なかった。

 

 

望が死んでから柳生は、悲しみに満ち溢れていた。認めたくなかったし、自分の目が覚めた時には、夢であって欲しいと何度もそう願った。だがそれは幻想に過ぎなかった。だから何度も泣いた、泣いて、泣いて、泣きまくって……

そんなことがいつしか日常となってしまい、柳生の心は氷のように悲しみに固まってしまった……

そして高校に入るとき、柳生は全てが変わった。自分の目の前には妹の望と瓜二つ、そっくりである人物に会ったからだ。まるで妹が生き返ったかと思ってしまった……それが、雲雀であった。

雲雀と一緒に過ごしてると、柳生の心の中には段々と悲しみが薄れてきたのだ。だが、柳生はそれが嫌だった。何故なら…悲しみが薄れるていくことは、望の死を忘れていくように思えたからだ。だから柳生は両親に言った。

すると父はこう言った。

 

『人の心は、悲しみで潰されないように出来ている。だから薄れていくことは、決して悪いことではない』

 

 

と……しかし柳生はそれを受け入れることが出来なかった。そんなことは認めたくなかった。しかし父の言う通り、このまま悲しみが薄れてしまう…どうすればいいか?

その時に決めた、ならば片方の目に眼帯をしようと……視界は半分になり見えずらいが、それなら望の死は忘れられないと……そう思えたからだ。視界が見えずらいと思えば思うほど、望のことを思い出せる。そうすれば忘れない、絶対に。

望が使ってたリボンで、眼帯を結んだ。これが、柳生が眼帯をし始めたキッカケであり、これこそが、柳生の原点(オリジン)なのだ。

 

柳生は決心した。

自分は雲雀を守れるくらい強くなって、そして二度と望を失った時のような思いはしないと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、自分はもっと強くなろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二度と大切なものを失わないためにも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり……

 

 

 

緑谷とオールマイトは……

 

ベッドは二つ、体に包帯を巻いてるトゥルーフォームのオールマイトと、足に包帯を巻いている緑谷は、横たわっていた。

 

 

「いやあ、何がともあれ…無事で良かったな緑谷少年…」

 

「オール…マイト」

 

 

オールマイトは緑谷を不安な気持ちにさせない為にと笑顔を作って見せるが、緑谷はオールマイトの秘密(ピンチ)を知ってるのであんまり安心する事は出来ない。

オールマイトは、天井の真上…真ん中を見上げてポツリと呟く。

 

 

「私また、活動出来る時間が短くなったかも…」

 

「!あ、あの…ゴメンなさ」

 

「いやいや謝らなくても良いさ!君と私は本当にそういう所って似たところあるよな!」

 

 

不安と罪悪感を感じた緑谷に対して、ハハハと豪快に笑う。オールマイトは緑谷を一度も責めたことなど無い。これは自分でやった事だからというようにしているが、やはり緑谷の心のには、罪悪感がある……安心できないのだろう。

オールマイトと緑谷の間にしばらく沈黙が漂うと、リカバリーガールは、渋々と仕方なさそうな顔で緑谷とオールマイトの顔を見つめる。

 

 

「今回は仕方ないよ…事情が事情でね、この子(緑谷)には一気に治癒してやれんから、少しずつ点滴で回復していくしかないさね」

 

 

目を細めてそう言うと、コンコンと扉のノックが鳴る音が聞こえる。

 

 

「すみません」

 

 

扉の向こうから声が聞こえ、反応を待たずして警察が入ってきた。

 

 

「おお、塚内くん!君もこっちに来てたのか!」

 

 

塚内は帽子をとって「久しぶりだな」と小言で言うと、緑谷は慌てた様子でオールマイトと塚内を見る。

 

 

「え、ええ!?良いんですかオールマイト…姿が」

 

 

オールマイトはニッとした笑顔を見せて「安心しな緑谷少年!」と、親指を立てると塚内に目を向けて紹介する。

 

 

「彼は私の最も仲良し、塚内直正くんだ!」

 

「ははっ、何だその紹介」

 

 

軽く笑う塚内、どうやらオールマイトの仲だそうだ。緑谷はホッとすると、塚内はオールマイトに事情調査を始める。

 

 

「それでオールマイト、早速で悪いが…まず敵(ヴィラン)について詳しく」

 

「待ってくれ塚内くん!生徒たちは…?」

 

 

オールマイトは生徒たちの安否を確認すると、塚内はニコッと笑顔を見せて。

 

 

「そこの彼、緑谷くん以外全員無事さ。彼女、柳生さんって子は頭部をケガしてしまったが、先にリカバリーガールの治癒で命に別状はないさ」

 

「おお…良かった…」

 

 

生徒たちが全員無事だと聞いたオールマイトは、ホッと胸を撫で下ろすと、塚内はオールマイトに話しかける。

 

 

「三人のヒーローが身を挺してなければ、彼らは殺されてたかもしれないな…」

 

「それは違うぜ塚内くん」

 

「?」

 

 

オールマイトは真剣な眼差しを向けて物語る。

 

 

「今までの雄英で…子供達は先に大人の世界を体験し、恐怖を感じ、乗り越えた…そんな一年生なんて今まであったか?しかも、忍学生とヒーローの学生が、共闘なんて……そんな事あったか?光と影が、表と裏が一緒に強敵に立ち向かった……!!」

 

 

 

「敵(ヴィラン)も随分とバカな事をした!これから強くなるぞ、生徒たち1ーAは!そして、半蔵学院の忍生徒達もな!!!」

 

 

フッと塚内が感心する表情を見せると、オールマイトは緑谷に振り向きニコッとした強さを感じる笑顔でガッツポーズを見せる。

 

 

「私は、そう思うよ…なあ?緑谷少年」

 

「オール…マイト!」

 

 

緑谷は嬉しさのあまり、涙が出そうになる。緑谷は涙ボロいとはいえ、やはり憧れの人からそう言われると嬉しくなってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

それから塚内はオールマイトに敵たちの事情調査を聞き、緑谷は足に包帯を巻いて、帰る支度をしている。

治癒は体力を消費するので、使いすぎないように点滴を淹れるには、明日また淹れなければならない。

そして、しばらくして緑谷は保健室から出た。

 

 

「ありがとうございました!」

 

「はいよ、お大事に〜」

 

 

緑谷は一礼すると、リカバリーガールは手を振る。オールマイトは塚内と話してるのを見て、緑谷は夜遅くまで大変だな…と思うのであった。

リュックを背負い、外に出るともう真っ暗だ。

 

 

「うわ、もう外暗いな…お母さんになんて言ったら…」

 

 

と呟きながら校門を出ようとすると。

 

 

「「緑谷くん!」」

 

「デクくん!」

 

 

振り向くとそこには

 

 

「あれ!?飯田くんに麗日さんに飛鳥さん、どうして此処に?もう時間…あっ、まさか」

 

 

緑谷はハッとした顔を三人に見せると、三人は当然と言わんばかりの顔をする。

 

 

「緑谷くん、君を待ってたんだ」

 

「お疲れ様!一緒に帰ろ!」

 

「うんうん!帰ろ帰ろう!」

 

「うん…!」

 

 

二人の優しさに緑谷はジーん…としみじみする、雄英に通ってから緑谷は友達ができた。今まで中学の頃は無個性だとバカにされて、そして幼馴染には酷い仕打ちすら受けた。だから緑谷にとって友達とは、人生の中では宝物のような存在なのだ。

 

 

(オールマイトの言う通り…これからも強くなるんだ…!)

 

 

オールマイトは緑谷に力を託した、それがどれ程重いか…より身を感じた。

 

 

 

 

 

 

そして襲撃の事件は終わった。しかし、次に新たな事件が、起ころうとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛇女子学園にて…

 

治療室で治療を受けた意識不明の悪忍の四人は、二人は回復し、もう二人は手遅れで死亡してしまった…その頃にはもう、間に合わなかったようだ。回復した二人は、命に別状はないが、再起不能となり、腕が動かない、足が動かないと言った後遺症が残った。その悪忍は、泣きながら嘆いていた……

四人を蛇女に連れてきた春花はあの時何があったのかを聞く。

 

 

「貴方が悲しむのも無理はないわ……だから教えて、もう二度と貴方達みたいな悲しみが増えないためにも……貴方達を襲ったのは誰?」

 

「そ……それは…………」

 

 

女性二人は一斉に口を開き、その名前を言った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。

 

夜の街に、パトカーや救急車が駆けつけている。何やら物騒な事件があった様子だ。

 

現場は建物と建物の間の路地裏でヒーローが四人とも重傷を負い、手酷くやられ…出血も凄い。

 

 

犯人とも思えるその人物は、現場を上から見下ろしている。

長い刃物を持ち、血の色に染まってる赤いバンダナ、そして顔の目線部分は包帯で覆われている。黒い髪は少し長い。この犯人は前に、悪忍を倒した男でもある。

 

 

 

「金に名誉……下らないな…ハァ…お前らがヒーローを語るんじゃねえよ」

 

 

狂気とも呼べる声を出しながら、舌舐めずりりする。

 

 

「ハァ……お前らは『間違っている』。本物の英雄を知らない限り……誰かが血に染まるのだ……ハハァ………」

 

「あー、やってるね!」

 

「!」

 

 

独り言を呟いていると、不意に後ろから女性の声が聞こえた。その男は聞いたことのある声なのか、「お前か……」と呟き、後ろを振り向く。

 

 

「お前か、とは何よ〜…むぅ………ねえ、今度は誰を殺ったの?」

 

「ハァ……その前にオレをただ力を悪戯に振りまく敵(ヴィラン)と一緒にするなよ…?お前のその発言から………オレがただ単に人殺しをしてるように聞こえるぞ……」

 

「ハハハ…!違うって、ちゃーんと分かってるよ!貴方のこと……壊したいんでしょ?この『現在の社会』を……」

 

 

その女性は、ニコニコしながら真剣に話をしている。その男はそんな彼女に、ため息をつく。

 

 

「………分かってるなら良い…………お前も……オレと同じ、この社会を壊そうとしてるからこそ…敢えてお前を殺さなかったからな……」

 

「うん、だから私は『忍びの存在』を貴方に教えたんだよ?それに『忍びの存在』は本来、人に教えないようにって、裏の社会が決めたんだけどね」

 

「ハァ……忍びとやらも……この間違ってる社会を支え、悪戯に力を振りまく者も、この世に生きる偽善者も………『粛清対象』だ……」

 

「うん!さっすがだね!!貴方に話してよかったよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヒーロー殺しステイン』!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ……抜忍『漆月』」

 

 

 

 

 

 

 

 




はい!今回も波乱が巻き起こりそうですね…wwそして、先生の言ってた彼と彼女は正にこの二人。ヒーロー殺しは1話でもう分かってたと思いますが…wwそしてようやく新キャラが出てきましたね…!まあ、敵ですけどねwwオリキャラは大体敵キャラが出て来ます。

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